そうして始まった戦闘だが……数分戦って分かるが……こいつも出鱈目な強さをしている。突貫してくるアスナの顔にマグナムを向けて発砲する。
しかし、それをまるで分かっていたかのように、最小限の首の動きだけで避けやがる。
「あはっ!見えてるよ!」
何が見えてるのか俺にも教えてほしいもんだぜ。
背後から当たるように跳弾させた弾も避けるとかどうなってやがる。
「で、でたらめに、強い……!これが、C&Cのエージェント……!」
「だからって先生の弾も当たってないのおかしくない!?」
「こんなに避けられると俺も自信失うな……」
「先生まだ頑張って!」
アイツのことを俺は獣のようだと表現したが、あれはそんなものに当てはまるもんじゃない。
あれが直感だと?冗談もいいところだろ。
一種の未来予知、オカルトじみたそれほどの力だ。
自分がどこに居れば安全か、どう体を動かせば安全なのか。
本来何度も訓練して覚えるはずのそれを脊髄反射でやっている。
だから戦うことに集中できるし、戦いを楽しめる。
厄介な敵だ。
仮に当たったとしても……
「ふーん……思ってたより全然悪くないね!双子のパワー、ってやつかな。良いじゃん良いじゃん!」
モモイとミドリのクロスを組んだ同時射撃を喰らって、あの余裕の表情だ。
勘弁してほしい。
かすり傷はあれど、それが彼女を止める理由にはならないし……何よりも戦いを楽しむアクセント程度にしかなっていない。
「まさかここでアスナ先輩と出くわすなんて……!」
「お姉ちゃん、ここは一旦退こう!」
「うん、仕方ない……!」
「そうはさせないよっ!」
「お前ら、しゃがめ!」
俺がモモイとミドリを伏せさせると、その頭上を通り抜けて、対物ライフルの弾が地面を抉り飛ばす。
13.97mm……ボーイズ対戦車ライフルを扱うC&Cの角楯カリンのものだ。
「きゃあっ!?」
「大口径弾!? 何で!?」
「これ、カリン先輩の……っていうことはまさか、ウタハ先輩……!?」
それはウタハの妨害が失敗したことを意味する。
ヒビキの高射砲とウタハの近距離戦で封じるとの話だったが……スナイパーなのに近距離での戦闘にもしっかり対応したわけか……
伊達にミレニアムの治安維持組織の狙撃手を務めている訳ではないようだ。
「ハレ先輩から連絡!カリン先輩を抑えられなくなって、ウタハ先輩が捕まっちゃったって!」
「この状況を見れば分かるよ!」
「あっ、マキからも連絡! アカネ先輩がシャッターを爆発させて脱出したみたい! 同時に、すごい数のロボットがこっちに向かってきてるって……!」
「ええっ!?」
「失敗するときはまとめて来るもんだ……やるな、聞く限りかなり上等な作戦だったんだがな」
俺はアスナにそう呼びかける。
「そうでしょ!私たち最強だからさ!何が何だか分からないけども、私たちが優勢って感じ?もしかして、そっちの計画は失敗寸前かな!」
嫌味すら感じないほどの明るさでアスナはそういった。
確かに、ミレニアムの中じゃ間違いなく最強だろうな。
だから……この作戦の成功を握るのはミレニアム外からの変数だ。
「失敗……」
「違う。まだ失敗じゃない……!」
今回の作戦の成功条件はともかくとしてその逆、失敗条件をどうやら向こうは勘違いしてくれているようだ。
モモイたちの捕縛がこの計画の失敗だと思っているようだった。
こいつらはちゃんと、自分たちがもし保管所に辿り着けなかった場合のことを考えて作戦を立てていた。
ミドリからの発案である、その作戦こそ、今までミレニアムに居なかった外からの変数。
……アリスを使ったものだ。
最上階が停電したのを合図に、アリスは自力で反省部屋から脱出し……想定通りであれば保管所に向かっているはず。
こっちで派手にやればやるほど、一回対処したアリスへの警戒は薄まる。
作戦が上手く行けばそのまま合流、無理だったら一度囮として機能したアリスを使って、俺たちを囮にする。
自分すらも囮として目的のものを手に入れようとするクレバーさ。
ミドリのその作戦には素直に脱帽したもんだ。
姉共々こいつらは泥棒の才能があると思う。
