新任教師『次元大介』   作:レイゴン

59 / 136
「「「「「次元ちゃーん!」」」」」

「おう!」

「「「「「何が好きー?」」」」」

「酒」

「「「「「……」」」」」


Vol.EX2 生徒達との旅路
#EX6 貴女にとって ~アビドス編~


 Q.貴女にとって次元大介という男は何ですか?

 

 キヴォトスにおいて、報道などに特化した学園『クロノスジャーナリズムスクール』。

 彼女たちが発行している情報雑誌『月刊キヴォトス』は今未曾有の危機に陥っていた。

 

 それは、近頃起きたSNSで出回ったとある動画に起因する。

 幾重にも切り抜かれたその数分の動画群は、突如としてキヴォトスのSNSを駆け巡り、そして多くの生徒達の記憶に残ることになった。

 

 連邦生徒会によって、その動画は削除されているが既に広がってしまったミームが消えることはなく、そして悪意善意に関わらず、1つ消せば2つ新たに投稿されるイタチごっこが続いている。

 

 その件の動画は、1人の黒いスーツと帽子を身にまとった男性と赤いファーコートを羽織った少女が、巨大な兵器と渡り合う動画だ。

 

 ただの戦闘であれば、日常茶飯事なキヴォトスでこのように流行ることも決してなかった。

 しかし、その登場人物に問題があったのだ。

 

 兵器に乗り込んでいたのが、天下の大企業『カイザーコーポレーション』の理事であり、それに相対する大人が、近頃キヴォトスに来たという『先生』だからだ。

 既に削除されているが、同じく無断転載によって広まっているカイザー理事による罪の告白。

 それにより、武力行使に出た理事に対する敵意の感情。

 それに真っ向から相手する先生への憧憬の感情。

 そして、先生と肩を並べて戦った少女への嫉妬の感情が、今キヴォトスの話題を攫っている。

 

 今も、その動画にキヴォトスに住む人々は釘付けの状態……

 

 そう、つまり今、キヴォトスの大半が、雑誌を買っていないのだ。

 クロノススクールとして、学園を存続させるための資金源である雑誌が売れないのは非常に困るのだ。

 

 そこで彼女らが必死に考え、議論を重ねた結果が、この先生特集である。

 

 しかし、肝心のシャーレの先生は多忙を窮めており、ミレニアムに足を運んでいたと思えば、つい先日には百鬼夜行での大立ち回りを行っていたなどと、その行動は予測不可能であり、キヴォトスを運営していく上でその行動の邪魔になるものは好ましくない。

 

 そうして、白羽の矢が立ったのが、かつてシャーレの先生が、対応した事件の当事者である生徒達である。

 

 題して『貴女にとって先生とはどんな人なのか?』

 

 この見出しを作るため、クロノスの生徒達は、メモとペンを持って駆け出した。

 

 

 

 

 吹き付ける砂と乾いた風に煽られる。

 ここはキヴォトスの外れにあるアビドス自治区。

 シャーレの先生が、最初に実地対応した事件の当事者であり、あの忌々しき動画を生み出す要因になった学園。

 尤も、正確に言えば、諸悪の根源はカイザーコーポレーションのため、語弊ではある。

 

 シャーレの先生によって更新された地図のおかげで迷うことなく、アビドス高等学校へと辿り着く。

 アポイントは予め取っていたためか、真面目そうな赤い眼鏡をかけた生徒、奥空アヤネさんが出迎えてくれた。

 アビドスの生徒は僅か5名しかおらず、その5名で今まで護ってきたのだそうだ。

 一人一人、取材を取らせていただく形にして頂ける。

 取材に協力する代わりに、アビドス高等学校の宣伝も兼ねているそうだ。

 

 それでは、よろしくお願いします。

 

「はい、こういった事は初めてですから……上手く喋れないかもですが……よろしくお願いします」

 

 では、早速、貴女にとってシャーレの先生とはどんな人でしょうか。

 

「次元先生がどんな人ですか……そうですね……私の中で一番印象深かったのは、最初の戦闘でしょうか。私は戦闘ではオペレーターと後方支援を勤めているのですが、先生はヘイローを持っていないので同じように後ろから指示を出すものと思い、声をかけたのですが……」

 

 ほうほう、まさか一緒に戦闘しに向かったと?

