『C&C、アビ・エシュフと接敵!戦闘を開始します』
タワーへと向かう道中で、ヒマリから無線が入る。
ネルとの通信も取れたようで、データの収集を01から03で足止めしながら取り、そして00をぶつける作戦を取ったようだ。
ネルを一撃で短時間の気絶に追い込んだ奴が相手に回っているとは言え、残ったC&Cとてそこらの軍隊よりも圧倒的に強い。
倒すことではなく防御と足止めに徹する動きを取れば、時間稼ぎにはなるだろう。
『C&Cは、後輩ちゃんたちとチーちゃんに任せて、私は先生のサポートに回ります』
「ありがてぇ話だが、大丈夫なのか?」
『ご心配なく、それよりもその先に未確認の機体のシグナルが検知しました、ご用心ください』
その声が聞こえた辺りで、奥からキャタピラの駆動音が聞こえてくる。
しかし、風にガソリンの香りが混じってない辺り、戦車の類でもないようだが、走っていると、徐々に姿が見えてくる。
そして、道の真ん中で立ちふさがるように仁王立ちしたその存在に俺たちの足が止まる。
「……何あれ」
「うわぁっ!?ダサ!!!」
ミドリとモモイが思わず口を零してしまうほどの……奇抜というべきか前衛的なデザインをした機械がそこにいた。
全身が白と紫の配色の装甲に覆われ、子供の工作のような頭部に、ミレニアムの校章を潰すように爪痕のような傷が入ったボディ、そこから四本の腕が生えていて、右下の腕にシールドらしきもの、右上の腕には近未来的なバズーカ砲。
左下の腕には、巨大なショットガン。左上の腕には三門の機関銃が纏まった重火器を装備している。
そして、足はキャタピラ……さっきの音は、目の前のロボットから出ているみたいだ。
「……ヒマリ、あれに見覚えはあるか?」
『……一応……前にですね……リオの机の上に置いてあったフィギュアによく似ていると言いますか……』
あれも、リオの発明品と見るべきか……?
あいつ、デザインセンスねぇんだな。
とは言えだ、あの手に持っている武装はかなり隙が無い。
遠距離はあのバズーカ砲で、中距離はマシンガンが、近距離はショットガンと盾を用いて戦い、そして機動力もあると……
ふざけた見た目の割に、武装のセレクトは本気だ。
「ふー……ヒマリ、リオの奴調べんのにどれくらい時間がかかる?」
『そうですね……5分ほどお時間いただきたいですね……』
あれ相手に五分耐え抜かなくなきゃならない……周りの地形も使えば行けるか?
「俺は正面、ゲーム開発部とエンジニア部は左右へ展開しろ」
ガキに正面行かせる趣味はねぇからな。
それぞれの部隊に簡易的な指示を飛ばして、俺はそのまま直進していく。
向こうの体格からして、とっくのとうに左右に向かったあいつらを見ているはずだが、それを追う気配はない。
他の機械たちで足止めが出来るからの対応か、それとも俺とあのヘンテコなロボットを必ず戦わせたいのか。
腰に携えたマグナムに手を掛けて抜き取り、臨戦態勢に移る。
遠目では分からなかったが、胴体の前にあるキャタピラの上に、人が立っている。
黒と藍色のボディラインが際立つぴっちりとしたスーツに紫色のライトが光る。
顔にはバイザーのような機械と側頭部に円盤のような機械を装着して、黒く艶やかな長髪を一纏めにしている。
その瞳は見えないが、その姿と髪に俺は見覚えがある。
「……まさか、リオか……?」
「…………」
リオらしき人の手にはM1911らしき拳銃が握られており、その銃口が俺の方に向く。
そして、躊躇なく発砲を開始する。
帽子を押さえて跳び退きながら、近くの建物へと避難した俺は、無線を入れる。
「お前ら、一旦進軍停止」
『え!なんで、どうしたのさ先生』
「あのロボットの上にリオがいる」
『えええぇぇぇぇ!!』
モモイが驚いた声を出すが、俺の報告で、更に大声を出す。キーンと耳鳴りがする。
一先ずリオが生きているということに安堵したが……恐らく洗脳状態と見るべきだな。
どうしたものか、仮にあの機械が爆発でもすりゃ、上に乗ったリオが巻き込まれる。
つまり下手な攻撃が出来ねぇ。
ただそうすりゃ、向こうから一方的に攻撃される。
「リオとあのロボットを引き離す必要があるんだが……」
『それなら、私達があのロボットを引き受けよう』
ウタハが冷静に言葉を告げる。
確かに機械を大量に作ってきたエンジニア部なら、アイツの弱点も見つけられるかもしれねぇな……
「分かった、ならエンジニア部とゲーム開発部で、あのロボットを受け持ってくれ。死ぬんじゃねぇぞ」
『アリスを取り戻すまで死ねないよ!』
モモイの声が聞こえたと同時に、巨大なロボットの顔の側頭部に弾丸が直撃する。
肝心のロボットは、体を回転させて、射撃が行われたであろう方角を向いて、バズーカ砲を構える。
そしてそこから、極太のレーザーを照射する。
着弾と同時に大爆破が発生。
いくつかの建物が倒壊するが、返事代わりに射撃がロボットに命中する。
どうやら動きながら射撃していたお陰で、あのレーザーからは逃れられたようだ。
体の向きが、正面から外れた隙を狙って、走り出す。
さっきの射撃で分かったが、リオの射撃の腕前は、それなりだ。
滅多に前に出ないうえに戦闘もそこまでしないのだろう。
それなら、あのリオの射撃は怖くない。
射撃はどこまで行っても点の攻撃。
それなら銃口さえ分かれば避けれる。
走って近づいてくる俺を捕捉したリオが銃口を向ける。
射撃。
体を逸らして避ける。
再度、射撃。
前に跳び出し、回避しながら、転がり速度を落とさずに走り出す。
あともう少しで飛び乗れる……影が地面に移る。
影?
