新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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2-7 王女のためのパヴァーヌ。

「なぁ、リオ」

 

「どうしたのかしら、先生」

 

「お前さん一体幾つ横領したんだよ」

 

「…………今関係あるかしら」

 

 聳え立つ摩天楼を見上げながら、隣に立つリオに聞くが、答えはノーコメント。

 このタワーどころか、この都市全部こいつが作ったんだよな……

 

 いくらキヴォトスの技術力が高ぇとは言え……この規模、数兆はかかってるだろ……

 

「こりゃ、帰ったらユウカにこっぴどく叱られるな」

 

「……っ」

 

 俺がポツリとこぼした言葉を聴いたリオの肩が跳ね、冷や汗を搔き始める。

 ユウカお前さん、どんだけ怖がられてるんだよ……

 

 一応立場的にはリオの方が上だよな……?

 

「ま、俺も一緒に受けてやるよ」

 

「いいのかしら……」

 

「あん時見破れなかった俺にも責任はあるだろ」

 

「おい、先生にリオ。イチャつくのはそれくらいにしてお出迎えが来たぜ」

 

 そんなつもりは一ミリもねぇが、揶揄ってきたネルの向けた銃口の先にゾロゾロと多くのロボットたちが現れる。

 C&C達があらかた撃破したと思っていたが、こっちの防衛用に残してやがったか。

 

 にしても多いな……全戦力だと助かるんだが……

 

 こっちの戦力は、俺、ゲーム開発部の全員。それに、ネルとカリン。そしてリオだ。

 C&Cのアスナは足を完全に潰されているのと何やら神秘の反動を食らって寝込んでる。アカネは頭蓋骨をやられたのに加えて、傷が治りつつある今は後輩であるトキの看病をしている。

 

「私とネル先輩で突貫でいいよね」

 

「へぇ、チビ助やれんのか?」

 

 俺からしたらどっちもチビだと思うんだが、モモイがネルに対して提案する。

 確か神秘を引き出せるようになったとか言ってたが……その傷でいけるのか?

 

「任せてよ、無双ゲームなんて飽きるほどやってるんだからさ!」

 

 両手の包帯がブレて綺麗な腕が見える。

 件の神秘を使ったのだろう。そしてその両手にはそれぞれ小さい出刃包丁を握り締めている。

 

「なら、俺と他のゲーム開発部、カリンで後方支援、リオお前さんは……」

 

「このスーツなら前線を張っても問題ないわ」

 

 正直リオの扱いに困ってたが、チャンバーチェックをしながら、リオがモモイとネルの隣に並ぶ。

 リオのことを知ってれば似合わねぇとは思うが、今はなんとも様になるものだ。

 

 しかし、戦ってる時は気にしてなかったが……

 今のリオの格好は大分目に毒だな……

 五ェ門辺りなら卒倒しちまうんじゃねぇか?

 

「くっくっく……」

 

「先生、気味が悪いよ」

 

「辛辣だな、モモイ」

 

 モモイが、じっとりとした目つきでバッサリと切り捨ててきやがった。

 あぁいうタイプからの忠告が一番心に来るんだよな……おじさんの心は脆いんだよ。

 

「さてと、案内は任せたぜ。リオ、ヒマリ」

 

「えぇ、任せて頂戴」

 

『マッピングは終了しましたので、最短ルートで行きましょう』

 

 ヒマリの言葉を最後に、前進し始める。

 それに呼応するようにロボット達も前進し始め、衝突が起こる。

 

「おい、モモイ」

 

「な、何?ネル先輩」

 

「アタシと点取り勝負しようぜ、それぞれ一点でよ」

 

 モモイに対してネルがそう提案すると、モモイの目付きが変わる。

 あんま遊んで欲しくはねぇが、あの方が二人はよく働きそうだから放っておくか。

 

 ネルは、爆破と射撃、それに格闘を合わせながら、怪我での不調を全く感じさせない暴れっぷりで、ロボット達を次々とスクラップにしていく。

 怪我してんだよな?つくづくキヴォトスの奴らの頑丈さを思い知らされるな。

 

 モモイは、軽い身のこなしで、光弾を避けながら、辻斬りのように次々とロボット達を切り裂いていく。

 一振一殺って所か……

 

 しっかし、ネルの爆破の突破力は言わずもがなだが……

 モモイのあの包丁はなんなんだ?