そんな道には行かせはしないが……
「うーん?何かちょっとずつ必死さが無くなってる気がするけど……まさか、諦めたわけじゃないよね?」
勘が鋭いのも考え物だ。
まだ確信に迫ったわけではなさそうだが、既に勘づき始めてやがる。
「この状況なら、諦めた方が賢明だとは思いますけどね」
そして、長々と戦闘をしていたせいか、ユウカが、自身の武器であるMPXをもってやって来る。
まぁ……正直この作戦をする以上、分かっているつもりでいたが……ユウカは俺を睨んでいる。怒らせてしまったようだ。
禁酒で済めばいいんだが……
「うっ、ユウカ!」
「久しぶりね。とりあえず、ここまで状況を引っ掻き回したことについては褒めてあげる。それについては本当に驚いたわ。でもそれはそれ、これはこれ……こんなありとあらゆる方法を使ってまで生徒会を襲撃するなんて、やり過ぎよ。……猶予を与えた事といい、ちょっと甘すぎたのかしら」
普通に犯罪行為だと俺は思ってるんだが、それでもなお甘すぎた程度で済ませるのはどうなんだセミナー会計冷酷な算術使いのユウカ……
「もう悪戯じゃ済まされないわよ。無条件の一週間停学か、拘禁くらいは覚悟した方が良い」
「停学!? 拘禁!?」
「そんな、一週間だとミレニアムプライスが終わっちゃう!」
甘い……計画に乗ってこの騒動の元凶でもある俺が言うのは何なんだが……退学処分となってもおかしくないと思っていたのだが……しかし、ミレニアムプライスに参加できないとなると不味い。
態々リスクを犯した意味がなくなる。
「アリスちゃんも、今は反省部屋に入ってもらってるわ。一人だけで可哀そうだったけど、あなたたちが来ればきっと喜ぶでしょう」
「うぅっ……!」
「捕まっても大丈夫だと思ったけど……このままじゃ、たとえ『鏡』を奪えたとしても、アリスとユズだけじゃゲームは作れない。どうにかして、突破しないと!」
「突破?へぇ、私たちを?」
モモイの言葉を聞いたユウカは、ニヤリと口角を上げ、勝ち誇ったように後続を指さす。
どうやら、先ほどシャッターを突破したと言っていたC&Cのアカネが、後続のロボットを引き連れて、到着した。
「ふぅ、やっと着きました……こんなに息が切れるなんてまさか、本当に体重が……いえ、そんなはずは……」
「うえぇ!?」
「あ、アカネ先輩に、戦闘ロボットまで!」
「ふふっ、今度こそ『本物』みたいですね」
後ろに引き連れた押収された戦闘ロボットのせいもあるだろうが、随分と圧の強い奴だ。
囮に長時間拘束されたのが余程悔しかったようだな。
「あらためて、初めまして。モモイちゃん、ミドリちゃん。マキちゃんとコトリちゃんについては、ギリギリ許せる範囲かもしれませんが……ここまで入り込んできてしまったあなたたちに、もう言い訳の余地はありませんよ……それに」
「先生……まさか先生が手引きしているとは思いませんでした」
アカネの言葉を継いで、ユウカが話しかけてくる。
悲しそうな失望とはまた違うそんな驚いたような表情をしている。
「失望したか?」
「……いえ、先生には先生の仕事があります……私も私の仕事をするまでですので」
それでもそういうことを言えるのは、彼女が強い子であるからに他ならない。
真実を伝えたいところではあるが……そうもいかないからな。
悲しく思えどアイツはもう覚悟してこの場に立っているのだろう。
なら、俺からはとやかくは言えない。
「流石だな。ユウカ」
「……それはそれとして、先生はこの先一か月禁煙してもらいますからね」
やっぱりこいつは冷酷な算術使いだ。
よりによって俺の生命線を……くそ、仕事の為か……
俺の落ち込む様子を見て溜飲が下がったのか。言葉を続ける。
「それが嫌でしたら、今からこっちについても構いませんよ」
そこで甘えを見せてしまうのがこいつの好きなところであり、悪いところだ。
「ここで、本当に……?嫌だ……っ!」
「お姉ちゃん……!」
「ごめん、ごめんね先生……先生は色々助けてくれたのに、私たちの力不足で……私たちのせいで……!」
