総評33000突破、ありがとうございます。
シンガポールで大亜連合の残党組織を壊滅させた対魔装特選隊。
それは東南アジア同盟の黙認を伴ってのものだったが、彼らはそれだけで満足せず、その場で資金集めのために行われていた日本人向けの配信を乗っ取り、ゲリラ的に宣伝工作を開始する。
あくまで卑近に、金の匂いを感じさせず、それでいて一体感を生み出して自己効力感・自己有用感をくすぐるのだ。
ひねくれたインターネットの住民たちを巧みに扇動する術を、政権は既に知悉していた。
「本当に自由に聞いちゃっていいのでありますか?」
「大丈夫大丈夫。広報活動の一環ってことで許可出てるし、事務方の皆さんが回答ガイドライン作ってくれてるから。A4で800枚くらいあってこいつらマジかと思ったけど……お、思ったよりスムーズに質問集まってるな。サクラとか用意しなくて済んでなにより」
「鉄仮面様?」
先ほどまで暗殺作戦に近い捕物が行われていた現場で、ネットのラジオ番組のようなノリをやってのける。
戦略級魔法師・鉄仮面と官製インフルエンサー・国防仮面三号の2人だから可能な芸当であった。
「さっそく大昔のまとめサイトみたいなの来たな」
「では”よくわかりませんでした、いかがでしたか?”と回答するので?」
「偉い人的にはその方が嬉しいだろうけども、折角だからできるだけ答えよう。出身はー埼玉産まれ神奈川育ち。いわゆる旧十師族と血が繋がってるのは事実。家族構成は妹が1人、まぁあとは機密かな」
「だーいぶぶっちゃけましたな。特定されますよ?」
「俺の事はある程度喋っていいと言われてるからな。これくらいは軽い軽い」
「んーそもそも、現代魔法師の9割以上は人造人間か改造人間のどっちかと血が繋がってるから嘘ではないな。その2択で言うと俺は人造人間サイドだから、そこも正しい」
「魔法資質は遺伝で継承されると学んでおりますが?」
「それも正しい。要は定義の問題だよ。現代魔法は1999年の例の核兵器テロ以降に科学的に作り出された魔法のことと定義されていて、現代魔法師と呼ばれる各々の血統における"最初のひとり"が明確に記録に残ってる。完全な古式魔法血統で現代魔法にも手出してるタイプか、ごく稀な第一世代でもない限り完全生身・完全非改造はあり得ないんじゃないか」
「お祝いありがとう。奥さんってかまだ婚約者だが、馴れ初めか……アレだな。まず俺、戦略級魔法の才能があるって分かったのが結構最近なんだよ。んで、いろいろ調べた結果アビスが向いてるってことが分かったから、師匠として引き合わせて貰ってな。しばらく個人授業を受けてたんだ。仲良くなったのはその時だな」
「こ……これがNTR……ぐふっ」
「んー、俺は戦略級魔法師だけど、同時に腕っぷしも強いんで任務の種類も特殊部隊的な方向に偏ってるなあ。少数で敵地に潜入もしくは強行突破して敵の重要人物を捕まえたり、重要施設を破壊したり、逆に味方の重要人物を警護したりとか」
「ロケット打ち上げとか式典出席とか建築とか、戦略級魔法師としては例外的にメディア露出が多くもありますな」
「その辺はあれだ、いろいろしがらみが多くて動き辛い戦略級魔法師の中で、俺が仕事を選ばないからだな。切り札の戦略級魔法師は隠しておくのが定石だけど、逆にこれ見よがしに動きまくって周りの国にアピールする担当も必要で、それを俺がやってる感じ」
「暗殺とか大変じゃありませんか?」
「まぁアレだ。やれるもんならやってみろってことだわな」
「ま~正直かなり。言える範囲で特に酷かったのは2件だな。海外に日帰り弾丸出張させられた件と、戦力比1対1万で戦わされた件」
「それは……大丈夫だったのでありますか?」
「軍機もあるから詳しい所は説明できないが、少なくとも任務は達成したよ、どっちとも」
「戦略級魔法師だからという理由で拘束されたりは基本ないな。公開されてる日本の戦略級魔法師にも民間人が含まれる。ただしいつでも使える状態であることが求められるから、何かしらの方法で居場所を報告したり、体調管理が求められたりはするぞ」
「災害対策で庁舎の近くに住んでる公務員みたいですな」
「多分そう、部分的にそう」
「やっぱ一番はアレだな。
「あの……軍事演習で目玉として出てくる戦術級魔法でありましたよね?」
