『こんにちは、先生。ユウカです』
『私のこと、覚えてますか?』
このシャーレでの仕事を始めてから数日経った頃。
数千とだなんだといわれる数の学園から寄せられる嘆願書や、俺が赴任する前までに積み重なっていた始動のための処理作業に、頭痛を覚えながら仕事をしていたある日、連邦生徒会から支給されたタブレットに早瀬ユウカからメッセージが届いた。
『あぁ、覚えているぞ』
せっかくメッセージが来たんだ、少し休憩するかと、返信しながら、煙草にオイルライターで火をつけ、作業机から離れる。
こういう事務作業は苦手なんだがな。仕事じゃなきゃやってられないってもんだ。
このシャーレから少し離れたところにあるブラックマーケットで買った煙草とバーボン、それが現状の俺の生き甲斐だ。あと、相棒の点検もか。
相棒の点検をするにあたって、シャーレの施設も悪くはないんだがな、やっぱり万事の際には本業の奴に見てもらうのが一番さ。
まぁあと、あの場所の空気、俺は嫌いじゃないのもその理由の一つだな。
シャーレの建物内にコンビニがあったのは驚いたな。
軽いパンやおにぎりみたいな軽食や酒は売ってたが、煙草がなかったもんでな。
しかもその酒もほぼガキの飲み物みたいなジュースばっか、悪いとは言わねぇが俺の趣味じゃない。
冷蔵庫から冷やしたグラスを取り出し、冷凍庫で作っていた丸い氷を入れてそこにバーボンを注ぐ。
それを飲みながら、ユウカの返信に目を通していく。
『良かった、覚えていただいて幸いです』
『先生のご連絡先をもらっておいて正解でした。』
俺は渡した記憶がねぇぞ、まぁ……十中八九リンの仕業だな。
脳内に光る眼鏡を指でクイッと上げているリンの姿が広がる。
『そうだ、用件なのですが』
『以前のシャーレ奪還作戦時の弾丸の経費について、振込が確認できておらず』
『請求書はシャーレに届いているはずですが、お支払いはいつ頃になりますか?』
待て、請求書だと?
作業机の方に目をやると、そこには書類の山。
……どうしたものかね。
『先生……?弾丸だって無料ではないのですから』
『お仕事での経費扱いでしょうし、連邦生徒会に請求すれば、』
『シャーレに支払われるはずです。その分をそのままこちらに頂ければと』
しまった、呆然としている間にメールが来ている。
そういう時点の問題でもないんだよな。
『先生?』
『先生?』
『次元大介先生?』
『今からちょっと伺いに行きますので』
メールのやりとりってのは早いもんなんだな、俺が何か言う前に全部決まりやがった。
ん?これから子供が来るんだよな、流石に煙草の煙吸わせるわけにはいかねぇよな。
あー、めんどくせぇ。仕方ねぇ。
煙草を咥えながら窓を少し開いて換気を行う。
そうして、しばらくするうちに。
「先生!!失礼します」
ドアがノックされ、俺が返事を言う前に開けてユウカが中に入ってくる。
「おい、一応返事言ってか──「……って、なんですかコレ!?」……はぁ」
ユウカの目線に広がるのは、机の上に置かれたシケモクの山と酒瓶たちである。
「なんでこの一角だけこんなにゴミ屋敷みたいな!?」
「そこが俺の休憩スペースなんだよ」
その言葉を聞いて前に踏み出したユウカの足に口が開いた空っぽの酒瓶が転がって当たる。
それをきっかけにワナワナと体を震わせながら、怒りのボルテージが上がっていく。
「せぇ〜〜ん〜〜せェ 〜〜いィ !?!? ちゃんと片付けて下さい! 大人なんですから、ゴミの片付けくらいちゃんとしなきゃみっともないですよ!!それに!!!煙草もお酒もこんなに摂取してたら早死にしちゃいます!!!!」
「うるせぇなぁ、お前さんは俺の母ちゃんかなんかか?言われなくってもやるっての」
「そんなこと言って!どうせ何も、キャッ!」
「ッ!」
ユウカが更に前に歩み寄るとさっきの酒瓶を踏んづけてしまい、頭から転倒しそうになる。
よく考えりゃ、銃弾を受けても痛いで済ます程の頑丈なキヴォトスの人間を守ったところではあるんだがな。
ただ、自分の始末の悪さのせいで万が一怪我でもされりゃ夢見が悪いってなもんだ。
とっさに手に持っていた煙草を捨てて、転びそうなユウカの背中を腕で支え、抱きとめる。
「おい、大丈夫か?」
「は、はい。ごめ──「すまなかった、俺のせいで怪我させるところだったな」……いえ、この程度では……」
意識外からの転倒で危機感を感じたせいか顔が赤いユウカを、そのまま立ち上がらせて、頭を下げる。
「も、もう大丈夫ですから、ね?先生」
「そうか、気を遣わせたな」
なにやらもじもじしてる様子だが、ちびりかけたか?
まぁ、女相手に言うことでもねぇか。
「あ、先生、それで請求書の件で」
「あぁ、それなんだがよ、あれの中からとりあえず探さねぇといけないみたいでな」
指さす先には俺の背丈と同じくらいに積み重なっている紙の山があり、それを見たユウカの顔が少し青ざめている。
「と、とりあえず先生は、連邦生徒会への請求書を作ってください。ここにひな形もありますから、あれは、私も手伝いますね」
「いいのか?」
「はい、どちらにせよ、いずれシャーレの当番でやることになるんですし」
シャーレの当番、そういえばそういうシステムがあったな。
「その顔、先生忘れてましたね?」
「……」
口笛でも吹いて誤魔化しておこう。
「はぁ、全く。でもさっきのがありますから叱りはしませんよ」
なんでかは分からないが許されたようだった。
そうしてふたりで黙々と仕事をこなしていく。
その中で大量のお酒と煙草を購入した領収書を見られて、盛大に説教をされるのだが、それはまた別の話だ。
我慢できなかった……
こんな感じで生徒とのメモロビは2000~3000程度のSSにしようかなと考えている次第です。
処女作で赤評価、お気に入り登録者数100人。
何とお礼を申し上げたらいいことか……
読んでくださっている読者様方には頭が上がらない一方です。
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