風が吹く。
廃墟の街を通るその風は、とある箇所に近づくと共に勢いが強く増していく。
音が響く。
無数の弾丸が放たれる音と無数の打撃音が、とある箇所に近づくと共に大きくなっていく。
「はははっ!!なんだテメェ、やるじゃねぇか!!!」
「ケヒャヒャヒャ!!!」
「あぁそうだな! もっと殺り合おう!」
爆発を起こし、街を縦横無尽に駆ける流星に対して、大きく構えた腕を振るい、血のように紅い旋風を巻き起こす死神。
二人の少女がその口角を大きく上げながら、殺し合いさながらの戦闘を繰り広げる。
その様子を見ている者達がいた。
「すみません……私たちの先輩が……」
「いえいえ……うちの委員長も大概っすから……」
眼鏡を付けたメイド服の少女が、黒いセーラー服の少女に対して頭を下げる。
何故こんな事になってしまったのか……時間は少し巻き戻る。
「こちら第2サンクトゥム。作戦担当の和泉元エイミ。作戦目標であるケセドはミレニアム近郊の軍需工場の奥で、只管にロボット兵の作成を行っているよ。 ここを早めに潰しとかないと、防衛戦をしている人達が潰される可能性が増えていくから早めの攻略を求められる。
作戦は二部隊に分かれて行うよ、軍需工場の正面から突入してロボット兵たちを抑える正面部隊、それとパラシュート降下で直接ケセドを叩く落下傘部隊で攻略を行う形かな」
『状況了解しました。ありがとうございます。落下傘部隊のメンバーはどなたに決まりました?』
「それなんだけど……ちょっとトラブルが起きちゃって……」
ケセド攻略戦における作戦本部の基地からシャーレの本部へと通信を行うエイミと、その報告を受けたノアが彼女の言った言葉に首を傾げる。
その直後、エイミの背後から大きな金属同士をぶつけ合わせたような鈍い物音がする。
「おい、てめぇ話聞いてんのか?」
「ケヒャヒャッ……あぁ、私が正面で数千の敵を引き受けるでいいんだろう?」
「あ゛? だから、それはあたしがやるっつってんだろうが」
音の正体は、互いの額をぶつけた際に鳴った音のようだった。
至近距離でガンを飛ばしあって、野生の獣さながらの獰猛な牙を見せながら怒る二人の少女。
「あはは……その……困ったっす……委員長、そのもう少し穏便に」
「リーダー、そろそろ時間が……今はこんなことをしている場合じゃ……」
それぞれの体を掴みながら、なんとか距離を離そうとしているのは、正義実現委員会の仲正イチカとC&Cの室笠アカネだった。
その二人が力を込めて引っ張っているが、委員長、そしてリーダーと呼ばれた少女達の額は強力な磁石のようにくっついてしまい、取れなくなっている。
その様子を見たエイミは溜息を吐きながら報告をした。
「それが……正義実現委員会の委員長のツルギさんとC&Cの
『…………あの、因みに何故……』
「ケセドはその性質上戦闘向きじゃない。だから、正面部隊に暴れてもらった隙をついて、落下傘部隊が潜入。ケセドに直接攻撃して混乱を引き起こしてもらう。
あの二人が頑固なのは、正面部隊で数千の敵を相手にしていた方が戦果としてもね……」
その言葉に固まったノアを余所に二人のトップが再び荒れる。
ネルとツルギがそれぞれの部下を払い、一触即発の状態にまで緊張度が高まる。
そんな二人の様子を見ていたアスナが言葉を零す。
「ねぇねぇ、何で二人でケンカしてるの~? 強い方が正面担当すればいいじゃん」
「あ、アスナ先輩それは!」
「あ、終わった」
何気ないその一言が、溢れ出しそうになっていた水盆の最後の一滴となった。
その言葉を聞いた二人は互いの顔を真顔で見合い、ツルギが先に口を開いた。
「お前の部下は優秀だな」
「だろ?」
短い言葉を返し合った二人は少しだけ距離を取り、外に向けて歩き出す。
