新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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エピローグ

 あれから一週間、俺はシャーレの仕事部屋にいた。

 事後処理のめんどくさいあれこれを終えて、ようやく一服でもしようと思ったが……リンに出す報告書がまだ書きあがってないことを思い出してしまった。

 

 まぁ、事後処理終えてないのに書けるわけもないから後回しにしてたんだが、丁度いいから報告書を書くついでに、今回の依頼の振り返りでもするか。

 

 

 あの事件のあと、アビドス廃校対策委員会は名実共に、認可された部活動となり、ついでにアビドス生徒会の役割を果たすことになった。

 今までアビドスには正式な盾がなかったからな。

 その隙をカイザーに付け狙われたのだからこれで一安心ってもんだろう。

 ただ、一個気になったのは、その対策委員会の委員長は、ホシノではないらしい。

 ならアヤネか?と、思ったのだがどうやら空席にしたらしく、ホシノはその生徒会長の席に就くことを拒んだらしい。

 まぁ大方何故かってのは、彼女の人となりを知った今なら理解できる。

 予想だが、先代との事。そしてその席は自分に相応しくないとでも考えたのだろうな。

 もしくは、自分よりも後輩が座るべきとでも思ったのか。

 まぁ詳しく詮索するのは野暮だな。

 アイツが話したいのなら話すべきで、俺から聞くつもりもない。

 逆に、アイツが俺のことを知りたいのなら聞かれない限りは余計に語ることもないだろう。

 

 便利屋68は、今もシャーレの俺の仕事部屋のある階層の一個下の階に住んでいる。

 アウトロー……と言えるかは正直微妙なラインではあるが、社長であるアルが気に入ってるのなら俺が何か口出すことはないだろう。

 彼女の社員たちも、給料や衣食住には困ることのない生活が送れるからか、特に何か言うこともないようだ。

 ただ、一つ気になることがあるとすれば、最近下層からたまに歓声が聞こえるようになったくらいか?

 俺の名前を呼んでたような気もするのだが……まぁ気にすることもないか。

 

 そう、彼女達が正式にシャーレ……いや俺と協同する立場になるきっかけになった柴関ラーメンについても続報があったな。

 あの一億のお金を使って、屋台から立て直したそうだ。

 なんでも、柴関ラーメンの原点は屋台だったそうで、また一から気持ちを新たにやり直そうとのことらしい。

 ダメになったんなら、またやり直せばいい。

 お客さんがいる限り、店は消えない。

 と、柴大将からの伝言を聞いた。やっぱりあぁ言う男はかっこいいな。

 その伝言と写真がセリカから送られてきたが、立て直した屋台も俺好みのクラシックな屋台だった。

 今度約束を果たしに行くとしよう。

 

 その柴関ラーメンにも新しいバイトが入ったそうだ。

 それが、あの天雨アコだ。

 行政官に加えて、風紀委員会の仕事もあるためか、入れるのは週に1回か、月に1~2回とバイトにしては低頻度なもんだが、そのバイトのあとは直帰出来るらしく、睡眠時間が確保できるようで喜んでいるそうだ。

 しかし、柴大将も考えたもんだ。あのゲヘナの風紀委員会。そのナンバー2をバイトとして雇う事を示談の条件にしたのだからな。

 ヒナもそれを受け入れるしかなかったらしい。

 この店をきっかけに、昔のようにアビドスとゲヘナの交流が再開できたら嬉しいとの事らしいが、立派な奴だよ、大将は。

 しかし、昔のようにと言う所は少し引っかかったな。

 過去のアビドスとゲヘナ……そこに交流があったとは、何があったのかは分からないがここは調査がいるだろう。

 

 セリカからアコのバイト服姿が送られてきたが……まぁ何といえばいいか……

 胸元の側面が開いていたとだけここには書いておこう。

 そこまでして開けたいのならもう俺からは何も言えねぇよ。

 しかも、元々そうだったかのような出来だから尚更だ。

 

 アイツはやっぱ皮膚呼吸してるんじゃねぇのか?

