新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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2-2 キヴォトス会談

「お待ちしておりました、先、生……? その後ろの方は……」

 

「休戦相手だ。それよりも、今の集合状況はどうだ?」

 

 

 煙草を吸い終わり、屋上から降りてきた俺をリンが出迎え、後ろに着いてきた黒服を見て、首を傾げた。

 気になるのは仕方ねぇが……知ってる人間以外に説明すると面倒なことになる。

 そもそも、知ってる側と知らねぇ側で対立が起きる可能性すらあるくらいだ。

 

 だから、教えるにしても、全員揃ってからの方がまだマシだろう。

 

 

「現在、ゲヘナから万魔殿議長と風紀委員長。トリニティからはティーパーティー三名と正義実現委員長。ミレニアムからセミナー会長とC&Cの00が出席しております。 あとは遠隔からの参加として百鬼夜行連合学園の陰陽部。 それとアビドスからはまだ連絡が入っていません」

 

「アビドス……なるほどな、アビドスには俺から話を通してみる。 お前さんらは、その間に少しでも情報を集めてろ」

 

「承知しました」

 

 

 アビドスが辞退ってことは、ホシノが我を通したってことだろう。

 今回巻き込まれちまったシロコの身分はアビドスが背負っている。

 なら、あいつらには出席してもらわねぇと困るってもんだ。

 

 端末を取り出した俺は、ホシノに通話を掛ける。

 アヤネでも良いんだが、こういう時最終的に判断を下すのはアイツだ。

 

 繋がった電話の向こうから聞こえてきたのは、酷く冷たいホシノの声だった。

 

 

『……先生』

 

「ホシノ、いい知らせと悪い知らせがある」

 

『……何、約束忘れてないよね』

 

「男に二言はねぇよ。 むしろ進展があった」

 

『ほんとに!?』

 

 

 電話だってのに、周りに聞こえるくらいの大きな声で、ホシノが叫ぶ。

 後輩想いの女だ、そりゃ心配していたんだろう。

 何よりあの二人には、俺の知らない何か繋がりがあるように思える。

 

 

「あぁ、まず悪い知らせだ。シロコを連れ去った奴がアイツに何かしら手を施して、この騒動を引き起こしている」

 

『つまり、シロコちゃんが洗脳されてるってこと?』

 

「洗脳とは違うが……まぁ似たようなもんか。良い知らせは、この騒動を解決していく内にシロコに確実に会えるってことだ。 だから会議に来い、ホシノ。お前さんの力が必要だ」

 

『…………はぁ』

 

 

 暫くの沈黙の後、向こうから聞こえてきたのは溜息混じりのいつもの声色だった。

 

 

『分かった。みんな連れて向かうから……少し待ってて』

 

「あぁ……」

 

 

 一先ずは、これでいいだろう。

 問題は、黒服とどうケジメを付けさせるかだが……。

 

 

「黒服」

 

「クックッ……どうしましたか?先生」

 

「殴られる覚悟はしておけよ」

 

「……それは互いにでしょう」

 

 

 やっぱり苦手だテメェは……。

 

 待ってる間、俺に出来ることも今は多くはない。

 何の気なしに便利屋達の様子を見に行くとエレベーターを下りたところで、アルと鉢合わせる。

 その手には、俺とルパンが描かれたDVDケースが……。

 

 

「あ、せ、先生……あの、これは……」

 

「おい、まさかそれが──「おや、私のコレクション……?」 は?」

 

 

 俺のセリフに被せるように、俺を押しのけながら、アルに近づいたのは、まさかの黒服だった。

 それよりも、私のコレクションってのはどういう意味だ?

 

 

「コレクション……って、それよりも貴方は誰かしら?先生と一緒に来たってことは少なくとも先生の協力者なのでしょうけども……」

 

「……失礼しました、私としたことがつい……ゲマトリアの『黒服』と申します、『ベリアル』さん。  そのDVDはどこで拾ったのですか?」

 

「ベリアル……? 私は陸八魔アルよ、間違えないで頂戴? それと、これは……この辺りの路地裏に落ちてたものを拾ったのよ。まさか貴方が持ち主?」

 

「クックックックッ……えぇ、いつの間にか落としてたようで……鑑賞しましたか?」

 

「えぇ、みんなで見たわ……素晴らしい冒険譚だった」

 

「クックックックッ……! それはそれは、是非とも語り合いたいところですが、今はそうも言ってられない状況……ちなみに推しは……?」

 

「ふっ、次元大介に決まってるじゃない」

 

 

 俺を置いてけぼりにして、アルと黒服が握手を交わしている。

 人の事を推しだなんだと……推しってのはなんだ? 若者言葉にゃ点で分からねぇ。

 

