あれから、教室についた俺は軽く自分で手当を行いながら、便利屋含めた9人と、話始める。
「そういえば、お前さんらはどこの学校出身なんだ?」
「ん?私たち?私たちはゲヘナ出身だよー!」
「まぁ、風紀委員会に指名手配されてるけどね」
俺からの質問にムツキとカヨコが答える。
「お尋ね者ってわけか、一級のワルガキだな?」
「くふふ〜そうでしょ〜?それでさ、先生、一旦シャツ着ない?アルちゃんが固まりっぱなしで使い物にならないからさ?」
「ん?あぁ悪ぃな、もうちょい待ってくれ」
そういって、上裸の俺は手早く応急手当を済ませて、シャツとジャケットを羽織る。
「アルちゃん?いい加減起きてー?」
「……はっ、だ、大丈夫大丈夫よ」
便利屋メンバーから白い目を向けられながら、意識を戻すアルにホシノは話しかける。
「それで、そろそろ話してくれない?君たちを雇った雇用主さんをさ」
「え、えぇ。本当は良くないんだけども。でも負けたのは確かだし……」
「私たちを雇ったのはカイザーPMCだよ!」
もごもごと、悩んでいるアルの代わりに、ムツキが元気に言い放つ。
「カイザーコーポレーションの事業の一つだったか」
「そう!そこの理事長からの依頼だね」
「なるほどな……ってことはだ」
「多分、先生とみんな考えてる事同じだと思うけど。カイザーローンもグルだね」
その結論に辿り着き、ホシノ達が項垂れる。
まぁ無理もない、自分の借金返済のお金で、自分たちの首を絞める結果になっていたのだからな。
「倒すべき敵が見つかったのはいいことだな、前向きに考えろ」
流石に皮肉を言うようなそういう空気じゃねぇのは分かるから、軽い励ましの言葉をかける。
「……明日、利息の返済日なんです。」
アヤネが、言葉を零した。
「ん。明日きた作業員を捕まえて身代金を要求しよう」
シロコがまた、爆弾発言を落とす。
「いや、それは現実的じゃない。便利屋みたいな仲良しこよしの奴らには有効かも知れねぇが、大企業の末端も末端なら、そのまま切り捨てて、脅迫を元に確実に潰しに来る」
「……ん」
しょんぼりとするシロコを見ながら、考える。
こういう時どうするか、確実なのは……。
「アヤネ、その利息返済は何で行われる?」
「えっと、このケースの中に現金を入れて、手渡しでやります」
ということは、完全にネットを使わないものでやり取りを行ってるってわけか。
なら、やりようがあるな。
「少し待ってろ。いい案を思いついた」
そうしてその日は解散した。
翌日、日が昇るよりも早い時間帯から来ていた俺は、現金の入ったケースに少しだけ細工を施し、皆の到着を待っていた。
いつものアビドスのメンバーが、集まり、校門前で現金輸送車が来るのを待っている。
「先生、朝早くから何してたの?」
「後で説明する」
「ん。約束」
しばらくすると、トラックがやってきて、俺たちの前に止まる。
「……お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですね。全て現金でお支払いいただきました、以上となります。」
「おう、いつもお疲れ様だな」
「……いえいえ、これも仕事ですので」
俺は、回収にやってきたロボットにわざと馴れ馴れしく肩と背中を触り、労わった風に見せる。
「……カイザーローンとお取引いただき、毎度ありがとうございます。来月もよろしくお願いします」
現金の回収に来たロボットの方はそう言って頭を下げた後、現金輸送車に乗り込んで去っていく。
「仕込みは出来たな、戻るぞ」
会議の部屋に戻ると、俺はアロナに頼んでプロジェクターとシッテムの箱をつなげ、画面を立ち上げる。
「みんな見えるか?」
「先生これは?」
プロジェクターから映し出される映像には地図と赤く光り点滅する点がある。
「あのケースには送信機を仕掛けて合ってな」
俺がやったことは単純なこと、あのケース自体に小型発信機を取り付けた。たったのそれだけだ。ただ、その傍受と通信の機密をアロナに頼んだ。
ここに来た初日の事件で分かっていることだが、アロナのハッキング能力は、俺の知っている限りじゃ恐らく世界一だろうな。
アンダーワールド……アミもすげぇがあっちは計算、分野が違う。
