新任教師『次元大介』   作:レイゴン

26 / 136
2-8 黒服問答

 カイザーPMC理事が乗り込んだゴリアテと呼ばれる兵器は、背中に搭載した巨大な砲塔と左右のガトリング砲の三門が主力武装のパワードスーツと呼ばれる部類のものだ。

 

 ハッキリと結論から言えば、非常に弱い。

 デカい図体の割にはやけに機動力が高いが、どうやら未調整の代物だったらしく射撃前に数秒間機体が停止する癖が見えた。

 何より、あれにはもっと大きな弱点があった。

 

「どうした?そんな大層な兵器に乗り込んで、老い耄れ一人殺せないみたいだな」

 

「ちょこまかと……!!!」

 

 肝心の乗り込んだ奴の顔が丸見えだ。

 全体の中でも奴本体の体が出ている場所は僅かだが、彼女にとってはそれだけでも充分な弱点だった。

 

「あら、貴方の相手は先生だけじゃないわよ?」

 

 アルはそう言い、乗り込んでいる理事の近くに弾丸を命中させる。

 

「……一撃で充分よ!」

 

「敵に背中を見せるとは、舐められたものだ──ぐわああああぁッ!?」

 

 数秒遅れてアルの放った弾丸が大爆発を起こす。

 どういう原理なのかは知らねぇが、アルは自分の弾を意図的に爆破する技が使えるようだった。

 前にカヨコが言っていた神秘って奴なのか?

 

 内部から爆破されたゴリアテは、理事を弾き飛ばし大破した。

 あんな成りだが脱出機構はあるらしい。

 

「殺して、やるぞ……陸八魔アル……飼い犬風情が……!!」

 

「あら、負け犬の遠吠えかしら?社会の犬にはお似合いよ」

 

「アルちゃんかっこいい〜!そんな言葉どこで覚えたの?」

 

「……丸腰の相手を撃つ趣味はないんだがな。どうする。まだやるか?」

 

 地面へと叩きつけられた理事が、こちらを見上げながら……罵倒をしている。

 随分と墜ちたもんだな。

 

「理事、傷が……!すぐに治療を……!」

 

「このまま、終われるかぁ!!」

 

「部下の言うことを聞いてりゃ、命は助けてやったんだがな」

 

 逆上した理事は、懐から銃を取り出し、こちらに向けてきた。

 一発の銃声が鳴り響く。

 理事の頭部に風穴が空き、そこからオイルらしき液体と破れた配線が零れ落ちる。

 

「っ……!理事のボディ大破!!総員退却!!!兵力の再配備に移行せよ!!」

 

 理事を逃がそうとしていたPMC兵士が無線で連絡を入れ、理事の体を残したまま逃げていく。

 

「……先生、あの人は良かったのかしら」

 

「逃げる背中を撃つなんざ、俺には出来ねぇな」

 

 隣に立つアルが銃を構えるが、それを抑える。

 しかし、さっきの兵士の言い方といい、自分のボスが死んだ割には落ち着いていたな。

 ボディが、大破……あいつらは機械で出来てるが……まさかな。

 

『敵の軍隊が撤退していきます。お疲れ様でした』

 

 アヤネから情報が入る。

 さて、何とか第一段階はクリアしたな。

 

「まだあいつらは狙ってくるだろうな」

 

『はい、先生……恐らく次が、今までの中で一番大きな戦いになると思います。まずは帰って、ホシノ先輩の居場所を探さないと……』

 

 嫌な予感はするが、恐らく相手にとっては弔い合戦にもなる。

 もっともあんな企業にそんな精神があるとは思えねぇがな。

 

「便利屋、悪いがこいつをシャーレに持ち帰っといてくれねぇか。……アロナ、あの廃品からデータを引っこ抜けねぇか確かめてみてくれ」

 

 アロナにそう話しかけると向こうも何か俺に言いたいことがあったらしく、話しかけてくる。

 

『先生、ホシノさんの位置情報が再び現れました。逆探知に罠など調べてみましたが、その心配はなさそうです……あとメールが届いてますよ?』

 

 手元の端末で、メールを確認する。

 件名はなく、時刻と座標が書かれているだけだった。

 怪しさしかないが、俺はこのメールを送った人物に一つ心当たりがある。

 タイミングからして、恐らくだが……ホシノと取引をした黒服……そいつからの招待状だろう。

 

「先生……ちょっと話したいんだけど」

 

「悪い、シロコ。少し行くところが出来た。対策委員会は学校に戻って準備してくれ。便利屋はシャーレに戻り、そこの廃品を地下室に置き次第、今送った座標に向かってくれ」

 

