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107 激動の時代
| 極東戦争 |
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| ↑開戦初期の戦況図 |
| 戦争:第四次世界大戦 |
| 年月日:2095年10月30日-11月30日: |
| 場所:日本、大亜連合 |
| 結果:日本側の勝利、大亜連合の滅亡 大冷戦体制の成立 |
| 交戦勢力 |
| 日本 インド・ペルシア連邦 東南アジア同盟 | 大亜細亜連合 新ソビエト連邦 |
| 戦力 |
| JPN :300,000 IPU :300,000 SEAL :650,000 | CN :1,400,000 USSR:70,000 |
| 損害 |
| JPN :30,000 IPU :1,800 SEAL :4,500 | CN :1,340,000 USSR:680 |
| 民間人死傷者 |
| JPN :238,000 | CN :320,000,000 -650,000,000(推計) |
極東戦争(きょくとうせんそう、英:Far East War)は、2095年10月30日から11月にかけて主に日本と大亜連合との間で行われた戦争である。
大亜連合による横浜侵攻(横浜事変)が発端となって勃発した。この戦争は最終的にアジアの大国すべてを巻き込み、後に続く第四次世界大戦の緒戦となったと言われている。
史上初めて戦略級魔法が使用された戦争である。開戦から10日間で7種28発の戦略級魔法が使用されたことで知られ、戦争全体を通じて魔法戦力が戦局を支配し続けた。
使用された魔法が従来の大量破壊兵器を遥かに凌ぐ性能を発揮したことで、戦闘期間わずか31日、組織的戦闘の続いていた期間に絞れば10日間だけであったにも関わらず大亜連合は総人口の約半数、その後の計画的飢饉を含めれば80%以上を失ったとされ、その文明もろとも政府機能を瓦解させた。
22世紀現在では2064年の大漢崩壊と並んで魔法戦力の通常戦力に対する優位性が示された典型的な事例とされ、鉄器、火器、機関銃に続く軍事史の転換点と位置づけられる。
日本側についたインド・ペルシア連邦と東南アジア同盟は日本が反撃を始めてから勝ち馬に乗る形で参戦したもので、日本が最終的にユーラシア同盟結成に至ったのは事後的なものとする見方が通説である。そのため、この時点での日本陣営は「ユーラシア同盟」ではなく「日本側」と呼ばれる。
また当初、新ソ連は大亜連合側で戦端を開いたが、日本側が頑強な抵抗を見せ戦略級魔法の使用を示唆すると態度を翻し、開戦二日目に日本側が最後通牒を発した時点で寝返って部隊を撤退させ、逆に大亜連合へ宣戦を布告している。
本戦争の結果大亜連合は国家機能が瓦解し、日本の発案で締結された「大阪条約」にて周辺国家に3分割され地図上から消滅。実質上の廃国となった。
また、戦勝によって大きく威信を高めた日本は本戦争を通じ、インド・ペルシア連邦、東南アジア同盟と新陣営「ユーラシア同盟」を結成。同時に戦略級魔法使用に関わる裁定への不満から国際魔法協会を離脱。代わりに国際魔法師連盟を自ら結成。以降の魔法協会は、旧来のものを「西洋魔法協会」、日本が創設したものを「東洋魔法協会」などと呼び分けるようになる。これにより事実上、魔法師の世界は東西に分断されることとなった。
日本は経済大国としての地盤、地域覇権国であった大亜連合の消失という2つの条件を前提に、魔法戦力による軍事的覇権の確保という要素が加わった結果、世界の覇権を争う第三の超大国として台頭した。
この動きに対抗するため、USNAは日本との同盟関係を維持しつつ、勢力拡大のためブラジルおよび西EU諸国にアメリカ主導での統合を提案。同時並行で中南米の無政府地域に対して徹底的な軍事介入を行い強引に併合(レコンキスタ作戦)、数年で南北全アメリカと西EUまでを版図とする世界史上最大の経済圏、アメリカ-ヨーロッパ連合(AEU)が発足するに至る。