「そうそう、それ。実用性はアレだけど技術的にはかなり高度な魔法だから、手の内を明かさずに練度をアピールするには丁度いいってことでリサイクルされてる訳よ」
「他国はこぞってアレを大技として研究しておりますが……」
「そりゃ気の毒に……アレ*1真面目に解析しようとしたら相当骨が折れるだろうな……」
「役に立ったとかじゃなくて要らないものか。ん~あんまり私物買わない、いや待てよ。アレがあった」
「おお、戦略級魔法師の生活に迫るチャンスが」
「自家用車だな。新車で結構いいの買ったけど、戦略級魔法師として公開されて以来送迎が付くようになっちゃって」
「し、仕事人間……」
「しょうがねーだろ、忙しいんだよ」
「将来なぁ。魔法師の能力って持って生まれたものがデカいからあんまり名選手から監督へみたいなキャリアパスがなくて、九島閣下なんかはその辺を気にして色々立ちまわってた訳だけど」
「実際、魔法師は生涯現役というか、魔法が使えなくなったら引退というスポーツ選手スタイルの生き方が多い印象はありますな」
「だな、十師族当主格からして一線を退いたら後は家のことに専念みたいなスタイルだし。俺はあんまり将来のこと考えてないけど、どっちかといえば育成に回る側になるだろうな。そもそも今の戦い方は若いうちしか持たなそうだし」
「こないだビル建てるの手伝った件な。今は法的には建築や重作業に魔法使うのは全面禁止で、事例ごとに魔法協会とかが審査して認可が出れば例外として許される形式だから逆に免許とかはいらないけど、今後の発展を見据えて規制緩和と一般化の議論を国会でやってる段階だな」
「魔法産業振興法案ですな。可決されれば魔法師に相応の重機等の免許を取得させることで、重機の代替として魔法を使用可能になります。エネルギー産業や鉄鋼業など、いわゆる"重厚長大"な産業での活躍が期待されておりますが、なるほど建設や運送業も大きな恩恵を受けられるでしょうな」
「お、この時期に内容知ってるってことは先行試写会組か。チケットお買い上げ感謝」
「先週から試写会でしたな。先の戦争を題材としており、魔法師の活躍については鉄仮面様が全面監修されていると伺っております]
「説明どうも。俺も完成映像は見たから自信を持って言わせてもらうと、アレむしろちょっと控えめになってるよ。当社比80~90%くらい」
「割と怪獣映画みたいな仕上がりでありましたが???」
「あ、国防仮面サンも見たんですか、ありがとうございます。んでも深淵はもちろん船投げつけるやつもミサイル逸らすやつも実際やったしな……あー空母持ち上げて盾にするシーンは流石に盛ってますよ」
「あっ、流石に」
「ホントは巡洋艦ですよ。"鉄槌"1つかみで3隻」
「えぇ……」
「いや全然……。そもそも俺組織人だし、俺より変な奴、悪い奴、立派な奴、いくらでも知ってるしなあ。人間の多様性みたいなものを甘く見過ぎというか、強いだけで独りぼっちにさせてもらえると思うなよって話だろ」
「まあ、それこそ魔法師なんてものが生まれてくるくらいには個体差が大きい種族ですからな、我々は」
「同じように、魔法を使えない一般人のことも特に何とも思ってないな。こう言ったらアレだけど、正直そんなに関心がない」
「かわいい妹だよ。ちょっとたまにぶっ飛んでるというか、予想だにしない物事をぶち込んでくることもあるが……」
「おや、案外振り回されておいでで?」
「無表情でマイペースだが、俺が直接言ったことは必ず守る素直なやつだ。それ以外のところで振り回してくるのもあいつなりに甘えてきてるんだと思うとかわいいもんだよ……ちょっと、いやだいぶ、かなり予想外の方向からわがままを言ってきたりもするが……まあ、本人も妹がいいと言ってることだし……」
「い、妹キャラ……そういうのもあるのか……」
「専用装備な、こう金のかけ方が極端なんだよ。その魔法を最大威力で使うのに必要なら文字通りなんでもするって感じで。だから市販のCADでも別にいいみたいな奴だと日曜大工レベルの装備なこともあるし、建物まるごと1つの魔法のための機械でギッシリみたいな怖くて聞けないレベルまでいろいろだ。後はなんだ、俺の深淵改二は金かかってるサイドだってことだけは言っておく」
