新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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1-9 愛しの世界の記憶

 リンとついでに銭形の救出を済ませれた。

 なら、屋上が抑えれている以上は、俺の執務室に居るであろうそいつの首元には既に俺達の銃口が突きつけられているのも当然だ。

 袋のネズミを追い詰めていくのは趣味に合わねぇが、やったことがやったことだからな。

 

 

「クラフトチェンバーは後に回して、先に抑えに行くか」

 

「一応連邦生徒会長が残した遺物なのでしょう? いいのかしら……?」

 

「普段から使ってねぇんだ。 それに奴らにも利用価値がある以上は壊そうとはしねぇはずだし、何よりそのまま壊せるような対処をする気がしねぇ」

 

「ふぅん……随分な信頼ね?」

 

「ただの予感だよ。 信頼でもなんでもねぇさ」

 

 

 まぁ、その予感に随分と信頼を寄せちまってるのは事実だが……。

 俺がどうして知りもしねぇ人間への予感にここまで信頼してるのか、まるで分からねぇ。

 

 首を傾げながら、俺は階段を上っていく。

 

 そして、俺たちは執務室へと辿り着き、その扉を開いた。

 

 

「くっ……もうここまで来ていたか……!」

 

「お前さんが理事の後釜のジェネラルか?」

 

「ふっ……あぁ、そうだ。私がカイザージェネラルだ。よくここまで来たな、次元大介」

 

 

 テーブルに腰掛けながら、カイザージェネラルが俺たちを見据え、そして一瞬の取り乱しをすぐさま正して自己紹介を行う。

 てめぇの置かれている状況を理解しているはずだが、態度をすぐさま平静に保とうとする姿は流石のもんだ。

 

 

「全くだ、銭形まで利用するとはな。 よく練られた計画だよ、てめぇらカイザーらしい時間のかかる策だ……でも残念だったな、よりによって俺を敵に回しちまったのが運の尽きだ」

 

「くっ……ふっはははは! 何を勝った気になっている? むしろここまで来てくれて助かったよ。次元大介」

 

 

 そういうとカイザージェネラルが手を上げる。

 その瞬間、ジェネラルの後ろに見える建物の屋上で何かが煌めき、ガラスが突き破られ、俺の耳を掠めながら背後の壁に弾丸が撃ち込まれる。

 

 ここに来る前に感じたスナイパーの気配……なるほどな、ここなら狙いやすいからか。

 

 悪くない手だ、俺たちは向こうに先手を取られている以上、カウンタースナイプもしづらい。

 

 

「さて、全員大人しく再び牢に戻ってもらおうか?」

 

「ったく、甘いな。お前さんは」

 

「は? 何を言って──」

 

 

 その瞬間、背後に見える建物の屋上で爆発が起こる。

 既にそれには対応済みなんだよ俺たちは。

 

 流石、俺の背後を取った女だぜ、RABBIT4。

 

 

「で、まだ手はあるんだろうな? ジェネラル」

 

「クソ……既にスナイパーを配置していたのか……」

 

「なんだ、先に潜入させてたRABBIT小隊達に気が付いてなかったのか。 とんだ素人だなお前さん」

 

「素人……だと、舐めるな。 我々はカイザーグループだぞ!」

 

 

 ジェネラルは懐から取り出したスイッチを見せる。

 あの形状のスイッチを見ると、アリウスの自爆した少女を思い出すから胸糞悪い気分になるな。

 

 

「下がれ! この建物中に爆弾を設置してある! 押せばこの建物は一巻の終わりだ!」

 

「はぁ……下らねぇな、アル」

 

「えぇ、分かってるわ」

 

「待て、貴様ら分かっているのか! 命が惜しくは──「アウトローにそんな脅しが通じると思ってるのかしら?」」

 

 

 そう言うと隣に立ったアルが、ワインレッド・アドマイアーを構えて、その引き金を引いた。

 ジェネラルがスイッチを押すよりも早く、その前腕を撃ち抜き、腕を遠くへと吹き飛ばす。

 

 

「さて、これで頼みの綱はねぇな。 まだあるか?ジェネラル」

 

「っぐ、ぁ……クソ、私は……。まだ終われるか……!」

 

 

 残った腕で、ジェネラルが再び懐に手を入れると何かを俺に向けて構える。

 それは、年季の入った黒い鋼で出来た回転式のシリンダーに、木製のグリップ、この世界においてたった一丁しかない特注品。

 

 