「む……分かった……」

 

 シロコが不貞腐れた顔で頬を膨らませるが、頭を撫でながら悪いなと謝る。

 ここからは、大人の時間なんだ。

 

 

 

 時間は進み、日が沈み、夜となった。

 推定黒服らしき奴から指定された座標に向かうとそれはごく一般的なビルだった。

 辺境な土地であったり、ブラックマーケットのようなスラムだったらまだこの黒幕の拠点としてはらしかったんだが、オフィスビルの中の今も営業中のビルの様だった。

 俺たちもよく、こういった場所を借りてアジトにすることはあるが、それと同じように今回のお誘いのために借りたのだろうな。

 

 ホシノの信号を捉えた以上は即日のうちに迎えに行きたかったのだが、追加で送られてきたメッセージには、『もし来ていただけるのであれば、それまでの間、ホシノには一切の手出ししないことをお約束します』と書かれており、来なければホシノがどうなっても知らないぞと言わんばかりだった。

 

 俺は、そのビルの最上階まで向かい、指定された部屋の扉を開ける。

 

「……お待ちしておりました、次元先生。貴方とは一度こうして、顔を合わせてお話ししてみたかったのですよ」

 

 紳士的な態度と口調で、その異形は話しかけてきた。

 声色から察するに男なのだと思うのだが、はっきりとは言えない。

 何故なら、その顔が人間離れしすぎているからだ。

 闇のように黒い体に、名前の通りの黒いスーツを着こなしたその異形。

 肌には、無機物のような艶が見え、右目であろう場所が大きく割れて、そこから白い炎が漏れ出て、その右目から走る白い亀裂が口のように表情を作り上げている。

 人で例えるなら、そう、笑顔のような表情だ。

 

「てめぇが、俺の生徒にちょっかいをかけてるロリコンか」

 

「クックックッ……手厳しいですねぇ。流石は伝説のガンマンと呼ばれた大泥棒の右腕、初対面でも容赦無しですね。」

 

 黒服は、部屋の窓を背後においてある椅子に座り、机に両肘を乗せて、手を組んで俺の方を見ている。

 

「……次元大介、連邦生徒会長が呼びだした不可解な存在。オーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部『シャーレ』の先生。クックックッ……この都市では貴方を過小評価する者もいるようですが、私たちは違います」

 

「……お前さん、さっきのも含めて俺のことを知ってるのか?」

 

 こいつは、さっき俺のことを大泥棒の右腕と呼びやがった、あいつとは相棒関係であり、あいつがメインではないと言いたいんだが、余談だからな。

 大事なのは、こいつが俺のことを知ってるかどうかだ。

 

「……えぇ、次元先生。正直に言えば私は貴方のファンでしてねぇ…クックックッ」

 

 俺のファンか……まるで有名人にでもなった気分だ。いい気分ではねぇがな。

 そう声のトーンを上げて達観したような丁寧な口調で話すそいつは、見た目も相まって随分と不気味に見える。

 ホシノ曰く、何となくぞっとするやつだそうだが、何となくその意味が理解できる。

 俺は、幽霊やら亡霊みたいなもんを信じちゃいねぇが、こいつから感じれる印象はそいつらに近い。

 

「すみません、つい余計なことを言ってしまいましたね……話を戻しましょう。まず第一に、私たちは貴方と敵対するつもりはありません。むしろ協力したいと考えています。

 私たちの計画において、一番の障害となりうるのはゲヘナの風紀委員長やトリニティの正義実現委員長、ミレニアムのC&Cのコールサイン・00でもなく貴方だと考えているのです」

 

 正義実現委員会、確かハスミが所属していた治安維持組織だったか。ミレニアムのC&Cは、風の噂程度でしか聞いたことがないが、エージェントの組織だったか?

 ヒナと並べられる辺り、同レベルの実力者たちだと考えるのが妥当だ。

 

「私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません。ですが先生、貴方の存在は決して些事とは言えない。敵対することは避けたいのですよ」

 

 しかし、だ。

 こいつが言ってることはさっきから矛盾してるな。

 生徒を拉致し、カイザーと手を組んだ上で、俺と敵対はしたくないと。

 

「さっきから、私たちと言ってるが……てめぇは何者だ?」

 

 人間でもなく、ヘイローすらない、柴大将のような動物でも、カイザーのような機械でもない。

 そのうえ、さっきから私たちと、複数人いることを話してる。

 それがどうにも引っかかる。

 