上を見上げると巨大な銃口が目に映る。
ショットガンの銃口……まさか、リオの視界と繋がって……これは……死んだ。
爆音と爆風が全身を襲う。
『死なせません!!!!』
痛みは……ない。
思わず立ち止まってしまうが、予測していた痛みは体を襲わず、そして地面を見ると無数の弾痕。
『先生の命はこのスーパーアロナちゃんにお任せください!』
「最高だぜ、アロナ!」
最後の一歩を踏み出して、ロボットの上に飛び乗る。
リオが再度銃口を向ける。
アロナのバリアには限度がある。
この後の戦闘も考えりゃ、可能な限り控えるべき……この至近距離で避けるのは難しいが……さっきのに比べりゃなんてことはない。
頭を狙った弾丸を首を振って避けて、手に持った銃を蹴って、武装を解除させる。
このロボットを倒すためにもここにリオがいたら問題だからな。
「悪いが、俺と少し踊ってくれ」
リオの体にタックルを仕掛けて、そのままロボットの上から下りる。
当然と言えば当然、ロボットは俺の方を向き、リオを奪取しようとするが……リオがいない以上彼女たちにとって遠慮する理由はどこにもない。
銃口を向けたロボットへと強烈な爆撃が襲う。
とは言え、全身を装甲で覆われたあのロボットにはそれだけでは足りないようだが……脅威の優先順位を変えるには充分な一撃だったらしい。
そのまま建物の影まで辿りついた俺の腹に膝蹴りが入り、そのまま投げ飛ばされる。
「がはっ……痛ってぇな」
アロナのバリアを低出力で作動させる。
リオの洗脳を解くのが今の俺の仕事だろう……だから、そっちは任せたぜ。
チビッ子勇者たち。
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先生が物陰に隠れたのを確認して、私たちは機械の側頭部を銃で狙撃する。
「ミドリと私で前衛を張るから、ユズはウタハ先輩達と合流して」
エンジニア部たちが今、後方から私達の支援爆撃を行ってくれている。
ユズの『にゃん’sダッシュ』はどちらかと言えば後方より、だからウタハ先輩たちに合流させて、私とミドリでアイツの注意を引く。
あのバズーカ砲だけは絶対に使わせちゃいけない。
ユズとエンジニア部のみんなだったら、あれを破壊する手段もきっとあるはず。
「ミドリ……」
「うん、行こう、お姉ちゃん」
二人で銃を持って、左右に展開する。
ロボットの周りを回りながら、銃を発射し始める。
ミドリは右から攻め始めたため、シールドで大体の攻撃は防がれるけど、反対にいる私からの攻撃は通る。
大して効いている気がしないけど……
『皆さん、あの機械の正体が分かりました。兵器名「アバンギャルド君」
ふざけた名前をしていますが、それは置いておいて、弱点はあの兵器は空輸が出来るほど軽く出来ている点です。
精密な調整が必要になりますが、ヒビキちゃんとユズちゃんの爆撃を同時に頭頂部に当てば、理論上は横転させることが、可能です』
「じゃあ、私とミドリでこのままここに留めるから、みんなお願い!」
走りながら、私とミドリでアイコンタクトし、そのまま銃撃を続ける。
ショットガンを構えられたら、建物の中を通って、散弾を避けて、走り続けることでマシンガンを避ける。
バズーカは近づけば、自爆があるから撃てないのかな?