一方で大陸北部を支配する新ソビエト連邦も、大阪条約によって獲得した不凍港の運用と現地難民を使った華北領土の強引な開発により、最終的に数千万人に上る餓死・過労死者を出しながらも驚くほど早く復興を完了させた。資源が豊富で農業や食品加工、繊維業など比較的単純な産業を得意とする華北地域を抑えたこと、他国より人的資源を使い潰すことに慣れていることが幸いし、地代名目で日本に相当額を中抜きされてなお絶大なリソースの確保に成功した。
また旧大亜連合領から接収した魔法資源(魔法師およびその家系・遺伝子のこと)と東洋魔法協会から盗み出した機密情報を利用し、不足していた古式魔法のノウハウを学び取り国内の魔法技術にブレイクスルーを発生させた。この躍進により新ソ連は魔法立国を掲げて日本に猛追することになる。
さらに外交では、東洋魔法協会にオブザーバー参加した縁で日本と相互不可侵条約を取り付け、後顧の憂いを断ったのち第6インターナショナルを宣言(新ソ連建国時の運動を第5としている)。本腰を入れて北欧・東欧の制圧に乗り出した。
この西進は結果として西EUをバックアップするUSNA、トルコを橋頭保にさらなる進出を狙う日本との利害の衝突を招き、3陣営が入り乱れた泥沼の代理戦争が東欧を舞台に繰り広げられることとなる。
その結果、日本を盟主とするユーラシア同盟(俗には大東亜共栄圏とも呼ばれた)、アメリカを盟主としUSNAが拡大した形のAEU、そして新ソビエト連邦とその衛星国からなる第6インターナショナルが3つ巴で拡大競争・軍事衝突・代理戦争を群発的に繰り返す状況に世界は収束していく。極東戦争を端緒として世界各地にドミノ倒しのように戦火が広がっていったことから、一連の戦争状況はまとめて「第四次世界大戦」と呼称されるのである。
それまでの「USNA対新ソ連」、西側対東側という構図は日本の台頭によって完全に崩れ、以降の世界は3極による帝国主義と、東欧を舞台としたグレート・ゲームの時代へと逆行していくことになる。
◆ ◆ ◆
2095年12月4日(日)。
のちの世に第四次世界大戦の緒戦などと呼ばれる横浜事変は、大国・大亜連合の完全解体という形で終結した。
一部を除き動員令が解除されたことに合わせ、第一高校を含む魔法科高校は明日の月曜日から授業再開となる。
丸1ヵ月の休校期間中、可能な限りの科目は自宅でのオンデマンド授業での実施となっていた。これから3月までかけて、年末年始の最低限の日程(大晦日と正月三が日)を除いて休み返上の週6実習漬け生活が生徒たちを待ち受けているそうだが、そのおかげかかろうじて各学年留年という事態は避けられる。
とはいえ、間に戦争が一度挟まっている訳で。何もかもがもとに戻った訳じゃない。
例えば生徒。横浜に上陸を仕掛けてきた大亜連合軍は、海からの部隊はそのほとんどが攻撃開始前に沈められた(俺が沈めた)訳だが……それでも母艦からすでに発艦していたヘリや艦載機、ミサイル、ドローンなどの攻撃によって、4高から6人、2高から2人、3高と8高から1人ずつ生徒の死者が出た。
4高は絶対数が多かったこともあるが、彼らは特に「文」の側に寄っていて戦闘力がない。腕利きの生徒の護衛が付いていたとはいえ、不可視化されたドローンやミサイルやBC兵器や空爆の前では限界がある。土壇場で生死を分けるのはやはり本人の腕っぷしということなのだろう。
ただし、それは常識的な魔法防御の話。
第一高校の面々が先導した組は死者ゼロ、何なら十文字克人が同行していた組はかすり傷ひとつ負わされたものがいなかった。
お陰様で第一高校は生徒数を減らさず済んだわけだが、次なる問題は帰宅後だ。
開戦初期に行われた大亜連合による無差別爆撃。
BC兵器をふんだんに使ったミサイルと爆弾の雨、そして九州沖で行われた海戦により、国防軍は海軍だけで2万人以上、民間人を含めれば20万人を超える死者が出た。
ただでさえ軍属の子供が多い魔法師界隈だ。身内や知り合いが失われ、家系の変更や居候先の再確認により「今まで通りではいかなくなった」者たちが多くいて、彼ら彼女らのカウンセリングなどに多くのリソースが割かれているし、未だゴタゴタから戻ってこられていないものも多くいると聞いている。