そんな、アロナに任せてるんだ。恐らく傍受対策は完璧だろう。
その上で、あたかも、お前自身に機械を付けた風にあの回収員には振舞った。
これで、少なくともケース自体への注目は薄くなったはずだ。
そんなことをざっくりと話した。
「さて、他にも回ってるみたいだしな。同時に別のことも進めよう」
手を叩いて、会話の主導権をアヤネに渡す。
「はい、それでは私が調べて気付いたことを……セリカちゃんを襲ったヘルメット団についてです」
「睡眠弾やらなんやらのことか?」
「はい。あの後、ホシノ先輩たちの戦闘で手に入れた兵器の破片を分析した結果……現在では取引されていない型番のものだということが判明しました」
件の破片を机に広げ、それらを囲みながら話す。
「もう生産してないってこと?」
「それをどうやって手に入れたのかしら」
「生産が中止された型番を手に入れる方法……キヴォトスでは『ブラックマーケット』しかありえません」
その言葉を聞いたホシノ達の顔が引き攣る。
「ブラックマーケットって……とっても危ない場所じゃないですか」
「そうです。あそこでは中退、退学、停学……様々な理由で学園を追われた生徒たちが集団を形成して活動しており、連邦生徒会も認可していない非公認の部活もたくさん活動していると聞きました」
「あ、そうなのか?よく行くが、なるほどな。だから珍しい弾が売ってたりすんのか」
「先生!?」
「その感じ、どれくらいのペースで行ってるの……?」
ホシノが引きそうな顔で聞いてくる。
「ここに来る前は、日曜と水曜。毎週ってとこだな」
全員の表情が固まる。
「え……っと、お一人で?」
「俺にツレがいるように見えるか?」
「なるほど、ん、わかった。先生強いのそういうところ行くからだ」
「シロコ先輩……まさか真似しないわよね?」
なぜかシロコがふんと息巻いており、それをセリカが止めている。
「え、えっと話が逸れましたが、このブラックマーケットを調べれば何か見つかるかもしれません。」
「先生はどう思う?」
ホシノが俺に話しかけてくる。
どうするもなにも、お前らが考えて出した答えだからな。
万が一危険なことがあれば、俺を囮にして逃げれるだろうしな。
「あぁ、それしか今はやることがねぇしな。いいと思うぜ」
「よし、それじゃあ、早速行ってみようかー、もしかしたら意外な手がかりがあるかもしれないしね」
俺とアヤネが案内し移動してきた俺たちは、ブラックマーケットのシマに足を踏み入れていた。
「わぁ☆すっごく賑わってますね!」
「本当に。小さな市場を想像していたけど、街一つくらいの規模だなんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかったから」
「どんなところにも荒くれもの、世間に馴染めないやつらってのはいるもんさ」
俺の発言を聞き、ホシノが俺の顔を覗き込みながら聞いてきた。
「それって先生とか?」
「……まぁな」
「ふーん」
「ねぇねぇ、ホシノ先輩。ホシノ先輩も、ここに来たことあるの?」
「いんやー、私も初めてだねー。でも他の学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー」
ホシノの声色と雰囲気が心なしか楽し気な風に見える。
「ちょーデカい水族館もあるんだって。アクアリウムっていうの!今度行ってみたいなー。うへ、魚……お刺身……」
砂に埋もれた大地ばかり見てきたせいなのか、魚……いや海そのものに興味があるのか。
「なら、これが終わったら連れてってやる」
「え!いいの!?ホント!?」
「ガキなんだから甘えれるときに甘えとけ」
「やったー!!パパありがとう!!」
「だから、パパって呼ぶんじゃねぇ!」
年相応の子供のようにはしゃぐホシノの頭を乱暴に撫でていると、他の面々から生暖かい目で見られる。そんな和やかな雰囲気のなか、アヤネからの通信が入る。
『皆さん、油断しないでください。そこは違法な武器や兵器が取引される危険な場所です。何が起こるか分からないんですよ。何かあったら私が……きゃあ!?』
アヤネの悲鳴と同時に銃声が鳴る、音からしてサブマシンガンだろうか?
