(政府の)犬です、よろしくお願いします   作:TE勢残党

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ついに拙作も3桁話数の大台に到達いたしました。
皆さまのご愛顧に感謝いたします。
引き続き拙作をよろしくお願いいたします。


100 アメリカ

 USNAの魔法戦力は、軍の魔法師部隊「スターズ」に一元化されたピラミッド構造を取っている。

 

【挿絵表示】

 

 戦闘魔法師の最高位であるスターズは陸海空海兵隊に並ぶ独立軍種扱いで、その下に州軍所属のウィズガードが続き、続いて国家の認証を受けた組織(主に法執行機関や研究所、いくつかの魔法企業)。最後に年少の魔法素質保持者を教育する国指定の教育機関。

 

 USNA国内で魔法を使うことが認められているのは、これで全てだ。

 

 かの国では日本などよりよほど厳格な魔法規制が敷かれている。というか、世界的にはこのくらい厳重に権利を制限するのが西洋のスタンダードであり、日本のように立ち位置が曖昧なまま共存できてしまっている社会は稀で、各国の学者たちは「何故あの状態で社会が成立しているか理解できない」とこぞって首を傾げる。

 

 余談だが、マクシミリアン(米)やローゼン(独)などの西洋系魔法大手がわざわざ人件費の高い極東の島国に主要拠点を置いていたのは、日本の魔法技術が進んでいたこと以上に、先進国としてはありえないほど規制が緩い日本でのびのびと魔法を研究したかったからという目論見も多分に含まれるのである。

 

 閑話休題。そんな世相もあり、国内の魔法師は軍人にならない場合、大部分が研究職への道を志すと言われている。

 

 というのも、軍に入るか研究所に入るかして、政府から魔法の使用を許可される身分にならない限り、魔法師に生まれたとしても魔法を使う権利が認められないためだ。州によって多少のブレはあるものの、基本的に魔法が絡むと正当防衛も過剰防衛も認められなくなる。

 

 こうなった原因は、魔法黎明期に遡る。

 

 1999年、核兵器テロというカルト信者の目論見は超能力者の警官によって潰えた。

 

 そうして世界に現れた魔法という新たな力に対して、アメリカの世論は真っ二つに割れた。

 

 いわゆる「青い州」では魔法利権で市民が黙らされて表向きだけでも受け入れムードが醸成されたのに対し、「赤い州」では銃信仰や十字教主義と衝突して正面から排斥された。

 

 では実際に魔法師たちを受け入れた都市部では問題が起きなかったかと言えば、むしろ逆である。

 

 南部の人間は本音を隠さなかったというだけで、北部の人間も同じようなことを思ってはいたのだ。金持ちが魔法利権に迎合したから資本主義の理論にのっとって黙らされているだけで。敬虔な貧困白人層、いわゆるレッドネックを中心とする魔法師排除運動は今も世界中に広がる「人間主義」の源流になり、今もアメリカを悩ませている。

 

 それだけではない。世間が魔法師の登場に困惑していた頃、時の大統領は側近にこう問うた。

 

「今回の超能力者はたまたま正義の心を持っていたが、もしそうでなければ?」

 

 誰も止められなかった核兵器テロを超能力者が止めた。

 

 それは、超能力者がテロを企図したら誰も止められないということじゃないのか、と。

 

 アメリカは移民の国だ。全国民を横断できる文化的背景がなく、街によそ者を受け入れられるのと引き換えに、怪しいヤツの噂が広がらない。ゆえに合衆国は日本などよりよほどテロに脆弱だ。

 

 ――そして、図らずもこの2年後。ワールドトレードセンタービルに飛行機が突っ込んだ。

 

 これによって恐怖心を爆発させた米国富裕層の強力な働きかけにより、USNAは「テロとの戦い」を名目とする全面的な魔法規制へと傾倒していくことになる。

 

 なあなあの管理をすれば9.11なんて目じゃないくらいの魔法テロが必ず起きる。そう確信したアメリカ政府上層部は、以降50年をかけてありとあらゆる都市や道路、施設、場所を監視するためあの広い国土をサイオン検知器で埋め尽くし、何かあれば一瞬でスターズ(傭兵部隊)を展開させる即応体制を築き上げた。

 