 

 斬鉄剣……あれほどじゃねぇが、光弾すら切り裂く鋭い閃光。

 思わず、あの侍の姿を重ねちまったな。

 背丈はまるで足りてねぇけどな。

 

「二人ともあまり遊ばないで頂戴、ここで消耗するのは非合理よ」

 

「ったく、相変わらず頭硬ぇな、リオ」

 

「あ、ネル先輩協力してもらってずるい!」

 

 リオに関しても、蹴りと銃撃を混ぜ込んだCQCを使ってネルの隙を埋めるように立ち回ってやがる。

 そういや、あの二人は同期だったが……何か繋がりでもあるのか?

 やけに息が揃ってるが。

 

「リオ、しゃがめ」

 

 俺の言葉を聴いたとほぼ同時に体をかがめたリオの背中の上をマグナム弾が通り、後ろにいる蜘蛛みたいな見た目のロボットを破壊する。

 

「先生、後ろ」

 

 銃口を向けられ、首を捻ると、俺の後ろに居たロボットにリオの弾丸が命中する。

 

 貸し借り無しってとこか?

 

「お姉ちゃん!」

 

「! さっき話してた奴だね!」

 

 ミドリが、モモイに銃口を向けると、縦に包丁を構えたところに向けて射撃を行う。

 真っ二つに切り裂かれた弾丸はそのまま後ろの左右の敵に対して命中する。

 阿吽の呼吸……さすが姉妹だな。

 

「本当に上手くいった!私たち最強じゃん!」

 

「2人とも油断はダメ!」

 

 そして、上手くいって気が緩んだ2人を部長であるユズが締める。

 

 空中から襲いかかってくるロボットに対してグレネードランチャーを直撃させながら……ユズの得物は、M320か?あの小さな体躯には似合わねぇ得物……いや、それを言ったらヒナの方が体躯と不釣り合いか。

 

「ごめん、ありがとうユズ!」

 

「だ、大丈夫だよ!」

 

 照れ恥ずかしそうにしながら、ユズは、自分の得物からミサイルを放って爆破する。

 

『キリがありませんね……カリン』

 

「あぁ、分かってます!みんな、私が突破口を拓く!」

 

 スナイパーとしては異例の近間ではあるが、あの重い対物ライフルを軽々振り回して射撃を行なっているカリンが、敵が密集している方へ、その銃口を向ける。

 

「カリンの射撃と同時にお前らは行け!ここはC&Cが引き受けてやらァ!」

 

 未だに血のにじむ包帯を靡かせながら、ネルが声を荒らげる。

 

 全く頼りになる奴だよ。

 つくづく敵に回したくねぇって思うもんだ。

 

 タワーの一階に、ライフルの爆音が鳴り響く。

 

 カリンの放った弾丸は、ロボットの集団に大きな風穴を空け、たった一射で殲滅してのけた。

 

「お前ら行くぞ!」

 

「ネル先輩、カリン先輩ありがとう!」

 

「モモイ!あのチビの事頼んだぜ、勝負はそれまでお預けだ!」

 

 背中をネルとカリンに守られながら、俺たちは中央のエレベーターまで辿り着く。

 

「エレベーターは恐らく敵のハッキングを受けているはず……階段で向かいましょうか?」

 

「……いや、それじゃあ、時間がかかりすぎちまう。何よりもお前さんら体力ねぇだろ」

 

 だから……そう言って俺は懐からシッテムの箱を取り出す。

 途中で通信障害が起きていたと、ヒマリから聞いた。

 つまりは、向こうはわざとこのタワー以外のエリドゥの権限を渡したんだ。

 取り返すのが容易だからだろう。

 

 それは、つまり自分のハッキングの腕前に自信がある……要するにこっちを舐めてるってわけだ。

 未だにヴェリタスの全総力をかけてもハッキングすることの出来ないこのタワーの制御権。

 

「アロナ」

 

「アロナ?」

 

 全域は無理かもしれねぇが……お前なら出来るはずだ。

 

「何度も頼っちまって悪いな。手貸してくれねぇか?」

 

『全く、先生は私がいないとホントダメなんですから!お任せ下さい!』

 

 周りからはこいつの姿も声も聞こえねぇんだったけか。

 だから、一体誰と話してるのかって顔を向けられるが、それでも俺はこいつとちゃんと言葉で会話してやりたい。

 

 こいつだって俺の生徒なんだからな。

 

『ファイアウォール突破開始……完了。

 要塞都市エリドゥの仮adminを作成……適応完了。現管理者権限をTrueからfalseに……管理者権限の掌握に成功』

 

 どれだけ強大な力を持っていたとしてもな。

 

『中央タワーの奪還に成功しました』

 

 目の前のエレベーターが開き始める。

 ネル達の戦闘の音が止まないあたり、あれは別の制御なんだろう。

 

「タワーの制御を奪還した」

 

