新任教師『次元大介』   作:レイゴン

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※注意喚起 今話には少々グロめの展開を設けております。表現をマイルドにしましたが、予めご了承下さい。


3-9 CRYMAX

「な、なんですか、貴方は!!」

 

「おい、侍。聞かれてるぜ?」

 

俺は懐かしい背中を見ながら、彼へ話しかける。

 

「……外道に名乗る名は持ち合わせてはおらぬ」

 

「だとよ、残念だったなベアトリーチェ」

 

随分と久しぶりに見た気がするな。

細い体に黒い長髪、淡い緑色の和服を着こなした長身の男。

そいつは、ベアトリーチェへと背中を向けて、俺へ振り向き、懐かしい面を見せる。

 

「……まさか、次元。お主が教鞭を執る日が来るとはな」

 

「あぁ、俺も未だに慣れねぇよ、五ェ門」

 

十三代目石川五ェ門。

 

江戸時代に名を馳せた古の大泥棒『石川五右衛門』。

その末裔にして……居合抜きの達人、何でも真っ二つにしちまうコワーイ男。

 

俺らの頼れる仲間、五ェ門が俺の左隣に立つ。

 

もう片方の空いたスペースに来る奴も……もう仕事を始めてる。

 

「あ、あり得ない……私の……私の至高を……そんな鈍らで断ち切った……? 信じれない、信じれるはずがありません!!」

 

ベアトリーチェは、俺を殺す気で放った一撃を真っ二つにされたことに狼狽えながら、頭を掻き毟っている。

 

余程あの光線に自信があったのだろうな。

 

彼女は、頭を搔き毟りながらも頭を回して、その原因を、言い訳を探している。

 

「まだ儀式が完全では無いから……?そうでなければ……私の崇高が負けるはずが…… こうなったら直接、神秘を取り込んでしまいましょう!!」

 

混乱し続けている彼女は、祭壇に祀っているはずのアツコの元へと振り向き、彼女を直接取り込もうと手を伸ばす。

 

そして気付いたのだろう。

 

そこに彼女の姿はないことに。

 

そして、その複数の眼で確認したはずだ、磔にされていた彼女の代わりに1枚の紙が貼り付けられていることに。

 

その紙には『ごくろうさん』の文字と、人を揶揄うデフォルメされた顔の描かれた絵が描かれている。

 

「なっ、生贄は、私のロイヤルブラッドは何処に!?」

 

辺りを見回したところで、見つかるわけが無い。

 

あいつの盗みに気付けるのは、世界でもとっつぁんだけなんだからな。

 

「逆転の一手を打とうとしている所、失礼」

 

突如として聖堂に声が響く。

懐かしい声だ。

俺の夢でも幻でもない、ハッキリとした現実で聴けるとはな。

 

「麗しの姫君は……このルパン三世が頂戴致します」

 

壁に叩きつけられ、動けずにいたサオリ達の横から足音が聞こえる。

 

「ア、アツコ……」

 

「大事な家族……今度は離すんじゃねぇぞ」

 

傷だらけのアツコを抱えて現れた男は、そっとサオリの腕の中に彼女を下ろし、光の下へと歩いてくる。

 

その顔を見たベアトリーチェが、狼狽えながらも彼へ問いかける

 

「き、貴様は……」

 

「俺か? 俺の名前はルパン三世。かの名高き怪盗『アルセーヌ・ルパン』の孫にして、お前が嫌悪する次元大介の相棒さ」

 

青いジャケットに赤いネクタイ、黒のシャツを着た猿顔の男……

俺の相棒、ルパン三世が俺の右隣に並び立つ。

俺は、ルパンの顔を見ながら、話しかける。

 

「遅かったじゃねぇか、ルパン」

 

「次元、主役の登場は最後って……相場が決まってるもんだろ?」

 

「けっ、相変わらず敵わねぇな、お前さんには」

 

俺がそう笑うと、ルパンが拳を向けてくる。

差し出された拳に、俺も拳を出して打ち付け、互いに前を向く。

 

「話はここに来た時に把握してるぜ、ベアトリーチェ。随分と悪どいことをしたらしいじゃねぇか」

 

「あぁ、それで五ェ門が外道って言ってた訳か」

 