 二人が意気投合してるのもまた気持ちが悪ぃ……。

 

 

「アル、爆弾の解除は?」

 

「当然完璧よ。 火薬の量と配置を見るに、このビルを倒壊させるってのは脅しじゃなかったようね?」

 

「はっ、出来なきゃ話にならねぇがな」

 

 

 ニヒルに笑いながら、シャーレの監視カメラを横目で確認する。

 

 続々と集まっているらしい、それぞれ統治してる学園もあるってのにな。

 

 

「そろそろ行くか。便利屋からは、アルとカヨコが来い」

 

「カヨコは分かるけども、私も?」

 

「社長が来なくてどうすんだよ」

 

「ふふっ、そうね。愚問だったわ」

 

 

 準備を進めて、粗方の会議の資料を整え、俺とアル、カヨコ。それと黒服が会議室につく。

 三大学園のトップが揃い組なのも今回くらいなもんだろう。

 

 会議室に入ると、長机で向かい合っていた三大学園の面々が俺たちの方を向く。

 

 

「キッキッキ……次元先生、貴様くらいなものだぞ? このマコト様の時間をここまで無駄遣いしても許されるのは」

 

「マコト、貴方が早く着きすぎたのよ……召集が掛かったと思えばいの一番に……」

 

「キヒヒヒ! 我が盟友の名前を偽ったものであれば、即座に殺さねばなるまい? であれば、即断即決が最短であろうさ」

 

 

 いつも愚者の仮面を脱ぎ捨てているのか、真剣でかつ大胆な様子を見せるマコトと、その様子を見ながら溜息を吐くヒナが真っ先に目に入る。

 

 そして、そんなマコトの様子を見ていたのは俺たちだけではなかった。

 

 

「相変わらずの気性の荒さですね……マコトさんは……」

 

「あーいうところは、私も嫌いだなぁ~……まぁこんな状況だし幾らゲヘナが嫌いでもそうは言ってられないけどさ~」

 

「ミカ、『気性が荒い』に関しては君も人の事を言えないのではないかい?」

 

「ん~?セイアちゃん、それってどういう意味かなぁ?ちょっとお話しよっか?」

 

「ミ、ミカ様……落ち着いてください……せ、先生が見て……ケヒャヒャヒャ!」

 

 

 その向かい側に座って、いつも通り紅茶を飲んでいるナギサに、セイアに向けて握り拳を見せているミカ、袖で口元を隠しながら微笑んでいるセイアと、顔を真っ赤にしながら焦っているツルギが見える。

 こっちも相変わらずだ……どこ行ってもテメェが変わらねぇのは良い事なんだが……もう少し真面目にやってほしいもんだ、そこはナギサに期待するとしよう。

 

 そして、会議室の云わば特等席に座って、静かにしているのが……。

 

 

「…………」

 

「先生の呼び出しとは言え、リオ。お前がまさか態々出向くとはな」

 

「学園はユウカとノアがいる。ならここには私が来るのが合理的なはずよ」

 

「そうか……変わったな、リオ」

 

 

 変わらねぇ無表情と鉄の皮を被ったリオと、その内面が大きく変わっていることに気が付いて優し気な顔をしているネルがいた。

 

 そして、遅れてリンとアユムが室内に入って来る。

 モモカが居ねぇが、何処かでサボってるか、それともデータ解析に勤しんでることだろう。

 

 

「あとはアビドスの奴らが来れば全員だな」

 

「えぇ……それよりも、便利屋の方々の出席は理解できますが、この方は……」

 

「それもアビドスが来て──「先生、お待たせ~」来たか」

 

 

 扉を開けて、いつも通りののんびりとした表情を見せるホシノがそのオッドアイを開くと同時に、目つきが変わる。

 

 その視線は、一点に集まり、同時にショットガンを構えて飛び出す。

 

 目にも止まらない速度でショットガンを構えたホシノが、黒服へと肉薄する。

 

 

「先生、邪魔!! そいつを殺せない!」

 

「ホシノ、今はそうはいかねぇんだ。理由だけ聞いてくれねぇか?」

 

 

 その銃口と黒服に俺が割り入る。

 

 殆ど見えやしなかったが、こうなることは予測していた、だから対応できたが……想像の五倍は速いな……。

 

 

「何でここにいる!!黒服!!!」

 

「クックッ……お久しぶりです、『暁のホルス』」

 

 

 こうなることは百も承知だ。

 俺とて出来る事なら組みたかねぇからな。

 

 

「くっ……どうしてそんな奴と手を組んだの!! 先生、こんな大事な時に……」

 

