新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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コラボ回です
また、Vol.1までのネタバレを含みます


#EXEX5 撃手と王。神髄と魔砲。

 キヴォトス。

 学園都市と言われるだけあり、学生が学園という名の国を背負って運営を行う変わった世界だ。

 学園を国とするなら、そこのトップである生徒会長は国でのどれに値するのか。

 

 ゲヘナなら議長。

 トリニティなら三頭官。

 ミレニアムなら大統領。

 

 どの肩書きも生徒なんてガキの身分には、余る重責を背負った身分だ。

 

 そんなキヴォトスの中で、唯一『王』と呼ばれる女が立つ学園が存在する。

 

『アリウス分校』

 

 トリニティの歴史の闇と共に消えた学園だったが、俺がここに来る少し前に、そこを支配していたという『大人』を退け、復興を行っているらしい。

 

 これがキヴォトスに来て、ここの情報をアロナに頼んで調べてたら一番に出てきた情報だ。

 表も裏もそいつの話題で持ちきり……七囚人のワカモを敗走させた『戦闘卿』だの、ミレニアムの二大戦略兵器だのな。

 

 ミレニアムの一生徒ながら、アリウス分校の長も務めているのか……。

 

 吸いきった煙草を灰皿に押し付け、消しながら俺は煙を吐き出す。

 

 

「やれやれ、面倒な仕事だ」

 

 

 机の上に置いてある招待状。

 金の装飾をされた状は贈り主の気品とその地位を示したものだろう。

 

 

「王からの呼び出しとなれば……行かねぇって選択肢は、ねぇか」

 

 

 招待状を裏返しにしながら、書かれた文章を読む。

 

 

『拝啓 惜春の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 平素は格別のご支援をいただき、深く御礼申し上げます。

 

 さて、このたびは日ごろのご愛顧、ご厚情への感謝の意を込めまして、以下のとおり会をもちたいと存じます。

 

 ご繁忙の折から誠に恐れ入りますが、万障お繰り合わせの上、お越しくださいますよう、お願い申し上げます。

 

 敬具

 

                                天上院オウヒ

 

 記

 一、日時 ××月〇〇日 午後15時より

 一、場所 アリウス分校 生徒会室

 

 以上

                                  次元大介様』

 

 

 アリウスの王直々の招待だ。

 支援と書いてあるが、アリウスに支援を送った記憶はねぇんだがな。

 カイザーとの戦いというデカいヤマを超えたばっかだというのに、どうにもこの街は俺を休ませてはくれないらしい。

 

 その日のシャーレの当番は……まぁこいつには連絡を入れておくか。

 向こうも向こうで自営業があるからな。

 

 

 そして当日、俺はアリウス領にまで辿りつく。

 車を少し走らせ、アリウス領の少し離れた位置に車を止めて、俺は歩いて向かう。

 

 アリウスは比較的曇り空が多いとは聞いていたが、少し晴れ間の見える天気だった。

 これもその大人から開放された影響か。

 

 街中を少し散策すれば、店もチラホラ立ち並んで、繁盛しているように見える。

 殿下お墨付きのロールケーキを看板にしたカフェを目にする。

 

 ……殿下。

 アリウスの王は、ここじゃそう呼ばれてるのか。

 

 街中を歩く。

 妙な感覚だ。

 

 ただ歩いてるだけだってのに、随分と視線が刺さる。

 閉鎖的な空間だからか、ほぼ全員が身内のような結束感があるからこそ、俺のような部外者を異分子として見てしまう。

 

 街中の視線を感じながら、アリウスの生徒会室がある中央の校舎へと向かった。

 

 

 アリウスは、以前いた大人によって兵士としての戦闘技術を身につけさせられていたと聞いている。

 

 何故わざわざこんな話をしたかって?