「うむ……あの者を斬るのになんの躊躇いはない」

 

五ェ門の殺気の籠った目つき、どういう仕組みかは知らねぇが……俺のここまでの歩みを知ってるらしい。

説明が省けて助かるとしか思わねぇがな。

 

「くっ……こうなったら……バルバラを、いえバシリカに存在する全ての兵力をここに……!! 小悪党三人如きに……私の崇高を邪魔されてたまるものですか!!!」

 

ベアトリーチェが大きく叫ぶと同時に、それに呼応するように亡霊達の泣き叫ぶような鳴き声が聞こえる。

ミカが抑えているはずのバルバラが、ここに来るとなると幾らの俺たちとは言え、勝敗は未知数になる。

 

「バシリカの兵よ、私を保護なさい!!!」

 

そうベアトリーチェが声を高らかに命令を下す……が、一向に亡霊たちは彼女の元へと集結してこない。

 

「……何故、来ないのですか……?」

 

その異変に、その原因に真っ先に気が付いたのは五ェ門だった。

 

「むっ……この音は」

 

「五ェ門、何か聞こえたか?」

 

俺がそう聞くと、五ェ門の返事よりも先に答えが聞こえてきた。

これは、歌だ。

歌が、祈りと慈愛を込めた聖歌が聞こえる。

 

「この歌は……」

 

「これは……KyrieEleison(キリエ)?」

 

スクワッド達が困惑している中、俺はこれを流した主に気が付く。

この歌を俺は以前聞いていた。

 

あの暗い檻の中で、一人縋り付くように、しかしそれを隠して、でもそれに祈っていた少女の姿を思い出す。

 

「……くくくっ、何が気に入らないだ?ミカ……歌、上手いじゃねぇか」

 

「なりません!!! なりません!!私の……私の地獄で、慈悲を語る歌を響かせるなど!! 一体どうやって……楽器も蓄音機も全て破壊したというのに……まさか、そんな……!!!」

 

「ベアトリーチェ、俺は神の関わる話を信じねぇ主義だが……それでも言い切ってやる。

奇跡ってのはな、待つもんじゃねぇ、諦めねぇ奴の元に来るもんなんだよ」

 

「黙りなさい!!! 生徒は……憎悪を、軽蔑を……呪いを謳わなければならないのです!!!」

 

己の爪に引っかかれたその白い肌から、血が滲むほどに嫌悪を吐き出し、喚く彼女は最後にその腐った考えをまき散らす。

 

「生徒は……お互いを騙し、傷つけ合う地獄の中で、私達に搾取される存在であるべきなのです!!」

 

「勝手にてめぇ一人でやってろ。その自分勝手で幼稚な地獄に、俺の生徒を巻き込むんじゃねぇ」

 

「ぐっ、ぎぃぃぃぃいいい!!! よくも、よくも私に、そんな言葉をぉぉぉおおおお!!!!」

 

再び力を込めて、叫ぶ怪物を前に、俺の口角は上がっていた。

何せ、久しぶりにこいつらと肩を並べるのだからな。

 

ベアトリーチェの神秘が空間を支配し、赤黒く世界が染まる。

そんな中で俺たちは軽く談笑をしていた。

 

「次元、よくぞ見栄を切った」

 

「ホント相変わらずカッコつけてんだからなぁ?

……しょうがねぇ、このあとのセリフ。お前に譲ってやるよ」

 

「おい、決戦なんだから、気を引き締めろよ……ったく」

 

帽子を深く被り直し、ベアトリーチェに歩み寄りながら、銃を仕舞って、口を開く。

 

「さて……クライマックスだ」

 

そのセリフと共に、俺たちを中心に、一瞬で世界が黄金に染まる。

ルパンが、手をポケットに入れながら歩き、俺は取り出した煙草を咥え、五ェ門が斬鉄剣を手に構えを取る。

 

ミカがまだ戦ってるんだ、アイツを迎えに行くためにも……さっさとこいつを始末しなくちゃならねぇ。

 

だから、悪いが、ここからは全力だ。

 

俺たちはそれぞれ口を開く。

自分たちの魂に刻まれた言葉を言い放つ為に。

 

「悪いが、ここからはお遊び抜きだぜ」

 

「この一刀の下に斬れぬ物無し」

 

