新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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2-5 カイザーPMC理事

 懐に、シロコから受け取った退部届を仕舞い込み、俺たちは捨てられた砂漠こと、アビドス砂漠へと足を運んでいる。

 

 道中は列車を使うことができたが、そこから先は徒歩でしか進めなくなっている。

 

『もう少し進めばアビドス砂漠……このアビドスにおける、砂漠化が進む前から元々砂漠だった場所です』

 

 通信機からアヤネの声が聞こえる。

 なんでもこの辺は、壊れたドローンだの、警備ロボットだのが徘徊しているのだそうだ。

 普通壊れた機械は停止するもんじゃないのか?

 

『……今は強行突破するしかありません。皆さん、今一度火器の動作チェックをお願いします。アビドス砂漠で、カイザーコーポレーションが一体何を企んでいるのか──実際に行って、確かめることにしましょう』

 

 この辺りでも既に砂埃が舞っている。俺の銃の様な古いタイプはそういったものでの故障が少ないが、彼女らが使うようなものはそうはいかないことが多い。

 そんなアヤネの発言にセリカが疑問を零す。

 

「けどさ、アヤネちゃん。よく考えると、その情報をくれたのってゲヘナの風紀委員長でしょ。それってなんかおかしくない?

 いくら風紀委員長とはいえ、どうして他の学園の生徒が、うちの自治区のことをそこまで知ってるわけ?」

 

『うーん、あくまで推測に過ぎないけど……ゲヘナの風紀委員会はかなり情報収集能力に秀でてるって聞いたことが……だから、アビドスみたいな小規模な学校では考えられないような情報網を持ってる、とか……?』

 

「俺の聞いた話じゃ、なんでもゲヘナの情報部とやらの情報網はとんでもないらしいぜ?それこそ、あのヒナがもとはそこの所属だし、その頃は既にホシノの名前が向こうさんに知れ渡ってたらしいしな」

 

「あの、風紀委員長が……それならそういうこともあるかも……」

 

 ヒナの発言と軽く万魔殿を調べた際の情報からの推察でしかないがな……

 片手間で、襲ってくる野良の機械達を撃ち抜きながら俺たちは進む。

 単純な動きだとは言え、この程度を即座に処理できるのは流石としか言えない。

 前の風紀委員会との戦いしかり、もしかするとこいつらはこのキヴォトスにおいてもかなり上位の実力の持ち主だったりするのか?

 

『先生の情報に少し付け加えると、委員長という立場でしたら、さらに風紀委員会が把握している情報は全部集約されているでしょうし……それにあの時、あちらの行政官がたしか……』

 

 ──だってここの土地はアビドスのものじゃないでしょう!

 

 ──カイザーが保有している、いわば立退済みの無人地帯のはずです!

 

『行政官は、アビドスが既に土地を失っている事を知っていました。その前は『まだ違法行為とは言いきれない』とも言っていましたし……あの時はてっきり苦しい言い訳かと思いましたが、事実、彼女には不法侵入の意図は無かったのでしょう』

 

 納得したようにアヤネは話す。

 もちろん、不法侵入の意図がなかったのは事実なのかもしれない、仮にそうだとしてもあそこはアビドスの自治区であることに変わりはない。

 そこで戦闘を始めた以上はどう考えてもやりすぎなんだからな。

 

「もしかしたらそうかもしれない。けど、あの時の風紀委員会には、明らかに侵犯行為だと取れる言動が多々あった。あそこがアビドスの所持している自治区だったかどうかは、そんなに重要じゃない」

 

 俺がそう思っていると、シロコがアヤネに冷静に諭す。

 お前そんな理論的なこと話せたのかと、思ってしまった。

 

「それに、あのアコの行動は明確な敵対行為。それだけで十分。あの時の判断は間違ってない」

 

 あの犯罪行為の発案のせいでどうにも違和感を覚えちまうが、時折こいつは理性的なところを見せるときがある。

 ふざけた時とそうじゃない時をはっきり区別してるのかもしれないな。

 良く思い返せば、あのマニュアルしかり、こいつは結構俺が思っている以上に考えて物事を組み立ててる。

 普段の突拍子のない発言にも使えればいいのにと思うばかりだ。

 

