新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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2-3 会議は踊る

「では、ここからは私が司会を変わります」

 

 

 そういって、リオがモニターの前に立ち、全員の前に資料を渡す。

 資料のタイトルには『虚妄のサンクトゥム攻略戦』と書かれている。

 

 

「まず初めに、今回の作戦のタイムリミットは二週間です。それまでにあの塔を破壊しなくてはなりません。黒服さんの発言が正しい事を前提として、あの反転したサンクトゥムタワーを以後『虚妄のサンクトゥム』と命名し、本作戦を『虚妄のサンクトゥム攻略戦(Operation Plan. Nisir's Summit)』とします」

 

「クックッ……噓偽り、実態の無い陽炎のサンクトゥムタワー、だから虚妄のサンクトゥム……良いネーミングセンスです『サラスヴァティ』、ゴルコンダであれば何と名付けた事か……」

 

「黒服、茶々を入れるな。 それで、リン。そのタイムリミットってのは何が根拠だ?」

 

 

 資料を見ながら、口元に手を当てて笑いだす黒服を睨みつけ、俺はそのままリンに質問を飛ばす。

 時間ってのは大事なもんだ、特にこういったリミットがあるものならその計算のズレは許されねぇ。

 

 

「それについては、私から話すわ」

 

 

 リンに聞いた質問に関して、リオが代わりに手を上げて声を出す。

 

 

「ミレニアムのエンジニア部、それと私のAMASで近場の虚妄のサンクトゥムを分析したわ。以前、催眠・洗脳に近い神秘による攻撃を受けたせいかしら、少しだけ耐性があるみたい。 エンジニア部、部長のウタハ曰く、人格と意識に変化を引き起こす信号を発していることが分かったわ、今はセイアさんとシスターフッドの協力も合って、トリニティの文献を読み解きながら、ヴェリタスと共に分析を進めてる形よ。

 

 そこで分かったのが、あのエネルギーは約300時間後に臨界点に到達するわ」

 

「12.5日か。そのエネルギーの増加速度が今のままならでは二週間、どんだけ甘めに見積もってもそこが限界か」

 

 

 俺の結論にリオが首を縦に振る。

 塔は各地に点在している、当然守りも厳重だろう。

 かなり時間は切羽詰まっていそうだ。

 

 そう考えを巡らせていると、セイアが声をかけてくる。

 

 

「先生、これは……」

 

「あぁ、捕まってるときに、過去のお前さんに聞いたよ」

 

「そうか……あの預言が作動したのだね」

 

「預言……?」

 

 

 カヨコが俺に対して聞いてくる。

 結局、明かしてなかったな。

 

 俺が説明しようとすると、代わりにセイアが口を開く。

 

 

「鬼方カヨコさんだったね。私の神秘……いや、私の神秘だった力『夢幻』によるものだよ。 夢を用いて未来を見通すものなのだが……色彩のせいで失ってしまってね。その失う最後、私が先生に託した預言が……。

 

『歪な晄輪を持った死神が現れし時、天から飛来した巨大な塔により、蒼き虚空は緋色に染まり……不吉な塔は、悲鳴と共に鳴動し……この世界を少しずつ削り取って……そうして、黒い光が天から舞い降り……世界が終焉に傾いていく』

 

 という預言だよ」

 

「……終末の預言」

 

 

 セイアの言葉を聞いた時、カヨコがそう小声で零した。

 

 ふと、視線をマコトとヒナの方に持っていくと、彼女たちも何か思い出したのか、それぞれ驚愕した表情を浮かべて、何か思考を巡らせている。

 

 アルの方も見ると、こいつは首を傾げている。

 思い当たるところがねぇって感じだ。

 

 つまりは、風紀委員長と、万魔殿の議長クラスの人間しか知らねぇ情報らしいな。

 

 三人の様子を見ていたセイアが、意味ありげな表情をしながら口を開く。

 

 

「どうやら……そちらにも似たような預言があるようだね?」

 

「キキッ……まさかだな、しかしそれはいい。どうせ起きてしまったことだ、今はそれよりも今後どうするかを話し合うべきだろう」

 

「あぁ、それとシロコを取り戻すためにも、『色彩』の影響を受けた人間を治す方法もな」

 

 

 ホシノたちアビドスとの約束をしたからな。

 それは絶対条件だ。

 

 とは言え、その手掛かりを持ってるのは……。

 

 

「セイア、お前さん当てがあるだろ?」

 

「あぁ、百鬼夜行連合学園に居たという大預言者『クズノハ』──彼女を探す必要がある。以前私を直したのも彼女だった」

 