「そういや、てめぇとは調印式での戦いでも決着つけれてなかったな」
「けけ……きひゃひゃひゃひゃ……白黒つけようか?ミレニアム最強」
「あぁ、表に出ろ。トリニティ最強」
そして二人は外に一歩踏み出したとほぼ同時に、互いの顔に何の躊躇いもなく拳を振るった。
耳を打つ破裂音が二人の背中を見ていた者の全身を打つ。
その衝撃により、一人は無邪気な笑みを浮かべ、それ以外の全員が青ざめた顔に変わる。
そしてその衝撃の中心にいた二人の顔は……。
「「ぶっ壊す!!」」
獰猛な牙を見せあって笑っていた。
ネルの身体から爆発が起こり、彼女の姿が消える。
ツルギを中心として、竜巻のような土埃が巻き上がり始めた。
ネルが己の神秘による高速移動を繰り返し続けて、彼女に対して突撃する瞬間を見極めるためだった。
そして突撃すると決めた今、ネルが彼女の背後へ飛び出す。
「ケヒャッ!」
瞬間、見える銃口。
ネルの神秘による動体視力の向上により、引き金が引かれるコンマ壱秒で横に避けることに成功する。
回避し、受け身を取りながら銃口をツルギに向け、笑う。
「分かってて、誘ったな?」
「当然だ。あれで当たるようじゃ、正義実現委員会の委員長には成れるわけがない」
「はっ!言ったじゃねぇか。ならこれはどうだ?」
引き金が引かれ、ツルギに向かって無数の銃弾が迫る。
それを見た彼女はすぐさま空中へと逃げ、それを避けた。
しかしそれが失敗だったことに気が付くよりも前に。
自分の背に当たる月灯りが消えたことに気が付くよりも前に。
天高く響く声が聞こえた。
「おい、トリニティ最強。この空が誰のものか知ってるか?」
声を認知するよりも早くツルギの身体に衝撃が走る。
衝撃が走った方向を見るよりも早く別の個所に突き刺さる衝撃。
滞空する術すらない全身に突き刺さる無数の打撃達。
「ぐっ、ぎゃっ」
「まだくたばんじゃねぇぞ?」
足に絡まる鎖、体に掛かる強い引力。
世界が回る中で自分が投げられる感覚。
これがあの連撃の締めだという疑問。
地面に向かって墜落していく中で、答えを視界に捉えた。
そこには、月光に照らされる彼女の足が天高く伸びる姿が見える。
そして、防御をした両腕を突き抜けて、ツルギの脳天にネルの踵落としが突き刺さる。
ツルギはその勢いのまま地面に打ち付けられ、土煙が上がった。
その土煙から少し離れた位置に、ネルは着地する。
そしてその様子を見ていた他のC&Cと正義実現委員会達は唖然とした様子で見つめていた。
「C&Cのコールサイン・00……。噂には聞いていたっすけど、ここまでとは」
「あぁ、しかし……あの連撃、ツルギさんの戦線復帰のことを考えると作戦スケジュールが──「あ、それに関しては多分問題ないっす」」
あれだけの猛攻を諸に喰らったツルギの心配をしたカリンの言葉に被せるように、イチカは言った。
「あんなんで倒れてくれる程度の人だったら、どれだけ良かったことか。あの人はトリニティ最強っすよ」
その言葉の直後、土煙が吹き飛び、低い猫背の状態で腕を垂らして、その両手にショットガンを持ったツルギが、ネルを鋭い目つきで睨み付き、自身の口角を大きく上げた。
「おい、結構良いの入れたはずなんだけどな?」
「ケヒャッ! あぁ、確かに入った。
でも、もう治ってる」
そう言い切った刹那、ツルギがネルへと肉薄し、彼女を空へと蹴り上げる。
ネルは、その胴体に膝が突き刺さる感覚を味わいながらも、廃ビルの側面に叩きつけられるよりも前に、爆発を起こし、空中で踏みとどまることに成功した。
「ってぇな! 治ってるか……そう来なくちゃな!」
「ケヒャッ!キヒャヒャヒャ!!」
嗤うツルギが広げた両腕に赫い液体が流れていく。
流れる液体は、そのまま両手に持った2丁のショットガンへと流れ込み、染み込み、黒鉄が脈打ち出す。