『……はい、そうですね。ありがとうございます、シロコ先輩。ですが……あの行政官は、私たちの知らなかった事実を知っていた。そうなると、ゲヘナの風紀委員長が私たちの知らないことを知っているとしても、何もおかしくありません』

 

「ま、行ってみたらそれも含めて、きっと色々分かるでしょ。セリカちゃんが言ってた通り、直接この目で確かめれば早いんだしさ。んじゃ、引き続き進むとしよっか〜?」

 

 ホシノの発言に皆頷き、そのまま砂漠へと行軍を続ける。

 俺はホシノの方を見る……さっきのシロコの発言といい……お前さんは今ちゃんとこいつらのことを見ているのか?

 お前さんのことを心配する仲間の顔をしっかり見れてるのか?

 

「先生……?どうかしたの」

 

「いや……なんでもねぇよ、ちょっと砂が目に入っただけだ」

 

 少しジッと見つめすぎたらしく、わざとらしく頬を赤らめながらホシノが聞いてくる。

 ちっとだけ視線を向けすぎたな……ホシノはそういうのには鋭いからな。

 

「ここから先が、捨てられた砂漠……」

 

 セリカがそう呟く。

 砂漠と荒野が混じったような、ただひたすらに何もない殺風景な景色が広がる。

 

「砂だらけの市街地に行ったことはありましたが、ここから先は私も初めてです……」

 

「いや~、久しぶりだねえこの景色も」

 

「先輩は、ここに来たことあるの?」

 

「うん、前に生徒会の仕事で何度かね〜。もう少し進めばそこにはなんと、かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシスが!」

 

「え、オアシス? こんなところに?」

 

 セリカの問いに答えるようにホシノ指を指すが、その先には水どころか液体の面影すらなく、砂の海が広がるのみである。

 

「うん、まあ今はもう全部干上がっちゃったんだけどね〜。元々はそんじょそこらの湖より広くって、船を浮かべられるくらいだったとか。ま、私も実際に見たことはないんだけど~」

 

「砂祭り……私も聞いたことある。アビドスでは有名なお祭りで、すごい数の人が集まるって」

 

「そうそう、別の学校からもそのお祭り見たさに人が来るくらいだったからね。ま、砂漠化が進み始めるより何十年も前のことだけど」

 

「へえ、今となってはこんな光景になっちゃってるけど、ここでそんなすごいお祭りが……?」

 

「前までは、この辺りも結構住みやすい場所だったらしいよ〜。その時はこんな砂埃もなかったし」

 

 かつてのアビドスの栄光とやらなのだろう。

 かつての地図を見たところ、現在の三大学園にも匹敵するほどの規模を誇っていたのだろう。

 だからこそ、過去の生徒はこの母校を捨てることができず、考え、守ろうとして借金をした。

 手段を選ぶような余裕すらなかったのだろう。

 子供が必死に守ってきた努力を大人が掠め盗った。

 それが、アビドスの歴史……

 

「先生……顔が怖いよ?」

 

「んぁ?あぁ。悪いな、考え事をしてた。アヤネ、目的地はまだ先か?」

 

 

『えっと……レーダー反応からして、ここのはずなのですが……気を付けて少し前進を』

 砂嵐と、砂埃によって見えなくなっているが、ほんの僅かに空間に歪みのようなものが見える。

 

「あぁ、こいつは、ステルスってやつか」

 

 俺がそう話すと同時に今度ははっきりとレーダー及び肉眼でも変化が起きる。

 

『皆さん、前方に何かあります!急にレーダーに反応が……!?巨大な町……いえ工場、或いは駐屯地……?と、とにかく、ものすごい大きな施設のようなものが……!』

 

『…………』

 

『何、これ……』

 

 こんな砂漠にどうやって建てたのか気になって仕方ないが、巨大な施設がこの砂漠の荒れた大地に建設されていた。

 