こいつらの好きなゲームで例えるなら……『負けイベント』だと思い込んだモモイとミドリは、泣きそうなほど顔を歪ませて、俺に謝ってくる。
やり方はどうあがいても悪いことだ。
とは言え、その手段を取らせたのは俺の責任。
てめぇの仕事でガキを泣かせるのは趣味に合わない。
「まだ泣くには早ぇだろ。モモイ」
「で、でも……もう……無理だよ。前にはC&C、後ろにはミレニアムの生徒会……ミレニアムでもトップレベルに強力な二大勢力。こんな状況で……一体どうしたら……!」
「お前さんが諦めてどうする。まだ、アイツは諦めちゃいねぇぞ」
時間稼ぎは少しで充分ってもんだ。
アイツはもう自分がどうしたいのか、何者になりたいのかハッキリ分かっているはずだ。
「おい、ユウカ。お前さんさっき、俺にこっちに来ないかと聞いてきたな。悪いが断るぜ」
「へぇ、一応聞いてあげますよ。何でですか?」
「俺がこいつらに付いたのは……そういう俺が好きだからさ」
お前もそうなんだろ?
なぁ、アリス。
『ターゲットを確認。魔力充電……100%!』
「いいか、仕事は最後まで、逆転は一手でひっくり返すもんだ」
重低音がフロア内を響き、迫りくる脅威を知らせる。
既に三回、ゲーム開発部の二人は耳にしている。
だからか、既に身を伏せて衝撃に備えている。
「ん?」
「……あ、すっごい嫌な予感」
アスナ、お前さんは確かに強い。
その勘なら大抵の射撃は対処できるだろう。
でも、いくらのお前さんとは言えど……光は避けられねぇだろ?
『光よ!!!!』
その掛け声と共に目の前のC&Cとロボットたちが光の帯の中に消える。
「きゃあぁぁっ!?」
アスナの悲鳴と共にセクションの一角が崩壊し、一掃することが出来たようだ。
しかし……俺の知るレールガンはただ早い弾を打ち出すだけなんだが……これじゃまるでレーザー光線じゃねぇか?
……アスナ、あれに直撃してたよな……死んでねぇか……?
「あ……アスナ先輩!? 大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃないよー! あははっ、思いっきり当たっちゃった! 何これめっちゃ痛い、頭のてっぺんからつま先まで今一ミリも動かしたくない!」
「……大丈夫そうですね」
とても生徒に向けて言っていい言葉じゃねぇのは分かってるが言わせてほしい。
人としてどうなんだそれは……?
死にはしなくとも気絶するもんだろうが……なんで意識持たせれてるんだ?
ヘイローのおかげもあるだろうが……つくづくあのアスナとかいう少女……敵に回したくないやつだ。
「そんな、アスナ先輩と半分近くのロボットをまとめて行動不能にするなんて……!? た、たった一発で、この火力……!」
「カリン、状況を報告してください!今のビーム砲はどこから……!?カリン、カリン!?そういえば、カリンの火力支援が止んで……いつから!?」
そうして、カリンがいるであろうビルの屋上に目を向けると同時に、そのビルの屋上が爆発する光景が目に入る。
「今の爆発は……屋上!?」
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エンジニア部だったかしら。
紫髪の子とその子を尻に引いて抑え込んでいる黒髪褐色の子がスコープ越しに見える。
先生から予め貰っておいた無線から彼女たちの会話が聞こえる。
『エンジニア部、部長のウタハ……君はどうしてそこまでする』
『どうして……?それは、部活を守りたいからに決まっているだろう?』
『……噂に疎い私でも、聞いたことはある。エンジニア部のことはよく知らないが、あのゲーム開発部は、ちゃんとした部活動とは言い難い。あんな自己中な問題児たちを、なぜ助ける?』
あの依頼のあと、先生に頼んであの子達のことを教えてもらったわ。
色々問題を引き起こして、自分たちのことしか考えてなくって、周囲に迷惑ばかりかけて……
『それは……ただの自己中じゃないからかな?』
でも、やりたいことがハッキリしていた。
なら、それってとってもアウトローじゃない?