禍々しい赫黒いショットガンをネルに向けて、引き金を引く。
放たれた散弾が、一度拡散したそれがネルに向かって収束する。
物理法則を無視した軌道に、顔を少し引き攣らせたネルはそれから逃げるように、廃墟を縫うように駆け始め、その後ろを弾丸が追っていく。
「あんなに追い込まれてる部長始めてみた!」
「あれは厄介っすからね。どんどん撃てば撃つ程、狩人が増えていくっすから」
その様子を見ているアスナの言葉に返すように、イチカが説明する。
曰く、己の血を弾に込める事で、体の延長線のようにそれを操る技術らしい。
「……でもあんなに連射するツルギ先輩は初めて見たっす。いつもなら、精々両手で一発ずつなのに」
「部長が相手だからね!」
「はは、これ以上ない理由っすね」
追われながらも、ネルは振り向き迫り来る弾丸を次々と撃ち落とし、爆発を使い殲滅していく。
挟み撃つ様に迫りきた時は両腕を広げて、それぞれ片手で撃ち落とした。
そのまま廃墟を駆け、全ての弾丸を撃ち落とすとそのままツルギに向かって迫る。
再び彼女が銃を撃つよりも前に、一撃加えようとするためだ。
次こそトドメを刺すために、神秘を込めていく中で、ネルは視認する。
ツルギがこちらを向いて、凶悪な笑みを浮かべていることに。
まるで罠にかかった獲物を見る捕食者のような笑みを浮かべていることに。
そのことに気がついたネルが更に加速する。
土煙が上がった。
「どうした、当てねぇのか?」
「キヒャヒャヒャ!こちらのセリフだ。その引き金を引かないのか?」
土煙が晴れると、静止した二人の姿が見える。
ツルギの心臓の真上に突き付けられたネルの二丁のマシンガンの銃口。
ネルの全身を取り囲むように差し向けられた赫黒く光るツルギの銃弾。
全て撃ち落としたとネルは思っていたが、その一部をツルギは自身のいる地面の下に撃ち込んで隠しており、再びネルが突撃してきた時用にカウンターとして残していた。
西部劇の決闘のように、張り詰めた空気が二人の間を流れる。
相手が攻撃を仕掛けようとする今を探り合い、その発射を決意する0.3秒を互いに奪い合う。
そして、発射を決意した今。
引き金が、弾丸が動き出すその瞬間。
『二人とも何してるのよ!!!』
鶴の一声。
緊迫していた二人を一喝する声が廃墟に響いた。
その声の方を振り向くと、ホログラムでもハッキリ分かるほどに怒髪天を衝くミレニアムが誇る冷酷な算術使いの姿が映っていた。
『ごめんなさい、お二人とも。ユウカちゃんなら止められると思って……』
『こんな大事な時に何を喧嘩してるの!! たかがチーム分け程度で大騒ぎして……貴女達、一体今何年生?』
遅れて入ってきたノアの言葉通り、キヴォトス最強の一角である2人に臆することなく、ユウカはネルとツルギに対して説教を始める。
少し涙目になりながら、ツルギはその場に正座し、その様子を見たネルも頭の後ろを掻きながら、正座をする。
「…………」
「……ちっ、ようやく面白くなってきた所だったのによ」
『ネル先輩、今なにか言いましたか?』
「なんでもねぇよ!」
冷たく圧のある声で凄まれたネルは、渋々そう返し、矛を収めてユウカの説教を食らう。
キヴォトスの二巨頭が説教を受けているという明日の天候が槍、時々爆弾になっても可笑しくないそんな状況の中、現地にいる一人の少女がユウカの説教に割り込む。
「ねー、喧嘩は駄目って言ってもさ? 誰が一番強いか決めないと部隊も決められないよ?」
割り込んだ少女、アスナは少し不機嫌そうにしながら、ユウカに向かってそう言った。
怒髪天のユウカに対して、何の躊躇いもなく割り込む辺り、流石としか言えずその発言も相まってユウカの事を殆ど知らないイチカですら、戸惑った笑いを浮かべている。