 

 話を戻そう。

 肝心の店が壊される最大のきっかけになったのはあのカイザーコーポレーションが原因だった。

 理事は死んだが、結局の所、土地が戻ってくることはなかった。

 土地の売買自体は正式な取引として認められているものだったからな。

 しかし何も全てがマイナスなわけではない。

 

 今回の事件、SNS上に上げられた前カイザーPMC理事の告発もあり、連邦生徒会はカイザーコーポレーションに、賠償金の支払い、もしくは土地の返却を命じた。

 どっちにするかってのはアビドス対策委員会のメンバーたちに委ねられていたが、アビドスが選んだのは賠償金の方にしたようだ。

 五人しか今のところいない以上は土地を取り返したところで管理ができないのだから、自治区内にする程度にしたのだろう。

 

 そして払われた賠償金の額は3億。

 カイザーPMC理事の発言に対する詫びと、既に上層部から離れ暴走していた社員を討伐してくれた事による恩赦を合計したものらしい。

 少しだけ複雑な内訳だが、それでもその賠償金によって借金の三分の一が返済されたのだ。

 といっても、残り6億。状況としてはあまり変わりはないだろう。

 

 まだ、アビドスの借金との付き合いはこれからも続きそうだった。

 

 とは言えだ、一度は3000%にまで膨れ上がった利子は、一桁にまで減り、随分と利子の支払いは楽になりそうだった。これで月当たりの負担も減り、アビドスの奴らもようやく学生らしい生活が出来るだろうな。

 

 これが減ったのは、どうやら俺がリンに送ったカイザーローンとブラックマーケットの繋がりの紙らしいんだが、アヤネ曰く、ヒフミから受けた報告をきいたトリニティが手を打ったのかもしれないとのことだそうだ。

 

 こっちは俺に対する貸しのつもりか?

 今回の仕事で俺は随分と貸しを作ってしまった。

 ヒナに関しては後日で向かうとしても、リンへの無茶振りの貸しに、トリニティのティーパーティー……頭が痛くなりそうだ。

 

 さっきのところでも触れたが、カイザーコーポレーションの元代表取締役兼理事は、カイザーコーポレーション内部でしっぽ切りにあったらしく、今回の騒動の一件は全て独断での行動とされたらしい。

 まぁ死人に口なし。どういう扱いになろうが知ったことではないが。

 ただあのSNSにあげられた動画の影響もあって、当分の間、世間の目は冷たいものになるだろう。

 ざまぁみろってところだ。

 

 アイツの死体は今シャーレ地下の倉庫にてアロナに頼んで解析を行ってもらっている。

 なにか情報が引き出せるかもしれない。

 特にあのカイザーが探していたっていう『お宝』には興味がある。

 少しだけ泥棒の血が騒いじまったかな?

 まぁ少なくともあの体に身にまとっていた金属はかなり有用だからな。

 いざとなった時のための武装として活用させてもらう。

 

 さて、この事件を語るならアイツの存在も話すべきだろうな。

 あのカイザーを利用していた黒服だ。

 俺の報告を受けた連邦生徒会が、対談したビルに向かったそうだが人影はなく、指紋も何一つとして検知されなかったようだ。

 結果としては、謎しか残らなかったな。

 ゲマトリア……黒服の正体……ミメシス……そして神秘と恐怖。

 

 リンからは、今後の調査はシャーレに一任することになりそうです。などと言われたが俺としては真っ平ごめんだな。

 

 ──先生、ゲマトリアは、貴方をずっと見ていますよ。

 

 だったか、気色悪いことこの上ないな。

 とは言えだ、この先もあの組織とは出会うことになりそうだ。

 何となくだがそんな気がする。

 

『それでは、アビドス対策委員会の定例会議をはじめます』

 

 メールについていた録画を再生し始める。

 そういえば、このアビドス対策委員会の顧問に正式に俺がなったようだ。

 色々俺もやらかしたが、彼女たちが良いというのであれば受けるしかないだろう。

 時折顔を出しにいかねぇとな。

 

『ここしばらく色々なことがありましたが、最終的に借金が消えたわけではありません』

 

『でも、二億も返して、毎月支払う利子はかなり減った』

 

『そうだね〜せっかく負担が減ったことだし、ちょっとゆっくり昼寝でもしない?』

 