「……おっと、そういえば自己紹介をしていませんでしたか?私たちは貴方と同じ、キヴォトスの外部の者……ですが、貴方とはまた違った領域の存在です」

 

 違った領域……か。

 神秘と言い、ここに来てからは随分哲学的な話をされるな。

 

「適切な名前がありましたので、今はそれを拝借して使っております。私たちのことは『ゲマトリア』とお呼びください。そして私のことは、『黒服』とでも。実はこの名前が気に入っていましてね」

 

 ゲマトリア、それが奴らの組織の名前であり、楽しそうな声色で黒服はそう名乗った。

 黒服ってのは、ホシノが名付けた呼び方だったがそれがどうやら大層お気に召したらしい。

 ボーイやらなんやら色々なニュアンスがあるが、そういうのが好きなのか?こいつは

 

「私たちは、観察者であり、探求者であり、研究者です。貴方と同じように、『不可解な存在』だと考えていただいて問題ございません。一応お訊きしますが、ゲマトリアと協力するつもりはありませんか?」

 

「ねぇな。俺がつるむのはあいつらだけだ」

 

 ルパン以外とつるむ気はねぇ。

 便利屋たちはビジネスパートナーであり、生徒だからな。あれは話が別だ。

 

「クックックッ……流石ですね」

 

 ダメ元で提案してきたらしい奴は、愉快そうに笑いながら、その声色に残念そうな雰囲気も混ぜつつ話を続ける。

 

「しかし、残念ですね。真理と秘義を手に入れられるこの提案を断ってまで、貴方はキヴォトスで何を追求するおつもりなのですか?」

 

「俺はただ受けた仕事をこなしにきただけだ。何も求めちゃいねぇよ」

 

 興味がないわけではないが、俺にとってそんなものはどうでもいいだけだ。

 そういうのは学者同士でやってりゃいい。

 

「てめぇからの話は済んだか?なら今度は俺からだな。

 お前は何でホシノを狙った。カイザーとお前さんの目的は別だろ?」

 

 交渉する気もそれを続ける気もない。

 今俺が成すべき仕事をただやるだけだ。

 

「…………小鳥遊ホシノはキヴォトス最高の神秘です」

 

 少し考え込むように黙り込んでから、話始めた。

 

「彼女を実験体として研究し、分析し、理解する。この興味深い実験こそが、私たちが観測を渇望していたもの」

 

 しかしなんだ、どこいってもろくでもねぇ研究者ってのはいるもんだな。

 あぁ言うやつらは何れみんな狂っちまうのがお約束なのか?

 

「……しかし、意外ですねぇ?先生。私はてっきりホシノの身柄を要求するものだとばかり」

 

「まぁな。今回の作戦は俺とホシノの共同だからな」

 

「ほう……つまり、私とカイザーはまんまとその釣り餌につられたと…………」

 

 俺は、黒服の頭蓋にマグナムの銃口を押し当てる。

 

「そういうこった。お陰で、お前さんは自ら居場所を吐き出してくれたんだからな」

 

「…………」

 

 黒服は黙り込む。

 いや、正確には、俺の銃を見つめて、固まっているのか?

 

「なんと……素晴らしい、神秘ですね」

 

「……は?」

 

 思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

 俺のマグナムが、神秘だ?

 

「なるほどなるほど……クックックッ!確かにその銃であれば、私たちなど瞬く間に殺されてしまうでしょう」

 

「おい、何が言いたい」

 

 自分の命が懸かっているこの状況で、目の前のやつは笑い始める。

 

「クックックッ……私の研究課題は小鳥遊ホシノだと思っていましたが、どうやら更に増えそうですねぇ……!」

 

「独り言は済んだか?まずはホシノから手を引いてもらおうか」

 

「貴方の方こそ何故そこまで小鳥遊ホシノに執着をするのですか?」

 

 銃口を押し付けられているにも関わらず、黒服は俺を見つめながらそう聞く。

 

「貴方は、あの生徒たちの保護者でも、家族でもありません。貴方は偶々、アビドスに呼ばれ、生徒たちと出会っただけの赤の他人です。一体何故?」

 

 更に畳みかけるように話を続ける。

 

「持つ者が、持たざる者から搾取する。

 知識の多いものが、そうでない者から搾取する。

 望む通りに世界を改造し、法律を決め、罪と罰を定め、常識と非常識を分類し、平凡と非凡に分ける。

 そうして生まれた権力によって権力の無い者を、知識によって知識の無い者を、力によって力の無い者を支配する。

 ……大人なら誰もが知っている、厳然たる世の中の事実ではありませんか?」

 

