新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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1-3 AL-1S

 アロナを通じて、俺の端末から通信が入る。

 俺の予想通り、やはり聞いていたらしい。

 

『先生、先ほどの行動は些か不自然ではないでしょうか……まぁ、ともかく第一段階は完了したみたいですね。そのままゲーム開発部を廃墟に誘導してください』

 

 耳につけた無線からリオの声が聞こえる。

 どこから聞いていたのかは分からねぇが最後の俺の行動に不満げなようだった。

 ただ、それに対して必要以上に追及するような様子はなく、作戦の続行を優先したようだった。

 その行動はまぁ正解ではあると思うのだが、もう少し不満を言われると思っていた分、少々拍子抜けした。

 あくまでも、自分の私情や作戦に関係のないものを押し殺し、ミレニアムのために淡々と成すべきことを成すってところか。

 危うい責任感の強さをしている。

 こういうのは大抵周りに頼れず、一人で行動して、とんでもねぇやらかしをしてしまうのが大体の相場だ。

 

「どうするの、お姉ちゃん? 部員はともかく、ミレニアムプライスで入賞だなんて……」

 

 ゲーム開発部の部室から出ていくユウカの後ろ姿を見ながら、ミドリは不安げな表情でモモイに問いかける。

 

『ゲーム開発部には既に「G.Bible」の情報は渡してありますので、誘導自体は簡単だと思われます』

 

 いつの間にか通信に入っていたヒマリがそう答える。

 作戦が順調なようで気分がいいのか、それともリオの不満げな顔に満足してるのかは分からないが、ともかく随分と機嫌がよさげなのは間違いない。

 

「……やっぱり、あれしかない」

 

「あれ? お姉ちゃん、何か秘策があるの」

 

 ヒマリの声を聴きながら目の前の姉妹のやり取りに集中する。

 やはりというか何というか、モモイの諦めの悪さは、こういう状況ではとても役に立つ。

 

「うん、廃墟にあるっていう、G.Bibleを見つけるしかないよ」

 

「あ、先生にも説明するとね……」

 

 一度聞いた説明だから聞き流すが、こういう時にすぐに情報共有を行おうとする辺り、ミドリは協調性のある子なのだろう。

 モモイが先導して引っ張り、ミドリはそれのアシスト。

 流石姉妹なだけあって、その連携は流石としか言えない。

 

「んで、そのゲーム作りの聖典を探しに行きたいと」

 

「そう!どうかな……?」

 

『とんとん拍子で進むのは気持ちがいいですね、流石この私が立てた計画なだけはあります』

 

 モモイが不安そうに首をかしげて聞いてくる横で、ヒマリが自信満々の声色で話している。

 計画に合わせるならこのまま俺も首を縦に振るべきなんだが……この子たちの意思を利用する以上、俺は素直に危険な場所に行かせる訳にもいかない。

 今の俺は、先生なんだからな。

 

「モモイ、そういうのを詐欺っていうんだぞ?」

 

「詐欺じゃないよ!?」

 

『先生!?何で否定するんですか!?』

 

 モモイが涙目で反論し、ヒマリは俺の急な批判する行動に驚いている。

 作戦通りなのも大事だが、この子たちの意志を確認する方がもっと大事だろ。

 

「モモイ、俺は何もそのG.Bibleの存在を否定してる訳じゃねぇ、ただこの世に絶対なんてものはないんだ。そんな便利なアイテムがあるならどいつもこいつも揃ってそれを使うだろうし、何よりもそれを隠しておくもんだろ。仮にあったとして、お前はなんで危険を冒してまで廃墟に行きたい」

 

「それは……」

 

 何度だって言おう、大事なのは何時だって行動するための意志だ。

 それが伴ってない妥協的な行動は俺は嫌いだ。

 

「ユウカに証明したいから、例え今の私たちのレベルが『今年のクソゲーランキング一位』に過ぎないとしても……私が、大好きな……私を幸せにしてくれた、このゲームたちが。決してガラクタじゃない、大事な宝物なんだってことを!」

 

「……よし、よく吠えたな。悪かった。試すような真似をして、G.Bibleとやらに頼るのは同意出来ねぇが、廃墟で探すのは同意しよう」

 

 モモイの意志表明を見届けた俺は、そのモモイの頭を撫で、そして頭を下げる。

 再度この子の意志を確認するために試すような不躾な真似をしたんだからな。

 

「ただ、その廃墟は危ないんだろ?俺がいるとしても戦力が不安だ。お前さんら腕に自信は?」

 

「ま、毎日魔物とは戦ってるよ!」

 

「ゲームの中で、でしょ?お姉ちゃん……戦えはしますが、C&Cの皆さんほどの力はないですね……」

 

