少しばかり俺はミレニアムを離れて、とある祭りの手伝いに行ってたんだが……それも移動時間を抜いても一週間もたってない様なそんな短い期間……
あの理論的な最低限の言葉しか使わないようなあのアリスが……
「あれ?モモイ、先生がフリーズしてしまいました!バグでしょうか?」
「うーん……ある意味バグではあるかも?」
「……モモイ、何がどうなってこうなりやがった」
少しだけ冷静になって、アリスを観察するとどこから手に入れたのか分からない学生証が目に入る。
恐らくアリスのものだろう……情報を増やすんじゃねぇ……
「……えっっっと……それはその……」
「先生、私が代わりに説明します」
そういって、言いたくなさそうにしているモモイの代わりにミドリが説明をし始める。
「……あぁ……要するにだ、言語学習のためにゲームをやらせていたらドハマりして、気が付いたらこうなってたと……」
確かにモモイたちの作ったあの『テイルズ・サガ・クロニクル』……あれが引き起こす感情の揺さぶり具合は確かに一種の洗脳か何かじゃないかと思うくらいの強さをしているのは分かる。
分かるが……なんでこうなった?
そこから先はもう俺の脳が拒んでいる……考えるのを一旦やめにすることにした。
「それでだ、その学生証は?随分と新しいな」
「いや~、どうだろう?新入生の落とし物じゃ──「モモイがヴェリタス?さんに頼んでゲットしたアイテムです!」アリス!?」
モモイが誤魔化そうとした言い訳に被せるようにアリスが元気な声で学生証を掲げながら話してくれる。
「アリスは良い子だな。おい、モモイ。こっちに来い」
そんなアリスを褒めながら、やらかした元凶を呼び出す。
「……モモイ、まずそういう手段を使うならな、俺に一声かけろ。シャーレの力でそこはどうにかできるんだ。いいな?もし自分の力の及ばないかつ、アウトギリギリのことをしたいなら、俺に相談しろ。聞いたうえでお前さんが犯罪者にならない方法で力を貸してやる」
「……分かった、ごめんなさい。先生」
「いいんだ、それで?アリスは部員になれたのか?」
「まだユウカは来てなくって……でも学校には登録してあるし、大丈夫だよね?」
モモイが不安そうな目で見てくる。
確かに、部活の存続のためには、賞ともう一つ、一定以上の部員数が必要になる。
本来なら、『何か』を見つけた功績で存続が決まるはず……だったんだが、その『何か』がこんなことになった以上、その計画はおじゃんな訳だ。
どちらにせよ、ゲームは作らないといけねぇし、そして何よりもユウカを見返してやりたいだろうしな。
「まぁ、そこは俺からも言っておこう。んで?今日はどうするんだ?」
「そう!今日はね、アリスに武器を見繕ってもらおうと思ってたの!」
モモイの持つH&K G3A3……確かカスタム名『ユニーク・アイディア』。
ミドリの持つH&K G3SG/1、カスタム名『フレッシュ・インスピレーション』。
こうやって聞くのは初めてだが、キヴォトスのやつらは自分の銃を持ち、各々カスタムをしたうえで名前を付ける風習がある。
前の風紀委員会での演習の時には聞き忘れたが、アビドスしかり今まで会ってきた奴らの銃にも名前があるんだろうな。
俺も何か名前をこいつに付けてやるべきなのか?
郷に入っては郷に従えなんて言うが……俺のようなおっさんがやることでもねぇか。
「アリスも自分の武器を手に入れるんですね!最初の武器ですからやはりヒノキの棒でしょうか?」
「いやいや、銃だよ銃。こういう時にミレニアムで一番手っ取り早く、ちゃんとした武器が手に入る場所と言えば……あそこだよね!」
着いた場所は、ミレニアムの中でも工業色の強い一角。
その中でも一際活気のある場所へと案内される。
『エンジニア部・作業室』と書かれたその部屋には、発明品であろうものが散乱しており、今も多くの部員が発明に没頭している。モモイはその中の一人、紫色の長髪をした女性へと話しかけに行った。
「エンジニア部だったか?」
「はい、ミレニアムの中でもトップクラスの実績を持っている機械製作と修理の天才たちが集まった部活です。今お姉ちゃんが話しかけに行ったのが、3年生の部長白石ウタハ先輩、あと先生、エンジニア部での暗黙の了解なんだけど……絶対に不用意に疑問を口にしちゃだめだよ」
何やら念押ししてくるが、質問を声に出したらダメってのはどういうことだ?