『……一体何を言ってるの? はぁ……もう、そこの二人! 今すぐじゃんけんして!』
「はぁ?じゃんけんなんて……今更そんなので決められっかよ!」
「きひゃ!?」
『うるさい! こっちは時間がないのよ! 作戦が失敗するのとどっちがいいの!』
「ぐっ……くそ、ったく……しゃねぇな」
渋々な顔で、立ち上がったネルはツルギの傍に行くと、二人で目を合わせて腕を振り上げる。
「じゃん──」
「──けん」
「「──ぽん!!」」
「……決まりだね」
その様子を見ていたエイミが微笑む。
他の部隊よりも少し遅れて、第二サンクトゥムの攻略が始まる。
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「部長負けちゃったね〜!」
「るっせぇな! やりてぇ仕事ばかり出来ないのは常だろ」
「え〜、でもさでもさ? 部長なら視力強化で余裕で後出しジャンケン出来るじゃん?」
工場のはるか上空を飛ぶヘリコプターの中で、アスナとあたしは言葉を交わす。
後出しジャンケン出来る……か。
まぁ確かにやろうと思えば余裕だ、負けることもねぇだろう。
ただなぁ……。
あたしは頭の後ろを掻きながら、アスナから視線を外して口を開く。
「向こうが神秘を一ミリも使わねぇからよ。ならこっちもそうするしかねぇだろ?」
「ふふっ」
あたしの答えにアスナが笑う。
「んだよ、アスナ」
「んーん、部長のそういう所好きだなって思っただけ!」
これから世界を賭けた戦いだってのに、こいつは変わらない笑顔をあたしに向ける。
こいつのマイペースさの方が敵わねぇな。
……なんて、そんなふうに思っちまった。
「んだよ、何見てんだ。カリン、アカネ」
「いや、そのなんだ。先輩方は付き合っ──「お二人の仲の良さに微笑んでただけですよ」んぐぐっ」
なにか口走りかけてたカリンの口をアカネが手で塞いで、いつも通りの笑顔でそう答える。
……よくわからねぇ奴らだ。
『C&C、準備できた?』
「あぁ、何時でも行けるぜ」
『じゃあ、降下開始。正義実現委員会も進軍開始するからね』
ケセドや他の監視ロボに気付かれねぇように、ジャマーをつけた特殊な身包みとパラシュートを背負い、エイミの指示に従って、ヘリコプターから飛び降りる。
空気抵抗のかかる自由落下。
慣れねぇなこればっかりはよ……。
ギリギリまで地面へ近づいて……パラシュートを開き、着地と同時にダクトへと侵入。
「久しぶりだね~、お船行った時以来?」
「おい、侵入してる時に嫌なことを思い出させんじゃねぇよ」
「ふふっ、珍しい凡ミスでしたもんね。 先生との仕事だったからですか?」
「……チッ、おらさっさと進むぞ」
「リーダーはいつも分が悪くなると──「カリン、てめぇ帰ったらタイマン訓練な」……」
侵入中だってのに、こいつらは……。
しょんぼりしているカリンを置いていきながら、ホログラムで映し出されたマップに従って進んでいく。
暫く歩いていると、無線が開かれる音が聞こえた。
『落下傘部隊、様子はどう?』
「はい、先ほどダクトから侵入をして、現在は工場中心部に向かって進んでいます」
「いつでも仕掛けれるぜ、とっとと終わらせちまおう」
『じゃあ、作戦の再確認をするね。 防衛隊が敵の進行を食い止めている間に、落下傘部隊が軍需工場の中心部に攻め込む。 そうしたら、奇襲を受けた敵の防御体制が混乱すると思うから……その後、防衛隊は中に侵入するよ。 それじゃ、作戦開始。みんな、ケセド前でまた』
無線が切れると同時に、屋内からでも聞こえるくらいデケェ爆発音が聞こえ、地面が揺れる。
ツルギがぶつかった合図だろう。
「よし、テメェら。 ぶっ壊しにいくぞ!」
あたしの号令と共にダクトを蹴破り、天井から突入を開始する。
やっぱあたしは、こういう方が向いてるからな!