 くだらねぇくそったれな事実だと俺も思う。

 そいつは、ある意味の真実であり、ルールそのものだとも思う。

 

「そうだな、俺もそう思うさ」

 

「ほう……?」

 

「だが、それに縛られるべきは俺たち大人だ。ホシノはまだあいつは子供だ」

 

「私は、貴方のことをよく見てきました。そのうえで貴方はそのような人間でしたか?貴方は何故そのような取る必要のない責任を取ろうとするのですか?」

 

 確かに、ここに来るまでの俺なら取らないような選択肢かもしれねぇな。

 こいつが聞いてるのは、俺の本心。

 俺が何故ここまで動こうとするのか。

 何故、子供を守ろうとするのか。

 

 その理由が知りたいのだろう。

 

「俺はただ……」

 

 確かに俺は子供たちと触れて、血生臭い仕事から少し離れて絆されたとこはあると思う。

 でも、答えだけはあの頃から変わっちゃいねぇと、そう思っている。

 

「美味い煙草が吸いてぇだけだ」

 

「……そうですか……」

 

「あぁ。俺は正義の味方でもねぇ。ただ、知ってるガキを見捨てるほど俺は落ちぶれちゃいねぇよ」

 

 黒服は再び黙り込み、長考している。

 

「しかし、残念ですね。先生……あなたとの交渉は決裂のようだ」

 

「そうだな……でだ、遺言はそれでいいんだな?」

 

「それは、困りますね……分かりました。ホシノからは手を引きましょう」

 

 俺のマグナムを指で叩き、下ろしてくれとのことらしいが……

 

「二言はねぇな」

 

「誓いましょう」

 

 その言葉を聞いて俺は、銃を仕舞う。

 

「知っての通りかもしれませんが、小鳥遊ホシノは現在、アビドス砂漠のPMC基地の中央にある、実験室にいます。『ミメシス』で観測した神秘の裏側、つまり恐怖。それを、生きている生徒に適用することができるか……そんな実験を始めるつもりです。そう、ホシノを実験体として」

 

 まさか、目的まで語るとはな……しかし、本当に酷い目に合わせてしまっているようだな。

 早めに向かわねぇとだ。

 

「そして、もしホシノが失敗したらあの狼の神が代わりに、と思っていたのですが……ふう、どうやら前提から崩れてしまったようですね。そういうことですので、精々頑張って生徒を助けると良いでしょう。チップをはずみますので、幸運を祈ります」

 

「そのセリフ、テメェが言うには年季が足りねぇよ」

 

 俺は、背を向けて帰り始める。

 後ろから声をかけられる。

 

「先生、ゲマトリアは、貴方をずっと見ていますよ」

 

 

 

 

 

 アビドスの部室に着くと、そこにはホシノを除いた四人が俺のことを待ち受けていた。

 

「おかえり、先生」

 

「先生、お待ちしておりました」

 

「先生……」

 

 当然、歓迎されるような雰囲気でもない。

 ……俺はホシノを巻き込んでこいつらも騙したんだからな。

 

「じゃあ、改めて……話してもらうよ、先生」

 

「あぁ、何でも聞いてくれ」

 

 シロコが俺の目を見ながら話しかけ、俺を席に着かせる。

 それを囲むように四人が前に立ちふさがり、質問をしようと考えている。

 

 最初に口を開いたのはシロコだった。

 

「どこからが作戦なの、誰と協力したの?」

 

「今朝の手紙からずっと。ホシノに昨晩俺が持ちかけて協力してもらった」

 

「じゃあ、対策委員会が正式に認可されたのは本当?」

 

「あぁ、連邦生徒会長代理の七神リンから正式に承認されている」

 

 シロコはそれを聞いて、一度、息を整えてから、俺の真正面から問い詰める。

 

「じゃあ。それを利用して、ホシノ先輩を一人で行かせて、カイザーを罠に嵌めたの?」

 

「その通りだ」

 

「……」

 

 シロコは、俺にホシノを引き留めて一緒にカイザーと立ち向かってもらうために、俺を信用してあのホシノの退部届を渡して、そのことを話したのだから。

 だから、それを利用して、俺は作戦を立てた。

 これは、シロコの信用を裏切るに等しい行いだ。

 

「お前らに話さなかったのは、仮にバレれば、カイザーが出てこないと踏んだからだ。あいつを確実に殺すにはこの手段がいいと思ったからな。俺はこの結果のためにホシノを一人で敵地に送った」

 

