セラとアルは薬草学の授業を終え、食堂に向かって歩いていた。アルはいつも通り、魔法を使わずに自分の足でしっかり歩いている。その姿を見て、セラは少し驚きながらも、安心した気持ちになった。
「今日の薬草学の授業も面白かったね!」 セラがアルに声をかけると、アルは少し前を見ながら答えた。
「そうだな〜。薬草が体内で反応を起こすと、まさか患部の時間の流れだけが遅くなるなんて思いもしなかったな。」 アルは軽く肩をすくめた。
「案外魔法って人間以外の生物のエネルギー源になってるんだな。薬草学も奥が深い」
セラはにっこりと笑って言った。「わかる、魔法ってまだまだわからないことがいっぱいあるのね〜。」
その時、セラが前方にルキアとマーティンを見つけ、思わず声をかけた。「あ、ルキア!マーティン!」
ルキアとマーティンはセラに気づき、笑顔で駆け寄った。
「あら、セラ、久しぶりぃ〜」 ルキアがおっとり明るく声をかけ、セラに近づく。
「おう、セラ!元気か?」 マーティンもにっこりと笑った。
「うんうん元気元気〜」
「あら、アルノートくん、ごきげんよう〜」
「おう、いたのか!」
セラは驚き3人の顔を見る。
「え?え?もしかして2人とも、アルと知り合いなの??」
それに対してマーティンが答える。
「実はこの前図書館であったんだ!ルキアの本探しに付き合ってたらアルノートも調べ物してたみたいでよ。ちょうど噂聞いてたから声かけちまった!」
セラは驚きながら言い、
「えー、それは意外だったなぁ〜。もう2人と知り合ってたなんて。
やっぱアルってもう有名人だよね〜。 でも、魔法に頼らずに解決したいって、すごいよね。」
「そうよね〜、そうそう、最近学園内で失踪事件が起きてるって噂を聞いたんだけど〜、アルノートくんが何か関わっているんじゃないかって聞いたわ〜」
ルキアが言うと、セラは少し眉をひそめた。
「失踪事件?」
セラは考え込んだ。
「それって、どういうこと?」
「う〜ん、まだ詳しいことはわかってないけど〜、最近何人かが行方不明になってるみたいなのよね〜。アルノートくんがその事件に関わってるわけじゃないと思うけど〜、アルノートくん、が何か知ってたりするのかしら〜?」
ルキアは少し心配そうに言った。
「別に、何も知らないな、今初めて聞いた。」
セラは思い当たる事があるのか、話し始めた
「そういえば最近リリーっていう一緒に薬草学受けてる子なんだけど、最近全く学校に来てないみたいなんだよね。」
「あぁ、この前隣の席にいた子か。確かに最近見ないな。」
アルは少し不安そうな顔をしたが、それでもセラに視線を向けて言った。
「先々週の授業の前に一緒にご飯食べてたんだけど、なんか急に顔が青くなり始めて、手も震え出したからただ事じゃないと思って、療養室に連れて行ったんだ。お医者様いわく、魔力切れを起こしてたみたい。でも魔法使ってる素振りもなかったんだけど…」
「リリーの魔法のレベルはどれくらいなんだ?」
「リリーは初級魔法と、あとは闇系の魔法が得意って言ってたかな。」
「闇…か」
「どう?わかりそう??」
「いや、もう少し情報を集めてみる必要があるな」
「ありがとう、アル。そうだ、このことについて、みんなで協力して調べてみようよ。」
しかしマーティンはこの件について後ろ向きだった。
「おい、あんまり踏み込むと危険じゃねーか?」
「そうよ〜?もしかしたらあなたも怖〜い人に連れて行かれちゃうわよ〜」
「ひっ!?」
「まあとにかく、少し話を聞いてみるくらいなら大丈夫だろ?」
「そそそ、それくらいなら…大丈夫……よね??」
「自分で言ったくせにビビってるじゃねーか…」
そうして、失踪事件の調査に乗り出すのだった。
セラ、アル、ルキア、マーティンは食堂を出て、学園内の噂を元に失踪事件の調査を始めることに決めた。まずは情報を集めるために、何か手がかりがないか学園内を歩きながら話し合った。
「んで、どうやって調べんだ?」
マーティンが頭を掻きながらセラを横目で見る。
「そうね、リリーと仲良かった子達と話せればいいんだけど…」
セラが言うと、ルキアも頷いた。
それにアルも賛同する。
「確かに。それに、失踪事件に何か魔法的な関わりがあるかもしれないし、魔法を使っていた人がいるんなら、もしかしたら誰が見ているかもな。」
「そうだね、でも知り合ってばっかだから、誰と親しいのかあまり良く知らないんだよね」
リリーの知り合い探しで詰まってしまい、悲嘆に暮れる。
しかしその瞬間、後ろから声がかかった。
「リリーのことなら知ってるぞ。」
「あ、アイザック先輩?」
振り返ると、そこに立っていたのは黒髪長髪の長身な男子生徒が立っていた。セラはその姿を見てすぐに、学園の先輩、アイザックだとわかった。
アイザックは少し険しい表情をしており、何かを知っていそうな雰囲気が漂っていた。
「アイザック先輩、リリーのことを知っているんですか?」
セラが尋ねると、アイザックはしばらく黙った後、ゆっくりと答えた。
「知ってるも何も、リリーは俺の妹だからな。リリーは最近あまりにも変だった。授業にも出ないし、誰とも会おうとしない。あと、必死に何かを探しているみたいだった…。ただ、失踪する前に、ちょっと変な魔法を使ったところを見たことがある。」
セラとアルは目を見合わせた。「変な魔法?」 セラが繰り返した。
「何かぶつぶつつぶやいていて、急に魔力が彼女に集まったと思ったら、急に魔力切れを起こしたんだ。療養室に運んだんだが、分からずじまい。すぐに体調は良くなったが、ついに3日前、あいつは突然姿を消した。」
アイザックが言った。
「その魔法、何か異常な点があったんですか?」 アルが冷静に尋ねると、アイザックは少し苦しそうに眉をひそめた。
「分からない、だが何か…普通ではかった。あいつ、何かヤバい魔法を使っていたんじゃないかって。」
その言葉にセラの胸がざわついた。「ヤバい魔法?」 セラは少し目を見開いた。
「それを調べるために、俺たちも動かなきゃな。」 アルは意気込んだ。
「でも、気をつけてな。」
アイザックは真剣な表情で続ける。
「もしリリーが本当に何か危険な魔法を使っていたなら、いくら魔法レベルが初心者とは言え、お前たちはただじゃすまないだろう。あいつが消えた理由がその魔法に関わっているとしたら、お前達も確実に巻き込まれる。」
「わかった、でも私たちは調べるだけだし、無理に踏み込むつもりはないよ。」
セラが微笑みながら言った。
アイザックはうなずき、十分に気をつけてとだけ言い、去って行った。
「魔力が集まり始めたと思ったら急に魔力切れを起こす…一体彼女の身に何が起こったんだ…?」
不可解な現象に頭を悩ますアル。
次第に、アルたちはリリーが使っていた魔法の種類やその背後にある秘密に近づき始めるが、学園内には次第に不穏な空気が漂い始めていた…。