#EXEX 萬屋とガンマン
ブラックマーケットの奥深くにはちょっと変わった店がある。
何でも、そこにはあらゆる傷を治す薬、そして滅多にお目にかかれない武器の数々に、武器の火力を上げてくれる改造までしてくれるらしい。
その店の名は、万屋『アルカ』。
かく言う俺も、そこの常連の一人だ。
店の奥のカウンターに、そいつは座っていた。
フード付きの真っ黒なロングパーカーに、同じくらい黒いシャツとズボンを着込み、首の横から服とは真反対の純白の長い髪を伸ばした、俺のいた世界でも中々見かけない大柄な少女。
名前を、萬屋アルマ。
ブラックマーケット一、いやキヴォトス一の武器商人だ。
「よう、アルマ」
「お、アンタか。Welcome!次元の旦那。新しい相棒でもお探しかな?」
「そいつは今のところ要らねぇ、それよりもこいつの修理を頼みたい」
俺はカウンターに、マグナムを置く。
基本的な整備はてめぇの手でやるのが主義だが……それでも時にはプロに任せておいた方が、良い時だってある。
一事が万事って訳だな。
「そいつをか、ありがてぇ話だが……毎度のことだが、いいのか?アンタの魂だろ」
「お前さんの腕を見込んでなきゃ任せねぇよ」
「イヒヒ、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。ちょいと待ってなよ」
そういって、アルマは俺のマグナムを持って裏手に消える。
こいつとの出会いはそれなりに前からになる。
話は、俺がキヴォトスに来て、まだ三日も経ってない頃へ遡る。
「学園都市か……」
窓の外に広がる青空と建ち並ぶビルを見ながら、俺は益々知らない世界に来たもんだと、その景色に圧倒されていた。
異世界には昔行ったことがあるが、あそこはもっと中世ヨーロッパって感じだったからな。
こういう未来都市ってものは初めてになる。
何はともあれ、今の課題は酒と煙草を見つけることだな。
シャーレに備え付けてある『エンジェル24』には軽食は売ってたが、酒やら煙草やらは見かけなかった。
『そういうものをお探しでしたら、ブラックマーケットは如何でしょう?』
シッテムの箱の中からアロナが、俺に提案してくる。
ブラックマーケット、闇市場か。
『ただ、かなり危ない場所ですので護衛を──「よし、向かうか」先生!?』
何かアロナが言っていた気がしたが、特に気にも留めずに俺は、マグナムと残り少ない煙草を持って、ブラックマーケットへと足を運んだ。
まだ車がねぇからな。いずれは買いたいもんだが……
何分前に居たときの金は使えなさそうだからな。
今ある値打ちなものは……懐に入ってた、ここに来る前に盗ったお宝である『ヴァスコ・ダ・ガマの黄金冠』くらいなもんだ。
本当なら飾っておきたいものだが……仕方ねぇ、先生なんざ面倒な職業についてる以上、銀行も襲えねぇしな。
質屋に入れるにしても、目利きのなっちゃいねぇ奴に任せるのも勿体ねぇ。
ブラックマーケットには、色んな物が売られている。
見たこともねぇクスリに、弾薬、爆薬に、C4まで売られてやがる。
さっき、紫髪の気の弱そうなお嬢ちゃんが、爆薬を大量に買っていたり、キヴォトスでも俺のいた裏社会に近い場所であることは間違いないらしい。
そして、そういうところには大抵……
「おい、止まれよそこのスーツ着たオッサン」
「金目のもの落としてけや」
バカな不良が多いって話だ。
しかし、本当に男がいないらしいなこの街は。
柄の悪い話し方で、俺の前後を挟んだ不良……俗に言うスケバンが俺に対して、MPX-KとM134を向ける。
不良が持つにしちゃ随分と物騒な武器だ。
よく思い出せば、シャーレを奪還した時に居たあのヘルメット団とかいう不良集団も、銃器を揃えていたからな。
「はぁ……おい、悪いことは言わねぇ、俺に銃を抜かせるな」
「何を言ってやがんだ?このオッサン」
「一発痛い目見せてから、漁ろうぜ?」
幾ら死なないとは言え、ガキを撃つのは気が引けるんだがな。
溜息をついて、マグナムを抜こうとした瞬間、俺の耳に聞きなれた声が聞こえる。
「頭を下げなぁ!!」
その声を聴いた俺は即座にしゃがみ込むと、二人を吹き飛ばすようにマグナムの銃声が聞こえる。
あの声は、確かルパン一世の縁者のミスターGの声……
まさかあのおっさんも来てんのか!