「こんな時だからだ」

 

 

 ホシノの形相を見て、場内がざわつき始める。

 ホシノはそれなりに顔の売れてる人物だからか、そんな彼女が敵意を剥き出しにしている事実に驚いているのだろう。

 

 

「シロコを取り戻したいだろ」

 

「先生……はぁ、分かった。話だけは聞いてあげる。 1度泡吹かせてるし、先生の事もあるから、それに免じてね」

 

「悪いな──「ただ、納得出来なかったら、先生諸共撃つ」……構わねぇさ」

 

 

 俺と黒服を睨んだホシノは、そのまま壁にもたれ掛かりながら、黒服のことを睨みつけている。

 

 その後ろを気まずそうな顔をしたアヤネ達が着いていく。

 

 

「これで全員な訳だが……先に説明しておくか、黒服」

 

「クックック……先程はお騒がせして申し訳ありません、私の名前は『黒服』。ゲマトリアという組織に所属していた研究者です」

 

「……ゲマトリア、ベアトリーチェが居た組織だね」

 

 

 そう言葉を零したのはセイアだった。

 忘れちまってたが、セイアはゲマトリアの基地をその神秘のせいで勝手に盗み見た上に、殺されかけてた過去があったな。

 

 やらかしたのはベアトリーチェだが、こいつも同じ組織な以上はケジメをつけるべきだな。

 

 

「『ガブリエル』……その節は、元同僚が失礼しました」

 

「元? ベアトリーチェのせいでトリニティとゲヘナ、アリウスがどんな目に合ったのか、分かっての台詞かい?」

 

「クックック……確かに我らゲマトリアは、目的の為であれば手段を選ばない大人の集団です。 その一点に於いて、マダムと我らに違いはありません」

 

「では、改めて聞こう、何故君が先生の隣に立っているんだい。今の話でも多くの生徒が、理解しただろう。君は明らかにここに立つべき人物じゃないはずだ」

 

 

 セイアの言葉と共に鋭い視線が、黒服に集まっていくのを感じる。

 

 助け舟を出そうと口を開きかけたが、黒服が左手を上げて、制してきた。

 

 

「えぇ、そうでしょう。 特に先生である次元大介を知っている人物であれば尚のこと……我らゲマトリアは、神秘の追求と共にとあるものに向けての対策をしてきた集団です。 それが『色彩』、今回元同僚であるベアトリーチェが呼び寄せてしまった厄災の名です」

 

 

 黒服が、モニターに映し出したのは、日食にも似た黒点であり極点。

 どうやって撮ったのかは知らねぇが……。

 あれが、色彩か。

 

 

「ベアトリーチェに関してはこちらで始末をしましたが……呼び寄せてしまった色彩は、いずれこの世界の全てを飲み込みます。 我らとしてもそれは困るのですよ」

 

「つまりは利害の一致だ。 気に食わねぇのも分かるがな、ただこの場で色彩について詳しいやつはいるか?」

 

「嘘偽りなく、色彩に関する知識、それらに付随する全ての情報をお伝えすることを誓いましょう」

 

「…………あたしは構わねぇけどよ、テメェが裏切らねぇって証拠は何処にあんだよ」

 

 

 そう黒服に言葉の刃を突き立てたのは、一番奥に座ったネルだった。

 ネルは机の上に両足を置いて、足を組みながら黒服の話を聴いており、誓うという言葉に反応して声をかけた。

 

 

「そうですね……何か賭けれるものがあれば良いのですが、生憎この身一つですので、『命』程度であれば」

 

「ケッ……揃いも揃って、簡単に命を賭けに出せるな」

 

「ネル、それは貴方も人の事を──「リオ、テメェにだけは言われたかねぇ」……そう」

 

 

 自身の胸に手を置いてそう話した黒服を見て、呆れたように、天井を見上げたネルに、リオが話しかけるが、即座に切り返された一撃で下を向く羽目になっていた。

 

 

「マコトは何か言わないの?」

 

「キキキッ、その大人が悪人ということは充分に分かった。 その上で、だからどうした?