 まるで門番のようにアリウスの入口に立っていた女の立ち姿が、まるで歴戦の兵士のように体の中心に1本の軸の通った良い姿をしていたからだ。

 

 黒い長髪に引き締まった体、マスクをつけた少女と呼ぶには、幾分か大人びすぎてるそいつは俺を待っていたらしく、俺の姿を目にすると歩み寄ってくる。

 

 

「貴様がシャーレの先生か」

 

「あぁ、お呼ばれしたんでな。案内してくれるか? 確か、錠前サオリだったな」

 

「……いつ、自己紹介なんてした」

 

「っと、悪かった。お前さんらと事を構える気はねぇよ」

 

 

 懐から取り出した招待状を、鋭い目つきのサオリに渡し、俺は彼女の背に着いていく。

 警戒させちまったのはしくったな。

 

 とても復興中とは思えないほど生徒会室に続く道は、綺麗に飾られた花瓶や絨毯が敷かれている。

 こいつがアリウスの王がやらせたものなのか、それともただただ好かれているからこそなのか。

 

 そう考えていると、サオリが射殺さんくらいの鋭い目付きで俺を見ている。

 

 

「中で殿下がお待ちだ。 無礼をすれば分かっているな」

 

「おぉ、怖ぇ怖ぇ。さっきも言った通り、事を構える気はねぇよ」

 

 

 背中に鋭い視線を感じつつ、俺は部屋の中へと踏み入る。

 広い円卓は、この地にいる全てを平等に扱うという意思の表れか、並べられた椅子の中でも一際立派な玉座とも言うべき椅子に彼女は座っていた。

 

 お腹の前で手を組み、足を組んで、堂に入ったその姿、纏う風格は暴君とすら思える。

 

 

「…………貴殿が、シャーレの先生か」

 

「そういうアンタが、天上院オウヒだな」

 

「うむ……如何にも、余が天上院オウヒである」

 

 

 ククッと、笑うその姿に俺はどうにも違和感を覚える。

 随分と熟れた振る舞い方だが、まるで演者を見ているようなそんな気分だ。

 俺の所にも、連れ添った相棒にすら素顔を見せねぇ野郎がいるもんでな。

 お陰様でこういうのは見慣れていた。

 彼女の後ろには、お付きの生徒達が何人か俺に向かってサオリほどではないが、疑心、嫌悪、警戒を織り交ぜた視線を向けてきている。

 

 

「シャーレの、貴殿の噂は余の耳にまで届いている」

 

「そいつは光栄なこった、俺もお前さんの噂はちらほら風から教えて貰っていてな」

 

「ほう、風から……」

 

 

 何やら誤解を生んでる気がするが……まぁわざわざ口に出すこともないな。

 にしても、やりづらい空気だ。

 他のアリウス生からの視線が随分と痛い。

 まぁ仕方ねぇ、子供に好かれるような性分じゃねぇからなぁ。

 

 

「それで、アリウスの王であるお前さんがわざわざ俺になんか用でもあったか?」

 

「うむ、アーちゃんとムーちゃんが貴殿の事をたいそう気に入っていてな?」

 

「あ、アーちゃん?ムーちゃん?」

 

 

 恐らく渾名だろうな、アーとムーなんて名前のやつなんか居てたまるかってんだ。

 にしても……誰だ?

 

 所作には出さないが、記憶の引き出しを引いて、誰のことかを思い出そうとしていると

 

 

「何せ、貴殿の銃の腕はキヴォトス一と言うものでな」

 

「武力でここを治めた王に言われても皮肉にしかならねぇぜ」

 

「ククッ、であるか。 しかしそう卑下することもないであろう?」

 

「そいつはどうも」

 

 

 王様ってのはどうにも苦手でな。

 素っ気ない態度で俺は返答をする。

 こういうまどろっこしいのは嫌いなんだ。

 

 

「んで、話ってのはなんなんだ? お前さんらに支援を送った記憶もねぇが」

 

「クックッ、貴殿はつい最近アビドスで一波乱起こしたと聞いている。 カイザーの木偶を相手に大立ち回りをしたとな」

 

「ん?あぁ、成り行きってやつだ。それがどうかしたのか?」

 

「アビドスには余が贔屓している店があってな……その礼を言いたかった」

 