弾丸が飛んできた方を向くと、そこには180㎝ほどの体格をした全身黒ずくめで手にはS&W M-500を持った女性が立っていた。
まさか、こいつの声か?
佇まいからして、こいつ只者じゃねぇな。
間違いなく、俺たち側の人間だ。
そんな彼女は俺の方へ歩いてくると、手を差し伸べてくる。
「危なかったな、stranger。あんたここに来るのは、初めてか?」
「あぁ、助かった。礼を言う……最近、ここに来たんだ」
「へぇ……もしかしてシャーレの先生って奴だったりするのか?」
この女、随分と情報が早いな。
リンがシャーレの公表をしてからまだ時間は立ってないはずだ。
さっきの声は、間違いなくこいつから出てるはずだが……今はそうは聞こえねぇ……
別人とも考えにくいが……
手を取って、立ち上がると俺は、返答する。
「あぁ、よく分かったな」
「情報ってのは毒にも薬にもなるんだぜ?」
「くっくっく、それは確かに言えてるな」
「立ち話もなんだ、助けたお礼だと思ってうちの店にでも来な。他にはない逸品がいろいろ揃ってるぜ!」
ここで会ったのも何かの縁かと思い、その女についていくことにした。
せめて、煙草が買えればいいんだがな。
そう思って、歩き出そうとした時、背後で物音が聞こえる。
少し振り返ってみると、サブマシンガンをもったスケバンが仲間の下から這い出ようとしていた。
直撃を喰らったマシンガンの女と違って、あくまでもその下敷きにあっただけだからな。
「く……そっ、ただでやられるかよ!!」
「ちっ、まだ意識あったのか!」
スケバンが、サブマシンガンを取り出して俺たちに銃口を向ける。
叫んだせいで、俺を助けた女が気が付き、ハンドガンを取り出そうとしているが、向こうの方がちょっと早い。
しかし、スケバンが引き金を引くよりも前に、眉間に弾丸が当たる。
早撃ちによって抜かれた俺のマグナムから、紫煙が立ち上り、ふっと息を吐いて、腰へ仕舞いこむ。
「すげぇ……言葉もねぇ……」
「さてと、案内してもらう前にだ。俺は、次元大介。お前さんは?」
「あぁ、俺は萬屋アルマ。よろしくなぁ、次元の旦那」
軽く握手を交わした後、俺はアルマの店に辿り着く。
よろず屋なんて名前をしてるからてっきり何でも屋だと思ったが……飾られている商品を見て俺は少し驚く。
「こいつは……パーティーでもやろうってのか?」
萬屋アルマ……こいつは、武器商人の類だ。
「さてと……改めて、Welcome!万屋アルカへ……ウチのは一流品ばかりなんだぜ?」
店の奥のカウンターに彼女は立ち、黄金の瞳で俺を見つめている。
「取引か……案内してもらって悪いが、俺はこの都市の金を持ってなくてな……値打ちものはあるんだが……」
「ほう、それでも構わねぇさ。オタカラ、ガラクタ何でもござれだ。その価値を決めるのはオレたちだけどな」
売りもやってるのか。
俺は懐から、王冠を取り出し、それを卓上に乗せる。
「こいつは売れるか?」
「お前さん……こいつは驚いたな……あんたこれをどこで」
「ここに来る前の仕事でな」
流石に泥棒とは言えねぇよ。
このキヴォトスに長く止まる身だからな、警察に追われながら先生がやれるかって話だ。
「なるほどな。なら……高値で取り引きだ!」
彼女は、机上の電卓を叩き金額を提示する。
こんだけあれば、しばらくの生活には困らねぇか。
「よし、それで売ろう」
「イッヒッヒッ!さて、それじゃ改めてうちの商品を見てってくれ」
そういって、彼女は商品リストを見せてくる。
医薬品に、武器だけじゃなく、修理やら改造まで請け負ってるのか。
随分な品揃えだな。
「アンタ、武器の改造ってのはどういうものなんだ?」
「色々だな。飛距離伸ばしたり威力上げたり、何でもござれだぜ」
「そうだな……なら一度見てもらいたいもんだな」
俺は、マグナムを腰から抜いて、彼女の手に乗せる。
マグナムを眺めていた彼女は少しの沈黙ののちに、大きく笑いだす。
「オイオイ、コイツに関しちゃウチじゃ商売は出来ねぇぜぇ?
