ミレニアムに来た最初の日のように俺はリオとヒマリの前に立つ。
「先生も来たようね。今後の話をしていきましょう」
「その前に一ついいか」
会議を始める前に俺は聞かなきゃならない。
こうやって会議をする以上、アイツの中での方向性は定まったものだと予測できる。
さっきのあの監視は恐らくリオの差し金。
依頼人とは言え、俺に何も話さず、勝手に動かれるってのは気分が悪い。
「何かしら先生」
「リオ、お前さん。あの監視役はどういうつもりだ?」
「……C&Cに見張らせていたわ、何か不都合だったかしら」
「そういうのは俺に一声かけてからやるべきだろう。あの殺気、場所が場所なら撃ってたかもしれねぇからな」
俺がそういうとリオは少し顔を顰め、そして何か考えだす。
殺気、それが何か引っかかったようだった。
まだ情報の伝達がされてないってところか?
となると……いらねぇことを言ったかもしれねぇな。
「……先生、何があったのか聞いてもいいかしら」
カバーストーリーも無い今の状態でアリスを手にかけるとは思えない。
なら、話しても大丈夫か……
俺は、アリスがミレニアムの学生証を手に入れたこと、エンジニア部が開発した宇宙戦艦用のレールガンを持ち上げ射撃に成功したことを話した。
「……なるほど……それで……」
「リオ、お前さんはアリスをどう思ってる」
「……現時点では、人工的に生み出された戦闘を目的とした破壊兵器、かしら」
「リオ、あの子は無機質な兵器ではなく生きていますよ。ゲームに夢中なただの力を持ってしまった女の子です」
当然と言えば当然だが、リオの評価に対してヒマリは批判を返す。
射撃時には200kgを超えるあの怪物兵器を一歩も下がることなく撃ったあの怪力。
その際に反動による怪我は疎か、体幹のブレすらなかった頑強性。
あれは間違いなく戦闘を目的として作られたもの、そこに関しては俺も同意ではある。
ただ……あの輝く瞳がちらつく。
「悪いが、リオ。今回は俺もヒマリの肩を持つ。アイツは既にゲーム開発部の一員だ」
光の剣の名前を聞いた時に見せたあの笑顔、あれは間違いなく一人の人間としての顔だった。
機械ごときに出せる表情じゃねぇ。
「そう……でも、あれが依然としてミレニアムの脅威となることは間違いないわ」
「リオ、貴方は臆病すぎです。既にモモイたちとは仲良くなっていて友好関係も築くことが出来ることは証明できています。他者を思いやる心があるのにまだそんな酷いことを……」
「なら、ヒマリ、貴方は万が一あれがミレニアムの生徒を殺害した場合どうするつもりかしら。まだ、あれがどういった存在なのかも分かり切っていないのなら、今のうちに……」
どちらの言い分も分かりはするもんだが……これに関してはヒマリの分が悪いってもんだ。
リオには生徒会長としての責任がある。
臆病だとしてもそれは仕方がないもんだと俺ですらわかる。
手遅れになってからじゃダメなんだ。
一度失った命は二度と戻りはしない。
「リオ、もしアイツが、アリスが人を殺しかけたのなら……アイツが殺る前に、俺がアイツを殺す。それなら良いだろ」
「…………」
「……先生にそんなことが出来るとは思えません」
まさか二人そろって否定してくるとは思わなかったな。
リオは言葉こそ出さないがそれでも俺の言葉に驚いた表情をしている。
「……俺は、聖人じゃねぇよ。それにリオ、お前の言う合理性ってのを理解してるつもりだ」
アイツを持ち帰ることを決めたのは俺だ。
だから、もしアリスが人を殺すようなことがあれば、その時に責任を取るべきは俺。
子供にはやらせられねぇよ。
「……てっきり、先生は自分も死ぬとでもいうような非合理的な人だと思っていたわ」
「俺は悪党だからな。汚れ役をガキにやらせたくねぇだけだ」
「……分かったわ、先生の言葉を信じます。ただ、懸念点が消えた訳では無いわ。だからその検証も兼ねて……私から案があるの」
そうしてリオはモニターに計画らしきものを写し出す。
「……なぁ、リオ。1個いいか?」
「今度は何かしら」
「名前のミソ作戦ってのはなんなんだ?」
ヒマリがやれやれとでも言いたげな顔をしているが、まさか平常運行なのか?