 

 そういうとオウヒは玉座を立ち、俺に向かって頂点を見せるように、さもそれが当然のように、その頭を下げようとする。

 王だなんだと言われてるが、少し考えを見直した方がいいかもしれねぇな。

 

 

「おい、待て」

 

「ん?なんだ?」

 

「頭を下げるつもりなら止めな、てめぇの頭はそう簡単に下げていいもんじゃねぇ」

 

 

 俺の言葉に、オウヒは首を傾げる。

 天然か? 暴君のような雰囲気を纏ってはいるが……こいつ素はただの子供と同じか。

 

 

「何故だ、礼をするのであれば──「てめぇの背中に背負ってるもんの重さを考えてやれ、少なからず俺のような悪党に下げていい頭じゃねぇさ」」

 

 

 言葉を遮りつつもそう言うと、オウヒは初めて年相応に少し頬を膨らませながら納得いかないと言わんばかりの表情を取る。

 にしてもその演技はどういう癖だ?

 わざとにしては堂に入りすぎているが……。

 

 オウヒの演技の癖がどこから来たものなのか、考えているとオウヒの背後にいた1人がオウヒに話しかけている。

 

 紫髪の少女……確か秤アツコだったか。

 

 俺が彼女について思い出している間に、話がついたらしく、アツコが俺の方を見る。

 

 

「シャーレの先生、一つだけ質問をさせて」

 

「構わねぇよ、なんだ?」

 

「先生は、殿下からの礼が要らないって言いたいの?」

 

 

 随分と率直な物言いをするな、こいつは。

 その言葉を発した途端、オウヒが視線だけアツコの方を向いている。

 ほんの僅かに汗が垂れている辺り、想定外だったか。

 

 

「ガキが大人に畏まった礼なんかするもんじゃねぇって話だ。 そういうのは性に合わねぇ」

 

「さっき言ってた悪党ってのと関係があるの?」

 

「そういうこった」

 

 

 その大人とやらがこの校舎に何をしたのかを俺は知らねぇが、大人への不信がこの地に根付いちまってる事は理解している。

 その上で、そこのトップが大人に頭を下げるなんざ、あまりいい話でもないとそう思うんだが……礼を受け取らねぇってのも違うんだろうが、礼を言われることをした覚えもねぇから、そこは両成敗で願いたいもんだ。

 

 

「話を戻すが、アビドスのことはただ仕事だからやっただけだ。 ただ伸ばされた手を掴んだだけの話だ。 もしアビドスを贔屓にしてるってんなら、俺よりもアビドスに何かしてやってくれ」

 

 

 オウヒの紅い瞳が揺れる。

 

 

「ふふっ、であるか。ならば、その言葉に甘えさせて頂こう。御足労頂いたな、シャーレの」

 

 

 俺の言葉を聞いて、何処か満足気な表情を取ったオウヒが頷きながら、そう言葉を放つ。

 甘える……か、アリウスの資金繰りの心配をしているなんてのを見透かされたか。

 やりづれぇ女だ。

 

 

「気にするな、誘いを無下にするほど野暮じゃねぇだけだ……しかしせっかくだ、少しサシで話さねぇか?」

 

 

 オウヒの長い金髪が揺れる。

 

 

「は?いくらシャーレの先生でもそれは──「うむ、良かろう」殿下!?」

 

 

 黒髪の少女……戒野ミサキが俺に向かって噛み付こうとしたその瞬間だった。

 玉座に座ったまま、オウヒはそう答え、ただ腕を上げる。

 まるで勅命を下すかのような振る舞い、たったその一動作だけでアリウス分校の生徒たちが下がっていく。

 凄まじいまでのカリスマ性、この一点、その一点において、こいつは王の器そのものだ。

 王にとって強さは二の次だからな。

 着いてくる家臣がいねぇ奴が王を名乗ることは許されない。

 

 部屋の中に再び静寂が訪れる。

 互いの視線が交差し、絡み合う中で先に口を開いたのは向こうだった。

 

 

「では、シャーレのやるか」

 

 

 オウヒは席を立ちながら、銃を取り出す。

 

 ちょっと待て、何が琴線に触れた?