『あのファイアウォールを突破したんですか!?……本当に制御奪還してますね……』

 

 エレベーターに乗り込んだあたりで、ヒマリが声を荒げる。

 病弱なら安静にしていてほしいもんなんだがな。

 

「俺には優秀な頼れる相棒がいるんでな」

 

「ならなんで最初からやらなかったのかしら」

 

「あ?……あぁ、恐らく向こうさんは、アリスの命を奪うようなことはしないと思っているが、お前さんらはそうじゃねぇだろ?トキにリオ、お前さんらの命を使い潰すようなことをされたら困るからな」

 

 リオが最後にやられた強力な洗脳。

 あれは、脳に作用するものに見えた。

 俺も洗脳は何回か食らったことがあるが……あれが体に掛ける負担は、かなり大きい。

 

 食らったわけではないが、リオやトキにかけられたそれは、脳に直接作用するものだろう。

 視神経経路でな。

 

 それの強度を強めちまえば、人の脳みそなんざ余裕で壊せる。

 

 だからこそ、俺は<key>が、その手段へ踏み切らせないために俺は控えていた。

 ……まぁ、あいつの狙いを考えれば、今の状況はだいぶ好都合だろうがな……

 

「そういや、モモイ。お前ら敵が何なのか分かってるか?」

 

「?……あの機械でしょ」

 

 説明し忘れてたか?

 むしろ、そこを知らずに、ここまで来たその馬鹿正直さが、こいつらの良い所か。

 

「今から相対するのは、お前さんらが持ってきたあの『G.Bible』に住み着いていたAI。<key>それが今回の黒幕だ」

 

「……あの、それって、私たちのせいなんじゃ……」

 

 ミドリは、お前は聡い奴だよ。

 確かに、あのバイブルを……つまりは<key>を持ち込んだのはこいつらだ。

 その事実は変わらねぇ。

 

「あぁ、そうかもしれねぇな」

 

「…………」

 

 まぁ、話はここで終わりじゃねぇよ。

 だから泣きそうな顔をすんじゃねぇよモモイ。

 

「モモイ、お前は、あの日あの場所で、アリスを連れ出したことを後悔してるか?」

 

 ──でもさ、先生。友達になれるかもしれないじゃん。

 

 お前さんは、過去に自分が言った言葉を後悔してるのか?

 

「そんなことない!世界が敵になってもアリスは私たちの友達で仲間だよ!」

 

 涙目を擦ってそう話すモモイの頭を雑に撫でながら、俺は自分の口角が上がっていることを感じる。

 

「それが答えだ。ミドリも、ユズも変わんねぇだろそこはよ」

 

 力強くうなづく二人を見ているリオが、少しだけ申し訳なさそうな顔をしている。

 元々の予定じゃ、こいつらからアリスを奪い取って始末してようとしてたんだからな。

 そこで、良心の呵責を感じるあたり、こいつはまだまだ子供で、そして腐っちゃいねぇってことだ。

 

「リオ、もしお前さんが何か申し訳なく感じるなら、ここから挽回しな。前に言ったろ?」

 

「……えぇ、分かってるわ、私はここで責任を全うする」

 

 初めて会った頃に比べて、随分といい顔立ちになったもんだ。

 さて、そろそろこの旅の終点。

 親玉さんとご対面と行こうか。

 

 エレベーターの先はリオのセンスが垣間見える、大量のモニターが犇めき、そしてその全てに繋がれてるケーブルと回線が部屋の真ん中にある玉座。

 そしてそこに座る王女に繋がれている。

 

 部屋には二拍子のゆったりとしたリズムのピアノソロの音楽が流れている。

 

「……パヴァーヌか」

 

「パヴァーヌ?」

 

 隣に立つモモイが、聞いたことないといった様子で話す。

 

「俺のいたところでは、大層有名な曲の名前だ。

『亡き王女のためのパヴァーヌ』

 ……アイツからアリス……いや、Al-1Sへ向けた曲……と言ったところか、そうだろ<key>」

 

「……貴方への評価を再設定します。次元大介」

 

 その声は、目の前の少女から聴こえる。

 開いた瞳は、青ではなく怪しく光る紫色。

 そしてそれに呼応するように、背後のモニターが次々と点灯し、そこに白い文字が現れる。

 

『Divi:sion』

 

 王女を守護せんとする彼女らに与えられた組織の名前だ。

 

「アリスを返してもらうよ!ケイ!」

 

「ケイ?アリス?……はぁ、せっかく大人が説明していたというのに、どちらにせよ言わなくてはならないのですね。貴女への評価を下げる事とします、モモイ」

 