「でも、それは……っ」

 

「……」

 

 セリカは何か言葉を言おうとしたが、言い淀み、シロコはただ、俺を見つめている。

 話し続けなきゃならない。

 

「シロコ、俺はお前の信頼を裏切った。それは事実だ。お前らのことを信頼せずに一人で作戦を行ったからな。だからお前たちは俺を罰する権利がある」

 

 正直に言えば、罵詈雑言を喰らう覚悟をしていた。

 俺も、裏切った奴には容赦をしない。

 だからこそ、同じ覚悟を持って作戦を決行した。

 

 にも関わらず、彼女たちは俺を責めることをせずに、ただ言葉を探して黙っている。

 罪悪感で心に痛みが走る。

 

「確かに、先生は悪いことをしました。最低です」

 

 そう口にしたのはノノミだった。

 お前さんが最初に言葉にするとは思っていなかったが、ホシノから一番信頼されてたのはノノミだった。

 だからこそ、だろうな。

 

「だから、先生……先生は、ホシノ先輩を褒めてください☆」

 

 ノノミの口から出た突拍子のない言葉に俺は固まる。

 

「もちろん、先生とホシノ先輩は、お仕置きしますよ?でもそれは一緒にです!」

 

「ちょっと、待てノノミ。俺は……」

 

「先生は確かにホシノ先輩を囮にしました。でもそれを申し訳なく思ってるのでしょう?」

 

 責められて、罰せられ、それでお相子なんていう楽な道を彼女は許さないようだった。

 ノノミ自身も、俺を責めれば楽になるというのを分かっているだろうにそれを彼女は許さない。

 周りもだが、本当にこいつらは強い奴らだ。

 

「それなら、先生はホシノ先輩を沢山褒めなきゃダメです!だって、信じて送り出したんですから」

 

「そんなことでいいのか……?」

 

「ホシノ先輩を褒めれるのは先生だけですから、ホシノ先輩が唯一信頼した大人なんですから」

 

 断れねぇな。

 

 確かに、俺にしかできないことだ。

 なんせ、共犯者にしてしまったのだから。

 これが罰だとするのなら……受け入れるしかないだろう。

 

 視線を下に下げて、俺は一つ息をつく。

 

 再び視線を上げれば、彼女らは笑っていた。

 つくづく強い奴らだよこいつらは。

 

「送り出したホシノを助けに行くぞ」

 

「……ん、行こう」

 

 俺が俺であるために。

 

「俺はあいつにいってきますって言われたんだ」

 

「なら、みんなで『おかえり』って言ってあげましょう!『ただいま』って言えるように!」

 

 彼女たちが彼女たちであるために。

 

「うん……えっ!?何それ、恥ずかしい!青春っぽい!背筋がぞわっとする!」

 

「私はする」

 

「え、え!?」

 

「セリカちゃんがしなくても、私はします!」

 

「えっ、えぇっ!?」

 

「わ、私も。ちょっと恥ずかしいけど……」

 

「か、勝手にして! 私は絶対、そんな恥ずかしいこと言わないから!」

 

「よし、お前ら。ここがホシノの居場所だって教えてやろう」

 

 ホシノがホシノであるために。

 俺は、やり切らなきゃならない。

 

 信じて送り出したんだからな。

 

「あ、あはは……ではそれはそうとして、救出のための準備をしましょう」

 

「……でも、今の私たちだけじゃ勝てない。誰か協力者がいる」

 

「先生、便利屋は?」

 

「もう頼んでる。けど数が数だな……強行突破の手段はあるが、制圧するには足りない」

 

「え、じゃあ、どうするの……?」

 

 セリカの疑問の通り、便利屋を含めてもカイザーとの全面戦争は分が悪い。

 救出して、帰るまでが作戦だからな。

 

「まぁ、一個思い当たるやつらがいる」

 

「……?」

 

 シロコが首をかしげる。

 

 今俺たちに必要なのは、圧倒的な力だ。

 




向かった先は、ゲヘナ学園。
出迎えるは青髪と褐色の二人の少女。

次回 大人の交渉

原作より二割増しで黒服が笑っているのは、推しを目の前にしてテンションが上がっているだけです。
今は、春休みでほぼ毎日投稿出来ているのですが、四月に入るとそうはいかなくなるかもです。それまでにアビドス編は〆に行きたいところでございますね……

毎度毎度のことながらいつも評価、感想等々していただき誠にありがとうございます。
稚拙な文ではございますがどうぞお楽しみください。

最後に、ここすき、評価、感想もしよろしければお願いします!

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。