だが、一番問題になったのは当然、司波もとい四葉達也回りのアレコレである。
開戦直後の師族会議の場で、四葉真夜は達也を自身の息子であると称し、直後に公式な声明を出した。
超級の戦略級魔法師である息子の功績を家にフィードバックするとともに、十師族の権威が事実上失墜した現状に対し、国家への貢献をアピールして「自らの立ち位置が盤石である」ことを示した形だ。
この時、機密が解除されるのに合わせて司波深雪の方も四葉深夜の娘だということが開示され、実は二人はいとこ同士だったのだという説明がなされている。今のところ、それ以上の続報はない。
だがこの措置から、達也か深雪のどちらかが四葉家の次期当主に内定しているのだというところまでは誰でも簡単に導ける。四葉家は伝統的に、当主と次期当主以外の人員は存在すら公表しないからだ。
さらに、ある程度事情に詳しいものなら「達也と深雪を結婚させて盤石の体制を作り出すため、実は従兄妹ということにした」と考える。
原作知識と監視を経て身に着けた気質への理解のある俺ならば、「深雪に当主就任を受けさせる条件(ごほうび)として達也との結婚を持ち出した」というところまでたどり着ける。
達也は四葉家当主の座に興味がないし、達也のピーキーすぎる魔法演算領域は「最も魔法力が高い者」という四葉家当主の選定基準からは斜めに外れた位置づけになる。最高戦力は現場に出してナンボでもあるし、四葉家が誇る絶対的切り札として政治的な部分とは引き離して「王配」をやらせとくのが最適だろう。ある種のシビリアンコントロールだ。
報告を受けた獅童のジイサマは、「四葉の背後にいる東道の力が陰っているため、地盤強化を急いでいるのだろう。
ちなみにだが、一時は元老院四大老の筆頭にまで上り詰めていた東道家は、あくまで穏健派というか対大亜連合全面戦争をよしとしない立場にいたため、往年ほどの影響力は発揮できなくなってきているという。当然というか何というか、代わりに立場が向上したのは獅童のジイサマである。
ぶっちゃけ今の日本って形式上議会があるだけで総動員令がかかってないだけの全体主義国家なので、軍部に絶大な影響力を持っている獅童のジイサマの影響力が強くなり、反対に民間経済というか宗教勢力あがりの東道家みたいな組織は肩身が狭くなる訳だ。リーナ見逃させた前科もあるし。
ともかく、一躍有名人となってしまった四葉兄妹だが、本人たちの要望もあり休校明けからもイチ生徒として登校することになっている。
そうなると俺の監視も続投ということになる。「仮装行列」で覆ったものとはいえ、魔法師連盟の発足式でヘルメットを脱いでしまったので「守衛の榊創一朗主任=国防海軍の榊創一朗少佐=国家公認戦略級魔法師 鉄仮面」の構図は既に確定してしまっている。達也のネームバリューが俺という存在のインパクトを吸ってくれるのを期待するしかない。
大亜連合との戦争が一段落ついている以上、俺の手持ちの仕事で最優先なのは達也の監視である。大亜連合残党を燃やす仕事は
何より、実戦で使われてマテリアル・バーストの脅威が知れ渡っており、なおかつ未成年ながら四葉家の意向で公開されている国家公認戦略級魔法師だ。外国勢力がちょっかいかけてくるとしたら今だろう。というか原作だと実際リーナが来た。
この世界ではそもそもリーナは俺が回収してしまった。あれから3週間ほど経つが、ICUからは出たらしいという情報を小耳に挟んだっきり音沙汰がない。どうやら今も生死の境をさまよっているようだ。
そういう裏事情もあるし、国際情勢からみて日本-USNA間の交換留学は成立しないだろう。代わりにIPUとか東南アジア同盟が熱い視線を向けてる気もするが、その辺は今後の政治次第か。
結果として授業再開後の第一高校には国家公認戦略級魔法師が3人(達也、俺、白巳。白巳は壇上に上がりこそしたが未成年の顔面非公開)いる事態に陥る訳で、生徒各位にはかなり迷惑をかけることになるだろう……今からでも言い訳の一つも考えておくべきか。
そうやってのんきに考えを巡らせていられたのは、定期メンテナンスのため白い地獄に訪れ、何故かこちらに来ていた獅童尚久の姿を見るまでであった。
「創一朗、お前に縁談が来ておるぞ」