 

 

「ん?やるって何をだ?」

 

「え? そりゃ、戦うんじゃ」

 

 

 俺の返しに何を当たり前のことをと言わんばかりに、オウヒは言葉を返す。

 手に持った二丁のデザートイーグルを少し下げつつ、オウヒは顔を赤くしていく。

 こいつ、相当天然だな。

 

 

「待て待て、俺はそういうつもりで言ったんじゃねぇよ……そもそもなんで戦う必要がある」

 

「強そうだから?」

 

「さっきまでの理知的なお前さんはどこに行きやがった……」

 

 

 こいつ狂人か?

 二面性にも程があるだろう。

 少しでも落ち着かせるように、手を前に出しながら、俺は声をかけていく。

 

 

「俺がサシで話したかったのはてめぇの素を見たかったからだ」

 

「素……だと?」

 

「アリウスのヤツらの前じゃあ、そのわざとらしい程の口調を辞める訳には行かねぇだろう」

 

「……これが演技だと?」

 

 

 俺はその言葉に首を縦に振る。

 演技ってのも変な話だが、さっきまでの理知的な王と一瞬見えた年相応の少女、その2つがどちらもこいつの素のように思える。

 ただ、後天的に出来たのは間違いなく前者の方だ。

 俺も変装する過程で素を隠すのには、慣れちゃいるがな。

 

 

「てめぇの被ってるその王としての姿を何も嘘だとは言わねぇさ。 ただその癖がてめぇが好きでやっているのか、それとも無理してやってるのかで話は変わってくる」

 

「…………ふふっ、そうか。貴殿は……いや、貴方はそういう人なんですね」

 

「ただのお節介だ」

 

「アーちゃんとムーちゃんの言う通り……優しい人なんですね」

 

「その2人が誰なんだかは知らねぇが、優しかねぇよ俺は」

 

 

 頭を掻きながら、俺はそう話す。

 優しい顔付きだ、これがこの女の、天上院オウヒって女の素の1つなんだろうな。

 

 

「それで、お前さんはなんで俺と戦おうとした」

 

「部屋を入った時から感じていた。 貴方からは、この街でも感じたことがないほどの濃い硝煙と血の匂いがする。 それは戦場の……闘争の匂いだ。

 そんな貴方からサシになろうなんて言われたのだ。

 これは誘われているのだと胸を踊らせたものだと言うのに……」

 

「テメェからたまに感じる熱視線はそれか……」

 

 

『戦闘卿』なんて呼ばれてんだ、てっきり戦闘に関することを全て網羅し尽くした人間だと思ってたが、『戦闘狂』とのシャレかよ。

 

 

「それにだ、貴方は話によれば生徒でも撃つようじゃないか」

 

「あ? あぁ、まぁそうだな」

 

「では、私と死合うのに一体何の支障がある?」

 

「俺の銃は女子供を狙うのには向いてねぇんだ、挑まれねぇ限りはな……あ」

 

 

 しまった、最後のは余計だ。

 クソ、今日はどうにも調子が狂う。

 

 あの揺れる紅い瞳のせいだ。

 俺が断ろうとした瞬間に揺らめく切望の眼差しが、俺の理性を差し崩したんだ。

 

 

「ふふふっ、そうか、挑めば……か」

 

「おいおい、まさかここでおっぱじめる気か? ここだけやたら綺麗にしているアリウスの面子もあるだろう?」

 

「ククッ、そうだな。花瓶を壊せば、アツコにしばらくの間オヤツ抜きにされてしまう」

 

「よく分からねぇ力関係だ……まぁいい、一曲分だけだぜ?」

 

「ククッ、ではリードは貴殿に任せよう」

 

 

 オウヒが差し出した手を取り、玉座から立たせながら、互いにウィンクをする。

 これから戦うってのに変な奴らだと思われそうだ。

 

 部屋から出ると、サオリが扉の前で待っており、俺とオウヒが同時に出てきたことに対して酷く狼狽える。

 

 

「で、殿下!! その……先生と何処に」

 

「少々郊外にな」

 

「そ、そう……です、か……。行ってらっしゃいませ……」

 

 

 何か苦虫を噛み潰したような表情を帽子で隠しつつ、サオリはオウヒを見送る。

 オウヒがそれに気付いてねぇはずがないと思うんだがな。

 

 まさか互いに謙遜し合ってるみたいな話か?