『にゃははは、それで私たちにも声が掛けられたのですね!』

 

 

 何処からともなく声が聞こえてきたかと思えば、天井に張り付けられた札から声が聞こえる。

 あの札は……ニヤのものだ。

 遠隔からの参加とは聞いていたが、まぁ参加しただけ良いとしよう。

 

 

『いやぁ、カホから先生が呼んでるって聞いてはいましたが、まさかクズノハの名を聞くことになるとは……先生には恩がありますからねぇ……セイアさんでしたっけ?』

 

「あぁ」

 

『クズノハに治してもらったのは間違いないのですね?』

 

「間違いないはずさ、その時に私の神秘である『夢幻』も返納したのだからね」

 

『返納……夢幻……にゃるほどにゃるほど……では、この会議が終わったのちに少々先生を交えて三人でお話いたしましょ』

 

 

 そう言うとニヤの声が聞こえなくなる。

 抜けた印象のアイツだが、仕事には真面目な奴だ。

 報連相がまるでなっちゃいない事を除くがな。

 

 

「では、話を戻しますが……六つの塔はそれぞれ。

 アビドス砂漠、D.U.近郊の遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市──そして、D.U.の中心地に存在します」

 

「観測したところ、この中ではD.U.のエネルギー体が一番大きいので、まずは他の五つを破壊してからD.U.の塔を処理した方が良いかと……」

 

「……さっきの黒服の話も照らし合わせるが、ただ塔を破壊するだけじゃ済まないんだろ?」

 

『えぇ、その通りです』

 

 

 今日の会議はどうにも横入りが多いらしい。

 それだけ全員が協力しようとしているってことなんだろう。

 

 ホログラムとして会議に参加したその姿は、特異現象捜査部のヒマリだった。

 

 

『どうも皆さん、ミレニアムの完全無欠超天才病弱清楚稀代の美少女にして最高のハッカー、森羅万象に愛されし才能と美貌を確約されたこの──「ヒマリ、長いわ。結論から話しなさい」調月リオ……私の口上を……折角緊迫したこの空気を少しでも緩めようとした私の心遣いを無下にしないでください。 はぁ、話の腰を折られてしまいましたが、先ほどC&Cコールサイン04の頼みもあり、一足先に虚妄のサンクトゥムにハッキングをしようとしました』

 

「はぁ!? あの後輩何してんだ」

 

 

 その発言に一番声を荒げたのは、ネルだった。

 自分の後輩であるトキが勝手に行動をしたのに驚きもしつつ、許せなかったのだろう。

 

 ヒマリのお約束に関しては俺はもう突っ込まないって決めてるからな。

 

 

『ネル、トキは無事です。一向に帰ろうとしないのが不安ですが……今は報告を優先しましょう。 その際に虚妄のサンクトゥムを防衛している存在に阻まれました──通常の戦力では太刀打ちできないようなものに』

 

「まさか……」

 

『えぇ、そのまさかです。 その虚妄のサンクトゥムを守る存在、あれらは今までキヴォトスに出現した奇怪な現象の全てが凝縮されています。

 

 デカグラマトン三番目の預言者、砂漠の大蛇「ビナー」。

 

 スランピアに複製(ミメシス)されたアミューズドール、白鼠と黒烏「シロ&クロ」。

 

 トリニティとアリウスの過去を積み重ねた太古の教義、聖徒の交わり(Communio Sanctorum)「ヒエロニムス」。

 

 デカグラマトン四番目の預言者、慈悲深き苦痛の玉座「ケセド」。

 

 デカグラマトン八番目の預言者、輝きに証明されし栄光と叡智「ホド」。

 

 現在確認されてるうち、D.U.の中心にある虚妄のサンクトゥム以外に確認されている存在たちです』

 

 

 俺は、黒服の方を見る。

 その視線に気が付いたアイツはやれやれとばかりに首を横に振っている。

 予想はしていたが……守護者として利用しているとはな。

 

 

「要するに、塔を破壊したきゃ越えて行けってことか」

 

『えぇ、そう言う事になりますね』

 

「クックッ……なるほどなるほど……時間的にも同時攻略が求められるでしょう。守護者の情報は私からも提供致します。 こうなっては仕方ありません、デカルコマニーとマエストロには謝っておきましょう」

 

 

 弱点や行動パターンさえ分かれば、随分と楽になるだろう。

 問題は……市民たちか。

 

 

「キヴォトス中が戦火に包まれるだろう、シャーレを開放するが、他の学園地域はどうする?」

 