あたしの身長と同じくらいの真四角のロボット スイーパーが、電撃が迸る腕を向けて落下してきたあたしたちを狙う。
「アカネ!」
「はい、晴れ時々爆弾と参りましょう」
それを読んでいたアカネのスカートの下から大量の手榴弾がばら撒かれ、あたし達の足元を狙っていたロボット兵達を次々と爆殺する。
「よーし、それじゃさっそく狩りを始めよっか! 部長?」
「なんだ、アスナ」
「どっちが多く狩れるか勝負ね?」
「はっ、乗った!」
着地と同時に、アスナが駆け出す。
スライディングを繰り返しながら、次々とロボット兵を破壊していく。
一日に二度も負ける馬鹿にはなるつもりはねぇからな?アスナ。
爆発による加速と、着弾と同時に起こる爆発を束ねて、殲滅していきながら突き進む。
肩慣らしなら、ツルギとの戦いで十分に出来てる。
硬い金属の感触を踏み締めながら、スイーパーを蹴り上げ、即座に爆発。
その勢いを利用して、移動。
チェーンを伸ばして、オートマタ達を纏めて絡め取り、胴体を一気に切断。
「雑魚ばっか狩っても憂さ晴らしになりやしねぇな」
「リーダー! ゴリアテの反応が二点。こっちで一体抑える」
腰溜めで対物ライフルを撃ち、雑魚を散らすカリンから報告が入る。
ほかの雑魚どもよりかは歯応えがあるといいんだけどな。
なんて思っていると、いつの間にか隣にアスナが立って、あたしの方を見て笑う。
「じゃ、こっちは私と部長でやるねっ。ねぇねぇ、あれ何点?」
「百点でいいだろ、アスナ」
「おっけ〜、じゃあ……よーいドン!!」
先行して駆け出したアスナをゴリアテの両手の機関銃が捉え始める。
アスナを思わず見ちまうのは分かるけどよ……あたしのことも見てもらおうか!
回転し始める機関銃の発射準備が整えられる、その一瞬。
一歩で、一気に肉薄し、鎖を足に引っ掛けて刈り取る。
「おせぇし、軽いんだよ!」
「部長ナイス!」
体勢を崩したゴリアテが前方に倒れる。
その真下に居るアスナが倒れていくゴリアテの巨体を蹴り上げる。
「はっ、やるじゃねぇか。ならこいつでどうだ?」
「いいね……乗った!」
宙に浮くゴリアテの背中に回り込んで、両手の銃を構え……引き金を引く。
放たれた弾丸が次々とゴリアテの背中に当たっては爆発していくが、アイツは未だに宙に浮いたまま……それは、真下であたしの銃撃の勢いを相殺させるようにアスナが引き金を引き続けているからだ。
これはつまりどっちの弾薬と根性が切れるかの勝負って訳だ。
「こんなもんじゃないでしょ!部長!」
「ったり前だ! お前こそへばんなよアスナ!」
銃声が更に加速していく。
降り注ぐ弾丸の雨が、ゴリアテの装甲を削り……盛大な爆発を起こして、上半身と下半身が分かれて、ガラスみてぇに砕け散った。
「ちっ、あとちょっとだったのによ」
「続きはまた今度だね、部長〜。あの調子なら私が勝ってたかな?」
「あ? 寝言は寝て言えよアスナ」
「じゃ、この戦い乗り切ったら仕切り直しだからねっ!」
そう言って、アスナはゴリアテを倒したカリンとアカネの方へ駆け寄っていく。
捉えどころのねぇやつだけど……この戦いが終わったあとの楽しみが出来た、なら尚のこと負ける訳にはいかねぇな。
ゴリアテの破壊と共に扉が開く。
それと同時に無線が入る。
『ヴェリタスから報告。 ケセドまでの最短ルートの扉をハッキングしたから、開いてるところに向かって走って!』
「よし、お前ら行くぞ!」
てっきりケセドが誘ってるのかと思ったが、チヒロ達のサポートらしい。
迷うことはねぇが、壁をぶち壊して行く手間が省けた。