『うんうん! このところすっごく忙しかったですし、のんびり過ごすのは大賛成です!』

 

『何を言ってるの! 少しは余裕ができたかもしれないけど、そんなことしてる暇なんて無いんだから!』

 

『セリカちゃん……! そうですよ!この記録だって、先生に送ることになるんですから、しっかり真面目にやりましょう!』

 

『対策委員会の会計担当として言わせてもらうけど、今もまだ私たちは危機の真っただ中にいるの! 余裕なんて全然無いの!』

 

『う、うん……』

 

『というわけで、最新のトレンドを調査してきたわ!これ、何なのか分かる人いる?』

 

『えっと……パソコンの部品?』

 

『これはグラフィックボードって言うんだけど、これでスキャンコインっていう仮想通貨を採掘するの! 仮想通貨っていうのは……な、なによ!? 何でみんなしてそんな、生暖かい目線で見てくるの!?』

 

『セリカの詐欺話はさておき、もっと良い方法がある。これを見て、この経路で建物に侵入すると──』

 

『どっちも却下〜』

 

 あのバカ共二人は相変わらずのようだったな。

 その微笑ましい光景を見ながら俺は少し頬を緩ませる。

 失いかけ、それでも手放さなかったものだ。

 

『……対策委員会は、相変わらずこんな感じです。何も変わらない、いつもの感じに戻ってしまいましたが……でも、本当に良かったです』

 

 心の底から安堵した表情のアヤネはにこやかに笑いながら言う。

 カメラの向きを変えて、騒いでいる背後の光景を映しながら、アヤネは、

 

『現状の報告は一旦こんなところです。それでは、引き続きよろしくお願いしますね。先生』

 

 と、信頼に満ちた笑顔を見せながら、最後に少し照れつつも手を振って映像を終える。

 俺もその映像を閉じたタイミングで、報告書を作り終える。

 これで、一先ずは。アビドスから依頼された仕事はやり切ったと思う。

 まぁ、あいつらの顧問としての仕事はあるが……これからの話だな。

 リンに報告書を送り付けて今度こそ、俺は席を立って、休憩するために近くのソファに座り、酒を入れる。

 

「先生!今お時間良いかしら!」

 

 そのタイミングで、アルが扉を開いて中に入ってくる。

 煙草に火をつける前でよかった。

 

「ノックしてから入れ、ちょうど終わったとこだぞ、どうした」

 

「あ……ごめんなさい。その、これを渡したくて」

 

 そうして渡されたのは丁寧に包装された箱だった。

 まさか、俺にか?

 

「こいつは……?」

 

「ま、まずは開けてちょうだい?」

 

 言われた通りに開けると、中にあったのは黒のジャケットとアルが身に着けているコートと同じ色のネクタイだった。

 

「先生、この前の戦いでスーツ破れちゃったじゃない?だから……今までのお礼も含めて私達からのプレゼントよ!」

 

 スーツには替えがあるが……それでも、生徒からはじめてこういうものをもらったな……

 今着ているジャケットとネクタイを外して、俺は箱の中のそれを身に着ける。

 

「どうだ?アル」

 

「ふふん!流石私ね!よく似合ってるわよ先生!」

 

 胸を張りながら自慢するアルをみて俺は思わず顔を綻ばせる。

 大きなヤマを片付けたとしてもまだまだ、他にも仕事は山積みだ。

 

 俺のような悪党がどこまでやれるのかは分からない。

 それでもこいつらのような笑顔を見れるのなら、この仕事に不満はない。

 

 この絆を、この思い出を。

 その全ての軌跡(奇跡)を。

 青い春と共に紡いでいく物語なのだろう。

 




呼び出されたのは、モニターが並べられた暗い部屋

勇者との冒険が幕を上げる

次章 Vol.2-1 ミレニアム・ゲーム



総勢15万文字の旅路にお付き合いいただき、ありがとうございました。
まぁ、まだ続くのですが……色々寄り道したのちに、再びメインストーリーに戻ろうかなと思っています。
どうか最後までお付き合いいただけると幸いです。

最後に、感想、ここすき、評価よろしくお願いいたします。
リクエストも活動報告の方で承ってますのでそちらもよろしければ
作者でした。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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