『この張り巡らされてる有刺鉄線、優に数㎞先までありそう……』

 

『工場……? 石油ボーリング施設、ではなさそうな……一体何なのでしょう、この建物は……?』

 

『こんなの、昔は無かった……』

 

 ホシノの発言を信じるのなら、少なくともこの二年間の間に建てられた施設なのだろう。

 砂漠に建てられた割には確かに、砂埃等で付く傷が少ない。

 

「お前ら。これ見ろ」

 

「これって……」

 

 砂埃が舞う中で、俺は施設の壁に刻まれたロゴを見つける。

 予想通りではあるが、カイザー系列のものだ。

 ただし、これは金融や建設管理のものではなく、便利屋やヘルメット団を雇った方のロゴだった。

 

「……カイザーPMC」

 

「ヘルメット団とかをけしかける前から、ここに基地を建ててたとはな」

 

 しかし、なんでこんな場所に基地を建てたんだ?

 野良機械共の対策にしては過剰戦力だ。

 何かを探そうとしているのは間違いなさそうなんだが……余程危険なものなのか……?

 

 その瞬間、施設内にけたたましい警報が鳴り響く。

 

『みな、さ……忙、……で……』

 

「通信妨害か!」

 

「これ、何だか大事になりそうな予感なんだけど……」

 

「これは……ヘリの音……?」

 

 空からいくつもの軍用ヘリが向かってくると同時に強いエンジン音が聞こえてくる。

 まさか、戦車か?装甲車だけでなく……

 

「この地面の揺れ……恐らく戦車」

 

『こ、ち……を、包囲し、て……』

 

 俺たちの対応はどうやら、数手遅かったらしい。

 基地を脱出した先にはすでに多くの軍隊がこちらに銃口を向けている。

 

「侵入者とは聞いていたが……まさかアビドスだったとは」

 

 軍隊が整列し道を空ける。

 そこから歩いてきたのは、いかにも高級なスーツを着こなしている図体が二メートルほどのロボットだった。

 

「何よ、こいつ……」

 

「カイザーPMC理事、だな?」

 

「すでに知られていたか。次元大介。いや今はシャーレの先生とお呼びするべきかな?」

 

 アビドスが抱えている借金の相手、それが目の前にいる男だ。

 

「カイザーコーポレーションの……」

 

「正確に紹介すると、カイザーコーポレーション、カイザーローン、そしてカイザーコンストラクションの理事だ。今は、カイザーPMCの代表取締役も務めている」

 

 要するに今までの全ての元凶。

 分かりやすくていいな。こいつをどうにかすりゃ、一先ずはどうとでもなるわけだ。

 しかし、企業の代表なだけあって、随分と丁寧だなこいつは。

 

「んで、だ。俺たちはこのアビドス自治区に申請されていない建物があると聞いてな、それの調査に来た。こいつはシャーレからの依頼でアビドス高等学校のメンバーを動かしたんだが……」

 

「ほう、つまりは、これらの行為は違法ではないと」

 

「話が早くて助かるな、勝手に私有地に入ったのは悪かったが、そっちもここを隠してたんだ、お相子様ってことで頼むぜ」

 

 シャーレの権限。

 ありとあらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる。

 ほんと便利な免罪符だよな、俺のような悪党が持ってていいのか今からでも連邦生徒会長に聞いてみたいものだ。

 

「ふっ……なるほどな。シャーレの権力で、私たちのことを調べようとした。そんなところか」

 

 目の前の理事は不愉快そうに鼻で笑い、アビドスのことを見透かしたようにそう言い放った。

 この調査をアビドスからの依頼によるものだと思ったらしい。

 

「無駄で、浅ましい努力だな」

 

 嘲笑を隠そうともせずに理事は言い放った。

 その態度は、生徒たちの琴線に触れたのだろう。

 強い怒りを言葉にして、シロコが声を出す。

 

「……要はあなたがアビドス高校を騙して土地を奪って、搾取した張本人ってことで良い?」

 