「余計なことを考えない、だな。例えば筋トレしてる時に"この動き何の意味があるんだ"とか"この時間でショート動画何本見れたな"とか"この後にもキツいメニューが待ってんだよな"とか考え始めるとどんどんやる気無くすだろ。余った脳のリソースが逆に自分を邪魔してる訳だ。そういう時は何も考えられないくらいの負荷にするか、脳には脳で別の負荷をかけていらんこと考えてる場合じゃ無くすのがいいぞ。おすすめはトレッドミル走りながらフラッシュ暗算するやつだな」
「宇宙飛行士でも目指してらっしゃるので?」
「ありがたいことに、魔法を使うこと自体に快感とか依存性がある訳じゃないから制限されてもそんなにキツくはないぞ。よく使われる例えだと"公共交通機関を1種類禁止されるくらい"ってのが個人的にも近いと思う」
「地味に嫌でありますなそれ」
「身体に負担はかからないし不都合・不利益は少ないが、"アレ使えばもっと楽だったのに"を常に感じ続けるということだな」
「まぁ俺の場合は軍属だし顔も割れてるからあんまり遠出はできないな。インドアになると必然ネットサーフィンや漫画やゲームに割く時間が増えて、こうして配信者の枠に紛れ込めるようになる。個人的には21世紀初頭ごろの漫画が好きだぞ。ワンピースとか未だにパブリックドメインになってないのはちょっとアレだが」
「嫁」
「あーた自分でまだ結婚してないと言ったんでしょうが」
「よく知ってるな八仙なんか……ああ戦果として宣伝しまくったんだっけ? まぁアレだ。俺をグーだとするとチョキみたいな奴らだったな」
「それは、もしや大変な高評価なのではないですか?」
「実際、方向性が違うだけで達人の集まりだったよ。下手に十師族の誰かが対応に出てたら普通に死んでたんじゃないか。HUNTER×HUNTERで言うと陰獣どころかレイザーくらいあったと思うぞ」
「最強格でも油断すれば狩られるレベルと。相手が悪かっただけで、きちんと国家最高戦力だったんですなあ」
「少なくとも今の技術だと無理だ」
「これまたバッサリ行きましたな」
「現代魔法は断続的な効果の発揮ができない。要は効かせっぱなしにするのが極端に苦手だ。不老不死をやるには永続する魔法が大前提だが、まずそこから破綻する。若返りとか老化を止めるとかですら実現したって話聞かないしな。飛行魔法が実現して空いた難問の枠に入れといたら、50年後くらいにトーラス・シルバーが解決するんじゃね」
「そんな願望機みたいな……」
「まぁ四葉の婚約者だな。シンプルに万能すぎてもう全部あの人一人でいいんじゃないかって感じだぞ」
「四葉家ですか。次期殿の方はどうです?」
「あの人はあの人でとんでもないというかちゃんと四葉家だが、人智を超えてる訳じゃないから旦那の方よりはマシかな……」
「経験上、魔法師にはかなりモテる。普通の人にはむしろ怖がられてるかな」
「ほう。魔法師は見る目がありますな」
「見る目っていうか、自分より強い魔法師が好きになるみたいな本能があるらしい。このガタイだからか一般人のいる場だと人が避けてくけど、一高で守衛の仕事してた時はラブレター送ってきた子が10人くらいいたよ。それこそ同僚から1年生まで幅広く」
「ちなみに、そのうち1人は自分であります、よ?」
「丁重にお断りしたけどな……(ラブレターに限れば嘘ではない。嘘では)」
「これはアレか、定型文で答えた方がいいやつか。にじゅ――」
「申し訳ないが事務所NGであります」
「夜の戦略級ってどういう状態だ……?」
「経験人数12660人とかではないですか?」
「割と下ネタも行ける口で?」
「男児たる者、そのくらいの方が元気があってよろしい」
「左様で」
「それで、その。自分は正妻に拘ったり、束縛するようなつもりは毛頭ございませんが、妾として、自分というのは如何か」
「魅力的な提案ですけど、公然と妾持つのはちょっと……」
「隠然としておればよいと!?」
「あークソ、ミスった」
(こうして列挙されるとすっげぇスペック高いよなこの人……)
口に出したらいよいよ取り返しがつかなくなりそう気がしたので、鉄仮面は何も言わないでおくことにした。
「ホンマごめん、才能」
「バッサリ行きましたな」
「努力でなんとかならないから人数が少ない訳でな。ただそれだけだとアレだからちょっと詳しく話そう。知ってるか? 戦略級魔法師は3つに分けられる。まず戦略級魔法があってその使い手として選抜された"適合者"タイプ、逆に当人の適性ありきでオーダーメイドの戦略級魔法が作られた"専門家"タイプ、そして生まれつき戦略級魔法を習得してた"異能者"タイプ」