「なるほどな……」

 

『先生、余り部外者を増やすのは好ましくないわ』

 

 リオのいう通り、作戦のことを考えるのなら、俺とこの子達だけで行くべきなんだが……

 最悪の展開はこの子たちの死だ。それだけは何としても避けたい。

 アビドスのような他校に所属しているメンバーは論外だとして……

 

「部長、お前さんはどうなんだ?」

 

「え?」

 

 ロッカーがガタリと揺れる。

 この部屋、どうも気配が多いと思っていたんだが、そこにいたのかよ。

 

「あ……え、と……その……何時から……」

 

「ユズ!?探してもいないと思ったらそこにいたの!?」

 

「先生がゲームしてるときもずっと?その……大丈夫?」

 

「あ、うん……大丈夫……」

 

 ロッカーをモモイが開くとそこには赤い髪を長く伸ばしたジャケット姿の少女、ゲーム開発部の部長である花岡ユズがいた。

 

「何時からと聞いたが、まぁ最初からだな。どこにいたかまでは分からなかったが……まさかロッカーとはな」

 

「先生ってアサシンだったりするの……?」

 

「俺はガンマンだよ。殺し屋ではねぇな……それで、ユズ。お前さんは戦えるのか?」

 

「えっと……戦えますけど……」

 

「……先生、ユズは理由があって人見知りだから、まだ先生のことが信じられないんです」

 

「それは、悪いことをしたな……無理はしなくていい」

 

 俺が怖いのなら、連携は取れないだろうし、最悪のケースに一歩近づくだけだからな……

 

「分かった、あいつらを呼ぶか」

 

「あいつら?」

 

 今はシャーレの所属だが、元々あいつらはどの学校にも所属していないアウトロー。

 何より、俺の私立の部隊だし問題はないだろ。

 

『はい、こちら便利屋68です』

 

「俺だ。依頼を出したいんだがいいか?」

 

 あいつらなら問題ないだろう。

 才羽姉妹とも上手くやれそうだしな。

 

 そうやって連絡を取り、出発するなかで、俺だけ呼び止められる。

 

『先生、少しいいでしょうか』

 

「なんだ、ヒマリ」

 

 先ほど、俺に計画を止められかけたヒマリだ。

 まぁ、お前さんなら言いたくなるだろうな。

 

『何故、先ほどあんな真似をしたんですか、危うく計画が破綻するところでしたよ』

 

「お前さんらこそ、自分の生徒を死なせる可能性があったんだ。それに、あの子たちがどんな思いで今回のことに当たるのか。一度しっかりと聞かせた方がいいと思ってな」

 

『……なるほど……先生も意地が悪いですね』

 

 全知と言えど、人の感情までは読み取れない。

 合理主義と言えど、人の心理までは理解できない。

 

 お前さんらこそ、人を学ぶべき生徒だろ。

 

 

 

 

 廃墟は想像以上にロボットの数が多く、無駄な戦闘を避けるために遠回りや足止めなどを食らう事が多くあった。

 

「流石、先生ね……連邦生徒会が封鎖していた場所の護衛だなんて……ゾクゾクするわ」

 

「遠足気分はいいが、しっかりやってくれよ?」

 

「わぁ……本物の便利屋68だ、かなりの悪党だって聞いてるのに先生知り合いなんだね」

 

 アルを窘めながら、モモイの発言に耳を疑う。

 まるでこいつらが有名人かのような言葉だ。

 

「へ〜!アルちゃん、私たち有名人だってさ。ねぇねぇどんな噂なの?」

 

「え、っとですね」

 

 大悪党を前にして怯えるミドリと気にすることなくグイグイと絡みにいくムツキは随分と対照的に見える。アヤネの時もだったが、こういう子が好みなのか?ムツキは。

 

「ゲヘナの風紀委員会を少数で叩きのめしたり、前の雇い主であろうと容赦なく命を奪ったり……企業の大軍勢を前にしても恐れることなく囮を引き受けたり……そんな感じです」

 

「あははっ!言い方次第でここまで変わるだなんてね!聞いたアルちゃん?」

 

「え、ってことは……これ全部ほんとなんですか?」

 

「一部は……はい……でも、先生の功績と混ざってますね」

 

 ミドリの言葉にムツキは楽しそうに笑いながらアルの肩を叩き、ハルカが申し訳なさそうに補足をする。

 

「先生の功績?」

 

「そうそう、大体あってるけども、一つ先生のと混ざってるわね」

 

「因みにどれと混ざってるの?」

 