「……ほう」

 

「そうよ! ヘルメット団と便利屋を仕向けて、ここまで私たちをずっと苦しませてきた犯人があんたってことなんでしょ!? あんたのせいで私たちは……アビドスは──!」

 

「シロコ、セリカ。そこまでにしろ。俺たちは今シャーレの一員だ。なにより、土地の売買をふくめて合法な取引として、記録してあった」

 

「どうやら、先生は随分と協力的なようだ」

 

「事実を言ってるだけだ。それよりも気になるのはテメェがここで何をしてるのかってことだな」

 

 アビドスの私情を混ぜるとカイザーはそれを起点に責めてくる。

 こいつらには悪いが、今は耐えてもらうしかない。

 少しでも向こうさんの情報がほしいからな。

 

「まぁいいだろう。教えてやろう、私たちはアビドスのどこかに埋められているという、宝物を探している」

 

 そう、目の前の機械は言い切った。

 宝物か。

 何十年も企業の総力を懸けて見つけようとしている、宝物。

 

「ほう、お前さんがそんなロマンチストには見えなかったな」

 

「そうよ!そんなでまかせ信じるわけないでしょ!」

 

「それはそう。もしそうだとすると、このPMCの兵力について説明がつかない。この兵力は、私たちの自治区を武力で占拠するため。違う?」

 

 嘘だとは俺は思っちゃいないんだがな、そうとしかまだわかっていないか。

 もしくはそれ並みの兵器なのか。石油探しだのと言われるよりかは随分とマシな回答だ。

 シロコの推察は確かに鋭いが……いささか、私情が混ざりすぎている。

 

「シロコ、それは違うな。お前ら五人がいくら強くてもこれは過剰戦力にもほどがある。そんなやり方ができるのなら既にアビドスは滅んでる」

 

 何よりも、便利屋やヘルメット団を雇った理由に繋がらねぇ。

 つまりこれは別の何かを倒すための戦力だ。

 こんな戦力を一体何のために?

 

「流石は先生と呼ばれるだけはあるようだな。頭が良く回る。その通り、数百両の戦車。数百名の選ばれし兵士。数百トンの火薬に弾薬。たかが五人しかいない学校のためにこれほどの用意をするわけがない。……冗談じゃない」

 

 呆れ果てたとでも言うように、大きくため息をつきながら理事は首を振った。

 

「あくまでもこれは、どこかの集団に宝探しを妨害された時の為のもの。ただそれだけだ、君たちのために用意したものではない」

 

 どこかの集団に、宝探しか。

 何かしらに使えそうな情報だったがそれに気づくよりも前に、理事が行動を起こす。

 

「君たち程度、いつでも、どうとでもできるのだよ……そう例えば、こういう風にな」

 

 そういって理事は携帯を取り出しどこかへ連絡をする。

 

「……非常に残念なお知らせだが、どうやら君たちの学校の信用が落ちてしまったそうだよ」

 

 アヤネの通信が回復し、アビドスにかかってきた電話を取り、スピーカーで流し始める。

 

『こちらカイザーローンです。現時点を以ちまして、アビドスの信用評価を最低ランクに下げさせていただきます』

 

『なっ……!?』

 

『変動金利を3000%上昇させる形で調整。それらを諸々適用した上で、来月以降の利子の金額は9130万円でございます。それでは引き続き、期限までにお支払いをお願いいたします』

 

『はい!? ちょ、ちょっとそんな急にどうして……!?』

 

 通信越しにアヤネが焦るような声を出す。

 しくじったな、これは……俺のミスだ。

 手遅れにも近い。

 

「随分と、横暴な真似をするじゃねぇか。この調査はシャーレの依頼だ。アビドスにだけこの仕打ちなのはいささか違うんじゃねぇか?」

 

 口をはさむが、これには何の意味もないことは分かっている。

 

「口を出さないでもらおうか、シャーレの先生。貴様がどれだけ言おうと、この借金は過去に一切不正なく行われた取引だ。そして彼女らは、アビドスの責任者として信用を下げた。それだけの話だ」