 

 

「……はぁ、サオリだったな」

 

「なんだ。貴様は殿下に選ばれたのだろう、さっさと行け」

 

「何を勘違いしてるか知らねぇがな、言葉にしなくちゃ伝わらねぇぞ人ってのはよ」

 

 

 答えを言ってやっても良かったが、それじゃ学びにならねぇ、先がねぇ。

 それにあの二人なら俺が特に何かしてもしなくても、いずれ思いの内を話すことができるだろうさ。

 

 ちょっとしたお節介をかけつつ、俺たちはアリウスとトリニティの狭間、何も無いだだっ広い草原に着く。

 まさかこんな所でやるつもりか?

 隠れるところもねぇが……。

 

 

「ここなら問題なかろう」

 

「隠れる場所がどこにもねぇように見えるんだが……」

 

「隠れる? 逃亡戦をした事がないのでな、そのような発想はなかったな」

 

「そうかい、強者の考えだな」

 

 

 風が吹く。

 草が揺れ、葉の擦れ合う音が心地いい。

 アリウスにはこんな長閑な場所があるのか。

 だからこそ口惜しい。

 

 ここから先、この心地いい音が聞こえなくなるんだからな。

 

 

「では、シャーレの」

 

 

 二丁の銃口がホルスターから抜かれ、そして銃声が響く。

 

 

「ふっ……あははは!!」

 

「挑む側は初めてか?お嬢ちゃん」

 

 

 オウヒが片手を押さえながら、手から離れて地面に倒れた自身の黒い得物を見る。

 

 そして視線を上げたその先には、俺の手の内にあるマグナムが白煙を吐いている姿が見えただろう。

 

 卑怯だとは言わねぇだろ?

 

 挑まれたのはこっちなんだからな。

 

 

 口角を上げ、銃を拾いながらオウヒが肉薄する。

 想像以上に速い、が直線的だ。

 どういう動きだ?

 構えたマグナムの引き金を引く。

 いくらキヴォトスの人間とはいえ.357マグナム弾は、喰らえばひとたまりも無いはず。

 避けるはず、その避けた先に撃ってチェックとしよう。

 

 そう思って、回避する瞬間を見極めようと目を凝らすと真っ直ぐ飛ぶ弾丸をオウヒは喰らい、そして嗤いながら速度を上げた。

 

 

「化け物か、てめぇは」

 

 

 黒と白の銃口を向けたオウヒは、躊躇いもなく引き金を引いてくる。

 デザートイーグル……音からして.44マグナム弾か。

 高貴な見た目に反して、下品な銃を使うもんだが……奴が持つとその白と黒の銃がより一層映える。

 

 CQCは得意じゃないんだがな。

 

 肉薄して、俺の懐に飛び込んできたオウヒは俺の側頭部に向けてハイキックを繰り出してくる。

 受けることも考えたが、迫り来る風切り音を聞いて受けるのを辞め、帽子を抑えながらしゃがみこみ、オウヒの軸足を刈り取る。

 

 華奢な見た目に反して、大男並の重量と硬さをしてやがるな、ヒナといいコイツといい、見た目と強さが一致しないやつが多いぜこの街は。

 

 足を刈り取った状態で、後ろに飛び退き、銃を構えると向こうも倒れる体勢で俺に向かって、銃を構えている。

 

 二つの砲声が草原に響き、互いの頬に赤い一筋を創り出した。

 流れる血を拭い、迫り来る弾丸を避ける。

 