「仕事はスマートにやるもんだ」

 

三人の歩みが空間を支配し、声を響かせる。

 

「見せてやるよ」

 

「刮目せよ」

 

「そうだろう?」

 

ポケットの中から右手を取り出し、構える。

低い体勢で、斬鉄剣を構える。

煙草に火をつけ、ジッポを地面へと落とす。

 

「「「これが」」」

 

「大泥棒の」

 

「侍の」

 

「ガンマンの」

 

指をスナップする音が。

神速の居合によって何処かから舞い降りてきた木の葉が真っ二つに切り裂かれる音が。

ジッポが地面に当たる音が……

 

「「「『神髄
「「「『神髄
「「「『神髄
「「「『神髄』だ」」」

 

三重奏が世界を揺らす。

 

「覚悟はいいか?」

 

「いざ尋常に……参る!」

 

「火傷じゃすまねぇぜ」

 

駆け出すと共に、ベアトリーチェは守護者たちとは違うまるで遊園地にいる着ぐるみのような亡霊を召喚し、俺らへと差し向けてくる。

 

が……あのユスティナ聖徒会に比べれば雑兵もいいところだ。

 

「五ェ門!」

 

「任されよ! 森羅万象……斬鉄剣に斬れぬ物無し!!」

 

先に駆け出した五ェ門が、猿叫を発しながら、亡霊へと肉薄し、閃光が煌めく。

 

「今宵の斬鉄剣は……一味違うぞ」

 

いつの間にか抜かれていた斬鉄剣を納刀すると同時に、亡霊の群れが全て一刀両断される。

その後も、俺やルパンへ目掛けて放たれる光弾を真っ二つにしていく。

 

「なっ……まだ、まだ終わるわけには……!!」

 

「いいや、終わるんだよお前は。今日俺たちの手によってな」

 

「五月蠅い!!ルパン三世ぇ!!!」

 

ルパンが、鋭く突き出された爪による一撃をひらりと跳んで躱したかと思えば、ジャケットを広げた。

そこには点火されたロケットが大量に括り付けられており、気が付くよりも早く、その全てが発射される。

 

そして、ロケットはベアトリーチェに命中し、その巨体を大きくのけぞらせる。

 

「ぐっ……こんな子供騙し!!」

 

「お前さんがそれを言っちゃ不味いだろう」

 

「い、いつの間に……!?」

 

俺の目の前には倒れ込んだベアトリーチェの顔が見える。

ルパンとはアイコンタクトせずともやることが分かってるからな。

 

俺はベアトリーチェの顔に向かって銃を構える。

 

「まだ……まだだぁああ!!!」

 

「いいや、これで……」

 

俺の目の前で再び神秘が集まり、今度は巨大な光の球を形成する。

さっきは五ェ門に任せちまったが……今度は俺の番だ。

 

チェックメイトだ」

 

光球を放つと同時に、引き金を引く。

 

「そ、そんな……!!」

 

放った弾丸は、ベアトリーチェの光球を掻き消し、彼女の頭を貫く。

 

「がぁぁぁ……次、元……大介ぇ……!!」

 

ぼたぼたと……血を地面にまき散らしながら、彼女は俺を睨みつけている。

驚いたな、頭を貫いたつもりだったが……それでも生きていやがる。

 

取り込んだアツコの神秘の影響か……?

 

「殺して……やる……!! 生きて帰れると思わないことです……!!」

 

「あらら、こいつは驚いたな。どうするの次元ちゃん」

 

「使うつもりはなかったが……仕方ねぇな」

 

いくら弱っているとは言え、背中に広がるヘイローは未だに健在だ。

だから……サオリから没収した爆弾を俺はベアトリーチェに投げつける。

 

「そ、それは……い、いやだ……やめろ……!!」

 

「てめぇがアリウスに持ち込んだものだ。その始末、自分で喰らうんだな」

 

あの爆弾は時限式のように通電によって爆薬を起爆する方式のものだ。

だからこそ、あの装置でない限り爆発することは基本ないが……

 

大抵は、分解を阻止するためにコードを切れば自動で爆発できるように設計してあるもんだ。

本当はアロナに分析してもらいたかったが……背に腹は代えられないな。

 