「先生が困惑してますから、私の方からお話させていただきます。
先生もお気づきかと思いますが、ゲーム開発部の存続のためにはまだ功績が足りない状況です。
そこで、ゲーム作りのためにも先生には再び廃墟に向かってもらい、G.Bibleを探して頂きたいのです」
確かに、人数は恐らく問題ないだろう。
そうなると問題になるのは功績の方になる。
計画は既に破綻したもんだと思ってたんだが……
「あいつらに必要か?無くてもアイツらなら立派なもんが作れると思ってるぞ?」
「私もそうは思うのですが……」
「これを見てほしい」
ヒマリから会話を継いだリオがモニターの画面を変える。
そこには廃墟のマップとその上に二つの赤と青のシグナルが重なっている映像が流れる。
「こいつは?」
「推定G.Bibleと思しきデータが発する青いシグナル。そして先生が先日探索した箇所から検出された赤いシグナル。それらが同じ座標から発信されていたの」
つまりは、だ。
G.Bible探索ついでに、アリスと関係のあるものを探せと言いたいわけだ。
「まだ、ゲーム開発部を巻き込むつもりか」
「彼女たちの報酬も兼ねているのだから合理的でしょう」
思わずため息をついてしまうが……そうだな。
確かにその通りだとは思う。
しばらく続いただんまりに嫌気が指したのか、ヒマリが説明を続ける。
「そして、その後、この世界のすべてが詰まった頭脳を持つ私が作成したハッキングツール『Optimus Mirror System』、通称『鏡』と呼んでいるこちらを用いて、解析を行うのですが……」
また、ヒマリが恨めしそうな顔でリオを睨んでいる。
もう大体予想がついてるが……一応最後まで話は聞いておくべきだろう。
「その『鏡』は、現在セミナーで管理しているの。だからヴェリタスを通じて、ゲーム開発部は『鏡』を奪う為に行動するはずよ。そこで起きる戦闘等を用いて、あれが本当に危険でないか判断材料を集める。『鏡争奪作戦』略して、ミソ作戦よ」
ミラー争奪でミソ……ってわけか。
何というか、意外と天然なのか?
「『鏡』の防衛はC&Cに頼む予定でいます。今作戦についていないのは
「ヒマリ、その話なのだけれど、
その言葉を聞いたヒマリが、驚きと怒りが混ざった表情をする。
C&C、ミレニアムのメイド部……っていう名目の戦闘エージェント部隊だったか?
コールサイン
「リオ、それは過剰戦力ではないですか!?それこそアリスちゃんが……」
「そこで壊れてしまうならその程度、戦闘でもし
「俺は外部の人間だからあんまり分からねぇが、その
「そうでしたね……C&Cコールサイン
あのヒナにすら勝てるだ?