ミドリの気迫に押された俺は、黙って首を縦に振るしかなかった。
モモイの方は交渉が上手くいったようで、そのままアリスの手を引いて発明品の方を見に行く。
「やぁ、貴方が噂の次元大介先生だね?」
先ほどまでモモイの方と話していた部長であるウタハが話しかけてくる。
「おう、ウタハ……だったな。急に押しかけてきて悪かったな」
「構わないとも、新たな仲間への贈り物として選ばれて、技術者として光栄だとも。それでだ、良ければなんだが……先生の銃を少し見せてはもらえないか?」
「壊したりしねぇなら……まぁ構わないが、何がしたいんだ?」
「ふふ、少し前に出回っていた先生の戦闘のビデオ。私も少し拝見させてもらったが、明らかに私の知る拳銃よりも威力が高いことに気づいてね。その銃に何か仕組みがあるんじゃないかと気になっていてね」
目を輝かせながら俺の腰にあるマグナムを見つめているが……まぁ、あの黒服が言うには神秘の問題だとか何とか言ってたが……この際だ、もしかしたらこいつに起きた異変が分かるかもしれねぇしな。
「俺も相棒に起きた秘密は知りたかったからな。どんくらいかかるんだ?」
「あぁ、すぐに終わるとも。データだけ採ってお返しするから、そこは気にせず……あ、この銃に何か改造でも施してあげようか?」
「いらねぇ真似するなら取り下げるぞ」
「それは困るな。まぁ、折角だ。モモイたちと一緒に私たちの試作品でも見ていってくれ。何か欲しいのがあれば、プレゼントしよう」
そういって、手渡したマグナムをもって部屋の奥へと向かったウタハを見届けてから、俺はモモイたちの方に向かう。
何やら黒髪の少女と話しているようだったが、頭に生えてるのは犬の耳か?柴大将みたいなのもいるしハーフ……ってことになるのか?
「あ、先生みてこれ!拳銃にBluetoothが付いてるんだって意味わかんない!」
「……」
「先生が、今まで見たことない表情してる……!?」
恐らく、この少女が作ったものなんだろうから、あまり言えねぇが……
俺はこの手の銃が嫌いだ。
命を奪う凶器であるはずの銃がこうもデフォルメされているのがどうにもな。
とは言えだ、アロナと繋げられることを考えれば便利なんだが……俺は持つ気にもならねぇ。
「……これはお前さんが作ったのか?」
「うん……そうだよ、どう?」
「……まぁ、なんだ。文化の違いってのを感じるな」
今でも馴れねぇが、銃がここまで社会に浸透したキヴォトスなら案外便利なのかもしれない。
まぁ、見た目が最悪なのは間違いないんだが、一々周りを驚かせることになりそうだ。
「そういや、名前がまだだったな。次元大介だ」
「そうだったね……一年の猫塚ヒビキ」
「ヒビキか、今後なんかあれば頼ることもあるかもな。んで……アリスはどこに行った?」
ここに来た目的であるアリスがいつの間にかいなくなっていたが、すぐにヒビキが見つけてくれた。
指さすその先にはアリスと、巨大な砲身のようなものがある。
アリスはその大砲をじっと見つめている。
「これは……?」
アリスがふと疑問を口に出す。
そういえば、ミドリがここで疑問を口にするのは駄目だなんだと言ったが……
その時、アリスの隣にいつの間にかぬるりと人影が現れる。
オレンジがかった黄色の髪をした少女が、アリスへと話しかける。
「ふっふっふっ、お客さんお目が高いですね」
「えっと……?」
「説明が必要ならば、いつでもどこでも答えをご提供!エンジニア部のマイスター、豊見コトリです!」
眼鏡を指で上げながらウインクを飛ばす彼女が恐らくさっきミドリが言っていた暗黙の了解の原因なのだろうな。
ミドリが手招きし、何やら話したいことがあるそうで耳を近づける。
「コトリちゃんは、良い人なんですが、その……凄く説明が長くて……ですのでキリ良いところで切り上げて、アリスちゃんを助けてください」
なるほどな、今ので何となくだが理解できた。
概ね、説明をするのが好きなコトリが、長々と説明を続けるせいで逃げ出す奴が多いってところか。
だから、そもそも疑問を口に出さなかったらその被害にあわずに済むと……まぁ難儀なもんだなそれは。
「コトリ、だったか。アリスが見てるそれはなんだ?ただの漬物石には見えねぇが」
「お!貴方が噂のシャーレの先生ですね!お話は聞いていますよ!そして、良い質問ですね。これはエンジニア部の過半期の予算、そのうちの70%近くをかけて作られた……エンジニア部の野心作!『宇宙戦艦搭載用超電磁砲』です!」
「宇宙戦艦、って……また何かとんでもないことを……」
このキヴォトスでは宇宙開発も進んでるのか?