音の方を見ると、前の方からベージュ色の髪とやけに目立つヘンテコな鳥のバッグを背負った少女が、チンピラ三人に追われていた。
「待て!!」
「う、うわああ!まずっ、まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!!!」
「そうはいくか!!」
さて、どっちに着いたもんか、まぁ考えるまでもねぇな。
素早く拳銃を取り出し、彼女らの頭上の左右に向けて二発ずつ発砲。
回転をともなって発射された弾丸は、彼女たちの頭の上にある看板のネジに当たり、ボルトが外れて、落下する。
落ちてきた看板の真下にはチンピラ三人が……
大きな物音をたてて、看板の下敷きになり、三人はすっかりのびている。
「えっ、あ、ありがとうございます!私は阿慈谷ヒフミって言います!みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした……」
銃を持った俺と看板の下敷きになったチンピラを見て状況を把握したのか。
立ち止まってお礼をいう。
『その制服は……キヴォトス三大学園!トリニティ総合学園です!』
「確か、お嬢様学校だったか。そんないいとこのお嬢ちゃんがこんな場所で何してんだ?」
「あはは……それはですね……実は、探し物がありまして。もう販売されていないので買うことのできない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて……」
「もしかして……戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学武器ですか?」
「煙草かもしれないぜ?」
シロコ、ホシノ、ノノミ、俺の順で予想を言うが、それを聞いて戸惑いを見せる。
「えっ⁉︎い、いいえ……えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです……」
「ペロペロ……?」
「ペロロ様です」
それなりにキヴォトスにきて長いと思っていたがまた知らない単語が出てきて困惑を隠せない。それに何やら圧が強いぞ、こいつ……
どうやら俺以外のやつも知らないようで、それを見たヒフミは鞄の中から何かを取り出して、見せてくる。
「はい!これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!」
これは、なんと形容したらいいのか、クソ、だから俺は芸術家ってやつらが嫌いなんだ。
白目をむきながら舌を出している白く丸っこい鳥の様な姿の何かの口にアイスクリームがねじ込まれた、なんだこの呪物は……
「限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ!ね?可愛いでしょう?」
キラキラした笑顔を向けてくるが、とてもじゃないが俺は首を縦に振ることができない。
自分に嘘はつけねぇ……最近の流行りってのは分かんねぇな。
「わあ☆モモフレンズです!私も大好きなんですよ!可愛いですよね!私はミスター・ニコライが好きなんです」
「分かります!ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて。最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ!それも初版で!」
ノノミにはどうやら理解が出来るらしく、意気投合していた。
二人ともいいとこのお嬢様だし、そういうところで感性ってのは似るもんなのかね?
「……いやぁ〜、おじさんには何の話かさっぱりだなー」
「右に同じく」
「ホシノ先輩はこういうファンシー系にまったく興味ないでしょ」
「ふむ、最近の若いやつにはついていけん」
「全くだな」
「先生と同じ感性なの危機感持った方がいいよ……」
セリカの辛辣なツッコミを笑って受け流していると向こうも話が終わったようで混ざってくる。
「というわけで、グッズを買いに来たのですが、先ほどの人たちに絡まれて……みなさんがいなかったら、今頃どうなっていたことやら」
「気にすんな、お前さんの運がよかっただけだよ」
「それならきっと、ペロロ様のご利益ですね!……ところで、アビドスのみなさんはどうしてここに?」
「私たちも似たようなもんだよ。探し物があるんだー」
「そう。今は生産されてなくて手に入れにくい物なんだけど、ここにあるって聞いて」
「そうなんですか、私と似たような感じなんですね。」
その時、四方から足音が聞こえてきた。
『皆さん、大変です!四方から武装した集団が向かってきています!』
「あれは……」
騒がしい方を見るとさっき下敷きになっていたチンピラA・B・Cの姿が見える。
『先ほど撃退した不良の仲間のようです!完全に敵対モードです!』
「ん、望むところ」
「まったく、なんでこんなチンピラばっかり絡んでくるんだろうね?私たち、何か悪いことした?」
「ただ運が無ぇってだけだろ?」
「セリカさんもペロロ様のこと信奉してみませんか?」
ヒフミ、うちのセリカはバカなんだ、そういう迷信には食いついちまう。
『茶番は後にして……応戦しましょう!皆さん』
次元先生は意外と口が悪いんだ
オリジナル展開から原作沿いへの急な舵取りでしたが、何とか書き上げれました……
便利屋を仲間にしたおかげでボスの正体が先に分かったということで、泥棒の手口を一つまみ。
次回 次元一味。
毎度毎度のことながらになりますが、いつも温かいご支援ありがとうございます。
お陰様で、お気に入り件数1000突破、UAも20000後半越えと、処女作とは思えないほど次元先生を楽しんでいただけているようでありがたい限りでございます。
普段からの誤字修正等々いつも感謝しております。
最後に、感想、ここすき、評価等々お待ちしております。
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持