「ねぇ!なんかディスられたんだけど!」

 

 締まらねぇなぁ……モモイのネーミングのことだ、大方、キー からケイと言い換えて名前っぽくしたと言ったところだろう。

 

 一応アイツは敵なんだがなぁ……

 

「第一に、『王女』の表裏人格は内部データベースの深層域に隔離されています。よって、貴女の言葉は『王女』へは届きません」

 

 玉座に深く腰を下ろしながら足を組み、見下すように俺らを見つめるケイは、左手の人差し指を立てながらそう話し、そして中指を立てる。

 

「第二に、『王女』と私に名前は不要です。名前は、現在の目的と本質を乱します」

 

『無名の司祭達が遺した修行者……』

 

「そして、王女が戴く玉座を守護する。それが貴女の役割ね」

 

 ケイが、説明したその言葉を聞いたヒマリとリオが、言葉を零す。

 そして、それに対して短く言葉を返し始める。

 

「肯定。貴女が生き残るとは想定外でした、調月リオ。私が描いた筋書きでは、あの時次元大介によって撃ち殺されるものだと思っていました」

 

「先生を舐めないで」

 

 俺が口を開くよりも早く、リオがそう言い返した。

 その顔はどこか不満げな表情だ。

 

 ヒマリに対してはあまり反論をすることすらせずに、受け流すような彼女が、不満を表してるとはな……

 

「そうですか、まぁどちらにせよ。目的の遂行には問題ありません。現在ハッキングを奪え返せていないことも含め、なんら問題はありません」

 

 サラリとそう受け流したケイは、アロナによって主導権を奪われている現状を理解してもなお、その余裕を崩していない。

 

 そういや、あの後ろのモニターはどうやって動いてるんだ?

 アロナがこのタワーの制御を持っている現在の状況で、何故モニターが動く。

 どうして『Divi:sion』の文字が、表示されていやがる。

 

「アロナ、主導権は?」

 

『現在も、私が掌握しています……つまり、あのモニターは、プログラム的なものでは無いもので、塗り替えるように制御を行っています』

 

「嫌な予感がするな」

 

 足組みを解いたケイが、再び目を閉じて集中し始めている。

 なまじ、ボディがアリスなのがキツイな……

 撃つだけが俺の持ち味だってのによ。

 

「先生、私ならあれの制御切り離せれるけど……」

 

「ダメだ、アリスの意識が、エリドゥに行ってる可能性がある以上、それをやっちまえば、二度とアリスが戻ってこねぇ」

 

「じゃ、じゃあ、見ておくことしか出来ないの!?」

 

 あと一歩だってのに、歯痒い思いをさせてきやがる。

 

「Protocol・ATRAHASIS稼働。要塞都市『エリドゥ』その1万エキサバイトのリソースを使用」

 

 淡々とコンピュータが実行文を吐き出すかの如く言葉を綴り出す。

 

「コード名『アトラ・ハシースの箱舟』起動プロセスを開始致します」

 

「アトラ・ハシース……!?」

 

 そのコード名を聴いたリオの表情が変わる。

 まるで、ここで聴くことになるとは思わなかったと言わんばかりだ。

 

「おい、リオ!『アトラ・ハシースの箱舟』ってのはなんだ!?」

 

「かつて、古代の文明に記載されていた超兵器の名よ……私はそれに抵抗するために……エリドゥを建設したというのに……」

 

「落ち込むのはあとにしやがれ!あれに対抗する手段を!」

 

 アロナのハッキングごと飲み込むようにこのエリドゥを丸ごとその兵器とやらに使うつもりなんだろう。

 何経由で行ってるんだ?

 

「箱舟製作に必要なリソース確保23%……46%」

 

 元々ここの主導権は、ケイが持っていた。

 のであるならば、あぁやって時間経過で進行することもないだろう。

 なら、回路的なものではねぇのか?

 

「王女は鍵を手に入れ、箱舟は用意された。無名の司祭の要請により……この地に新しい『聖域』を建設する……」

 

「不味いわ……このままでは……キヴォトスは、滅びる……私が、エリドゥを作ってしまったせいで……」

 

 着々とタイムリミットは迫って来る。

 ここまで来て?