ゲヘナにおけるヒナが『風紀の化身』ならこっちは『約束された勝利』ってところか。
んでもって、特記戦力を除いた
「確かにやりすぎじゃねぇかそれは」
「先生はゲーム開発部に付くのでしょう。ならこれで確率は五分五分よ」
まぁ、俺は確かにあいつらの肩を持つが……それは過大評価もいいとこだ。
「先生の言う通りですよ、リオ。アリスちゃんだけではなく、他のゲーム開発部にも怪我を負わせてしまうかもしれません」
「もしそうなったときに、あれが力の制御を失い暴走すれば、その時点でミレニアムに滞在させられるわけがないわ。だから、これは必要な戦力よ」
リオとしては、その一線は絶対に引きたくないものなのだろう。
ヒマリも文句は言いたげだが、理解はしているのだろう。
彼女とてそこまで感情に振り回されるような人間でもあるまい。
「はぁ……分かりました。なら臆病者は臆病らしくしていてください」
そう言い残して、ヒマリは部屋を出ていく。
俺とリオだけが部屋に残り、気まずい空気が流れる。
「……先生、私は何か間違えたのかしら」
「そうだな。お前さんは少し合理的思考をしすぎてんだよ」
ハッキリ言って俺はこいつが苦手だ。
でも、だとしても俺は先生としてこいつに寄り添ってやるべきだろう。
「先生は、さっき、私の言う合理性を理解していると、そういってくれた。なら、先生が思う合理性は何なのかしら。」
難しい質問だ。
俺はそもそも感情の人間だ。
ただこんな仕事をする以上、そういう感情を殺さねぇといけない時がある。
「俺が思うに、いざとなった時、自分の意思とは関係なしに引き金を引けるかどうかだと思う。愛する女が敵に回った時にお前さんは引き金を引けるのか。それはただ殺して終いって話じゃねぇ。その責任を背負えるかだ」
「責任を背負う……」
「抱え込むのと背負うのは別もんだぞ。取り返しのつかない何かをやった時に自分の責任から逃げず、どれだけ恥ずかしくて苦しくて辛くても前を向けるか。その意思を見せるかだと俺は思う。
あと、お前さんが周りから嫌われてるのは、テメェの行いだけの話じゃねぇと俺は思うぞ」
今日の独断での監視しかり、会議中に後からの連絡を入れたりな。
こいつのいう合理性は結果だけを考えている。
リオ、お前さんの思って進んできた道は、正しいと俺は思う。
その役職に就いただけはある。
ただ、その後ろには誰も着いてきやしねぇ。
「お前さんは、正しいからいいだろうだなんて思って、言葉も何もかも端折って、積むべき誠実さを捨ててんだ。世の中、正しいことが全てじゃねぇ、正しいことと誤りそれらが混ざって人間は出来ている」
「それじゃあ、正しいことをしているだけじゃ理解は得られないの?」
厳しいことを言ってる自覚はある。
こいつが今まで歩んできた道を否定してるんだからな。
しかし、こいつも子供らしいところはあるんだな。正しいことをしていれば周りは理解してくれると……純粋な承認欲求ってやつだろう。
「あぁ、俺は俺の思う正しさで生きてるが人間が全員同じ価値観だとは思わねぇな」
「……それは、私もそうよ。ミレニアムの生徒会長として、例え理解されなくても……この世が私を悪と規定しても構わない……私は、私が正しいと信じる道を進んできた。それは先生と私では変わらないはずよ」
悪だと思われても構わない……か。
その諦めが、こいつをここまで運んでしまったんだろうな。
「あぁ、そうだな」
「なら、私と先生で何が違うの」
「お前さんは会話を諦めちまったんだよ。
神様や仏様じゃあるまいし、行動で全部伝わるわけがないだろうが。
理解されなかったとしても言葉でてめぇの意思を伝えろ。結果と人は後からついてくるんだ。どんなものでもな。だから、俺でいいから練習しな」
「……それが、感情で動くってことなのかしら」
「前言ってたの覚えてたか。お前さんはまだ子供だからな。しくじることくらいあるだろ。変わるのに遅いはねぇよ」
「……ありがとう、先生」
少しだけ、リオの表情が柔らかくなった。
そんな気がした。
「先生!!今度こそ『G.Bible』を見つけるために手伝って!!」
会議を終えて、ゲーム開発部の部室に入るといきなりモモイが俺に泣きついてくる。
そっちに意識を取られたが、アリスとミドリそして、ユズも俺に対して頭を下げている状況であっけにとられる。
「アリスが部員としては承認されたのか?」
「うん、そこは何とかね……でも結局ゲーム作らなきゃってなって……」
「それで、俺にと……」
とりあえず、アリスが正式に部員になれたのは喜ばしいことだが、現状唯一の居場所であるゲーム開発部の存続のためにも、G.Bibleは必要なのだそうだ。
ユズも同行すると聞いた時は驚いたもんだが、部長としての責任を果たすため、だそうだ。