『あの子たちは友人のために、一生懸命頑張っている』
『別に部活動じゃなくても、ゲームは作れるだろう……』
『……それは君の言う通りだ。けれどね。もちろんただの「友達」にも意味はある、それでも……同じ部活の仲間というのは、お互いを強く結びつけてくれるものだ』
今回のことも、友達の為に、自分の居場所を守るためにやっているんでしょう?
なら、今回の依頼、断る理由なんて……どこにもあるわけないじゃない!
『あの子達にも、あの部活で一緒にやりたいんだという気持ちがあるから……こんなにも、必死に頑張っているんだろう』
息を止めて……銃を構える。
狙う先は……あの褐色の子の背後の地面……
「っ!狙撃!?」
地面に命中……カウンターで狙ってきた……今!
弾が命中した地面が爆発し、その風で、拘束が解けたようで、紫髪の子が距離を取る。
『今のは……』
「聞いてたわよ、部長さん。熱い演説だったわね」
『誰だい?君は……味方でいいんだな?』
「えぇ!便利屋68社長陸八魔アル。先生からの依頼を受けて、助太刀に来たわ!」
今回はいつもと違って、私だけの仕事……ソロでの依頼なんて何時振りかしら。
しくじらないように……陰ながら援護させてもらうわね。小さなアウトローさんたち。
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『……こちらカリン。外部組織からの妨害にあった。対処する』
アカネのもつ端末から、手短な報告が聞こえる。
あっちも始めたようだ。
「敵を騙すのなら味方からだ。覚えときな」
今回、アルたちの参戦は俺は伝えちゃいない。
もし万が一詰みに近い状況まで行ったら、自己判断でやってくれと俺は頼んだ。
いくらシャーレの組織であるとはいえ、別の学校の所属だからな。
外聞が悪いってもんだろう。
だから、最終決断は向こうに任せた。
ケツは俺が持つが、無理に関わることはないってな。
結果は、あの爆炎が教えてくれている。
「モモイ、ミドリ!今です!」
「あ、アリスちゃん!?どうしてここに!?」
本来のミドリ達の作戦であれば一人で保管所に行ったはずのアリスが、目の前に現れる。
まぁ、あの砲撃でモモイとミドリも気づいているはずなんだがな。
あの遺跡で眠る機械の王女が、ここまで来たんだ。
アリスは、何の迷いもなく、この予定外の行動を選んだ。
「……生徒会の差押品保管所に向かう途中に、考えていました。『ファイナルファンタジア』、『ドラゴンテスト』、『トールズ・オブ・フェイト』、『竜騎伝統』、『英雄神話』、『アイズエターナル』……そして『テイルズ・サガ・クロニクル』」
目を閉じながら、俺がいない間にプレイしたゲームに思いを馳せ、その冒険譚を噛み締めるように言葉を綴る。
「どんなゲームの中でも、主人公たちは……決して、仲間のことを諦めたりしませんでした」
俺は、ゲームを大してプレイしたことはなかったが……あれが持つ力ってのは俺の想像以上のものなのかもしれねぇな。
「なので、アリスもそうします!試練は、共に突破しなくては!」
仲間のため、友のため……リオ、見てるか?