 

「あはは……一緒に出撃したのであれば良かったのですが、ちょうどこの教室の窓から飛び降りて行ったんですよね」

 

 ……ここ、3階ですよね。

 

「……はい……もう、なんの躊躇もなく、あれには驚きましたね……そんなところにも驚かされましたけども、話すと不器用でも本当に優しい人と感じられる……あの人がいなかったら今のアビドスは、なかったとそう思います」

 

 アヤネさん、ありがとうございます。

 

 そう言って次に入ってきたのは、黒髪の生徒、黒見セリカさんだ。

 

 ではよろしくお願いします。

 

「え、えぇ、よろしく」

 

 そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。

 

「き、緊張なんかしてないわよ……それで、先生の事をどう思ってるかよね?」

 

 既に伝達されてましたか、まぁ、概ねその通りです。

 どんな人物なのか、セリカさんにとっての答えを聞ければなと。

 

「……最初は、ダラしないぐーたらな大人だと思ったわ。食べ方汚いし行儀悪いしタバコ吸うしで」

 

 あはは……なるほど、セリカさんの言う通り、だらしない人のようですね。

 

「でも、勘違いしないで欲しいのは、仕事には真面目な生徒思いの人だってこと……私、一度ヘルメット団に、攫われそうになったの。仕事終わりに……でも、先生が私をずっと陰ながら護衛してたみたいで、返り討ちにして救ってくれたの」

 

 それは、確かに生徒思いのいい人ですね。

 ところで、ずっと……というのは?

 

「私がバイトして帰るまでずっと、だいたい……5、6時間……?」

 

 それって最早ストーカーなんじゃ……

 

「わ、私もそう思ったわよ?でも、護ってくれたのは事実だし、もし居なかったらどうなってたか……だから、私にとって先生は命の恩人よ」

 

 命の恩人……ありがとうございました、セリカさん。

 

 自分の言ったことを自覚したのか、顔を赤くしてそそくさと出ていった。

 天然なのだろう……代わりに入ってきたのは銀髪の青いマフラーをした生徒、砂狼シロコさんが入ってくる。

 

「ん、よろしく」

 

 よろしくお願いします。

 聞いているかとは思いますが、改めて、貴女にとってシャーレの先生はどんな人ですか?

 

「師匠」

 

 し、師匠ですか?

 

「そう、詳しくは言うなって言われてるから言えないけど……生きる上で大事なこと、手を汚すってことの意味を教えてくれた」

 

 なるほど、その黙秘した内容に関しては……

 

「ごめんなさい、先生から念押しされて知ってる人以外には言えない」

 

 いえいえ、こちらこそ無理な詮索をしてしまって申し訳ございません。

 

「気にしないで、あと……先生は、凄いよ」

 

 凄い……と言いますと?

 

「凄く強い。私が本気で避ける気でいたのに、拳骨頭に当ててくる」

 

 げ、拳骨ですか?

 意外とその……聞いてたイメージと違うと言いますか……

 てっきり優しい先生なのでそんな体罰をするようなことはしないものだとばかり。

 

「ん、勘違いしてる。拳骨は私を止める為にやってるだけ、凄く痛いけど、理由があるから、それもちゃんと説明してくれる。だから、納得してる」

 

 なるほど、理由のない暴力は振るわないと……

 

「そう、だからガラ悪そうに見えるかもだけど、本当はいい人。多分ホシノが色々言うと思うから、私はこれくらいにしとく」

 

 そう言って、シロコさんは礼を言う間もなく、そそくさと出ていった。

 アビドスは、マイペースな人が多いのかもしれない。

 

 そうして代わりに入ってきたのはベージュの髪色をしたふんわりとした雰囲気の生徒、十六夜ノノミさんだ。

 

「こんな所までご苦労様です☆ 次元先生について調べらっしゃるんですよね?」

 

 はい、次元先生のことで特集を作ろうかと思いまして、キヴォトスで今一番熱いトピックですからね。

 

「なるほど〜☆ ところで、この取材は、先生に許可は取っていますか?」

 

 と、当然取ってますよ。

 ……現在進行形ではありますが。

 

「ふふっ、まぁ、この事は内密にしますので、アビドスの宣伝は……」

 

 は、はい!それはもちろん、力の限りやらせて頂きます!

 

「ありがとうございます☆ それで、次元先生についてですよね……基本はダンディでクールな人ですけども、実は意外と子供っぽいところもあるんですよ」

 

 意外な一面ということですか。

 

「はい、シャーレで仕事のお手伝いをしてた時に、急に寝ると言ってお昼寝をし始めたり〜、あとは……」

 

 どうされましたか?