 まだ視える。

 この速度ならなんとかな。

 アロナのお陰で肉弾戦も出来るようにはなったが、それでも目の前の女から放たれる攻撃は、受けるだけでも怪我を負っちまうだろう。

 

 

「スマートな戦闘じゃねぇな」

 

「スマート? そんな闘いをして愉しいの?」

 

「そういうタチかよ」

 

 

 これだから戦闘狂って奴らは……闘いを愉しむのが全て、勝ち負けは二の次って考えだろう。

 闘い方にそれが如実に現れている。

 

 俺のような引き金を引くことが手段の人間じゃねぇ。

 それが目的のタイプだ。

 

 

「ワガママな王様だぜ、お前さんは」

 

「ん?どういうこと?」

 

「トコトン付き合ってやるって意味だよ」

 

 

 一度マグナムを腰に差し戻し、俺はバックステップを行って距離をとる。

 

 天上院オウヒの戦い方は、闘いを愉しむ為に正面から叩き潰しにくる強者だからこそのヤり方だ。

 

 そういうのは、散々見たからな。

 同じように銃弾を正面から全て叩っ斬って勝ちに来る侍が居るもんだからよ。

 尤も今回は睡眠弾って手はねぇんだが。

 

 マグナムを引き抜き、狙いは両手と胴体。

 

 一つの砲声が響き、放たれた三発の弾丸が狙い通り命中し、武装解除と雀の涙程度のダメージを与えた。

 

 オウヒはその光景を認識すると、傍から見ても分かるほどに痺れている腕で、ゆっくり銃を拾い、ホルスターへと収める。

 

 

「あはははっ、凄いですねそれ! 何度も視たのに避けられる気がしない!」

 

「そうかい、気に入ってくれて──「こうかな?」は?」

 

 

 瞬間、砲声。

 俺の頬が切り裂かれ、血が吹き出る。

 こいつ……マジか。

 

 盗みやがったな。

 

 俺の早撃ちを。

 

 

「うんうん、なるほど悪くないね」

 

 

 頷きながら、銃口を眺めるオウヒは歯を見せながら嗤い、ホルスターに銃を仕舞い込み、持ち手に手を置く。

 

 

「じゃあ、ここからが本番かな?」

 

「ケッ……」

 

 

 ホルスターに銃を収めて早撃ちをするってことは、常に銃を持ち続けるのが辛いからか?

 ということは、ダメージは通っている……らしいな。

 ただその体力が果てしないだけ。

 

 こっちは一撃喰らえば終わりだってのに、辛い闘いだぜ。

 

 二丁での早撃ちは中々できる技じゃねぇ。

 にも関わらず、ただ魅せただけでそれを自分のものにしちまうのは、あの女の天才的なセンスが成せる技だ。

 

 

 ほんの僅かに腕がブレた瞬間、砲声と共に迫り来る弾丸を避けて、草を薙ぎ倒しながら地面を転がる。

 

 さっきまで照準が明後日の方向を向いてた癖に次の射撃では精度が上がって、速度と精度の両立を達成しやがった。

 

 早撃ちってのはただ速くぶっぱなすだけじゃねぇ。

 そこに狙い目に当てるだけの精度が伴ってようやく1人前ってもんだ。

 だと言うのに、僅か2回目で殆ど物にしやがって……。

 

 俺が反応できる以上は、速さはまだ俺の方が上だが……それだけがオウヒの強さじゃねぇからな。

 まだ向こうが俺の土俵で闘っているだけだ。

 

 右と左8発ずつ、そろそろリロードだろう。

 弾の入ったマガジンを真上へ投げ、空のマガジンを自重で落として、落下してきた弾倉を腕を振り抜きながら装填。

 

 それにしても、随分と乱暴なリロードだが、こいつがやると妙に映える。

 

 ホルスターに戻して、手を置き、少し呆れたような顔つきでオウヒは声を発する。

 

 

「先生は撃ち返さなくていいの?」

 

「バカスカ撃つのはガンマンの戦い方じゃねぇんだよ」

 

「そう、ならそろそろ叩き潰すけどいいよね」

 

 

 そいつは御免蒙りたいな!