 モモイが興味ありげにそう聞くが……俺としては掘り下げないでほしいもんなんだがな。

 アルも自慢げに言おうとしているがやめてほしいもんだ。

 尤も、答えたのはこういう時に爆弾を落とすムツキだった訳だが。

 

 

「それはねぇ〜。雇い主を殺したのは先生ってことだねっ。その噂のどれも先生と一緒にやったことではあるんだけどねぇ」

 

 

 貴方たちの頼った人は、気に入らないなら命を奪ってくるよ。

 と、そう告げるムツキにミドリとモモイは身を寄せ合う。

 

「おい、俺の雇い主を脅してんじゃねぇよ」

 

「あいてっ、ごめんね二人とも、先生は二人のこと気に入ってるみたいだし大丈夫だよ」

 

 いたずらっ子のムツキに軽く拳骨を落とし、二人の方を見るが少しだけその顔に不安の表情を見せる。

 

「あの……なんでそう言い切れるんですか?」

 

「だって、先生の顔が楽しそうだから?」

 

「はぁ……モモイ、お前さんは部室で自分の意志を見せただろ。それが気に入ったからな。基本的に俺は裏切ったりはしねぇから安心しろ」

 

 ミドリの質問にそう答えたムツキだが、そんなに表情に出てたか?

 リオに倣って俺もまたポーカーフェイスの練習をするべきだな……アコのことを悪く言えねぇな、これじゃあ。

 しかし、さっきのムツキのあれは、この二人以外のもう二人の人物も聞いていただろう。

 お前らも生徒だから殺しはしねぇが……まぁ、牽制にはなったか?

 

「んでだ、モモイ。肝心の場所は分かってるのか?」

 

「あ、うんそこは大丈夫だよ!ヴェリタスにまで手伝ってもらったんだから!」

 

「……ヴェリタス?初耳だな」

 

「ミレニアムのホワイトハッカー集団。まあ、非公認の部活だけどね」

 

『そしてその部長が、キヴォトスのあらゆる情報を観測できるこの天才美少女ハッカーである私です』

 

 兼部してたのか。ってか、当たり前かのようにこっちの会話に参加しないでほしいんだが……思わず返事しかけたぞ。

 

 さっきまでのやり返しか?

 この自称天才美少女ハッカーは随分と意地が悪いようだ。

 

「ヒマリ先輩にG.Bibleの捜索を依頼したら、座標を教えてくれたの。『最後にG.Bibleの稼働が確認された座標』をね」

 

「ヒマリ先輩って……ヴェリタスのあの、車椅子に乗った美人のヒマリ先輩?」

 

『次元先生!聞きましたか!?私のこの可憐さは一年生である彼女たちにまで届いているんですよ?ですからもっと信頼していただいても……あっちょと何を』

 

「先生?どうしたの?なんかしてやったりな顔して」

 

 カヨコにそう聞かれるがなんでもないと俺は返す。

 よくやったぞ、アロナ。今度いちごミルクを沢山買ってやる。

 

 もう一人の傍観者であるリオは、ヒマリの通信を勝手に切断した俺の振る舞いに絶句しているようだ。

 まぁ、ヒマリの振る舞いを含めて呆れているだけかもしれねぇがな。

 

「んで、そのバイブルがあるのが。この工場な訳か……どう侵入したものか」

 

 話しているといつの間にか目的地である工場まで来ていた。

 ここまで最低限の戦闘でここまで来た以上……どうにか避けたいところだが、工場の周りには警備ロボットが多く配備されている。

 中にある何かを守るためだろう。

 予感のようなものではあるが……まぁそこは今は大した問題でもないだろう。

 

『先生。今、警備ロボットの巡回ルートを送信したわ。先生がいれば戦闘になっても勝てはするでしょうけど、数の予想がつかない。大規模な戦闘になって中のものが破損したら一大事よ。できる限り見つからないように工場へ侵入して』

 

 リオの声が聞こえると、俺の端末にロボットの巡回ルートが表示された。

 流石、合理性の女だ。効率化のためなら手を惜しまないということかね。

 なんにせよ、これはありがたいものだ。

 

「お前ら、今、マップを送った。そこに書かれているのは巡回ルートだ。最低限の戦闘で切り抜けるぞ」

 

「流石先生ね!準備万端じゃない」

 

 アルの賞賛に俺は少し心が痛む。

 俺の手柄ではないのだからな……

 

 全員が先に進んだ後で、俺はひっそりとリオに声をかけることにした。

 

「リオ、助かった。ありがとうな」

 

『感謝は不要よ。依頼主としての当然の責務だから』

 

 まぁ、分かっちゃいたが、リオは礼を受け取ることはなかった。

 本当につまらない女だと思うが、本心でそして本気でそう考えているのだろう。

 

