ご注意ください。
『初夢』、それは1月1日の夜に見る夢の事を指す言葉だ。
ことキヴォトスにも、その習慣があり、夢に見たものから運勢を占う『夢占い』等々その文化も色濃く残っている。
そして、文化・伝統には必ず理由がある。
後世へと伝えられるだけの理由が。
そうして長く生徒達の間で伝えられてきた物……『神性』『エデン』『怪書』。
そういった概念にこの学園都市は神秘を与えてきた。
『初夢』にも同様に、年に一回だからこそ、この星は奇跡を授ける。
──────
────────────
───────────────────
気が付くと、私は見知らぬ荒野に立っていた。
前に見たような惨劇の丘でもない。
私が見る夢にしては……殺伐としすぎている。
そんな印象を私は感じ取った。
「はぁ……」
新年早々、初夢がこんな何とも言えない夢だなんて、今年は大丈夫かしらと思わずため息をつくと、私の背後から声が聞こえる。
「溜息なんかつくと、折角の美人が台無しだぜ?お嬢さん」
一方的だけど、私はその声に聴き馴染みがあった。
だからこそ、気兼ねなく私は振り向く。
先ほどまで何もなかった荒野にテーブルと向かい合った二つの椅子。
そこに座る男性が、私の方を見ながら首を傾げる。
「その顔……何処かで会ったことがあったか? ま、仕方ないか、俺様ってば超有名人だからな。
自己紹介だ、俺の名は──「ルパン三世。初めましてね」ありゃ?」
出鼻をくじかれて、ずっこけかけるその男。
赤いジャケットに、黒いシャツ、そして黄色のネクタイをつけた猿顔の彼『ルパン三世』。
世界一の大泥棒、そんな彼が私の目の前にいる。
「私は、陸八魔アル……次元大介
そういって、私は彼の前に座る。
次元先生のビジネスパートナーと聞いた時、彼は鳩が豆鉄砲を食ったような拍子抜けた顔をしたあと、何かを悟ったように下を向いて笑みを零した。
「そうかい……ってことは、
「上手く……?」
「いや、それはこっちの話さ。相棒はそっちではどうしてるんだ?」
夢の中とは言え、まるで本物のルパン三世がそこにいるかのような……そんな仕草で彼は私に対して聞いてくる。
「そうね、毎日書類仕事とちょっとした治安維持の仕事。たまに大がかりな依頼を引き受けて大立ち回り……酒と煙草を嗜みながら忙しなくしてるわよ」
「あっはっはっは、アイツが書類仕事か!似合わねぇなぁ~!」
普段の彼の様子を伝えると彼は、腹を抱えながら笑い、それを見た私も笑いながら、言葉を続ける。
「えぇ、いっつもしかめっ面しながら、面倒くさい面倒くさいって言ってるわね」
「……でもよ、投げ出したことは一度だってないだろ?」
一頻り笑った後、彼は真剣な顔で私に問いかける。
そんなの……答えは決まってるじゃない。
「えぇ、一度だって見捨てた事はないわ……本当に尊敬できる人よ」
「だろうな、アイツはそういう男だからなぁ。それで?アイツとどんな冒険をしてきたんだ?」
「そうね……どれから話したらいいかしら……ふふっ、ならとある大企業と正面から騙し合った砂漠での話からしましょうか」
アビドスで起きた私たちの出会いと今のシャーレ結成のお話。
ミレニアムで出会った小さな勇者とアウトローの物語。
桜と花火が舞う百鬼夜行で出会った狐の忍者との夢とロマンのお話。
あの熱い夏と砂浜での一騒動。
バレンタインデーで起きた災厄の名前を冠した狐の少女との愛の話。
それ以外にも色々と、私はルパンに今までの出来事を話していった。
時折彼は……。
「アイツも退屈しねぇ毎日を過ごせてたのか」
なんて、そう声にして、私の話を真剣に楽しそうに聞いてくれた。
それでも彼の顔に時折映る感情に、私は出来事を語るのを止める。
「ルパンさんと一緒にいるときの先生はどんな人だったのかしら」
懐かしむような顔つきの彼を見て、私はふと質問を口にした。
目の前にいる彼はまるで……私の知っているルパンじゃないように見える。
そう、昔に別れた仲間を懐かしむようなそんな表情。
「俺といる時か?普段はどっちが料理するかとかで賭けでもしたり……いつも一緒って訳じゃねぇが、大抵は俺がアイツを誘ってちょいとお仕事したりってとこさ」
「先生は、昔からあんなにお節介だったのかしら」
「そうそう、口じゃ認めないけどな」
「頑固なところも変わってないわよ」
そう言って二人でまた笑い合う。
笑いながら、私は自分の思考の海に潜っていく。
やはり、彼にはまだ何か隠してることがある。
そして恐らく彼は私が気づいているという事に気が付いてるはず。
何せ天下の大泥棒相手なんだから。
その上で隠しているのは、きっと私が気が付いたらいけないものだから?