「どうした……流石の次元大介も、相棒に裏切られることになるとは思わなかったか?」

 

 

 ジェネラルが向けたその銃の名は『S&W M19コンバットマグナム』。

 そうか、こいつの元に行ってやがったのか。

 

 

「人の女に手を出すとは、中々度胸があるじゃねぇか」

 

「女?戯言を……銃に意思などあるものか」

 

「そうかい……機械がそれを言っちゃ、お終いだな」

 

「っ! 貴様!!──「おい、よく狙えよ」」

 

 

 俺は前に歩み出す、テメェが怒るようなことを口にしたけどな。

 こちとら相棒を盗まれたのが一番頭に来てるからよ。

 

 

「その銃はな、俺と長年連れ添ってきた千丁に一つ(ワン・オブ・サウザンド)の銃だ。 てめぇのような若造が簡単に引けるほど、その銃の引き金は軽くねぇんだ」

 

 

 一歩、また一歩近づく。

 その銃の特徴を誰よりも知ってるのは俺だからな。

 

 ジェネラルの腕が震える。

 

 踏みしめるように一歩、また一歩と近づいていく。

 

 その銃を握るには、年も矜持も覚悟も足りてねぇみてぇだ。

 

 

「舐めるな!!」

 

 

 そう叫んだジェネラルが引き金を引くと同時に俺は半身逸らし、弾を避ける。

 

 二発目の引き金が引かれるよりも前に、俺はジェネラルの持つ相棒を掴み、シリンダーを抑えて撃てねぇようにしちまう。

 

 そしてそのまま、奪い取って撃鉄を起こし、銃口をジェネラルの眉間へと突きつける。

 

 

「まだ手はあるか? 若造」

 

「っ……」

 

 

 前腕の無くなった腕と共に両腕を上に上げたジェネラルを捕縛すると共に、無線に連絡が入る。

 どうやらレイミ達のヴァルキューレの一部隊が、地下のチェンバーを抑えたらしい。

 しっかりしてるぜ、あいつら。

 

 

 ヴァルキューレに捕縛したジェネラルを渡したのち、執務室に戻った俺はシッテムの箱に向けて話しかけていた。

 

 

「これで、今度こそ完全制圧……だな。 アロナ!行政権を奪取して、連邦生徒会に渡してやれ」

 

『はい!分かりました!』

 

「先生、それでしたらモモカに渡してあげてください」

 

 

 いつの間にか執務室に来ていたリンが、俺に話しかけてきた。

 歩き方を見る辺り、後遺症のない方法で捕えてくれたらしい。

 心配していたわけじゃねぇが、世話になってるからな。

 

 

『あ、行政権来た。 D.U.全域の通信網と行政システムの復旧しちゃうね~』

 

「これで、一段落か……そういや、リンなんの用で俺のところに来たんだ?」

 

「元々は先生の安全確認でしたが……そうでした、実はキヴォトス中に視認不可能の巨大なエネルギー反応が検出されたのです」

 

 

 無数のエネルギー反応……反応が出てる以上、この世界に何かが起きていることは間違いないはずだ。

 

 あぁ、嫌な予感がする。

 そして、嫌なことに、俺のこういう時の勘ってのはよく当たるんだ。

 

 

「すぐに調べるか」

 

「えぇ、申し訳ありません」

 

「気にするな、俺とお前さんの仲──っ!」

 

 

 凄まじい悪寒が全身を駆け巡った。

 何だ今のは……。

 大昔、世界地図には載っていない島で感じたあの濃厚な死の気配。

 あれに負けず劣らずの強烈な濃い死の気配に身を包まれる。

 

 俺は窓へと駆け寄り、今感じた悪寒の正体を探ろうと外を見た。

 

 その瞬間、端末が鳴る。

 

 

「俺だ」

 

『先生!! 私よ、セリカ!!』

 

「セリカどうし──『シロコ先輩が居なくなったの!!』……は?」

 

『自転車を残して、何処かに……みんなで探してるのに、手がかり一つなくって……』

 

「……分かった」

 

 

 あの予感も大事だが、シロコの命の方が大事なことは明白だ。

 セリカの啜り泣く声が、それを痛感させる。

 そして、蒼い空を眺めながら、決断を下そうとした時……その時がやってきてしまった。

 

 

 地響きと共に揺れる空、何度も放たれる無数の濃い死の気配。

 青い空が……一瞬にして、赤い神秘に染められる。

 毒々しいまでの赤が、この世界を塗り替えていく。

 

 