「はぁ……リオ。お前さんはもっと自分の感情を大事にするべきだぞ?」

 

『そう……よく分からないわ。何を言ってるのか』

 

 こいつを見ていると、昔のアミを思い出す。

 あいつはルパンとの逃避行で随分といい表情をするようになったが……あいつは一体どうやったのかね。

 俺にはアイツのようにこういうタイプを導けるのか分からない。

 

「お前さんも、もっとリアルを生きてみろよ」

 

『……そう』

 

 短い返事だけが木霊する。

 

 

 

 その後は、少ない戦闘で何とか工場の中へと潜入することができた。

 工場の中はしばらく誰にも使われていないらしく、埃が溜まっていたり、所々に苔が生えていたりしていた。

 しかし、不思議なことに最低限の電気は通っているのか、真っ暗にはなっていなかった。

 

「一応廃墟なんだよな?」

 

「うん……そう聞いてるけども」

 

 モモイの言葉を聞きながら周りを警戒してアルが先導し、奥の方へ進んでいくと。

 

『接近を確認』

 

 機械音が、工場内に響く。

 

「おい、アル何に触れた」

 

「アルちゃん……」

 

「社長?」

 

「……アル様」

 

「な、なにも触れてないわよ!」

 

 案の定というかお約束かのように、俺たちはアルをじっと見つめ、それに対して慌てて首を横に振るアル。

 こういう時の悪い信頼度は流石の一言だ。

 

『先生、そこが資格の確認をされる場所よ。資格がないからといって攻撃はされないけども……資格保持者が現れた際どうなるかは、未知数。気を付けて』

 

 リオの言葉で合点がいった。

 どうやらアルがまた何かやらかしたわけではないようだ。

 電子レンジで卵を爆発させた女だ、また何かやらかしたのかとばかり思っていたのだがな。

 

『対象の身元を確認します。陸八魔アル、資格がありません』

 

『対象の身元を確認します。浅黄ムツキ、資格がありません』

 

『対象の身元を確認します。鬼方カヨコ、資格がありません』

 

『対象の身元を確認します。伊草ハルカ、資格がありません』

 

 どうやって読み取っているのか、何故こいつはミレニアムの生徒でもない便利屋の名前を知っているのか。

 理解が及ばない技術ってのはやっぱり俺は嫌いだ。

 

『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』

 

『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』

 

 資格があった場合何が起きるんだ?

 壁にも天井にも不審な点は見当たらない……ってことは……まさか。

 

『対象の身元を確認します。次元大介先生―――資格を確認しました』

 

「お前ら!落とし穴だ!入り口に急げ!」

『先生の生徒として、他の者達も同行者として資格を与えます。それでは、今から下部の扉を開放します』

 

 床にある不自然な切れ目、俺の注意も虚しく。

 人間の反応速度よりも前に、工場に大きな穴が空く。

 

「ここの制作者は良い性格してるみたいだな!!」

 

 

 少しの浮遊感の後に、固い地面へと着地する。

 

「お前ら怪我は?」

 

「だ、大丈夫~……」

 

「こっちも平気よー!」

 

 モモイとアルの声が聞こえる。

 地面には特にクッションのようなものが見えない辺り、ここの設計者はキヴォトス人で間違いなさそうだな。

 なんせ、落下での怪我をまるで考慮していない。

 

 落ちてきた部屋を例えるのであれば、そう……玉座の間といったところか。

 どこから入り込んだのかすら分からない光が、スポットライトのように中央に鎮座するその存在を照らしていた。

 あれが、目当ての品だろう。

 連邦生徒会が管理していた廃墟の中、資格を持たざる者を拒む扉の先に封じ込められていたもの。

 光の中で、美術品のように、この間の主であるかのように、瞳をとじた姿で玉座に座るそれは……

 

「お、女の子?」

 

 生まれたままの姿で眠る……王女の姿だった。

 




出会うは、光の王女
破壊か、生存か。勇者は二つの選択肢に立たされる。

次回 アリス



えー……何と有難いことに月間二次ランキングで9位になっていました(2025/04/02現在)
これも皆様の応援あってのものです!

また、予告していました通り明日から投稿頻度がガクッと落ちます。学校生活がまた始まりますので……申し訳ないです……

また、投票者数200名突破記念イベントとして、作者への質問コーナーやろうかと思います!
解説してほしい銃器や、設定など、まぁ大抵のものは答えようかなと考えています!
質問の受付は、感想およびメッセージと後ほど上げる活動報告にて募集させていただきます。詳しい要項は活動報告の方に上げますのでしばしお待ちください……

それでは最後に、ここすき、感想、評価。もしよろしければよろしくお願いします!

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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