 

 横に飛びながら、俺は右手の白のデザートイーグル目掛けて、早撃つ。

 

 俺の回避を読んでいたように両手からデザートイーグルを引き抜いたオウヒもまた引き金を引き……。

 

 鋭い金属音が草原を駆け巡った。

 

 

「これを狙ってたってわけ?」

 

「このタイミングかは賭けだったがな」

 

 

 賭けのチップとして左腕をオシャカにされちまったが……まぁ充分だろう。

 

 右手の白のデザートイーグルは地面に倒れ、そして左手の黒のデザートイーグルのスライドには.44マグナム弾の薬莢が詰まっている。

 

 

「アサは先生に撃たれてたから、何かあると思ったけどそれが原因で──「それだけじゃねぇさ」」

 

「てめぇの早撃ちのやり方は俺のを真似てやったもんだろう。 動きでわかるが、それは俺のようなリボルバーでやる反動の逃がし方だ。てめぇのような自動拳銃でやっちまうと動作不良を起こす。

 特性を知らずに見様見真似をしちまうからそうなんだ。

 けどな、その早撃ちは見事だった。

 

 いいセンスだ」

 

 

 力の入らねぇ左腕から血を垂らして、カッコつけるもんじゃねぇが……。

 これで互いに一丁ずつになった。

 

 あまり長引かせるもんでもねぇ。

 

 懐からシャーレの紋章を取り出し、それを投げ捨てる。

 

 

「あれ……先生、まさか、でも、ヘイローもないのに?」

 

「オウヒ、ここからが……本番だ」

 

 

 青々とした草原が、遥か高い空が、一瞬で黄金に染まる。

 片腕で煙草を取り出し、咥えたそれはZIPPOによって火が灯された。

 

 

「仕事はスマートにやるもんだ」

 

 

 広い草原にも関わらず、声が響く。

 

 

「そうだろう?」

 

 

 燻る煙が立ち上り、火の灯ったZIPPOを地面へ落とす。

 

 

「これが……ガンマンの……」

 

 

 地面にぶつかった金属音と、声が混ざり合い、その二重奏が……。

 

 

 世界を揺らす。

 

 

 

 

 

 

「『神髄
「『神髄
「『神髄
「『神髄だ……火傷じゃすまねぇぜ」

 全身に漲るこの力の名を俺は知らねぇ、それでも間違いなくこの力が俺の最高到達点だ。

 

 銃口を向けると、オウヒがうっとりとした目で俺を見て、そして銃口を構えていた。

 

 稲妻が迸る。

 

 

 

 

 

「――――限定解除開始。神秘、解放――――」
「――――限定解除開始。神秘、解放――――」
「――――限定解除開始。神秘、解放――――」
「――――限定解除開始。神秘、解放――――」

 大気中の何かが、全てオウヒの元へと集まり、歯車が組み変わり、枷が外れるような重厚音と共に、少女は言祝ぐ。

 

 

 

 

 

「――――神経接続――――神秘圧縮――――神秘順転――――生存本能、警告(ノイズ)切断(カット)――――解釈拡大――――回路点火――――安全弁、開放――――ッ!」
「――――神経接続――――神秘圧縮――――神秘順転――――生存本能、警告(ノイズ)切断(カット)――――解釈拡大――――回路点火――――安全弁、開放――――ッ!」
「――――神経接続――――神秘圧縮――――神秘順転――――生存本能、警告(ノイズ)切断(カット)――――解釈拡大――――回路点火――――安全弁、開放――――ッ!」
「――――神経接続――――神秘圧縮――――神秘順転――――生存本能、警告(ノイズ)切断(カット)――――解釈拡大――――回路点火――――安全弁、開放――――ッ!」

 その名を俺は知らねぇ。

 それでも間違いなくあれがアイツの最大火力。

 あれを俺に受け止めろ……か。

 