 結果として、アメリカ国内では未だに大規模な魔法テロは起こっていない。魔法素質を持つ少年によるスクール・シューティングが一回だけ起きたが、その時も殺傷性の魔法ではなく違法改造されたAR-15が使われた。この体制の正しさは2064年、四葉家の魔法テロによって大漢が滅ぼされたときに証明されたと言われる。

 

 その代償として、アメリカにおける魔法研究のレベルは覇権国とは思えないほど低い。

 

 否、国として魔法資源の有用性は把握しているので国費を大量に注ぎ込んで研究を続けているし、事実世界の最先端に近いレベルにはいる。自国が魔法資源に恵まれないことはとっくに自覚しているのだ。

 

 アメリカは移民の国だ。歴史が浅く、もともとその土地にあった魔術的基盤とは食い合わせが悪い。欧州の古式魔法師たちは当然歴史の長い旧家なので、わざわざアメリカに渡ったものは少なく、居ても渡航の過程で魔法を捨てることがほとんどだった。USNAの魔法技術は、前提に比すればかなり頑張っていると言っていい。ただその実態は、当該分野世界一である日本の30倍ともいわれる天文学的な研究費と人的資源を注ぎ込んでやっと世界2~3位の水準をキープしているような砂上の楼閣である。

 

 地域統合体になった今でも、基本的にUSNAとはアメリカとその衛星国で構成される。MLBよろしく、メキシコやカナダやドミニカやプエルトリコからかき集めた才能を市民権+士官学校推薦+多額の奨学金+卒業後の士官待遇の四段コンボで囲い込む形だ。

 

 日本は世界でもダントツの「軍人が尊敬されない国」であるため認識が難しいものの、欧米の基本的な価値観において士官は貴族が務めるものだ。途上国にポッと生まれた第一世代魔法師や、各国から待遇につられてきた比較的土地に根付いていない魔法師たちはこぞってUSNAを訪れ、そして一代でその才能を絶やしていった。

 

 強力な魔法師はいる。優れた技術もある。だがそれらの多くは諸外国から金と待遇で買ってきた傭兵魔法師と、未だ寿命の安定しない調整体が主軸におり、彼らが血筋として定着することはない。

 

 強い魔法師を作り出すのに必要な三要素は、遺伝子・早期教育・一族単位/一子相伝の家庭学習。他国には多少なり「地元の古式魔法師」というものがおり、彼らの協力で黎明期の現代魔法は作られた訳だが……科学的アプローチによって気付くことが可能なのは「魔法の素質は遺伝する」というところまでだ。

 

 アメリカは遺伝子を買ってくることができても、アジアのように洗脳じみた早期教育を家庭レベルで行う文化がないし、家庭単位で魔法の訓練を実施することは法で禁じられている。誰も見ていないような辺境でならと思うかもしれないが、そういう田舎は人間主義者のテリトリーだ。彼らは現役で「魔女狩り」をやっている。隠れて魔法を使っていると知れれば翌日には家が燃えていることだろう。

 

 「草の根レベルで民衆に根付く信仰とも古式魔法ともつかないオカルト」こそが今に続く魔法技術の中核であり、それを満たす民衆を持つ国は多くない。現行のUSNAの魔法技術は、極端に相性の悪い技術を無尽蔵の国力で世界中から買いあさり強引に発展させてきたいびつな状態にある。大怪我に気づかず輸血し続けて生きているようなものだ。

 

 USNAには選別する能力はあっても育成する能力はなく、そして新ソ連もまた、2度にわたってオカルトを捨て信仰を焼き払ってきた唯物論の国だ。世界を二分していた超大国が揃って「魔法」という新たな国力のファクターに対応できず100年近く足踏みを強いられた以上、それを活かし切った国家が新たな覇権国として台頭することは必然だったと言えるだろう。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 USNAスターズ総隊長、アンジー・シリウスの業務内容は、少佐という立場に比して余裕がある。

 

 彼女はマネージャーではなくプレーヤー型のトップであり、米軍内で魔法力がダントツだからという理由でシリウスの称号とスターズ総隊長の地位を賜っている。

 