「『ヘイローを破壊する爆弾』……テメェの体で実験するんだな」

 

もう一発銃弾を放ち、コードを撃ち抜くとそれはベアトリーチェの目の前で巨大な爆発を引き起こし、祭壇を突き破り、彼女のヘイローを破壊した。

 

「あ……ア……ァ……な、ぜ……私の……計画が……ワタ……クシ……ノ……」

 

煙の向こうで、虫の息が聞こえたが……もう長くはねぇはずだ。

 

「片が付いたな」

 

「まだ生きているようだが……いいのか?」

 

「そっちも大事だけどよ?先ずは嬢ちゃんを優先するべきだろ」

 

五ェ門の疑問に対して答えたルパンの言う通り、アイツの神秘は打ち砕かれて再起不能のはずだからな。

それよりも、アツコと、もろに光線を喰らったスクワッド達の方を優先するべきだろう。

俺達が近づくと、気絶していたヒヨリが目を覚ます。

 

「うっ……ぐ……あ、あれ?お、おわったんですか?……ひ、姫ちゃんは!?」

 

「ヒヨリ、起きたか。アツコならそこにいるぜ」

 

ヒヨリの手を取って起こしてやると、アツコを抱きかかえるサオリの元へ運んでやる。

 

「リーダー……姫は……?」

 

「大丈夫だ……まだ息はある」

 

ミサキは、ルパンたちに肩を貸してもらって運ばれてくる。

アツコの様子を見たルパンが、近寄って容態を見る。

 

「外傷がひでぇ……少し待ってろ、応急処置をしてやっからな。五ェ門ちょっと手ぇ貸せ」

 

「あ、そういえば、このおじさん達は一体?」

 

「おじさんのことかい?おじさんはね、そこの次元先生の仲間だよ」

 

少しむずがゆいが……まぁそうだな。

ルパンと五ェ門が簡単な止血と手当を行う。

 

これで傷自体はこれ以上悪くはならねぇはずだ……

だからここから目を覚ますかどうかは……彼女自身に掛かってる。

 

「姫……アツコ……頼む、どうか目を開けてくれ……」

 

サオリが彼女の前で膝を付きながら、涙を流し、か細い声を上げる。

 

そして、その祈りに応えたように……彼女はゆっくりとその目を開いた。

 

「サオリ、ちゃん……?」

 

「アツコ……!!」

 

「姫……」

 

「ひ、姫ちゃん!!気が付きましたか!?」

 

彼女の声が聞こえたと同時に、サオリはアツコを抱きしめて、大声で泣き始める。

そして、ミサキとヒヨリも、サオリの上からアツコを抱きしめ、同じように涙を流し始める。

 

「サオリ、ヒヨリ、ミサキ……みんな、おはよう」

 

「アツコ……!! 良かった……本当に、よかった……!!」

 

「……苦しいよ、サッちゃん」

 

「アツコ……生きていてくれて、ありがとう……本当に、ありがとう」

 

俺たち三人は、四人の様子を少し離れたところで見つめていた。

たった一夜の出来事だった、それでも彼女は……ようやくゼロに向かって歩き始めることが出来るようになった。

 

自分にとって何よりも大切なものを見つけることが出来たのだから。

 

さてと……大人の時間だ。

 

四人から背を向けて、俺たちは倒れているベアトリーチェの方へと向かった。

 

「く……ぐぅっ……」

 

「今日は驚くことが多いな……まだ生きてたか」

 

「こやつ、妖の類か」

 

「五ェ門ちゃん、それは妖怪に失礼なんじゃねぇの?」

 

ヘイローを破壊する爆弾……どうやら、相手の神秘にしか反応しないらしいな。

ベアトリーチェが傷だらけなあたり通常の爆弾としての威力は申し分ないが……

 

「よくも……わ、私はまだ……まだ……! たかだか儀式を妨害した程度で……図に乗らないでください! たった一度の勝利で終わりになんて!!──「いいえ、このお話はこれで終わりです」」

 

彼女がしつこく奮起しようと力を込め、立ち上がろうとした瞬間、それを遮るように声が響く。

 

俺がその方を向くと、そこには杖を付きながら手に後ろ向きの男性が描かれた絵を持った首のない茶色のトレンチコートを着た異形が立っていた。

 

