(政府の)犬です、よろしくお願いします   作:TE勢残党

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総評28000を突破しました。ここにきて一気に伸びてきており、嬉しい限りです。

クローバーの花言葉は復讐。
四葉家の性格はそのあたりから来てるんじゃないかと思います。


93 白詰草作戦

 国防軍呼称:白詰草作戦(オペレーション・クローバー)の作戦目標は明快だ。

 

 四葉家によって行われた大漢崩壊を再演する。

 

 より大規模に、徹底的に、無慈悲にだ。

 

 30年前、四葉家が主犯だったとされる大漢崩壊は、「テロリストとしての魔法師」の有用性を最大限に示す「戦訓」として、国防軍内でも研究が進められてきた。

 

 ごく少数の戦力による敵地への浸透、破壊工作、斬首作戦。四葉が見せたそれは、まさしく魔法の有効活用という命題に対する模範解答であり、22世紀前半から列強国で当たり前になり始める「魔法師で構成したゲリラコマンド」を50年先取りした存在だったと後世で評価される。

 

 それを踏襲しつつ、十師族ではなく軍の力を中心として国家機能の破壊を達成する。

 

 30年前、軍が総動員70万人をもってしても到底不可能と思われていたことを四葉家が30人でやってしまった時から国防軍(というより、その上層部に食い込んでいた獅童尚久の先代)の手によって計画は始まっており、国防海軍はその非現実的な計画を実現するため長い間隕石爆弾(ミーティアライト・フォール)を手放せなかった。

 

 そして2095年。最新版の作戦内容は、鉄仮面こと榊創一朗ら戦略級魔法師による大規模破壊と、独立魔装大隊や対魔装特選隊を使った精密破壊の2本立てによって構成されている。四葉家が実施した要地への斬首作戦に、戦略級魔法を使った()()()()()()()()を追加した形だ。

 

 過去の戦訓から大部隊を大陸に送るとロクなことにならないと理解している統合軍令部は、大亜連合の本土を攻撃するにあたって「海外派遣軍の編成は原則として魔法師とその補助要員のみにする」というかなり極端な決断をしている。

 

 高レベル魔法師は1人増えるだけで戦況図から見て分かるくらい攻撃能力が増大するが、通常兵力の火力と物量に対抗しようとすれば必ず師団単位の兵士と兵器も必要になり、さらにそれらを輸送する船舶、援護する航空機、それらの補給や食料……と雪だるま式に部隊が巨大化する。

 

 それでは魔法師部隊の強みであるフットワークの軽さや見つかりづらさが死んでしまう。これが魔法師部隊の限界であり、特殊部隊としての役割はこなせても膨大な通常戦力によって行われる塹壕戦の前では役に立たず、通常兵器を主として、魔法戦力はあくまで従というのが通説だった。

 

 だが現在は戦略級魔法がある。核兵器を通り越して自然災害並の破壊力を発揮する新兵器の登場によって、前線兵力や人口密集地には戦略級魔法、戦略目標には戦闘魔法師という「魔法師と魔法師の分業」が成立した。

 

 ここで統合軍令部はさらに大胆な決断を下す。本来なら戦争に不可欠である「敵地の占領」を最初から捨てて、敵国家機能の破壊にリソースを全振りしたのだ。これにより、どうしても歩兵が必要になる「占領」と「維持」の概念が無くなり、もって通常兵器なしに戦争が完結してしまったのである。

 

 それは過去の敗戦の影響で軍備に大幅な制限があった日本だから生み出し得た異形の戦略であったが、同時に世界最大の魔法大国である日本の強みを最大限に押し出したという意味でいたって常識的な戦闘教義でもあった。

 

 この時日本が打ち出した対大亜連合戦略は、今亡きイスラエルが一時期提唱していた「オールタンクドクトリン」に倣って「オールメイジストドクトリン(AMD)」、卑近なところでは新兵器に依存して国力差をひっくり返すという意味で「ジオン戦術」などと後世で呼ばれることになる。

 

 それら元ネタと違うのは、これが成功した戦略であり、後の世で日本のアジアでの覇権を確固たるものとしたという点だ。

 

 後世に「勝因」として分析されるのは、やはり欲をかかずに国防軍本隊を大亜連合本土に送り込まなかった点が挙げられる。ジオンの例えを借りるならば、敢えて地球へ降下せず敵が沈黙するまでコロニーを落とし続けたようなものだ。

 

 ただし、後の創作等ではこれが統合軍令部の示した有能な判断かのように語られる場合があるが、実態としては未だ続いていた上陸軍との戦闘やBC兵器の後遺症に苦しむ都市の救助・復興、何より「報復の報復」として行われていた内陸部からのミサイル攻撃や空爆への対処で手一杯であり、単に余力がなかっただけと考えられている。

 

 白詰草作戦に基づく戦略級魔法攻撃が始まった時点で、大亜連合は投入した海上戦力のほとんどを「鉄仮面」の攻撃によって失っていた。

 

 少なくとも3個艦隊が全損。空母7隻、巡洋艦20隻、駆逐艦30隻、フリゲート艦40隻、潜水艦40隻、強襲揚陸艦6隻、その他小型艦艇や補給艦、上陸用舟艇等合わせて1000隻以上、兵員換算で約30万人を失い、唯一残った艦隊も国防海軍との交戦によってそれなり以上の被害を受けている。

 

 深淵改二の被害を受けなかった飛行中の艦載機やヘリコプターも順次沿岸の対空砲火で鴨撃ちにされ、事実上大亜連合はこの時点で制海権を失っていた。

 