向こうもそれに感づいたか、開かれた扉から大量のロボット兵が雪崩れ込んでくる。
こういう人の波を見ると、あの狐のガキを思い出すな……。
あんときは飲み込まれるしかなかったが……今は違ぇ。
カリンがあたしの隣に来るとスナイパーライフルを構える。
「リーダー」
「あぁ、ド派手にぶっ放してやれ」
「ラジャー」
ロボットの津波が最大限高く上がったその瞬間、カリンのライフルが火を噴く。
空いた風穴が埋まるよりも早く、あたし達は走って行く。
トリニティ最強、サッサと来ねぇとこっちで終わらせちまうぜ?
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『ツルギ先輩、聞こえるっすか?』
「あぁ、聞こえるぞ」
軍需工場と街を繋ぐ崩れかけた橋の上に、少女は立つ。
ボロボロの翼を広げ、ツルギは笑う。
『それにしても、本当に一人で良かったんすか? まぁ、私達が居ても足手纏いになりかねないっすけど』
「イチカ。後輩たちに慕われているお前を防衛戦じゃなく、こっちに寄越したのは何故か分かるか?」
無線の先にいるイチカに、ツルギはそう問いかける。
急な問いにイチカは少し困りながら、答えを口にした。
『えーっと、暴れられると困るから?』
「ふっふっふ、そうじゃない。 これから私は全力で戦闘を行う。 そうなった時、此処か、もしくは別の場所から外にロボット達が抜け出すかもしれない」
『そうなった時に、上手く後輩ちゃんたちを扱える私が後方支援に回されたってことっすか』
「そういう事だ……背中は任せたぞ」
そういって、ツルギは無線を切り、神秘を全身に満たしていく。
既に橋の向こうにはロボット兵たちが見える。
その数、視認できるだけで数千体。
向けられる銃口に、その熱に、ツルギの口角が上がる。
「キヒヒ、イーヒヒヒヒッ! 皆殺しだァ!!!」
両手を広げて、駆けると同時に弾幕の雨が展開される。
雨の中を掻い潜り、弾丸を受け流し、軍勢の中にツルギは飛び込む。
スイーパーを着地と同時に踏み潰し、引き金を引く。
飛び出した散弾は、まるで意思を持った猟犬のように次々とロボット兵たちの首を食いちぎっていった。
「くっ……!」
流れるオイルが、返り血のようにツルギの髪を濡らし、銃弾と共に踊るツルギの腕を狙った弾丸が彼女の腕に当たる。
吹き飛び、宙を舞う腕。
そこから流れ出る血が、肩口から流れる血と合わさり、勢いよく元に戻って血による縫合が行われる。
弾丸を喰らった傍から、煙が上がり、その箇所が瞬く間に直っていく。
色彩の影響を受け、その思考回路を制限されているロボット兵たちも、弾丸を何発受けようと止まることなく戦闘を続ける彼女に、その足が僅かに竦む。
しかし、それが悪手だった。
竦んだ者の恐怖の臭いを、猟犬達は決して逃さない。
「喰い殺せぇ!!」
暴れながらも、常に散弾による広範囲の殲滅をし続け、そして……。
「ギャハハハハッ!!」
『あっという間っすね……そのまま前方が、ケセドのいる位置っすよ!』
「前進ッ前進ンン!!!」
『あ~、聞いてないっすねぇこれは……まぁ、一先ず作戦通りっすかね……』
イチカの困った声に返事を返す代わりに、無数の発砲音と鋼が砕ける音が鳴り響く。
その音にイチカは再び溜息を吐いて、部下達に命令する。
全ては己の長が何の躊躇いもなく、全ての思考を戦闘に注いで、全力で戦うための準備を整えるため。
任された背中に報いるためである。
『仕方ないっすね……やるだけやってやるっすよ』
「かぁはははははは!」
『……大丈夫っすかねぇ』