「トリニティは問題ありません、セーフハウスもありますし……ミカ」

 

「分かったよ、私は作戦参加よりも地域の警護に回ればいいんだね?」

 

「えぇ、それでお願いします」

 

「ゲヘナも同様だ、キキッ何のための風紀委員会だ?」

 

「そうね、普段の仕事と変わりはないわ。それに、今のみんななら、私が作戦に参加しても、問題ないと思うわね」

 

「ミレニアムも問題ないわ、こう言う事も予期して各地にシェルターを用意してあるのよ」

 

「だからC&Cは全員作戦に使ってくれよ」

 

「他の学園の皆さんも問題ないとの連絡が今来ました。 D.U.地域に関しても、既に銭形教官と回復したカンナ局長が共に隊長となって警備に勤しんでいます」

 

 

 それぞれの報告を聞いていく内に、俺の心配がただの杞憂だったことに気が付く。

 全く、ガキの成長ってのはいつだって想像よりも早いもんだ。

 なら……俺はこっちに遠慮なく集中させてもらおう。

 

 

「なら、ここからは時間との勝負だ。それぞれの作戦に戦力を振り分けるぞ。一先ず、アビドス砂漠に関しては……」

 

「うん、そこはおじさん達に任せてよ、砂の歩き方は多分一番慣れてるしね」

 

「なら、便利屋もそっちに向かわせよう」

 

「うん、ビナーとは一度戦って撃退させたことがあるし……先生抜きになるかもだけど……ホシノさんと社長がいるなら打点は充分かな」

 

「うへへ、カヨコちゃん買い被りすぎだよ~」

 

 

 一ミリもそんなつもりがないのにという表情をカヨコは、ホシノに向けているが……まぁほっとくとしよう。

 あんな感じだが、さっきの黒服に対しての閃激で実力はバレてると思うんだがな。

 

 ビナーに対してはそれでいいだろう。

 

 あとの人員はどうするか……。

 

 

「先生」

 

 

 考えを巡らせ、最善を探し出そうとしていると、リンが声をかけてくる。

 

 

「なんだ、リン」

 

「ここは我々に任せては頂けませんか?」

 

「我々に……?」

 

「えぇ、先生にはここで全自治区の防衛及び避難状況の把握……そして、先ほど黒服さんの話に出てきた『プレナパテス』の居場所を探っていただきたいのです。 ですから、サンクトゥムの方は、我々生徒にお任せいただけませんか?」

 

 

 眼鏡の奥から真剣な目つきで、リンがそう言った。

 ガキ共に任せろ……か。

 

 

「世界を賭けた仕事は初めてだろう。出来るのか?」

 

 

 その重荷、正真正銘世界を背負うってのは、ガキには想像以上の負荷がかかる。

 リンの優秀さは知ってるつもりだが……全員がそれが出来るとは思えねぇ。

 

 俺の問いかけに答えたのは、リンではなくホシノだった。

 

 

「先生、昔おじさんに言わなかった?

 

『出来るかどうかで悩む奴はみんな棺の下に消えていった。俺たちの世界じゃいつだって選択肢は二つだ。 やるか、やらないか』ってさ。

 

 先生にとってさ、その答えはもうみんなに背中で伝わってるんじゃない?

 

 リンちゃん会話遮っちゃってごめんね?」

 

「……えぇ、そうですね。答えを言われてしまいました。

 先生ばかりに頼っていては、私たちは大人になれません」

 

 

 そうは言うが、な。

 確かに俺はホシノにそう言った。

 こいつらの負うべき責任をしっかり負えるように、筋の通し方ってもんを通せるように先生って奴をしてきた。

 だが、今回のチップは幾分か子供が払うにしちゃ、額がデカすぎやしねぇか。

 

 煮え切らない俺の態度に、彼女が痺れを切らし、俺の背中を強く叩いてきた。

 

 

「先生、らしくないじゃない。何を怖気てるのかしら」

 

「アル……あのな、今回のは──「生徒を、貴方の背中を見てきた人間の事を舐めるんじゃないわよ」」

 

「先生が今までキヴォトスでしてきたこと、その全てがみんなに影響を与えてきた。 

 だらしないところも、カッコつけてるところも、何もかもね。 

 だから、今回はみんなで勝つのよ。 全員で勝つの。

 だから先生は悪い大人とも手を組んだのでしょう?