まぁ、ここの異常な科学技術なら可能だとは思うが……
しかし、また大きく出たものだ。モモイも思わずあっけにとられた顔をしている。
「前にも、確かコールドスリープしようとして、『未来でまた会おう』って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪ひいてなかった?」
ミドリの言葉には耳を疑ったが……アホなのか?
まぁ、失敗して死人が出なくてよかったと思うべきなんだろうが……
「……その『未来直行エクスプレス』なら、今でもよく使っているよ。まぁ冷蔵庫として、だがね。食べ物をもっと先の未来に送れるようになったから、失敗ではないさ」
「使い道の割に、名前が大袈裟!」
データを取り終えたのか、ウタハは俺のマグナム片手にそう語りながら会話の輪の中に入ってくる。
言い得て妙だが、その通りではあるか。
失敗ってのは何か成功する前の前段階であって次に繋がらねぇ限りは失敗とは言えない。
ネーミングセンスは……まぁあの覆面水着団に比べればマシだな。
俺は嫌いじゃない。
「コホン!話を戻しますと、エンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!このレールガンはその最初の第一歩!大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器!これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」
「かっこいい……聞いただけでワクワクしてくる!」
「モモイに同意だな。そういうのは好きだぜ俺も」
「流石ミレニアムのエンジニア部!今回は上手くいってるんだね!?」
宇宙戦艦に搭載する予定の武装なら確かにここまで大きくても問題ないだろう。
レールガン、確か電気と磁石を使って弾を高速で飛ばす技術だったか。
中々お目にかかれない武装だ。
電力は相当消費するだろうが……必要経費ってもんだろう。
「ふっふっふっ……もちろんです!……と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして……」
「金か?」
「流石先生……その通りです……いつもこうやって技術者の熱意と情熱の足を引っ張るのはそれらの欠如ではなく予算……いつの世もままならないものです……このレールガンを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら……」
「そんなの計画段階で分かることじゃん!どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃたのさ!?」
モモイの指摘は真っ当なものだ。
こういう建設関係の仕事は作る前段階の計画書で予算をあらかじめ見積もっておくもんだ。
それでも足りないとかはあり得るだろうが、これはそういう段階の話でもない。
「愚問だね、モモイ」
部長であるウタハが代わりに答えだす。
「……ビーム砲は、ロマンだからだよ」
「その通りです!ビーム砲の魅力が分からないなんて、全くこれだからモモイは」
ヒビキも二人の意見に同意するかのようにコクリと頷く。
「バカだ!頭いいのにバカの集団がいる!!」
「ぶっあっはっはっは!!!」
モモイの突っ込みもあるが、これは傑作だな!
こいつら、俺は好きだな。
ロマンを求めた結果、そういった合理性を忘れちまうバカは大好きだ。
「……エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は……」
「『光の剣:スーパーノヴァ』!」
「また無駄に大袈裟な名前を……」
ヒビキとコトリが語ったその武器の名前を聞いたアリスが反応を見せる。
まるで、運命に出会ったかのように、その目を輝かせる。
「ひ、光の剣……!?わぁ、うわぁ……!」
「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも」
「これ、欲しいです」
アリスは幼児が欲しいおもちゃを選ぶように、指先を光の剣に向ける。
「え……」
まぁ、ヒビキが驚くのも無理はないだろう。
なんせ、あれには予算の70%がつぎ込まれてるのだろう?
それをただであげるなんてことは……流石にな……
「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」
「うーん、そういってくれるのは嬉しいのだけど……」
部長であるウタハも頭を悩ませている。
「申し訳ないですが、それはちょっと出来ないご相談です!」
「なんで!?この部屋にあるものなら何でも持って行っていいって言ったじゃん!」
「モモイ、揚げ足を取ってやるな。さっきもコトリが言ってたろ、あれには莫大な金が掛かってんだぞ?それをただってのは──「そこは別に問題じゃない」」
モモイを宥めようとした俺の発言に被せるようにウタハが口を出す。
タダでいいのか!?