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『ケセドまで残り100m!』
「ツルギはどうした!!」
『もう少しっす!』
奥に進めば進むほど、ロボット兵の波が激しくなっていく。
その波すら突破する爆破力によって、掠り傷すら負わずに進んでいく。
そんな彼女たちの前に天井から派手な音が響き、何かが飛び込んでくる。
「ぎゃははは!!!死ねぇ!!」
「ミサイルかと思ったが……ツルギか!」
「私達もいるよ」
天井から飛び込んできたツルギが放った散弾が次々とロボット兵を散らしていき、その空いた穴からエイミとイチカが飛び込んで、C&Cメンバーの周りにいたスイーパーを撃ち抜いていく。
そんな中でツルギの目線はネルを捉えると、口角を大きく上げる。
その視線で、ネルは彼女が何を言っているのかをすぐさま理解する。
「私の方が、早かったな……だ? いいぜ……てめぇごとケセドをぶっ壊してやるよ!!」
「きぃひひひひ!!!」
ネルがツルギに銃口を向けるとそれを何の躊躇いも無しに引き金を引く。
それを避けたツルギの背後で、銃弾に当たったロボット兵たちが大爆発を起こすが、それに気を取られることなく、ツルギの目線は飛び込んでくるネルに向いている。
二人の拳が打ち合い、発せられた衝撃波が二人を囲もうとしていたロボット兵を吹き飛ばす。
喧嘩をしながらも、互いを囲んでいくロボット兵を蹴散らしていく。
そんな二人の前にゴリアテが立ち塞がる。
両手の機関銃を放ちながら、背中のバズーカ砲が向けられ……衝撃が走った。
二人の体躯よりも遥かに巨大なその砲弾を前に、二人の拳がこの日初めて同じ方向に向かって放たれる。
「「邪魔……すんじゃねぇ!!」」
鋼鉄の砲弾を正面から捉えた二人の拳が、その勢いを殺しきり……そして、押し返す。
二人の最強の膂力によって跳ね返される砲弾が、ゴリアテごと周りのロボット一気にケセドまでの道を開く。
「喧嘩は後だ!」
「まずはァ……」
「「アイツをぶっ殺す!」」
息の合った二人が一気にケセドへと特攻を仕掛ける。
その様子を見ていた他のメンバーが口を開く。
「あの二人なんだか楽しそうだな」
「実際珍しい光景っすよ。ツルギ先輩が喧嘩売るだなんて、よっぽど楽しかったんすかね?」
「むー……ちょっとヤキモチ……まぁでも、それならあの二人の邪魔をしないように動くとするよ!」
アスナの号令によって、あの二人をカバーする動きに切り替わる。
そして遂に、ケセドの姿が見えてきた。
中央の広い穴の上に浮かぶ、煌めく黒い球体。
ただのオブジェクトのように見えるその実体の上にあるヘイローが、目の前の物体がただの置物ではないことを表している。
二人の最強が近付いた瞬間、電磁波が放たれる。
それは攻撃ではなく、周りの機械が一気に駆動し、彼女たちの元に兵士を送り込む行動を行った。
私を守れと、私を死守しろと命じた電磁波が工場の全兵力を二人に集中させた。
それでも二人が止まることがない。
電気信号が発せられる、何故と。
全ての勢力を二人に注いで、何故止められないのかと。
たかが小さな少女二人の足を止めることが出来ないのかと。
機械は知らなかった。
その二人の背中を守るものがいることに。
その背中を支え、そしてそれに答えてきた者だということに。
「悪いがデカブツ。てめぇの出番は用意してやらねぇよ」
「あぁ、お前がいるだけで、笑うことすら出来ない人が現れる」
その二人が、長として学園の頂点に立つものとしての責務を果たして来たものだという事に。
だからこそ、他の者はあの二人に託そうと、体が動く。