 表情が少し……

 

「……あぁ、いえいえ〜、大丈夫ですよ☆

 ただそうですね、きっと皆さん先生の良いところを語ったと思いますから……あの人はたまに独断で動いたりする時があります……ただそれは生徒の為、良くも悪くも私達のことを幼い子供として見てらっしゃる方です」

 

 ……それは、アビドスの事件に関わることでしょうか。

 

「はい、先生の名誉のために詳細は伏せますが……私達のことを大切にしてくださっている方です。

 だからこそ、話をしない時がある。

 そういうところを含めて子供っぽい大人ですよ」

 

 なるほど……何があったかを把握することはできませんが、心中お察しします。

 

「ふふっ、みんなでしっかり説教しましたから☆ でもなんででしょうね? あの人とそれなりに接しているとそういうところも可愛く思います☆」

 

 微笑みながらそういってノノミさんは出ていってしまった。

 なんだろう、捨て台詞を言うのが、アビドスでは流行っているのだろうか。

 

 そうして、最後に来たのはアビドスの唯一の3年生である小鳥遊ホシノさんだ。

 うへ〜と鳴き声のようなものを言いながら眠そうに椅子に座り、向かい合う。

 

「私が最後だねぇ~~、よろしく」

 

 はい、よろしくお願いします。

 

「きっと君は、個人個人から見た先生について知りたいんだよね?」

 

 は、はいその通りです。

 良ければホシノさんにとっての先生を教えていただければなと。

 

「ん~、そうだなぁ~……カッコいい大人、かなぁ?

 あ、今この人もか、みたいな顔したでしょ」

 

 と、とんでもないですよ!

 確かに皆さん似たような事を言うなとは思いましたが……

 

「うへ、やっぱりかぁ……正直にありがとうね。でも、そうだね。

 このカッコいいっていうのは、顔とか見た目のことだけじゃなくて……なんだろうね、生き方なのかな。前に先生が、とある子と話したときに言ってたんだけど。

『ガンマンってのは仕事じゃねぇ、生き方だ』って」

 

 …………

 

「先生は、あんな強面の顔してるけど優しい人でさ。細かな発言とかすっごい覚えてるんだよ。例えば、シャーレでお手伝いしてる時に、ソーダアイスとか食べたいねとか言ったら、休憩中にいつの間にか買ってきたり……先生、喫煙者なんだけど、私達といる時は絶対に吸わないようにしてるの」

 

 細やかな気遣いが出来る人……ということでしょうか。

 

「そうだね、それに、あの人は約束を破らないし……悪党だって自分のことを言うし、確かに怖い一面は見せるときはあるけども、私からもしこの記事を読む人に伝えたいことがあるとするなら……本当に困ってどうしようもない時に先生はその手を絶対に掴んでくれる人だよ」

 

 なるほど……ありがとうございました。

 お陰様で良い記事が書けそうです。

 

「うへへ、こちらこそだよ、アビドスの宣伝も含めてよろしくね。

 そうだ、この後君はどこに向かうつもりなの?」

 

 そうですね、色々な学園へ取材しに回っている状況ですが……

 

「そっか、ならゲヘナ学園はどうかな?きっと君が求めている赤髪の生徒の情報が手に入るかもよ」

 

 ゲヘナ学園ですか……

 うーん……確かにあの生徒の情報は、欲しいですが……

 

「治安のことかな?それなら私の方から風紀委員長ちゃんに連絡入れておくよ。最近、仕事の負担が減って、少し楽になったって言ってたしさ」

 

 ほんとですか!ありがとうございます!

 

「いいんだよ、じゃ、気を付けてね」

 

 そう言葉をかけてもらい、私はアビドス高等学校からゲヘナ学園へと足を運ぶ。

 

 記事に書くつもりはないが、アビドスの皆さんは……何というか、皆さん少し湿度が高いように感じた。

 それほどまでに先生は魔性なのだろうか……

 

 まだ、これが一件目、アビドスがたまたまだったかもしれない以上は、次のゲヘナでもそこは少し探ろうと思う。

 

 現場からは以上になります。

 





短編だっつったろ、作者よ

ゲヘナやシャーレ組、ミレニアムを含めるととんでもない長さになるので、何度か休憩代わりにこちらを進めることにします。

アビドスメンバーの中で一番湿度が高いのはホシノです、なんせ他のメンバーにもあの深夜での散歩を語っていないなど、思い出を独り占めしてますからね。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。