ずっこけかけたが、どうやら問題はそこではないらしい。
「……もっと現実的な問題でね。この武器は個人の火器として使うには大きくて重すぎる」
「なんと、基本重量だけで140kg以上!更に光学照準器とバッテリーを足したうえで、砲撃を行うと、瞬発的な反動は200kgを超えます!」
それは無理だ。
いくらヘイローがあるこいつらと言えどその化け物みたいな反動を制御するのは不可能だろう。
「これをカッコいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけど……」
そう、下に目線を向けるウタハの言葉を聞いたアリスは、少し戸惑ったのちに近づいてその手を取って目を合わせる。
確かに、普通なら到底無理なじゃじゃ馬だろう……でもアリスは普通の枠組みには収まらない。
「汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」
「……あー、要するに、嘘ついてはないよな?ってことだと思うぜ」
「もちろん嘘は言ってないが……それはつまり、あれを持ち上げるつもり、ということかい?」
アリスなら、もしかしたらもしかするかもしれない。
アリスはそっと頷き、その『選定の剣』の前に立つ。
「この武器を抜く者......」
閉じていた瞳に光を宿し、その剣を掴む。
「此の地の覇者になるであろう!」
両の手に力を込め……剣は確かに動き出す。
今、キヴォトスの最強の歴史に新たな1ページが書き足される。
「……まさか」
「ええぇぇっ!?」
アリスは、その剣を確かに引き抜き、持ち上げる。
「も、持ち上がりました!」
「嘘……信じられない……」
「えっと、ボタンは……これがBボタンでしょうか?」
アリスが、何かを探し、見つけたようだ。
……まさか、ここでぶっ放す気か!?
「……っ、光よ!!!」
上を向いた銃口から、正しく光の束が放出され……
巨大な爆発音と共に、作業室の天井に大穴が空く。
「撃ちやがった……」
「……凄いです。アリス、この武器を装着します」
「ほ、本当に使えるなんて……で、ですがそれだけは、その……!予算とか諸々の問題で、出来れば他のでお願いしたく……!」
まぁ、まさか本当に持ち上げるとは思ってもいなかっただろうからな……
コトリの動揺は致し方ないものだとは思う。
ただ、彼女はそれを是としない。
「いや……構わないさ、持って行ってくれ」
「その、ウタハ先輩、確かにああ言ったんですが。本当にいいんですか?」
「もちろんだとも。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね」
自分の言葉には嘘をつかず、撤回することもないのは流石と言ったところだな。
しかし、あの砲撃をボタン一つで撃てるのは、色々問題があると思うのだが……
「ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ」
ヒビキに手短に素早く指示を出している傍らで、俺は別のことを考えていた。
アリスのことでもない。
恐らく最初からではあるが、誰かがずっと俺たちの監視をしている。
さっきの砲撃はその監視役にとっても想定外だったのか、ようやくそこで気配が漏れて気づけたが……大方リオからの差し金だろう。
何を考えているんだアイツは。
思考をまた戻すと、アリスたちは武器の扱いについてのレクチャー兼ドローンでの射撃訓練を行っている。
ウタハのようなしっかりした奴がいる分、ここで任せても大丈夫だろう。
「ウタハ、考え事の最中悪いが、少し席を外す。あいつらのこと任せてもいいか?」
「あぁ、もちろんだとも。データの解析は済み次第、先生にも共有しよう」
そういって、俺は部室から出ていく……
「アロナ、リオから何か来てるか?」
『先ほど、ちょうどリオさんからメールが届きましたよ!計画について話したいことがあるそうですよ?』
あの監視をしていた奴から感じた確かな殺気。
あれは、明らかに殺害を視野に入れた命令を受けたものだろう……
丁度いい、俺からもあの手間のかかるやつに聞きたいことが出来た。
「ったく、面倒な仕事を引き受けちまったもんだ」
ぼやいた俺は、指示された場所へと足を運ぶ。
二回目の会談。合理と信念が語り合う。
そして再び廃墟に舞い戻り、そこで財宝に巡り合う。
次回 G.Bible
また、予告詐欺しましたね、本当に申し訳ない。
ので前回のものを少し変えました……
毎度のことながら、いつもいつもご愛護いただきありがとうございます。
何ともうそろそろでお気に入り件数が3000を突破しそうで恐怖に震えているところでございます。見切り発車でもここまで行ける者なのだと……
それでは最後に、ここ好き、評価、感想頂ければ幸いです。
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持