「へぇ。具体例は出せますか?」
「適合者タイプの典型例は九島光宣君とか岬玲サンかな。あの二人はどっちも既存の戦略級魔法の使い手として適性を見出され、訓練を経て習得してる。ある意味では一番常識的かもしれん。このケースではうまくやったが、戦略級魔法を作ったはいいものの国内で使い手を見つけられなくて海外へ技術供与、みたいな事例は結構あるんだぜ? シンクロライナー・フュージョンとかバハムートとかな」
「ああ、言われてみれば」
「専門家タイプは、まあ俺だな。さっきちらっと話した通り、俺の適性を徹底的に調べ上げた後、それに合わせる形で"深淵"をベースに改造を加えて出来上がったのが今の"深淵改二"だ」
「お話を聞く限り、異能者タイプだけ毛色が違いますな」
「ああ、他2種類と違ってBS魔法師や超能力者が高じて戦略級まで到達するタイプだな。生まれついて1種類の魔法しか使えないが、でもその1種類が戦略級魔法みたいなやつが結構いる。その分ハマるとエグいぞ」
「というわけでフリップボードをどうぞ」
「準備がいいな……あぁこれ定期コーナーで出てくるやつ」
「弊チャンネルを見たことがおありで!?」
「ネットサーフィンしたことあるヤツは大体知ってると思いますよ、ネットミームの出どころとして。確かアレでしょ、俺がはじめて深淵改を使った時に出回ってたスポンジボブのミーム、あれ海外ミームヅラしてるけど初出ここでしょ」
「ワッ、ワァ、ァ……」
「そんなに」
「んでティア表かあ、破壊力って話でいいんだよなこれ」
「あくまで鉄仮面殿の視点で優れていると思われるものを並べる形でしょう」
「優れているってもなあ……まあ、ざっくり影響規模でくくるとすると……こんな感じだな。ああ、海外のやつはよく知らないから、日本が今使用可能なものに限るぞ」
「ほうほう、根拠をお伺いしても?」
「戦略級魔法には"天井"がない。定義の上では"都市または艦隊を一撃で無力化できる魔法"とされているが、実態上は1個下の戦術級魔法を明らかに超えてるものをまとめてそう呼んでるに過ぎない。これはそもそも、戦術級魔法が生まれてから戦略級魔法が生まれるまでほとんど時間が空かなかったことと、戦略級魔法自体がせいぜいここ30年で出てきた新しいくくりだからだ」
「戦術級魔法の定義は……確か、大集団や戦車、戦闘機、艦艇、大型建造物などを無力化できる魔法でしたか」
「その通り。第三次大戦当時、軍事上の最高ランクは"戦術級"だったんだ。そこから30年で魔法技術が急速にインフレして、戦術どころか戦略自体に影響を出すような魔法が出てきて急遽作られたのが今の"戦略級"という区分になる。急造だから、割と不完全なんだ」
「確かに、戦術・戦略で話をするなら間に"作戦級魔法"があって然るべきと思えます」
「うん、戦略級魔法は軍から軍集団レベル、一個の紛争そのものを相手どる魔法。一方で戦術級は精々が大隊レベルの戦力を想定し、目の前の戦いに勝つための魔法だ。旅団から師団レベルを想定した"作戦級魔法"と、総軍あるいは国家それ自体を標的にできる"国防級魔法"も存在するべきだと俺は思ってる」
「ははあ、なんとなく読めてきましたよ。このティア表におけるSティアやCティアがそれにあたると?」
「そうだ。まぁ自分で言うのもなんだけど、Aに置いてる俺の深淵改二は影響範囲が
「……質量爆散の説明がありませんでしたが?」
「アレは完全に例外、暫定的にSに置いてるけど本来はこういう常識的な評価軸で測れるもんではないよ。どっちかと言えば神の権能に近い」
「そんなに」
「これなあ、普通だったら核のスイッチが押せるのと最強なのは別って言いたいんだけど、使い手が普通に殴り合いも強いっていうか全方位隙なしなんだよな。四葉家恐るべし」
「四葉家がなんですか! 自分は鉄仮面様が最強と信じておりますよ!!」
「最初は明細出そうと思ったんだけど流石に止められたから」
「当たり前だよなあ?」
「ざっくり説明すると、国防海軍大佐としての給料のほかに、いわゆる魔法師特措法に基づいて手当が出る。この法律は大雑把に言うと、魔法師が国家にサブスクを売ってる感じのもの。国は毎月一定のお金を払う代わりに、いざという時は国が言う通りに魔法を使うっていう契約な。魔法師は役人とか軍人になる時はこれ結ばされるんだけども、手当の額は指定される魔法によって細かく決まる。詳細は非公表だけど、丁度ここに国防仮面サンがいるからリアクションだけお届けしよう。はいどうぞ」