 

 ぐうの音も出ないほどの正論だ。

 信用や、信頼はシャーレではどうあっても取り返しのつかないもの。

 理屈では語れないものもある。

 

「確かに、今回の調査はシャーレの権限内のものだろう。これは自治区に申請を出していなかった我々の責任だ。そこに関してのみ悪かったと、頭を下げよう。だが借金については、シャーレは無関係だ。これはアビドスと我々カイザーローンとの間で取り交わされた正規の契約だ」

 

 お前は無関係だろうと釘を刺される。

 くだらないとでも言いたげな見下した態度を理事は、取るが。

 カイザーにとって俺が、そこまでして借金まで関わろうとするのが不可解なのだろう。

 

「わかるかね、シャーレの先生。アビドスがシャーレに依頼した……それは良い。好きにすると良い。ただし、彼女たちが妙な動きを見せたのであれば……企業としては、アビドスは正規に借金を返す気がないと捉えても仕方がないとは思わないか?」

 

「そんな不当な理由、通用するわけないでしょ!」

 

「不当だと? そもそも、三百年のローンに正当性があると思っているのか、君たちは。むしろ我々が今まで三百九年ものローンを許容していた時点で、温情があったのだとは思わないか? それに、不当だと言うのなら、別の銀行に借り替えすればいいだろう。もっとも、廃校寸前の学校に九億も貸す物好きな銀行があればの話だがな」

 

「…………っ!」

 

「シャーレ。今回の仕事は、お互いの行き違いがあった事故ということで、不問にしようではないか。当然、賠償も必要ない。謝罪さえ必要ない。いや、むしろ我々が謝罪しなくてはな。後日、詫びに向かわせよう」

 

 ただし、と付け加える。

 

「弁えることだ、シャーレ。貴様の組織は確かにあらゆる規則や法律による規制や罰則から免れる超法規的機関であり、自治区を自由に動く権利がある。しかし?たったそれだけだ。今までは随分とネズミのように好き勝手動いたようだが、今回の件は、貴様には何も関係ない。……何も関わることができないのだよ。貴様が借金を返せるわけでもなければ、土地を返せるわけでもないのだからな」

 

 まるで駄々をこねる子供に言い聞かせるように淡々と語る。

 

「アビドスの責任は、貴様のようなコソ泥が背負えるものではないのだよ。それら全て、私の一存で決まるのだから」

 

 我々に借金をするというのはそういうことだ。

 

「…………」

 

 仮に俺がここでこいつを撃ち殺したところで、代わりはすぐに現れる。

 そしてこの兵力。こいつらを無事に返してやれる可能性は限りなく少ない。

 

 今の俺は無力そのものだ。クソ…………

 

「……みんな、帰ろう。……これ以上ここで言い争っても意味が無い、弄ばれるだけ」

 

 そう、ホシノは溜息を吐いてから言った。

 疲れた目をしていた。

 

「ほう……副生徒会長、さすがに君は賢そうだな。……ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな」

 

「……」

 

 そんなホシノに対して、理事は態々顔を向けて、煽り、嗤う。

 

「では、保証金と来月以降の返済については、よろしく頼むよ?お客様。ふふっ、ふはははははは……!!」

 

 反論も、抵抗の余地もない。

 

 こいつらはこの理不尽をジョーカーとして取っていたんだ。

 いつでもできるからこそ。

 最も心を折ることができるタイミングを見計らっていた。

 これは、いつか起こりうることだったのだろう。

 

「存外悪くない時間だった。さあ、お客様を入り口まで案内してさしあげろ」

 

 

 そうして、俺たちは帰路についた。

 

 口の中に苦い敗北の味を噛み締めながら。

 ただ生かされたという安堵と屈辱と共に。

 




大敗を期した次元一行。
いつしか行われた問答が再び行われる

次回 子供と大人

滅茶苦茶シリアスになりましたがキリがいいのでこれまで!
早めに次のものを出せるように頑張ります!

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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