引きこもってた割にはしっかりと見せるべき時に勇気だせるのは好感が持てる。
俺としては、無くてもこいつらなら作れると信じているんだが……こいつら自身がその実力を信じていない。
それが問題なんだよな……
自信ってのは成果があってようやくつくもんだ。
だから、こうなるのも仕方がないのかもしれないな。
そうして、俺たちは再び廃墟へと向かった。
前回と同じ点はヒマリとリオのバックアップが、ある事。
違う点は便利屋達の代わりにアリスがいることだ。
前回とほぼ同じルートを用いて行ったからか、すんなり目的地に着くことが出来た。
アリスが初めて見たオートマタに対して砲撃を行いかけたのには焦ったもんだがな。
あの轟音と閃光でも出せば、廃墟中の野良機械共が集まることになっただろう。
「最近来たばかりのはずなんだがな、随分と久しぶりに感じるもんだ」
「ほんと、私たちも慣れたものだね!もしかしたら私たちって結構強いんじゃない?」
俺の発言に同意するようにモモイが話しかけるが、実際に才羽姉妹の連携力は中々目を見張るものがある。
ユズも引きこもっていた割には動きも随分と良い。
後方からの支援と援護がしっかりと嚙み合っていた。
今後アリスとの連携も取れるようになると考えると……敵からすると中々厄介な部隊になるだろう。
「ここは……?」
「あれ?アリス、どうしたの?」
アリスが、とある地点を見つめて立ち止まる。
まるで時間が経って、変わってしまった故郷の面影を探すようなそんな挙動をしている。
そして、その見つめている地点こそが……あの二つのシグナルが重なっていた地点だ。
「分かりません……ですが、どこか見慣れた景色です。こちらの方に行かないといけません」
「……」
やはりというべきか、最初にアリスと話した時、彼女はこういっていた。
──回答不可。本機の深層意識における第一反応が発生したものと推測されます
アイツはその前に、記憶と自我が消えていた。
にも拘らずアイツの中にある何かがアイツに干渉したわけだ。
つまりだ、今アリスが口にしたどこか見慣れた光景は、鍵のかかった記憶の一部ってことなんだろう。
「アリスの記憶にはありませんが……まるで『セーブデータ』を持っているみたいです」
敢えて言うのであれば、アリスの記憶ではない。
「この身体が、反応しています」
あの時アリス自身が捨てた名前。
『AL-1S』としての記憶だろう。
リオもこの言葉を聞いている以上、不安な要素は少しあるが……今はアリスに集中するべきだろう。
「例えるなら、そう、チュートリアルや説明が無くても進められるような……或いはまるで、何度もプレイしたことのあるゲームを遊んでいるかのような……」
こういう時にゲームでの例えが出る辺り、こいつも生きてるんだなと思わざるを得ない。
アリスという人間だからこその反応だろう。
「あっ、あそこにコンピューターが一台……あれ?」
『先生、そのコンピューターからシグナルは発信されているわ』
辿り着いた部屋の真ん中には電源の付いた一台のコンピューターがある。
大小さまざまなケーブルがそのコンピューターに繋がっており、まるで重傷を負った人間に着ける医療機器のような印象を受ける。
きっと、アリスが来るまでの間、生き続けるためのものなんだろう。
コンピューターには小さな画面が付いており、その側面にUSBをはじめとした多くの差込口が付いている。
そして、俺たちが近づくと、画面が点灯し、画面上に文字が勝手に出力される。
『Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください』
「おっ、まさかの親切設計。G.Bibleについて検索してみよっか?」
「いや、ちょっと怪しすぎない?それより『ようこそお越しくださいました』ってことは……『ディビジョンシステム』っていうのが、この工場の名前?」
ミドリの考察も間違いではないのかもしれないが、こいつは恐らく待っていたんだろう。
この工場の主を。
あの玉座に座っていた王女のことを。
「キーボードを発見……G.Bible、と入力してみます」
キーボードを見つけたアリスが、検索を始めるが、エンターを押すよりも前に、そのコンピューターに異変が起きる。
「あっ、何か出た!」
『……#$@#$$%#%^*&(#@』
「こ、壊れた!?アリス、いったい何を入力したの!?」
意味のない文字の羅列が続き、敢えて言うのであれば……目覚めさせてしまったのかもしれない。
『あなたはAL-1Sですか?』
知性を感じさせる一文が画面に表示される。
あの体にある何かがこのコンピューターに反応したのだろう。
ただ、この強烈なまでの違和感は、一体?