そもそも、夢で何でこんなに私は悩んでるのかしら……?
夢占いもそれなりにしたりもする時はあるけれども……ここまで真剣ではないわ。
まぁ、それもきっと、目の前にいる彼が、私の憧れの人の相棒だからなのかしらね。
そんな彼が私の前にいる以上何か意味があるとそう信じてるから……。
「考え事は終わったかい?」
「っ……ごめんなさい、私ったら」
「構わねぇさ……しっかし次元のやつ、まさか君みたいな子を選ぶとはな」
演技ぶった手振りをしながら彼は話す。
私が先生に選ばれた?
「それは違うわ、ルパン三世」
「へぇ、聞かせてくれるかい」
「彼に選ばれたんじゃない、断る事だって出来たわ……でも、私はあの人の手を取った。それだけよ」
「ははっ、確かに野暮なことを言ったな」
彼は目を伏せたのちに寂しそうな笑みと共に、言葉を零す。
いい加減見て見ぬふりは限界ね……。
「ねぇ、ルパンさん」
「どうした」
「貴方……さっきからどうしてそんなに懐かしむような寂し気な顔をしてるのかしら」
「泥棒が顔色伺われちゃ、世話ねぇな」
情けないと頭の後ろを掻きながら、タハハと笑う。
きっと先生ならもっと早くから切り出してたと思う、彼の事を一方的にしかも少ししか分かっていない私ですら気付くことなんだから。
私に足りないのは踏み込む勇気……かしらね。
「お前さんにはまだ早い話さ」
「早い……?」
「あぁ、まだな。俺の口から語るには色々足りなさすぎちまうし……悪党だからこそ約束ってのは大事なもんさ」
「困ったわね……それを出されちゃ、こっちも下がるしかないじゃない」
約束の大切さは理解している。
だから、あの大泥棒がその言葉を言ったからには、私もこれ以上踏み込むわけにはいかない。
折角、勇気を出そうとしたのに、出鼻で挫かれちゃったわ。
「流石、天下の便利屋68の
「ふふんっ、まさかルパン三世に褒められ……ん?」
あのルパン三世から褒められて、つい照れてしまったけど、彼の発言に違和感を覚え、私は喋るのを止めてしまう。
今までの会話の中で私は、一度も社長と名乗ったことはない。
「まさか……最初から嘘を!」
初対面、その発言が嘘だった?
そう気が付いて正面を向いた時には誰もいない。
背後から声が聞こえる。
「俺は泥棒だぜ?嘘を口にして騙して騙されて……お嬢ちゃんには悪いけどな」
「それも約束の為かしら」
「まぁな。いずれアイツと一緒に答えに辿り着くさ」
「……そう、信頼してるのね」
「あたり前だろ。相棒、だからな」
そういって響く銃声と共に、私の視界は暗転する。
気が付くと、アラームが鳴り響く部屋で私は目を覚ます。
「……全く妬けちゃうわ」
そう零して、私はカーテンを開けて陽の光を浴びながら、軽く伸びをする。
「私だってあの人の相棒だもの。いいわ、その挑戦受けて立つわよ……必ず辿り着いてやろうじゃない」
そう決意を新たに固めて、着替え始める。
日々を過ごして、解に辿り着くために。
「さぁ!今日も一日頑張るわよ!!」
300人記念特別回でした。
皆さま明けましておめでとうございます!
作者並びに拙作を今年もどうぞよろしくお願いいたします。
年明け早々に風邪を引いたうえ、色々と挿し絵の御依頼などを済ませていたらこんなに遅れてしまいました……。
今回のお話は、Vol.Finalに向けた伏線をいくつか仕込んであります。
恐らく変わることがないと思いますので、考察になればと思いますな。
ではでは……。