 スターズはSEALs等の特殊部隊と大差ない人員規模でありながら、陸海空軍、海兵隊らと並ぶ独立した軍種として扱われる特殊な立場にある。指揮系統上もSOCOM(特殊作戦コマンド)隷下ではなくUSNA軍統合参謀本部直属で、時に「大統領の私兵」などと揶揄される極端な独立性の高さを有している。これらは主に、他軍と同レベルのとんでもない予算額を分配されている魔法関連事業への正当化のためだ。

 

 総隊長は少佐ポストでありながらこれら軍のトップと一部同等の権限を持たされており*1、合衆国の魔法戦力を率いる立場として国家安全保障会議に出席できるし、大統領から意見を求められることも珍しくない。それだけ魔法という兵科の有用性は理解されているし、国内に3人しかいない戦略級魔法師であり、ほか2人と違って拠点防衛に従事しない遊撃担当であるリーナは特に格別の待遇を誇る。

 

 リーナはUSNA歴代最強の魔法力*2ゆえに、歴代最年少どころか中学(ミドルスクール)も卒業しない歳からスターズに招聘され、13歳にして会得した戦略級魔法「ヘビィ・メタル・バースト」により、士官学校卒業どころか入校資格も持たないうちから少佐の待遇と総隊長のポストを与えられてしまった。

 

 訓練生時代の下積みのおかげで現場仕事の心得こそあれ、兵の指揮や作戦知識、戦史、語学などの座学、幹部としての書類仕事や軍内政治などなど、15の小娘に軍官僚としての働きは期待できようはずもない。実態として平時における実務的な部分は、副隊長として彼女の右腕を務めるベンジャミン・カノープス少佐によってその大半が代行されている。

 

 彼女がいるということに意味がある仕事(上層部との会合や戦略級魔法に関わる事案、カノープスが時々開いてくれる情報共有のための1on1など)を除けば、任務がないときのリーナの仕事は部下を鍛えることくらい。要するに、リーナは戦い以外の局面では役に立たないので、ほとんどの仕事を巻き取られておりヒマなのだ。

 

 じゃあ彼女は名目上だけの地位にしてベンジャミンを隊長に据えればいいじゃないかと思うなかれ、その圧倒的な武力は自称「世界最強の魔法師」としてUSNAの国威を大きく発揚しているし、血筋や性別、年齢にかかわらずUSNAは強い魔法力を持つ者を優遇するという姿勢を宣伝できている。総隊長というポストに意味があるのだ。

 

 それに何より、多くの魔法師は自分より弱い魔法師のいうことを聞かない。アメリカでは部活レベルでも「一番うまいやつがキャプテン」の論理が浸透しているので、その傾向はより顕著。リーナを差し置いて「2番手」のカノープスを選出しては、ただでさえ結束がないスターズのチームワークは今より酷い事態になることうけあいである。

 

 そして、今から書類仕事に追いつこうにも、アイビー・リーグ並の難関*3ウエストポイントでみっちり勉強してきている文武両道の官僚たちに並び立とうと思ったら今から10年くらい猛勉強しなければならないので、リーナは自分が評価されている部分=戦闘力の方に全振りすることを早くから決めている。

 

 彼女は強さのみを評価されてUSNAスターズに飛び級入隊している。ゆえに居眠りや書類不備や会議中の失言で彼女のキャリアに傷はつかない。彼女がやってはいけないのはたった一つ、敗北のみ。

 

 そのたった一つを、彼女は一度経験している。

 

 2092年の暮れ、沖縄海戦と後に続いた「ドッキリ津波事件」を引き起こした謎の戦略級魔法師「鉄仮面」の調査と無力化のため、リーナには破壊工作の任務が言い渡された。

 

 同盟国の魔法戦力を暗殺してこいという汚れ仕事は、しかしバレたら()()であるために万全の戦力が整えられたはずだった。

 

 彼女とカノープス、オーストラリアの調整体魔法師2名、イギリスはMI6麾下Eスコードロンの戦闘魔法師エリン、そして使い捨ての駒であるイリーガルMAPという戦争レベルの大戦力で「鉄仮面」を襲撃し……そして敗れた。

 

 事態が事態であるため、USNA政府は大きな犠牲を払ってこの件を闇に葬り、緘口令を敷き、全てはなかったこととされた。

 

 残ったのは、心因性の視覚障害が残り片目が見えなくなったカノープスと、人生で初めて自らの魔法力が通用しない相手に挫折を味わったリーナだけ。

 