「?いえ、アリスはアリスで……」
「ま、待って!何かおかしい……アリスちゃん、今はとりあえず何も入力しないほうが!」
『音声を認識、資格が確認できました。おかえりなさいませ、AL-1S』
「音声認識付き!?」
ミドリの奮闘むなしく、復旧したのであろう音声認識機能によってアリスを『AL-1S』として認識してしまった。
「えっと……AL-1S、っていうのは、アリスちゃんのことなの?」
「あ、ごめん。そういえばユズちゃんには言ってなかったかも」
「アリスの、本当の名前……本当の、私」
しかし気になるのは、あの質問だ。
──あなたはAL-1Sですか?
俺は、最初この工場の主をAL-1Sだと思っていた。
ただ、そうなのであれば、あの時態々確認する必要なんてないはずだ。
記憶を消し、鍵をかけたのは恐らく連邦生徒会長。
ここは間違いないはず。
しかしあの一文から俺が感じたのはこのコンピューターがAL-1Sがどこにいるか分かっていなかったかのような印象だ。
俺の推測だが……連邦生徒会長自身も資格がなく……何か目的があってAL-1Sを盗み出し、そして改竄を行ったのか?
「あなたはAL-1Sについて知っているのですか?」
『………………』
「反応が遅い……?」
「何か画面もぼんやりしてきたけど、処理に詰まってるのかな?」
俺が考察を行っている間、アリスはシステムへと質問を行う。
ゲーム開発っていう機械に関わる仕事をやるモモイたちらしい表現をするが俺にはどうにも回答するのを悩んでいるように見える。
まるでアロナのような意思のあるAIがそこにいるような、そんな気がしてならない。
『そうで……@!い#%ya#@!$d%a@!!!!』
「え、え?何これ、どういう意味!?」
『それは』
一瞬だけ何か言いかけたようだが、それは全てエラーの波に飲み込まれ、消える。
しかし、こいつ……何を考えてやがる。
『緊急事態発生。電力限界に達しました、電源が落ちると同時に消失します。残り時間51秒』
相手を騙すときの常套手段その一、時間を勝手に定め、判断を煽り、思考を鈍らせる。
こいつ自身も自己が消えるのが怖いのかは知らねぇが……まるでアリスの質問に答えたくなかったかのような……
「ええっ!?だ、ダメ!せめてG.Bibleのことを教えてからにして!」
こういう騙しの常套手段でもまぁ、モモイのような奴にはよく効くだろうな。
今度、そういうのも教えておくべきか……
『あなたが求めているのは、G.Bibleですか? <YES/NO>』
「!?」
「YES!」
『G.Bible……確認完了、コード:遊戯。人間、理解、リファレンス、ライブラリ登録ナンバー193、廃棄対象データ第1号。残り時間35秒』
「廃棄!?どうして!?それはゲーム開発者たちの、いやこの世界の宝物なのに!」
『G.Bibleが欲しいのであれば、提案します。データを転送するための保存媒体を接続してください』
「えっ……?G.Bibleの在り処を知ってるの?」
『あなたたちも知っています。今、目の前に』
「ど、どういうこと!?」
『正確には、私の中にG.Bibleがあります。しかし現在私は消失寸前、新しい保存媒体への移行を希望します』
虎穴に入らずんば何とやらか……
明確な意思を感じるが……
「そんな急に保存媒体って言われても……あ、『ゲームガールアドバンスSPのメモリーカード』でもいい?」
こいつを移し替えるところまでは良いが……そのあとアリスに触れさせるのは止めとくべきだな。
こいつの標的は、恐らくAL-1S……アリスの体だろう。
移し替えた後、アロナに頼むか?