お前さんが生きていないと評したアイツは立派に人間やってるぞ。
機械であるはずのアリスが合理を捨てて感情を優先した。
モモイ、お前に任せて正解だったかもな。
「くっ、マズいですね……!」
「あはは、面白くなってきたね!けどまだ身体がビクンビクンしてて、まともに立てない!」
「アスナ先輩、それ本当に痛がってます……?それより、カリンの狙撃が止まっているということは、やはりあちらでも……」
「っ、逃げられる!」
「悪いな。ユウカ……文句はツケといてくれ」
懐から煙幕を取り出し、地面に投げつけて展開する。
これ以上戦うわけにもいかないし……何よりユウカに向けて撃つのは気が引ける。
そうして、俺たちは差押品保管所に向かい……無事に『鏡』を手に入れることが出来た。
そう……ここまでは順調だったんだ。
俺はすっかり忘れていた。
いや、アスナとの戦闘で忘れさせられていたのかもしれない。
この作戦にはもう一人、デカい障害がいる。
「おい、テメェら……命が惜しいなら止まれ」
鏡を手に入れて……いざ帰ろうとした矢先、背後から声を掛けられる。
少し少年のような雰囲気を感じるドスの効いた少女の声だ。
「ふん、命は、ちょっと困るな。これからこちとらでけぇヤマふむんでな。
フリーズもホールドアップもあとにしてくれねぇか?」
「へぇ、冗談言う余裕はあるわけだ。話はリオから聞いてるぜ。先生」
振り返るとそこにはスカジャンを羽織ったメイド服姿のかなり小柄な少女が銃を構えて立っていた。
「お前ら、先に行ってろ」
「……先生!死んじゃ嫌ですからね!」
アリスにそう言われながら、俺はネルを見つめている。
「死なねぇっての……んで、話聞いてるなら何で銃を向けてる。ネル」
何となくだが、リオとヒマリに見せていいもんでもない気がするからな。
俺は、無線を外して、アロナに頼んで、この一帯の監視カメラをオフにしてもらった。
「リオから言われててな。脅威を測るべきもう一人の人物としてテメェを挙げていた。あたしも気になっててなぁ。あのリオを誑かした男がどんなもんなのかをよぉ」
道理で、俺が手を出しても何にも連絡が来なかったわけだ。
アイツは、アリスの観察ついでに俺のことも測ろうとしてたわけだ。
あんの合理主義め……
──先生はゲーム開発部に付くのでしょう。ならこれで確率は五分五分よ。
要するにだ、00は俺にぶつけるから、問題ないってわけか?
ったく、言葉が足りねぇよ。
「言っとくが、誑かした記憶はないぞ、俺には」
「そうなのか、あんなに話題に出すからてっきり……まぁ別にいいわ。あんたも仕事人なら分かるだろ?構えろよ」
どうやら、ネルはリオの友人っぽいな。
友達が少ないとは言われてたが、まぁ意外と交友関係は広いもんなんだな。
「C&C コールサイン・00 美甘ネル。簡単に死んでくれるなよ!」
そういって、ネルは空中に飛び出し、そして、背面が爆発し、急接近を仕掛けてくる。
あの映像で見たブレの正体はこれか。
「ありゃ、避けられた。初撃を躱されたのはテメェが初めてだ。先生」
「そりゃ、光栄だな……」
ほぼ見えなかった。
速度だけなら、こいつは今まで会ってきた奴の中でも最速なんじゃねぇのか?
どういう原理か知らねぇが、こいつは好きな個所を爆破して、それで瞬間的な加速を行っている。
理屈は抜きだ。
アイツの攻撃は数秒早く躱さないと諸に喰らっちまう。
それにあの銃撃、直撃と同時に爆破するのが厄介だ。
全部の弾がそうなわけではないが……一瞬腕を捻って突き出すように撃った弾は大爆発を起こしている。
しかも通常の弾よりも速く威力も高いオマケつきだ。
「流石だな、先生!カイザーPMCをぶっ殺しただけはある!」
「その、動画!どこで見やがった?」
そう、このミレニアムで向かった先々で言われるあの一戦の動画。
モモイたちに頼んで見せてもらった俺とアルが協力して、カイザーPMCとゴリアテを倒す動画だが……あれはどこから漏れたもんだ?