 それに比べたら、何を怖気ることがあるのかしら」

 

 

 それでも不安なら、と彼女が言うと俺のネクタイを掴み、視線を合わせてくる。

 

 

「勇気を分けてあげるから、チップを弾んで頂戴?」

 

 

 ったく。

 こいつは……この女は。

 

 全く、カッコのつけ方ってもんを分かってやがる。

 

 これでとやかく言ったら、野暮なのは俺の方だな。

 

 

「分かった、俺の負けだ。お前ら……サンクトゥムはテメェらに任せる。

 だが危なくなったり、想定外の事態が起これば、すぐに連絡を寄越せ。いいな?」

 

「ありがとうございます、アルさん。 これで大方纏まりましたね。

 最終確認です、第一目標は六つの『虚妄のサンクトゥム』の破壊。並びに各自治区の避難や防衛作戦を遂行することです。 それと並行して、最終目標である『色彩』と『プレナパテス』の捜索です」

 

「そ、それでは……皆さんお手元の時計の時刻をキヴォトス標準時間に変更して頂けますか」

 

 

 アユムがそう言うと、モニターに作戦名とキヴォトス標準時間、そして『最終臨界迄予想時刻』が表示される。

 

 

「14日と23時間59分59秒……キキッ上等だな」

 

「この世界の命運を賭けた作戦はこの時間内に終わらせなければなりません」

 

「……ガキ共、そっちは任せたぜ」

 

 

 俺がそう言うと、全員の声が一つに聞こえるほどに揃った声で返事をする。

 

 

「任せて!!」

 

 

 会議は幕を閉じた。

 

 あとは、実行あるだけだ。

 

 

 資料室に黒服と共に歩いている最中、黒服が声をかけてくる。

 

 

「『ベリアル』……いえ、陸八魔アルでしたか。 記号とは思えないほどの力……あれは危険ですね」

 

「記号……? よく分からねぇが、俺のパートナーに手を出すんなら、テメェの頭を今からでも吹き飛ばすぜ」

 

「クックッ……互いにデメリットしかないことは致しませんよ。 しかし、先生助かりましたね」

 

 

 助かった?

 俺は歩みを止めて、前を歩く黒服を見る。

 

 

「おや、気づいていない様子で。 先生、あまり『大人のカード』を使ってはいけませんよ」

 

「あ? 確かに俺は使うつもりだったが……」

 

「そうだと思いましたよ。 先生……そのカードは本来『未来の先借』としての機能、いえ権能を持つ力の結晶です……クックッ、しかしどういう訳か、貴方のそのカードは『過去の引出』の権能へと変化をしているようで」

 

 

 過去の引出……こいつの言葉はいつも分かりずらい。

 回りくどいというよりも、言葉をあえて難しくしているようなそんな感じだ。

 

 特にそういった小難しい概念系の話は、俺の得意なところじゃねぇからな。

 

 

「どうやら、理解が及んでいないようで……そのカードを乱用すれば、貴方は貴方を維持できなくなります。 即ち……自己の崩壊です」

 

「クレジットカードらしい力だな……俺が俺を維持できなくなる……か」

 

「クックッ……私は貴方のファンですからね。それでは困ります、ですので貴方が貴方でいるためにも、注意してその力を使用してください」

 

 

 どうやら、俺はあまり力を借りることが出来ないらしい。

 

 はっ……まるで俺が、あいつらが居なくちゃ何も出来ねぇみたいじゃねぇか。

 

 今は確かにガキ共に背中を預けたが……それは役割を分けるためだ。

 

 

「黒服、無駄口はそれくらいにしておけ。 俺たちは俺たちの仕事をするぞ」

 

「えぇ……クックッ、まさか貴方と同じ仕事が出来る日が来るとは……クックッ!」

 

 

 テンションが上がり始めた黒服を見ながら、俺は思わずため息を漏らしそうになる。

 ……ガキ共、そっちは頼んだぜ。

 

 賽はもう投げられた。

 

 あとは、賭けるだけだ。

 




盤面に並べられた駒たち
戦力戦略戦術
どれもこれも一級品だろう、ならテメェらに全ベッドするさ

次回 第一サンクトゥム『暁のホルスと砂漠の大蛇』

攻略開始だ





二話連続会議回で少し申し訳ないのですが……
まぁその代わりにね、次回から下手すると一話一サンクトゥムでお話を進めますので、何卒……。

いやぁ、皆さん気付いてくれたようで嬉しいのですな
黒服は、それぞれの神秘、即ち固有名で観測しているようで……
だから、セイアは既に『夢幻』ではなく『ガブリエル』と呼ばれているわけでございますな。

では最後に、感想、評価、ここすきよろしくお願いいたします!

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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