それならやりようは幾らでもある。
私とミドリは生まれてからずっと一緒だった。
だから、目だけで何を言いたいのかすぐに分かる。
あの日、アリスが奪われて、私が大怪我を負って……それから三日間私は寝たきりだった。
そのせいで、ミドリとユズの心を、壊しかけちゃった。
悪いのは、あのアリスを連れ去ったロボットのせいだけど……
でも元々それを見に行こうって言い出したのは私だから。
あの暗く沈んだミドリとユズの顔はもう見たくない。
あんな辛そうな目をもう見たくないんだ。
「はぁ……はぁっ……はぁ……!」
マシンガンの猛攻を避けながら走り続ける。
口の中が熱く、血の味がする。
でも、止まったら、アリスを助けらんないから。
辛いのはミドリも同じだから。
だから、走り続ける。
今、私にできる最大限の仕事はあいつをここに抑えて、みんなに意識を向かせないこと。
『二人とも、お待たせ!』
ユズの声が聞こえる。
二人の弾道計算が終わって、位置につけたみたいだ。
もうひと踏ん張り。
走りながら目にする。
甲高い音を鳴らしながら、二つの弾が、あのロボットの頭に直撃する瞬間を。
二人とも可能な限りの神秘を込めたんだと思う。
その爆発は、ロボットの全身を包み込み、鈍い金属音を鳴らす。
「はぁ……はぁ……」
「……わ、私、あのセリフ言いたくてムズムズする……!」
「お、お姉ちゃん!それはちょっと我慢して!縁起が悪い!」
少しだけ気が抜けたのかもしれない。
走りすぎて、単純なことが頭から抜け落ちていた。
あの巨体なのに、地面に倒れた際に来るであろう衝撃と音が聞こえていなかった。
目を見合わせて笑ったその頭上を巨大な光の柱が通る。
そして、その先で巨大な爆破が起こる。
「嘘。ヒマリ先輩!?」
『……まさか、既に弱点を見越して改造を……!?』
ミドリの声とヒマリ先輩の声が聞こえる。
今はそれどころじゃない。
「それよりも、みんなは!」
『こ、こっちは、大丈夫だとも……直撃はしなかったが、何名か爆破に巻き込まれた』
砂嵐が酷いけど、ウタハ先輩の声が聞こえる。
命に別状はないみたいだけど……
「お姉ちゃん、まだいける?」
「当たり前だよ。徹夜でピーチ鉄道100年やってた方が、よっぽどしんどいね」
爆煙を振り払いながら、出てきたロボットは体から少しだけ火花を散らしているけども、それでも変わらない速度で動いている。
相手の武装は……?
バズーカ砲はまだ動く。
ショットガンと盾は健在。
マシンガンは砲身が一つ折れてる。
全然まだ不利だね。
「行くよ、ミドリ」
再び駆け出す。
ショットガンを向けられたタイミングで速度を上げて、キャタピラの下に向かう。
ここなら銃撃は通らない。銃口を近づけて乱射。
全部弾かれる。
ここはよっぽど硬く作ってるのかな。
足の基盤だからかな。
そのまま後方から飛び出して、背面を撃つ。
体をぐるりとまわして、私の方を見る。
そうすれば、今度はミドリが背面を撃つ。
射撃を躱して、ビルの中へ入って、ロボットがミドリを向いたら、私が背面から攻撃する。
隠れるビルもすぐ近くのものだから、依然としてあのバズーカ砲は撃てない。
これなら、地道だけど、みんなが復帰する時間も稼げるし……勝てる可能性がある。
ミドリが近くのビルに隠れる。
これで、索敵から外れたロボットは私の方を向くはず……
ロボットはこっちの方を向かない。
な、なんで?
射撃を続けても、こっちを向かない。
なんで?
え……待ってそれはしないはずでしょ?
「ダメだよ!!!こっち向いて!ねぇってば!!!」
銃を撃ち続けながら、視線を右上の腕に向けるとバズーカ砲が光り始めている。
ぶっ放す気!?
「ミドリ今すぐ逃げて!そこに向かってバズーカ砲撃つつもりみたいだから!!」
『…………』
砂嵐が嘲笑うかのように返ってくる。
ダメダメダメダメ!!!
何でこんな時に無線が!
やだ、ダメだって、こっち向いてよ!