「あぁ、ヴェリタスの奴らだな。SNSで動画が上がると同時に別のカメラをハックして録画してたんだとよ」
あいつらかよ……!
いや、この前会ったときの表情から見るに申し訳なさそうな表情は一ミリも感じなかったぞ?……まさかヒマリか?あいつがやったのか?
「おい、考え事してる暇あんのかよ!!」
帽子を掠めながら頭を狙って放たれた回し蹴りを回避し、マグナムを向けるが既にそこにネルの姿はなく、背後から感じる殺気のまま後ろに蹴りを入れると、掴まれる感触と同時に、壁に向かって投げられている。
受け身を取りながら、思考をネルの方へ戻していく。
接近戦なら負けなしだったか?
ったく……五ェ門よりも早い奴は初めて見たぞ。
「オラオラァッ!!もう終いかよ!!へなちょこじゃねぇか!!」
「ふざけるな、誰がへなちょこだ!!」
動きは速いが、比較的直線的……あの爆発での加速も二連続は無理か?
それとも出来るが、制御が出来ねぇのか……まぁ舐めてるのなら、それが隙だな。
また突っ込んでくる。ここで真っすぐ打っても避けられるのが関の山、だから、撃つのは地面。
角度によるが、この距離間なら当たる。
「っぐ……やるじゃねぇか」
地面に当たり、跳弾した弾は、そのままネルの脇腹に当たり、動きを止める。
血こそ出てないが、それなりの衝撃は入ったみたいだ。
「あんま大人をなめるもんじゃねぇよ、チビスケ」
「……チビスケだぁ?!先生、あんたでもそれは許せねぇな!!あたしの身長に言及した奴らが、最後にはどうなったか教えてやろうか!?」
どうやら、龍の尻尾を踏んじまったようだった。
顔を真っ赤にしているが、明らかに怒りで力が増しているように見える。
「中々イラつかせてくれるじゃねぇか……様子見だけのつもりだったが気が変わった……ぶっ壊してやるよ!」
そういって、ネルの姿が消える。
瞬間真横からの衝撃……アロナのバリアがなきゃ、死んでたぞ。
予測はついている。
さっきまでのあいつは舐めてやがったんだ。
二回連続の瞬間加速……元々目で追いつけないほどの速さだったが……これじゃ完全に予想がつかねぇ。
アロナのバリアには限りがある……
俺一人の限界点はこの辺りか?
「銃は使わねぇであげてんだ!まだやれんだろ!」
目は無理だな、音と殺気で対処するしかねぇ。
気配は上から、左へ、飛び蹴りか。
「対応するの速ぇな、先生」
「プロなんでな」
「あぁ、でもあたしの勝ちだ」
蹴りを避けたまではよかったが……銃同士を繋ぐ鎖が俺の体に絡みつく。
蹴りを避けられることを読んだうえで、アイツは次の手を同時に打っていた。
戦闘の組み立ても上手いと来たもんだ……
「さてと……これで終わりだな。一応リオからは連行しろって話なんだが……」
「悪いが、リオには謝っておいてくれ」
「あ?この状況で逃げれるとでも」
俺は素早く二回手を叩く。
それはずっと控えさせていた彼女への合図だ。
最近、シャーレの秘密部隊に入った新入り忍者へのな。
「イズナ流忍法!空蝉の術!!」
ネルの前に現れる二人目の刺客。
狐耳の忍者と共に 次元は夜を駆ける
次回 汝、ゲームを愛せよ
一日二本投稿、人間頑張れば出来るもんですなぁ……
さて、ここでオリチャー発動。オリチャーはあともう一個予定してますな
ここで一旦休憩を込めて、イベントシナリオを新章で行う予定です。
位置的には……この下か……もしくは、Vol.EXの下に生やす予定ですね。
さて、次回 百鬼夜行より愛を込めて
活動報告にて募集した質問にお答えするものを書きました、良ければ一読いただけると拙作を楽しんでいただけるかなと思います。
それでは、最後にもしよろしければここ好き、感想、評価いただけると大変励みになります。
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持