 

 バカ言え、俺を誰だと思ってやがる。

 

「おい、リオ。お前さんのは確かに間違ったことをしでかしたのかもしれねぇ。だとしてもな」

 

「……73%…………89%…………リソース確保99%」

 

「一度のミスで全てが終わっちまうほど、人生ってのはクソゲーじゃねぇぞ。最後の最後まで諦めるもんじゃねぇ」

 

『ノア!今よ!電力という電力を全部落としちゃって!』

 

「こうやって、逆転の目は後から着いてくるんだからな」

 

 無線に入ったユウカの声。

 もし、ケイの力が電力を元に感染するものだとしたら。

 未だにハッキングできないロボット共も、キヴォトス最高峰のハッキング能力を持つアロナの能力を上回るのも納得がいく。

 機械である以上、電力を使って動くんだからな。

 

『は~い、ユウカちゃん。その言葉を待ってました♪……えいっ!』

 

 ノアの軽快な言葉と同時に町中の電源が落ちる。

 電力の供給元から断ったようだ。

 

「……リソース確保失敗。システムシャットダウン」

 

「最高のタイミングだ、ユウカ!ノア!」

 

 無線に新たに入った二人の活躍で、俺らの顔に再び活気が戻る。

 最悪の事態は回避できた。

 

『計算通り完璧でしたね。少し早めに仕事を切り上げて正解でした』

 

『お仕事中ずっと気にしてましたからね、ユウカちゃん』

 

「ユウカ……ノア……」

 

『会長!!探しましたよ!!ご無事で何よりです!!でも帰ったら説教ですからね!!』

 

 ユウカが、しんみりした表情のリオに対して喜んでいるような怒っているようなそんな表情をしている。

 横領したことは、確かに叱られるべきことだが、それはそれとして、尊敬している先達、ミレニアムの会長であるリオが無事なことが嬉しいのだろうな。

 

「エラー……エラー……そんなはずが……」

 

「さてと……あとは、そこでエラー吐いてやがるケイから、アリスを奪還しねぇとだが……」

 

『私に一つ案があります』

 

 無線から聞こえるその声は、ヒマリのものだ。

 

『現在、無名の司祭は、動き始め、このままでは遅かれ早かれアリスとしての人格は抹消され、<Key>達が望む『名もなき神々の王女』として、目覚めてしまいます……ですので……』

 

「待って、ヒマリ。まさか貴方……!」

 

『えぇ、そのまさかです。アリスちゃんの深層世界へ入り、アリスちゃんを起こしに行くのです』

 

「ダメよ!それは!」

 

 それを聞いたリオが激昂する。

 それは、合理的判断ではなく、俺たちの身を案じてなのだろう。

 

「確かに、ここにはダイブ装置もあるわ。だとしても、アリスの精神へ侵入出来たとしても、下手すれば二度と戻ってこれなくなってしまうかもしれない!」

 

「他に方法はあるのか?」

 

「それは……」

 

 そこで、リオは言い淀んでしまう。

 確かに危険な賭けだ。

 自分の命をベットして、助けにいくんだからな。

 

「それなら……やります……それで、アリスちゃんを……連れ戻せるのなら」

 

「当たり前でしょ、何のためにここまで来たと思ってるのさ。完全ハッピーエンドを目指すに決まってるじゃん」

 

「うん……ここまで協力してもらって……道を作ってもらって、今更引き返すなんて私には出来ない」

 

 それが彼女たち、ゲーム開発部の言葉だった。

 なら……それが全てだろ。

 

「リオ、お前さんも成長したな。だから、ここからは大人が責任を取ってやらなきゃいけねぇんだ。そもそもアリスを連れて行くって背中を押したのは俺なんだからな」

 

「……分かったわ。ヒマリ」

 

『えぇ、これから私達二人で、アリスの精神を分析し、隙間を作ります。その後、皆さんには突入してもらい、アリスを取り戻していただきます』

 

 今度こそ、最終局面。

 

 アリス、その鍵を壊して、檻から連れ出してやるよ。

 

『皆さん、覚悟の程は』

 

「聞くだけ、野暮だろ。あの引きこもり姫を助けにいくぞ!」

 




物語もついにクライマックス
この勇者一行の旅路もこれにて大詰め
魔王へと変わるか、それとも

次回 鍵と王女とガンマンと





何処かで出す予定だけど、出すか分からない一口設定
次元大介の体から神秘が全くないのは『先生』テクスチャの影響。
つまり……前回出てきたあのルパンは……

いよいよ、ミレニアム編も最終局面
色々なことがございました、ミレニアム編も……そこで、エピローグ後に、第二回貴方が選ぶ好きな一文選手権を開催いたします。
範囲はミレニアム編全編から『百鬼夜行より愛を込めて』までの全範囲といたします。

集計方法は、前回と同じくここすきの総数を元に集計いたします。
是非ともご参加いただけるとありがたい限りです。

さてさて、最後にもしよろしければ、感想、評価、ここすきいただけると励みになりますのでよろしくお願いいたします。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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