「こっちを向けぇぇッ!!」
夢中になって銃を撃ち続けたせいで気付かなかった。
右から迫りくる巨大な盾の存在に。
全身に衝撃が走り、痛みと共に吹き飛ばされる。
全身の骨が折れちゃったのかな、それくらいの激痛。
なんで意識を保ててるのかすら分からない。
意識はミドリのことを考え始める。
ミドリなら違和感にもう気づいているはず……なら逃げてるかな?
硬いアスファルトの上を転がった私の側に誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえる。
誰だろう。
「ちゃん!……お姉ちゃん!」
「う……あ。ミドリ……良かった、逃げて……」
「何言ってるの!お姉ちゃんもだよ!!」
あぁ、駄目だなぁ、私は……また泣かせちゃった。
痛みでおぼつかない体を支えるように立ち上がらせようとしてくれる。
……でも、このままじゃ両方倒れちゃう……
現実はいつも無常だ。
ロボットがミドリのことに気が付いて、私たちの方を向く。
バズーカ砲を構えて、その砲身から光が見える。
このままじゃ、私だけでなく、ミドリまで死んじゃう。
そんなの絶対嫌だ。
姉妹として……お姉ちゃんとして、そんなことは許しちゃいけない。
私はミドリのお姉ちゃんなんだから……
だから……この子だけは……死んでも絶対に守り抜かなきゃ……!
「え……」
ミドリの腕を振り切って、前に出る。
両腕に私の全ての神秘を乗せて、突き出す。
発射されるレーザーが見える。
走馬灯ってやつ?これが。
光もゆっくり見えるもんなんだね。
「大丈夫、絶対に通させないから!」
両手に光が当たる。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
両腕が焼け爛れ、その衝撃で全身の骨にヒビが入るような痛みが走る。
力を込めたせいで頭の血管が切れたのか、目に血が入る。
「おね……お姉ちゃん……!」
あぁ、心配させちゃったね、ミドリ。
「……丈夫……大丈夫!!」
ごめんなさい、先生。
ごめんね、ユズ。
ごめんね、アリス。
「走って!!!」
ごめんね、ミドリ。
ありったけの神秘を燃やせ、私!
妹を全力で守れ!
出力が上がってるのか、どんどん光に飲まれていく。
視界が白く染まる。
殺させて堪るか!
ここで守れなかったら、次は、みんなに矛が向く。
みんな死んじゃう。
先生もみんなも、アリスも!
神秘を込めろ、私が私である為に!
仲間を繋げるために……!!
光の中で何かを掴む。
幻覚なのか、それとも私が死の間際に見た夢なのか。
私は……お姉ちゃんとして、あの子を守りたい。
私は、みんなの居場所を守りたいんだ。
だから……なんだっていい……力を貸して!!
手に掴んだそれを振りぬく。
明るい視界が、暗くなっていく……死んだのかと思ったけど……冷たい風が私がまだ生きていることを実感させてくれた。
「お姉ちゃん……?」
ミドリの声が聞こえる……ダメじゃん……逃げてって言ったのにさ。
「言ったでしょ。絶対に通さないから」
再び、バズーカ砲を向けてくる。
大丈夫、この力なら、絶対に守れる。
軋む体を動かして、地面を踏みしめる。
そして右腕を前に突き出す。
「……私は、みんなのお姉ちゃんなんだから」
左腕を突き出して、右腕を掴む。
「神秘解放……!」
言葉は適当だけど……あえて言うなら、妹の前くらい見栄張りたいでしょ?
再びあの光が迫りくる。
さっき掴んだものをイメージして……そして両腕を振り下ろす。
放たれた光が二つに切り裂かれて、後方で爆発が起きる。
私の両手には……小さな包丁が二振り。
これが……私の神秘だ。
「妹の前だからね。まだまだかっこつけさせてもらうよ。デカブツ君!」
お姉ちゃんとしての意地と覚悟
練り上げたものは、金剛石より硬く砕けない
次回 モモイ・ライジング
幣キヴォトスで現在出ている中では
アロナ > ケイ > 『鏡』付きヴェリタスの順でハッキングの技術力があります。
あの通信妨害はケイの目的のためにわざとあのタイミングでハッキングしたものですね。
さて……あのモモイ、私滅茶苦茶出したかったんですよね……皆様に受け入れられるか不安ではあったのですが……盛り上がっていただけたら幸いです。
あと、リオの恰好は6thPVのあの衣装をイメージしていただけばと思います。
pixivの方でキャラの設定等を公開し始めました。
新情報とかも書いてたりするのでもしよろしければ……
それでは、最後に、評価、感想、ここすきしていただけると励みになりますのでもしよろしければ!
今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か
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例:殺し屋の矜持
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例:1-10
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例:1-10 殺し屋の矜持