「〜〜♪♪♪」
空気を肺に送り歌い出す。
(今回の曲はハンド風だが、最初はしっとり目だな...)
とイメージしながら歌っていると、段々と曲のテンポが早くなっていく。
スピーカーから流れる曲のメロディが心を躍動させる。
私のボルテージが上がっていくと共に、曲もサビへと近づく。
そして...
「〜〜♪♪♪!!」
サビに入り、最高潮へと足を踏み入れた。
...
楽しい。
歌っている最中であるにも関わらず、思わず笑ってしまいそうな感覚になる。
私の発する1声1音が私の身体をゾクゾクと震わせる。
まるで流れる音全てが私と一体化していき、私自身がその曲となるような、心地の良い感覚。
..."前"のワタシでは、絶対に辿り着けなかった...感覚。
(あぁ...この時間がずっと続けばいいのに...)
なんて思っている暇は無い。
1曲の長さは平均で4分程度。
まして今回の曲は短く、3分半程しか無いのだ。
「〜~♪♪!!」
(もっと歌っていたい)
(まだまだこの歌を響かせてやる)
などと考えている隙にも、もう2番のサビに入る。
ここを歌えばあとはCメロとラスサビ、そしてアウトロだけだ。
楽しい時間は一瞬で過ぎ去ってしまう。
だからこそ、一分一秒を楽しまなければ。
「〜〜♪♪!!」
ラスサビに入った。
ラストに相応しいよう、全力で歌い上げる。
転調があり音程も高くなる難しい部分だが、この身体はスピーカーのようにするすると音が出てくる。
「♪♪〜~...」
(最後は少し、切なげに...)
最後まで歌い切り、アウトロまで気を抜かずその場で静止する。
(別に誰かに聞かせる訳では無いが、形から入るのも大切だろう。)
なんて考えるうちに曲が終わり、「ふぅ」と息をついた。
(やはりこの曲はかっこいいな)
(次は何を歌おうか)
などと考えながら、空中に浮くタッチパネルを操作する。
すると...
<〜〜~♪♪
〜~〜♪♪!!>
〜~♪♪!!>
と、恐らく隣で歌っているであろう歌が聞こえてきた。
右隣の部屋は複数人で来ているのだろうか...凄く楽しそうな声が聞こえる。
(...技術力はこちらの世界の方が遥かに高いハズだが音漏れはするのか...やはりカラオケとはこういうものなのだろうか?)
などと思索する。
とはいえ私は、"前"からこの雰囲気が大好きだ。
曲の間の静かになる時間
隣から聞こえる歌声
廊下から聞こえる流行りの曲
それらを聴きながら休憩したり、次の曲を考えたりする瞬間がたまらなく好きだ。
勿論複数人で来て楽しく談笑しながら他の人の歌唱を聴くのもいいが...のんびり出来て歌いたい時に歌えるヒトカラの雰囲気はまさに至高なのだ。
決して友達がいない訳では無い。決して。
(って、なに一人で意地張っているんだ)
気を取り直して、次の曲を入れる。
(しかしまぁ...よくここまで歌えるようになったもんだ..."前"では到底考えられないな。)
と、少し懐かしむ気持ちになる。
「(思えばこの世界に生まれ落ち早15年...時の流れとは早いものだ)フフッ」
なんてジジくさい事を考えてしまう私に少し笑いが込み上げてきた。
(私ももう"前"を合わせれば40代...いやはや、歳はとりたくないものだ...)
(しかし来月から2度目の高校生)
(今回の人生こそ私は)
「プロシンガーに、なるんだ」
深夜テンションで書き上げました