「ゴルコンダ……」

 

ベアトリーチェが恨めしそうに、その異形に向かって声を上げる。

俺とルパンが銃を向け、五ェ門も何時でも抜刀できるように構える。

 

「誰だ、てめぇは」

 

「申し訳ありません……大泥棒の一味の皆様を驚かせてしまいました。 私は『ゲマトリア』のゴルコンダ……私は戦いに来たのではありません。マダムを連れ戻しに来たのです」

 

「こいつをか」

 

冷静に、それでいてあくまでも礼節を欠かさないように、気を使ったその喋り方は、何処かあの黒い影を思い出させる。

ゲマトリアと言っても、マダムだけが例外なのか?

 

「えぇ……それに戦闘で皆様に勝てる自信は毛頭御座いません。 『ゲマトリア』が皆マダムのように怪物に変われるわけではないのですから」

 

そう言いながら近づいてくるゴルコンダを止めるように、五ェ門が抜刀し、喉元まで刃先を近づけ、寸止めする。

 

「……っと……申し訳ございません。我々からの要求はただ一つ。そこのマダムの命を奪わないで頂きたいのです……例え、『舞台装置(マクガフィン)』であろうとも、有用であることに違いはないので」

 

「命をか……次元、どうする」

 

ルパンが俺に向かって聞いてくる。

本来ならトドメを刺すつもりだったが……

 

「ゴルコンダ、テメェの言う通り、こいつの命は奪わないでやる……だが、こいつには取らなきゃならねぇケジメがある」

 

「……私の作品である『ヘイローを破壊する爆弾』も貴方方には効きそうにもありません。約束を破るような方ではないのも確認済みです。よって、その要望……受け入れましょう」

 

そういって、彼は一歩後ろに引き下がる。

五ェ門が警戒心を緩めない辺り、アイツもそれなりの手練れと見るべきか……

 

まぁいい、今はこいつだ。

こういうタイプは、本当なら生かしておくだけで面倒ごとを引き起こすから殺しておくべきなんだがな……

 

「!……次元、少し待て」

 

「なんだ、ルパン」

 

「ガキが見てるぜ?」

 

溜息をついて、少し待っているとルパンがスクワッドの方へと向かう。

 

「お嬢ちゃん達、今から先生がすっごく怖くなるから……少し席を外しちゃくれねぇか?」

 

「……ベアトリーチェを『消す』のか」

 

サオリがルパンに対して問う。

彼女を殺すのかと。

あんな世界で生きてたんだ……そういう言葉も知ってるものか……

益々こいつのしてきたことが許せねぇな。

 

「いいや、それはしねぇな。アイツの仲間との取引だ」

 

「なら一体……──「ケジメをつけさせるのさ」」

 

「大人の……いや、先生の怖ぇ顔見たくはねぇだろ」

 

サオリ達は少し戸惑い、話し合ったあと、ルパンの顔を見ながら口を開く。

 

「構わない、それが私たちにとってもケジメになるはずだから」

 

「……そうかい」

 

ルパンは俺の方に来ると、やれやれと言わんばかりに手を広げながら首を振る。

 

「全く、良い教育をしてるじゃねぇか。次元先生?」

 

「アイツらの自主性を尊重してるだけだ」

 

ルパンの軽口を聞き流しながら、俺はマグナムに.357Kaiser弾を三発込める。

 

「何を……する気なのですか……!!」

 

「てめぇのケジメだ」

 

ベアトリーチェの左腕を踏みつけて広げさせ、肩との間に銃口を構える。

 

「これは、てめぇが引き起こしたエデン条約で消えない火傷を負ったアルファ隊の分だ」

 

引き金を引く。

 

「ぎゃあああぁぁぁぁっ……!!!」

 

銃弾によって、ベアトリーチェの左腕に大きな穴が空き、そして完全に千切れる。

次に、右足を踏みつけて、股関節との間に銃口を構える。

 

「あ……あっ……」

 

「これは、てめぇの計画のせいで全てを失い、絶望し、一度完全に壊れたミカとサオリの心の分」

 

引き金を引く。

 

「……あ、ぐ、ぁぁぁぁっ……!!」

 

その太ももは銃弾の威力で完全に潰れ、空いた穴と共に足が千切れる。

最後に、左足を踏みつけて、股関節との間に銃口を構える。

 