「先生……これは……」

 

『先生、空が……』

 

「悪い、セリカ。一旦切るぜ、絶対にシロコは見つけてやる、それまでお前さんらで頑張ってくれるか?」

 

『……っ、分かった。先輩たちにも伝えてくる。約束、忘れるんじゃないわよ!』

 

 

 電話を切って、リンの元へと歩む。

 どうやら、笑えねぇ事態のようだ。

 

 

「あぁ、こいつは……──「ようやく理解に至った」誰だ、テメェは」

 

 

 リンと会話をしようとした時、俺とリンの間にそいつは現れた。

 まるでごく自然にいたかのように、その不自然が存在していた。

 

 茶色のコートを羽織り、黒い手で何か悲鳴を叫ぶような不気味な顔をした白と黒の絵画を掲げた怪人……そう、その絵画を持った姿に俺は覚えがある。

 

 

「ゴルコンダ……か? いや、絵が違うな」

 

「はっはっはっ……その通りだ、ゴルコンダはもういない。 私は『フランシス』だ。 デカルコマニーと共に、新たにお前を見守る者。 従って、最後の宣告を傾聴せよ」

 

 

 まるでリンをいないものとして扱うかのように、そいつは俺とリンの間に割って入り、俺を不気味な絵画で見つめる。

 

 

「この物語は、二つのジャンルを混ぜ合わせることで本来『先生』と成らざる人間を『先生』とし、その力を封印することで主人公に押さえつけることが出来ていた。

 

 貴様のような旧世界の遺物が、この庭園に投げ込まれたことで起きる差異を最小限に抑え込んでいた。

 

 しかし、この物語は覆された。 

 脈絡、構成、ジャンル、意図、解釈……そのすべてが破壊され……その意味は絡み合い、混ざり、攪拌され──統制できないほどに褪せてしまった。

 

『死』なき世界に『死』を持ち込んだ者よ。

 

 空を駆ける一筋の『黒い影(ノワール)』よ。

 

 時代錯誤に抗う完成された旧世界の遺物よ。

 

 今までの物語は全て忘れるがいい。

 

 学園と青春の物語は破壊された。

 貴様は、元ある世界のジャンルを維持し続けることで、この世界をより破壊していく。

 

 貴様の存在そのものが、この世界に忘れ去られていた元ある意味を失い、力が暴れ回るだけの──理解不能で、不条理な世界へと変えていく」

 

「そうかい、俺の存在がな……で、それがどうしたんだ?」

 

「……ほう?」

 

 

「力が暴れ回るだけの、不条理な世界か。

 

 そんなつまらねぇ未来は、こっちから笑い飛ばしてやるよ」

 

 

 俺の存在で、この世界が崩れるだ?

 下らねぇな、だが、それが嘘だとは思わねぇ。

 仮にそうだとしてもな、例えどんなことがあろうとも、俺は俺の望む物語を作り続けるだけだ。

 

 

「そうか……では、それを見守るとしよう。

 

次元大介──いや、新任教師『次元大介』(・・・・・・・・・・)よ。

 

絶望と破局を迎え──そして結末へと走り出すエンディングを!」

 

 

 高嗤うように怪人は風の中に消えていった。

 

 絶望と破局……か。

 

 全く笑わせてくれる。

 

 

「そんなもの幾つも見てきたぜ」

 

 

 窓の外には赤い極光を放ち、螺旋を描きながら、空へと聳え立つ不気味な塔が見える。

 

 

「リン、会議をしよう、全学園に連絡をしてくれ。シャーレの力がいるなら幾らでも使え」

 

「分かりました、すぐに準備を」

 

「アロナ、俺の端末にある生徒たち、今まで面識を持ってきた全員に連絡を取れるか?」

 

『できますが……何て送りましょうか?』

 

「……そうだな、力を貸してくれって入れてくれ」

 

 

 窓に映るその景色。

 世界の終末と呼ぶに相応しいその光景を見ながら、俺は笑みを浮かべていた。

 

 

「さて、面白くなってきやがった」

 




世界の崩壊、終末

極光の光と共に終わりが近付く世界に

お前はどう立ち向かい、その命の徒花を咲かせる?

次章 Vol.final-2 世界解剖





今回は短いですが、キリがいいので!
さて、彼ほどの強烈な異分子がいるにも関わらず変化が少なかった理由、まだまだ残る伏線もありますが……。
それは次章以降への繰り越しとしたします。


最後に、ここすき、評価、感想お待ちしております。

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