「えっこれ……給与明細……」
「そりゃ、払われてる記録もないとエビデンスにならんでしょ」
「えぇ……と総支給額はここ、わっ凄、でっかぁ……♡」
「言い方」
「んんっ、というかこれ、表の一番上の金額より手当が高くないですか」
「あーこの手当、基本は魔法師1人頭で契約1つだけど、戦略級レベルになると魔法1つに契約1つになるから。今俺だと戦略級2種と強力な戦術級2種に俺本人で5重取りかな? そういう感じ」
「はぇ~……これ年収だったとしてもなかなかのもんですがね」
「確かに商社とかにはこの額をボーナスで貰うような人もいるらしいけど、これは月収。逆にボーナスの概念があるのは軍人としての分だけだから収入に比べるとしょっぱいぞ」
「俺らってもしかしてエロ同人の竿役みたいなイメージ持たれてんの?」
「あー……魔法師は社会を挙げて結婚圧力・出産圧力が強いことで有名ですからな。国力に直結するということで国としても散々っぱら早婚・多産を奨励しておりますし、"魔法師は増えるのが仕事"みたいな規範教育を徹底しすぎて"同人誌みたいなことが裏で実際に行われている"と思ってる一般人は無視できない程度におります」
「魔法師は一般人と違って婚前交渉をほぼ全くしない訳だけど、言われてみれば一般人にそれ説明しても建前としか受け取らないわな。現に高校卒業と同時に3割くらい結婚するし、魔法大学なんか学生結婚と出産しない方が少数派レベルだし、魔法科高校生の妊娠・出産を国として奨励していくかどうか毎年のように国会でモメてる訳だしで、世間目線の魔法科高校と大学はエロゲの舞台並みに爛れて見えるのかもなあ……」
「魔法師は婚前交渉を避けると言われていますが、その分よほど世慣れしてない限り避妊するという発想がありませんからな。身体を許す=あなたの子を産む、がセットの文化だと言われております」
「言われてみるとそこがセットじゃない現代人の方が変な気がしてくるな……あぁ、なるほど道理で……」
「おや鉄仮面殿、何か思い当たる節がおありで?」
「……ま、まぁ俺から答えられることがあるとすると、隣の芝生は青いもんだから夢は夢のままにしといた方が幸せだと思うぞ?」
「凄いかは分からんけど、それと思われるものに遭遇したことはあるぞ」
「なるほど、そうか!!」
「本人の前でそういうこと言うんじゃないよ」
「戦略級魔法をって話だよな? 正直特になにも。任務として求められたから答えた、以上のことはないな」
「魔法師としての適性はもちろん、こういう考え方のできる人でないと戦略級魔法師は務まらないのでしょうなあ」
「ああそうだ。最後にこれ言っとかないと」
――亡国娘娘は旧大亜連合の残党組織と繋がっている。"亡国の姫キャラ"は事実で、資金集めのために日本人が同情するようなキャラ付けとサブカル知識を武器に営業活動をやっていた。
既に連中の本拠地からは、君らの金で調達したとみられる銃火器の類が大量に押収されている。
よって、奴にスパチャを投げた記録のある日本人にはこれから順次、公安から情報提供を受けた警察官が訪ねてくる。
素直に対応すれば怒られるだけか悪くても罰金で済むが、悪質と見られるとテロ等準備罪の共犯にされる可能性が出てくるので妙な真似はしないことをお勧めする。
◆ ◆ ◆
「はは、世界トレンド1位だってよ」
「同時接続数も世界1位ですよ、流石の注目度ですね」
配信終了後。
警察へと捜査の引継ぎが行われるのを監督し終えた「鉄仮面」こと榊創一朗は、国防仮面3号こと光賀早織と共に配信の反響を確認していた。
「……ん?」
この時、早織が配信の再生数やチャンネル登録者数、投げ銭金額等を動画投稿プラットフォームから確認していたのに対し、創一朗はSNSやネットニュースで評判をチェックしていた。
そのため、鉄仮面ゲリラ配信の衝撃で埋もれかけていた「その話題」を先に見つけたのは創一朗の方であった。
――フォア・リーブス・テクノロジーが重力制御型熱核融合炉の実用化に言及「プラント用地の選定段階にある」具体的な建設計画について記者会見を予告。
それはまさしく、「原作」よりも丸1年以上早いESCAPES計画の始まりであった。