「や……やめ……て」

 

「そういって、お前は止めたのか? これは……そうやって、てめぇが罰してきた多くのアリウスの生徒と……あの自爆し、命を落としたアリウスの生徒の分だ」

 

「い、いや……!」

 

引き金を引く。

 

「あぁぁぁぁぁああああッ……!!!!」

 

千切れたベアトリーチェの足から足を離し、残った右腕を掴んでゴルコンダへと投げ渡す。

彼は、杖を手放して彼女を掴むと……俺たちから再び一歩引き下がる。

 

「命を奪いはしねぇ、ショック死するような柔な体でも、出血死させるような医療体制でもないだろう」

 

「…………えぇ、そのようですね、私と致しましては、『ヘイローを破壊する爆弾』の効力が分かったことで充分な成果は手に入りました……重ねて感謝申し上げます、では失礼いたします」

 

「次元……大介…………許しません……絶対に……絶対に殺してやりますからね……」

 

そういって彼は完全に闇に消える。

最後まで怨嗟を喚き散らし続けた彼女と共に。

 

俺はそれを見届けると、少し遠くに立っていたスクワッド達の方へ歩いていく。

 

「もう本当に……お、終わりなんですよね……?」

 

「あぁ……スクワッド……よく頑張ったな」

 

「先生……私たちを助けてくれてありがとう」

 

そう話しかけてきたのは、アツコだった。

どうやら、マスクはもうしなくてもいいらしいな。

 

そのことに少し顔を綻ばせていると、サオリが俺の方へ近寄って、預けていたシャーレの紋章を手渡して、俺のことを見つめながら口を開く。

 

「姫も救い出せた……先生、約束通り……私の身柄、好きにしてくれ」

 

……呆れたな、こいつ。ミカの時に俺が何て言ったのか忘れちまったのか?

 

「はぁ……」

 

「な、何故溜息を吐くんだ、先生……私が全ての元凶だ……エデン条約事件も、セイア襲撃も、ナギサ襲撃も……ミサキも、ヒヨリも、アツコも……それにミカのことも……みんな私のせいでこうなってしまった。 連邦生徒会でも、トリニティでも……矯正局でも何でも構わない。 先生が思う、一番適切な所に私を送ってくれ」

 

「ふ、ふざけないで、リーダー……何を勝手にそんなことを……また一人で!」

 

それを聞いたミサキがサオリの服を掴んで顔に近づける。

本気で怒った表情と声色。

また自分一人で抱え込もうとする彼女に対して怒るのも当然だ。

 

「いいんだ……私が放棄してきた責任……それを清算するには今しかないんだ」

 

この筋金入りの頑固者をどうしたものか。

こいつ、俺以上の頑固さだぜ?

 

俺が困っていると、ルパンが耳元で囁いてくる。

 

「次元ちゃんってば、いつの間にこんな別嬪さんとわっるい約束なんてしてたのさ~」

 

俺はルパンの頭に拳骨を落とした。

 

「いっってぇぇぇ!! なぁにすんだコノヤロー!」

 

「ルパン、俺はガキに興味はねぇって知ってるだろうが……はぁ、サオリ」

 

「私が……別嬪だと……? あ、あぁ、決まったか、先生」

 

俺はサオリの方を向く。

しっかりとサオリの目を見つめる。

 

「お前さんはようやく自由になれたんだぜ。バカなことを言うんじゃねぇさ。お前さんらの人生はこれからようやく始まるんだ」

 

「し、しかしそれでは……私は……一体この罪をどう清算していけば……!」

 

「さぁな。俺は悪党だからな、罪を背負う生き方しか知らねぇ」

 

ぶっきらぼうな言い方だが、俺は俺の好きに生きてきた。

時代が変わろうとも、笑い飛ばして生きてきた男だ。

 

「だから、俺が言えるのはこれだけだ、てめぇの未来の責任を背負って生きろ」

 

「ど、どういう意味なんだ……?」

 

「私には何となく分かるよ……サオリ、やりたい事はある?」

 

疑問に頭を悩ませていたサオリに、スッキリとした表情のアツコが声をかける。

 