 

 悪人、外道、極悪非道、大いに結構。

 

 黒服……だったな?」

 

「えぇ、合っていますよ。『サタン』、どうなさいましたか?」

 

「サタン……キヒッ、羽沼マコト様の名前を違えるのは許さんが、まぁ良い。 黒服、貴様の目的はその『色彩』の打倒であっているな?」

 

「えぇ、今回の件に関して、私は先生と契約を結んでしまいましたからね」

 

「キヒヒ、であれば、何を怖がる?何を嫌がる。

 敵同士であったとしても、憎むべき唾棄すべき相手であったとしても、世界の滅亡の前では些事も些事だろう」

 

 

 声高らかに、マコトは……ゲヘナ学園の魔王はそう言いのけた。

 

 

 普段は愚者を演じてる割に、ここ一番の啖呵を切ることに関しちゃ、下手すりゃアル以上かもしれねぇな。

 

 当然それを面白くなさそうに見ている人物もまた居る。

 

 

「じゃあゲヘナの議長さんは、ヒナちゃんと協力するってこと?」

 

 

 そう口にしたのは、ホシノだった。

 事実黒服に、ゲマトリアに被害を受けた者も多く居る中で、その弁論をまずテメェが出来ているのか、それを確かめたかったのだろう。

 

 

「ヒナとか……普段なら例えイブキの頼みだったとしても断るくらいだが……今は、今だけは別だ。 啀み合って足を引っ張りあっても、何の得にもなりはしないだろう」

 

「普段から邪魔しないでくれると、助かるのだけれど?」

 

「貴様が嫌いな事実は変わらんぞ」

 

 

 ヒナと掛け合うその様子を審判するように見つめていたホシノがその両目を閉じると、やれやれと言わんばかりに首を横に振った。

 

 

「はぁ、分かったよ。このまま私だけ意地を張ってたら、おじさんが子供みたいじゃない……黒服」

 

「何でしょうか。暁のホルス」

 

「この作戦が終わったら、1発だけ腹を殴らせて」

 

「……っ、クックック……えぇ、いいでしょう、それで貴女程の戦力が手に入るのであれば」

 

「あと先生もね」

 

「…………」

 

 

 俺は帽子を深く被り直した。

 

 黒服が俺の事を見て笑っている気がするが、気のせいだという事にしておこう。

 

 これで、一番の懸念点だったアビドスの協力も得ることが出来た。

 ようやく会議を始められる。

 

 部屋が暗くなり、モニターが付くと、そこにはサンクトゥムタワーを破壊する形で顕現した塔が映し出される。

 

 

「では……まずは私の知っている事から皆さんに共有致しましょう。

 

 現在キヴォトスに出現した6つの塔は──それぞれが、反転した『サンクトゥムタワー』の一種と言えるでしょう。 サンクトゥムタワーは元はと言えば、太古の昔、まだこの世界に記録が残されるよりも前──当時存在していた原始的な神秘……『名もなき神』が築き上げ、名を失った『固有名』と共にこの世界に楔として打ち付けたものです」

 

「楔……名もなき神はまさか『テクスチャー』を操れるとでも言うのかしら」

 

「ほう、『星追い』まさか貴女がそこまで知っているとは……えぇ、失われた神秘ですので、その言葉を私は知りませんが、この世界のテクスチャを縫い留める役割を果たしていたのは間違いありません……しかし、今はそれが反転している。あれは『色彩』の光を世界中に伝播させている。 この意味が分かるでしょうか……」

 

 

 リオの問いに、黒服が驚きつつも、そう問いかけると、考え込み始め……そして別の人物が口を開いた。

 

 

「恐怖……あれは世界中の神秘を恐怖へと反転させるということだね?」

 

「一度、色彩の影響を受けただけはありますね……えぇ、その通りです。そしてその影響を受けた生徒が既に一人」

 

「まさか……それがシロコちゃん……?」

 

 

 ホシノの言葉に、黒服は頷きを持って返答する。

 そして、俯くホシノをアヤネが何か励ましているが、アイツはそれを無視して、会話を続けた。

 

 

「かの『死神』を用いて『色彩』がゲマトリアを襲撃したのは、ゲマトリアが所持していた『秘儀』と『検証結果』を奪うためだったのでしょう。

 

 デカグラマトンのpath、複製の秘儀、『聖徒の交わり(Communio Sanctorum)』、ライブラリー・オブ・ロア……それだけでは飽き足らず、名もなき神の力に、無名の守護者の能力……これらを手にした者、それが私達が打倒すべき敵の名です。

 

 その名は『プレナパテス( φρεναπαι)』。

 

『色彩』の意志を代弁する存在であり、かの概念の手足となって計画を遂行する実行者──『色彩の嚮導者』と呼ばれる玉座に着いた選ばれし詐欺者の名です」

 

 




カードは配られた
卓にも着いた
ならあとは、その手札で勝負をするとしようじゃねぇか

次回 会議は踊る

賭けるのはこの世界の明日だ。







黒服が生徒を呼ぶ時の名前、気づいた方がいれば、拙作の事をよく読んでくださっている証拠ですな、え?初公開情報もあるだろって?
HAHAHAHA

では最後に、感想、評価、ここすきよろしくお願いいたします!
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