 以来彼女は、それまでの少女ゆえの甘さが鳴りを潜め、まじめさ故にこなすだけだった訓練の質と量を段違いのものへと改革した。多少の脱落者と引き換えに部隊全体の練度や連携能力は劇的に向上し、1か月と経たないうちに部下たちがリーナに抱いていた「舐め」は完全に消失することとなる。

 

 小娘「アンジェリーナ」は敗死したが、軍人「アンジー・シリウス」は死なない。そのようなマインドセットが彼女の中に確立され、それまでの常識的でヌルいあり方が気に入らなかった部下たちも認識を改めた。各自が特殊部隊並みの理不尽な訓練を乗り越えてきた最精鋭部隊であるスターズの面々にとっては、小娘より鬼が上官をやってる方がしっくりくるのだった。

 

 そんな訳で空き時間さえあれば手の空いている隊員を連れ出して訓練に励んでいたリーナだが、この日は珍しく会議にでづっぱりであった。

 

 アメリカ国家安全保障会議に出席して意見を出し、日本の魔法戦力を知る有識者として要人たちに助言をして回り、戦時体制下での各部隊の段取りを再確認し、いつ任務が下されてもいいように装備を再点検、移動に使う航空機やヘリの整備士たちに話を通し、もはや仮想敵国となった日本の出方についてベンジャミンと話し合い……そのような仕事をおおよそ30時間ぶっ通しでこなした後、彼女はようやく1人になった。

 

「……う、ぷっ」

 

 リーナが虚勢を張っていられたのはそこまでだった。

 

 私室のドアが閉まると同時に彼女は限界を迎え、よろよろと数歩トイレの方向へ歩いたのもむなしく、その場で崩れ落ち、嘔吐した。

 

「おぇ……げえ……っ」

 

 びちゃびちゃと音を立て、床に敷かれたカーペットが胃液と七面鳥のサンドイッチで汚れていく。

 

 リーナは必死に息を止めぎゅっと目を閉じ、人心地つくまで四つん這いの姿勢でいた。その後、部屋の電気もつけないまま、酸で焼けただれた喉をごまかすように、机の上に置いていたペットボトルを一気に飲み干す。

 

「ぷぁっ……はっ、はっ……っ」

 

 リーナが顔を上げると、鏡台には仮装行列(パレード)の解除された、ひどい顔色のリーナが映っていた。

 

「……ひっ」

 

 リーナは一瞬、自分の顔にさえ「人殺しの化け物」が重なって見え、すぐに頭を振ってその考えを霧散させる。

 

 彼女の精神を揺さぶっているのは、シチュエーション・ルームで見た大亜連合の被害状況だ。USNAは偵察衛星からの写真や、極秘で飛ばした無人偵察機からの映像により、その被害状況を詳しく把握している。

 

 ()()()()()()()

 

 沿岸で、川沿いの平地という、本来ならば足の踏み場もないほど発展し、文明に満ち溢れていなければならないはずの場所がすべて流され、消滅していた。

 

 大量のゴミのようなものが一面広がるばかりで、建物も、車も、人も動物も植物も、その一切が流され、破砕され、かき混ぜられ、一緒くたにゴミになって土地を埋め尽くしている。時折、漁船や電車、廃ビル、金庫など原形をとどめたものが存在するが、それらも破損し、意味もなくゴミ山の頂上に乗っかっている。

 

 無機質で、雑多で、均質で、まったく生を感じさせない有様が延々と、延々と、延々と……。

 

「ぅ、げほっ、げぽ……」

 

 あるいは、巻き上げられた粉塵によって昼だというのに薄暗く、判然としない視界の中、極限の高熱によってガラス化した荒地。地表から数十メートルにわたって土砂が吹き飛ばされ、蒸発し、おおよそ円形をしたクレーターとなって現出している。郊外に続いていた道路と外縁部の市街の燃えカスと、半ばから寸断されむき出しになった地下配管だけが、かろうじてそこが街だったことを証明していた。

 

 あるいは、見渡す限りどこまでも続く瓦礫の山。ガス管やパイプラインの類が破壊されたためかあちこちで火の手が上がり、それが何もかもを巻き込んで灰と煙に変えていく。画像が遠くて黒い粒にしか見えていなかったものが、建物のコンクリ片と混ざって焼け焦げた大量の死体の破片だとわかった時、仮装行列の下でリーナは必死にこみあげてくる吐き気と戦っていた。