これは指示を出す事しかしなかった機械と、期待を背負い託された人間の、その差が勝負の明暗を分けた。
「あばよ、デカブツ」
「死ねぇえ!!!」
四つの銃口がケセドに牙を剥く。
それを止めるべく、飛び掛かった無数のスイーパーとロボット兵。
「先輩の邪魔はさせないっすよ!」
「任せたよ、二人の最強」
「お掃除致しましょう」
「一発で……ぶっ飛ばす」
「フィナーレ決めちゃってよ、部長!」
その全てをイチカのアサルトライフルが、エイミのショットガンが、アカネの手榴弾が、カリンのスナイパーライフルが、アスナのアサルトライフルが蹴散らす。
そして今、ネルとツルギの引き金が引かれ……全ての弾丸がケセドを叩く。
けたたましい爆音と耳をつんざく衝突音が繰り返され、ケセドの表面を覆っていた黒いコーティングが剥がれていく。
まるで、ケセドが何かに汚染されていたかのようなそんな風景を、エイミは静かに記録していた。
黒い外皮が剥がされ、その下に見える白い金属が姿を現し、砕かれ、火花が散り……。
ケセドの下に空いていた空間に、堕ちていく。
「逃げた!?」
「いや……信号が消えた。恐らくだけど……本来のケセドに色彩が侵食して乗っ取っていたんだろうね」
「要するにどういうこと?」
「その侵食が剥がれて逃げたってことは……少なくとももう邪魔はしないってこと」
エイミはそういうと少し息をついて、機能停止した周りのロボット兵たちを見る。
ケセドが逃げた今、放っておくのも心配だけど、それでも一先ずこのセリフを口にしても問題ないだろうと結論付ける。
「作戦完了……だよ」
「よし、それなら……アカネ!」
「はい、すぐに塔の爆破準備を致します」
闘いが終わっても、それは全体の勝利を示すわけではない。
『約束された勝利』の名に誓って、彼女はすぐさま準備をする。
「ん?部長どうするの?」
「ミレニアムの防衛に回って来る。アスナ、お前との約束は全部終わってからだ」
「ふふっ、うん!もちろん! それじゃ私も手伝うね!」
「てめぇは少し休んでも……まぁいいか。おい、ツルギ」
ステップを踏んでご機嫌そうなアスナを横目に、ネルはツルギの元に近づく。
ツルギはネルを見て、首を傾げるとそんなツルギに向かってネルは拳を差し出す。
「てめぇとの喧嘩も、全部終わってからだ。それまでくたばんじゃねぇぞ」
その言葉を聞いたツルギは大きく笑い、そして同じように拳を差し出す。
「あぁ、もちろんだ。お前もくたばるなよ……ミレニアム最強」
「はっ、また会おうぜ、トリニティ最強」
拳が打ち付け合う軽い音が夜空に響いた。
次元大介だ
次々と作戦の状況が届いてくる中で
特別任務を渡したアイツらの様子も気になって来るが……
俺の見込んだ忍び達なら大丈夫だろう
次回 第三サンクトゥム『勇者と二人の魔王』
頼んだぜ、頼りになる魔王様よ
お待たせして申し訳ない……。
過去最高に難産だったかもしれないのですな……。
あの二人、良くも悪くも先生の影響を受けていない子達ですからね、だからこそこんなお話になりましたが……。
楽しんで頂ければ、何より。
では、私はハルカの絆ダイアローグを聞いて死んできますね。
最後に、感想、評価、ここすきよろしくお願いいたします!
あらすじの文章を変えるか悩んでるのでご意見頂戴
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今のままでいいよ
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活動報告で募集
-
結果閲覧用