定期的に直してやる必要はあれど、弄る所はありゃしねぇ。
ガンマンの魂がつまった一品だろ?
もう完全にアンタの身体の一部だ……見れば分かるぜ、積み重ねられたアンタの人生がな。
イッヒッヒッ!」
笑顔の彼女は、そう言って俺にマグナムを返す。
自分で言うのも、なんだが……かなり目利きが良いらしい。
商人としちゃ、命同然だが。
この店は、贔屓にしてやりてぇと思うには充分だった。
「そうか、なら修理をするときになったらお前さんのところを訪ねることにしよう」
「オイオイ、今からハードな気持ちにさせてくれるな?」
「信用ってのはそういうもんだ。しかしそうだな……今は……」
俺は、武器の一覧を見ていて、過去に俺が扱ったことのある銃を見つけて、それを一丁注文することにした。
俺の相棒は、こいつだが……まぁ他にも玩具があって越したことはないからな。
「毎度、そういや、次元の旦那は、どうしてブラックマーケットに?」
「酒と煙草を買いに来たんだが……お前さんところで扱ってるか?」
「そいつらはキヴォトスでも中々お目にかかれねぇからなぁ……だが、ウチにはあるぜ」
そういって、アルマは別のリストを手渡してくる。
そこには、様々な種類の酒に煙草がズラリと並んでいる。
しまったな。
こいつは贔屓どころの話じゃなくなっちまう。
「どうだい?お気に召したかな?旦那」
「……あぁ、とりあえずこいつらを貰おうか」
「値段にガッツ入れといたぜ!イッヒッヒッ」
結局、俺の生命線を
結局その後も、この店には世話になっている。
武器の種類も多いし、修理の腕も中々悪くねぇ。
こいつの神秘で作られたハーブを元にした医薬品も、時折世話になっている。
しかし、噂じゃ、何でも治すって話だったが、実際には深めの切り傷を治す程度のものだった。
まぁ、こういった噂には尾ひれが付くってのはいつの世も決まってるもんだ。
それに俺は基本的にはかすり傷しか負わねぇからな。
これくらいで丁度いいってもんだ。
あぁ、あと酒と煙草を内緒で売ってるところも気に入ってるな。
店の中を物色していると、彼女がマグナムと共に出てくる。
どうやら無事に修理が終わったらしい。
「我ながらホント見事な腕だぜ……」
手渡されたマグナムを一通り眺めてから、腰に戻し、代金を支払う。
相棒も時にはプロの手で直して貰う方が、いいだろうからな。
「流石だな。アルマ」
「この前の調印式の戦いでも大分酷使したらしいな? 随分とフレームが痛んでたぜ」
「まぁな、こいつにはいつも助けられてるからな。ご褒美をくれてやらねぇとだ」
「イヒヒ、その通りだと思うぜ」
今日は欲しいものもねぇし、さっさと帰るかと、店を出ようとすると背後から声を掛けられる。
「旦那、ちょっと待ってくれよ」
「どうした。何か用か?」
「実はな、とっておきの上物が入ったんだが……どうだ?」
そう言って出されるのは、年季の入ったバーボンだ。
今はユウカに禁酒令を出されているんだが……
差し出された酒を断る訳にはいかねぇよな。
毒を入れるような奴でもねぇしな。
「なら、一緒に飲むとするか」
「そう来なくっちゃな、旦那!」
踵を返して、俺は再び店の奥へと進んでいく。
美味い酒とプロ同士の会話。
柴大将と飲む酒も美味かったが……こういうのも風流なもんだ。
酒瓶の蓋が開けられる音。
そして、二つのグラスに注がれる琥珀色の美酒を見ながら、俺たちは互いに微笑みを交わした。
この後、アルマちゃんと次元先生が仲良く二人で正座しながら、ユウカに説教されたのは言うまでもない。
という事で、狐の行商人様の作品『透き通る世界の武器商人さん(ちゃん)』より、萬屋アルマちゃんとのコラボでございました。
狐の行商人様の作品はこちらから → (https://syosetu.org/novel/338242/)
この場をお借りして感謝を述べさせていただきます。
コラボありがとうございました、狐の行商人様。
狐の行商人先生より、セリフや設定等の助言を頂きながらですので、幾分か先生の原作に比べて弱くなっているところ(ハーブ系統)がございますが、ご了承いただいております。
初のコラボ故に、口調に違和感があったら申し訳ない限りではありますが……お楽しみいただけたのなら嬉しいですな。