「アズサは、勉強をするのが楽しいって、友達と一緒にいるのが幸せだって言ってた。

ねぇ、サオリの好きなものは?やりたいことは?趣味は何? 好きな食べ物は?私は今まで、一つも聞いたことがない。将来の夢、なりたいものとかある?」

 

サオリに近づいたアツコは、彼女の顔を見ながらそう話しかける。

 

「私の……そんな、そんなものは……考えてきたことがなかった」

 

「ここに来る前、先生が言ってたけど……リーダー、先生に向いてるかもねって」

 

「そ、そうですよ。教えるの上手いですし」

 

「わ、私が……先生に……?」

 

サオリの周りを囲んで、穏やかに談笑をしている。

そんな中、サオリだけは悩み続けている。

自分の未来を考えてくることがなかった人生を歩んできたのだから。

 

「……私は、生きていても……いいのか?」

 

「さぁな、自分で見つけるしかねぇよ」

 

そういって、俺はシャーレの紋章の代わりに鍵を投げ渡す。

 

「こ、これは……?」

 

「シャーレの鍵だ。前は電子キーだったんだがな。とあるバカが勝手に施錠しやがったから、最近はアナログ式にしてんだ。 スクワッド達、この先もし、困ったことがあればシャーレに来い。 ガキの世話をする暇はねぇが……仲間は別だ」

 

そういって、俺は彼女たちに背を向ける。

 

「ま、待ってくれ……どこに……」

 

「まだ戦ってる奴がいるからな」

 

「そうか……ありがとう、先生」

 

手を振って俺たちはその場を後にする。

この先は彼女たちが自分で考えて生きていく場面だ。

 

バシリカから出ると、後ろをついて歩いていたルパン達がようやく話し出す。

 

「カッコつけすぎなんじゃねぇの?次元、ってかあのセリフ、俺がクラリスに向かって言ったやつだよな?」

 

「うるせぇ」

 

「うむ、某ももう少し優しく接するべきだと思うぞ」

 

「やかましいな!!」

 

振り返ると、二人の輪郭を覆うように白い靄が掛かっている。

そうか、こいつの効力はずっとじゃねぇのか。

 

「久しぶりに会えてよかったぜ、相棒」

 

「あぁ、こっちも助かったぜ、ルパン、五ェ門」

 

「ふっ、お主から礼を言われる日が来るとはな……某も共に仕事が出来て良かった」

 

二人の輪郭が徐々に薄くなっていく。

色々話してもよかったが……またいつの日にか、美味い酒でも飲みながら話すとしよう。

 

「じゃあな、次元」

 

「達者でな、さらばだ」

 

「……おう」

 

二人の姿が消え……俺はミカの元へと走って行く。

 

まだくたばんじゃねぇぞ、ミカ。

 




魔女と罵られ
蔑まれてきた彼女の末路

傷つけられてもかの聖域を守り続けた彼女に

祝福と憐れみを

次回 憐れみの賛歌と共に響けよ、銃声








激アツ演出 クライマックス神髄をずっと出したかったんですよね。
本来なら神髄もここで初登場の予定だったのですが……ヒエロニムス戦でどうしても大人のカードを使いたくなかったのでこうしました。

あと、次元は殺し屋と傭兵時代があるので、こういうケジメ方法はやってきそうだと思ってますな。あくまでも私の解釈なので解釈違いしてしまうのが怖いですが……

ちなみにですが、次元同様に、ルパンと五ェ門も神秘を纏っています。
当然のように固有名も。
ルパンの神秘は『大泥棒』。不可能を可能にし、任意のものを盗むまでの手順を閃く力
五ェ門の神秘は『一刀両断』。斬れると認識したものを手に持った刀で断ち切ることが出来る力。まぁなくてもできると思うんですが彼らに至っては……

ここで一つ考察の材料を落としておくと、これらは彼らの得物ではなく彼ら自身に纏っている状態です。しかし次元だけはマグナムに入っていました……何故なのでしょうかね

さてさて、次回でようやく大詰め、あのセリフどうするか悩みものですが……

では、ここすき、感想、評価お待ちしております。

今の話のタイトルが分かりにくいとの意見を得て変更するか否か

  • 例:殺し屋の矜持
  • 例:1-10
  • 例:1-10 殺し屋の矜持
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