 オウヒの紅い右の瞳と煌々と光り輝く黄金の左の瞳が俺を捉え、揺らめく。

 全くとんでもない頼みを引き受けちまった。

 

 しかし……そうだな。

 あの熱視線に、今は乗せられてやろうか。

 

 

 互いの視線が混じり合い、集中力が極限へと達し……そして……。

 

 

「二人とも、喧嘩は止めなさい!!!!」

 

 

 聴き馴染みのある声が響き、二人揃って、振り向くと紅い髪をした少女が俺とオウヒの間に割って入った。

 

 その少女の姿を確認した俺たちは思わず驚きの声を上げてしまう。

 

 

「アーちゃん!?」

 

「アル!?……ん?アーちゃんってアルのことか!」

 

 

 ここはアリウスのはずだ、なんでゲヘナの陸八魔アルがここにいるんだ?

 

 

「はぁ、はぁ、先生からアリウス領に行くって聞いて、そしたら、先生とヒーちゃんが殺し合いをしてるって……」

 

「まぁ確かに死にかけたが、殺し合ってはないが」

 

「そ、そうだよ、その先生に挑んでただけだから、だから怒らないで、アーちゃん」

 

 

 さっきまでの姿はなんだったのか、慌てた様子でオウヒがアルの元へと駆け寄る。

 

 しかしここでやりやっていることがなんでバレたんだ?

 道中つけられてる気配はなかったが……。

 

 

『うんうん、その疑問、実に分かります。えぇえぇ気になるでしょうとも、ではお答え致しましょう!』

 

 

 耳元で声が囁かれる。

 思わず飛び退き、声の方向を見れば、なんといえばいいんだろうか。

 奇っ怪な見た目をした生首がプロペラ飛行をしていた。

 俺の視界が今目の前の光景の理解を拒んでいるのは確かだ。

 

 

『いやはや、先生レディの生首をそうまじまじと見るもんでは無いですよ?

 確かにワテクシはプリティでビューティかつワールドワイドなジーニアス超絶イケメンフルフェイスアーマーコンサバティブちゃんですのでまじまじと見てしまうのは致し方あるまいというもの! 嗚呼、全く拙者の罪深さが恐ろしい!』

 

「おい誰か助けてくれ」

 

『そんなそんな、マスターはアーちゃんを宥めるのに必死ですからね。助けは来ない現実は非情って奴ですよ、HAHAHA! それにしても死ぬ気だったんですか?貴方』

 

 

 コンサバティブとかいう生首が、急に真面目なトーンで話し出す。

 様子の掴めねぇ奴だ。

 

 

「コンサバティブ……だったか?──『ノン! my name is コンサバティブちゃん!』分かったよ、コンサバティブちゃんな……はぁ、頭が痛てぇ。 死ぬ気はねぇよ、まだやることが多いからな」

 

『ほう、マスターの魔砲に打ち勝つつもりだったと』

 

「魔砲……あぁさっきのあれのことか。あれに打ち勝つ……か」

 

『そうでなければ、貴方といえど即死は免れませんでしたよ?』

 

 

 ふわふわと浮遊する生首が俺の周りを旋回する。

 

 確かに結局はケリがつかなかった闘いだが……。

 

 そうだな。

 俺の答えはシンプルだ。

 

 

「俺とオウヒ、神髄と魔砲。どちらが強いかなんて、それを決めちまうのは……俺に言わせりゃ、ロマンに欠けるな」




という事で、兵隊様の作品『こちら、世界征服推進部ソロモンである』より、天上院オウヒちゃんとのコラボでございました。
兵隊様の作品はこちらから → (https://syosetu.org/novel/351988/

この場をお借りして感謝を述べさせていただきます。
コラボありがとうございました、兵隊様。


基本燃える行動をしたくない私が珍しくコラボ先との戦闘ですが、兵隊先生からはもっとボコしても良かったとは言われてるのですな
まぁそこは私は書かないでおきましょう

次は君だ(顔面金タマによる指差し)
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