『……………………まぁ、可能、ではあります』
「データケーブル……連結完了!」
『転送開始……保存領域が不足、既存データを削除します。残り時間9秒』
「え?嘘っ!?もしかして私のセーブデータ消してない!?ねぇ!?」
「部活動存続のためだろ?ドンマイだな」
『削除完了』
「そんなぁあ!!!!」
モモイの悲痛な叫びが木霊する中、データの転送が完了される。
──現在の私は消失寸前
そのうえ、希望するなんて言葉遣いだ。
アイツは自己を持ったAIと考えるべきだろう。
それこそ……アロナに近しいレベルの俺の想像の及ばないレベルの技術で作られた何者かが……あのゲーム機の中に入っている。
物にも死はあると俺は思っている、その感覚でいうと、この何者かを失ったこの廃墟は完全に死んだのだろう。
いや、死ぬとは違うのか?
蛹の中から孵化し飛び立ったとでもいうべきか……
そして、モモイのゲーム機に新たな文字が浮かび上がる。
< G.Bible.exe >
目当てのものはしっかりと入れてくれたらしい。
仕事はしっかりと熟すタイプなのか?
であれば……妨害したところでアリスの奪還も諦めてはくれなさそうだ。
「こ、これって!?」
「こ、これ今すぐ実行してみよう!本物なのか確認しなきゃ!G.Bible.exe起動!!
あ、何かポップアップが出て……って、パスワード!?何それ、どうすればいいのさ!?」
「……大丈夫。普通のパスワードくらいなら、ヴェリタスが解除できるはず……!」
『先生、ここから先は少し荒事になります……今のうちに色々準備を』
態々、ヒマリが個人通信での連絡を入れてくる。
C&C……コールサイン
時間があるうちに調べておけってところか。
下手すれば、俺が対応することになりそうだからな……あいつらにも連絡を入れておくべきか……
「そ、そうだね、そうすれば……!」
「これがあれば、本当に面白いゲームが……『テイルズ・サガ・クロニクル2』が……!」
「うん、作れるはず!よしっ!待っててねミレニアムプライス……いや、キヴォトスゲーム大賞!私たちの新作は今度こそ、キヴォトスのゲーム界に良い意味での衝撃を与えてやるんだから!」
尤も、こいつらにとってはまだ予期してない困難ではあるのだろうが……
この勇者一行なら、上手く行くことだろう。
冒険の旅に困難は必要不可欠……そういうもんだろ?
ついに始まる作戦。
勇者一行と相対するはメイド部隊。
次回 Cleaning&Clearing
リオのエミュ難しくないですかね……苦手……
なんと、皆様の応援あってか月間の方で7位になっておりました……ありがたい話でございます……至らぬ作者ではございますがお付き合いいただけるとありがたいです。
また、200人突破記念イベント、あのあとメッセージの方もいただきまして嬉しい話です。
まだ質問は受け付けてますのでご参加いただけると幸いです。
最後に、ここすき、感想、評価、よろしければお願いいたします。
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持