 

 あるいは、新ソ連の戦略級魔法「トゥマーン・ボンバ」の爆心地。南京市というより南京郊外に殺到していた難民の大群を標的として発動したそれは、比喩でもなんでもなく周辺地域を真っ赤に染め上げていた。衛星から観測されるその土地は超広範囲にわたる水素爆発によってメチャクチャに吹き飛ばされ、建物や木々は瓦礫となってそこら中に飛び散っていた訳だが……建物の少ない郊外では、瓦礫の主要な構成物が「人体」であるところも珍しくなかった。

 

「ぁん、な……もの、あんなこと、人間の、やる、ことじゃっ」

 

 嘔吐く合間に、処理しきれなかった独り言がこぼれる。

 

「ど、して、皆……平気な顔で話ができるの。はぁっ、何故、心配の一言も出てこないの、おかしいのはワタシの方だっていうの……!?」

 

 だがリーナは、本質的な部分で「ただの女の子」だ。

 

 効率と勝利のためなら時に正気を投げ捨てることが求められる「軍隊」という戦闘システムの歯車を担うには、彼女は幼すぎるし、優しすぎるし、それらの割り切りが不完全だ。

 

 なまじスターズの総隊長などという地位にいるから、彼女の見えるところにいる大人たちは皆模範的な「軍人」だ。彼らは内心はどうあれ、目の前で起こった「未確認の戦略兵器使用」という事態に冷静に対処し、対抗策を検討している。

 

 リーナの目には、この未曾有の危機を前にしても「いつも通り」自国の利益を計算している軍人たちが、人間らしい情動の一切を廃したアリやハチの群れのようにさえ見えていた。

 

 そしてなにより、自らも保有する「戦略級魔法」という力。それが最大限に振るわれれば、これほどの天変地異が起きる。

 

 CIAが試算している推定死者数はおよそ3億人。USNA全人口の約80%にあたる人数が、たった10日間で消滅したことになる。この津波が東西どちらかの海岸を襲えば、USNAは……否、リーナの家族も、親戚も、知り合いも、故郷も、全てはあのヘドロのような瓦礫の底に沈むのだ。

 

「守らなきゃ……ワタシがステイツを守らなきゃ……っ」

 

 魔法兵器に対抗できるのは魔法兵器だけ。この100年でUSNAが渋々ながら認めようとしてきた事実。

 

 惨劇の主犯である「鉄仮面」に、リーナは敗北している。

 

 二つの事実が板挟みとなって、リーナの心に逃げ場をなくしていた。

 

「う……うぅ……」

 

 蹲ってすすり泣いているうち、彼女は疲労とストレスで意識を飛ばしていた。

 

 ただ時代というのは残酷なもので、リーナを寝かしたままにさえしてはくれない。

 

「リーナ、リーナ! シリウス少佐! 起きてください!!」

 

 ドアを叩く音と混じって聞こえてくる、緊急招集を示すサイレン音。

 

 訓練で即応を叩きこまれているリーナは、身体がそれを認識した瞬間にばね仕掛けのように飛び上がり、軍服から着替えていなかったのをいいことに「仮装行列」をかけなおして即座にドアを開く。

 

「シルヴィ、いえ、マーキュリー准尉。状況を教えてください」

 

 部屋の中は片付いていなかったが、ともかく任務に対応する必要がある。ブリーフィングルームへの道順を走りながら、ついてきているシルヴィア・マーキュリー・ファースト准尉に状況を問うた。

 

 一瞬ののち、リーナはこの判断を後悔する。

 

 

 

 

 

「日本軍です! "鉄仮面"がニューヨークに現れました!!」

*1
当然だが、他軍の最高位は基本的に大将が務める

*2
USNA基準。日本には同学年だけで同等以上の実力者が少なくとも3名、±2歳の範囲でさらに3名いる

*3
学力レベルでは1段劣るが、身辺調査が非常に厳しいので総合的にはむしろ大変といわれる




被害状況見ただけでゲロ吐いてるリーナと
「正直実感湧かないんですよね」とかほざいてる実行犯
良くも悪くも器が違いますね


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