 一方で本土のミサイル基地や航空戦力は多くが残存しており、国家機能が瓦解し組織的抵抗が終了するまでの間、日本側は散発的に行われる爆撃やミサイル攻撃に悩まされることとなった。

 

 同じ頃、戦略級魔法への報復として行われた北陸空襲(11月3日)、大阪空襲(11月5日)および東京空襲(11月6日)によってそれぞれ約1万5000人(北陸)、約3万人(大阪)、約4万人(東京)の死傷者が発生しており、それまでに行われたBC兵器での死傷者200万人と合わせ、世間で言われているほど日本側が圧勝したという訳でもないことは注記すべきであろう。

 

 ただし、それらの前提条件を加味してもなお、日本の「白詰草作戦」が世界へ与えた影響は絶大であり、後に第四次世界大戦と呼ばれることになる動乱を挟んで世界秩序は一変することを余儀なくされた。

 

――国防海軍 真砂大輔退役大将の回顧録より抜粋(機密解除日:21■■/■■/■■)

 


 

 

 

 白詰草作戦における作戦行動は11月1日0時の深淵改二から始まっていると見られているが、戦略級魔法の使用以外の行動が見られたのは3日に入ってからであった。

 

 この時点で大亜連合沿岸の主要都市が南から順に潰されて行っており、また新ソ連が北方の内陸都市西安を戦略級魔法で爆撃。トゥマーン・ボンバは脅威的な爆破半径と驚くほど高い対人殺傷能力を見せつけ、それを合図に新ソ連機甲部隊が侵攻を開始したことで上層部は完全にパニックに陥っていた。

 

 一方日本国防軍は十師族の協力のもと、最後通牒からの4日間で主だった魔法師の徴兵を完了しており、陸海軍で計4個の魔法師部隊を追加編成。既存の独立魔装大隊および対魔装特選隊とあわせた6個作戦部隊が大亜連合に投入されている。

 

 その混乱に乗じて(鉄仮面を除く)対魔装特選隊を奥地に潜入させ、世界が戦略級魔法の恐るべき破壊力に戦慄するのを尻目に極秘の作戦行動を開始した。

 

 長江中流域に存在する世界最大級*1のダム兼水力発電所、三峡ダムの爆破である。

 

 これには当初陸軍協力のもとマテリアル・バーストが使用される予定であったが、内陸攻撃能力をお披露目するタイミングを選びたいという上層部の判断により、代役として一条将輝と九島光宣を実行役の第一実働小隊に追加。榊創一朗不在の中、たった7名*2にて制圧が実施された。

 

 当然、大亜連合側は魔法師を含む厳重な警備を実施していたが、戦略級の威力に満たない「霹靂塔」と「オゾンサークル」のコンボによってその大半が瞬時に無力化され、機甲戦力は爆裂によって処理された。

 

 当然ながら、術者はそれぞれ九島光宣と岬玲である。九島光宣は特選隊本部到着からものの8時間で「霹靂塔」の術式をマスターし、そこから24時間で(戦略級の威力に満たないレベルでなら)()()()()()()C()A()D()から発動できる領域にまで至っていた。

 

 この戦闘で大亜連合は戦車1個中隊とヘリコプター12機、そして1000名近い兵員を失ったが、最も大きな問題はEMP攻撃によって一時的に通信が遮断され、敵襲の連絡が伝わるのが約8時間にわたって遅れたことにある。

 

 図らずも大亜連合側の当初の想定「霹靂塔を使われれば情報網の再構築に3時間はかかる」というのを自ら証明した形となり、彼らはダムの制圧を完了させた数時間後、一条将輝が放った最大出力の「爆裂」によってダムを破壊した。なおこの時、一条将輝は装備として持ち込まれていた携帯型セイレーンシステムの使用を拒否している。

 

 ダムの決壊が確認されたのとほぼ同時、「深淵改二」が上海を標的として発動する。

 

 上海は長江河口と杭州湾に南北を挟まれ、東シナ海に突き出す長江デルタに位置する河口都市だ。深センと並んで深淵改二の影響が最大化される都市であり、攻撃が始まった時点から住民の避難が始まっていた。

 

 主な避難方向は2つ。北(北京)か、西(南京)だ。特に、深淵改二による沿岸攻撃が予想されていた関係上、上海からほぼ真西、内陸100キロほどの地点にある南京方面へと避難する人間が大半を占めた。

 

 この時点で、深淵改二による破壊領域は概ね沿岸から50キロ程度までで、100キロ離れれば致死の威力ではなくなることが経験的に周知されていたためだ。

 

 そして内陸部、長江中流域では巨大ダムの決壊に伴う大水害が発生、既に深センの「消失」を噂で知っていた民衆は「日本の魔法攻撃は内陸にも実施できる」と認識してパニックになり、迫りくる水の塊から逃れるため下流方向への避難を余儀なくされる。

 

 さらに言えば、四葉家(実質的には黒羽家)で構成された作戦部隊が周辺都市に散って展開しており、水害の影響を受けた各都市で政府放送に成りすました「南京方面への避難命令」を実施。民衆の避難方向を一か所に誘導していた。

 

 三峡ダムの貯水量は約400億トンだ。流石に南京くらいまで来ると多少川が増水して低地の道路が冠水するくらいで済んでいたが、上流のダム破壊による洪水と下流から逆流してくる津波に追い立てられる形で、南京周辺は一時的に避難民が押し寄せて超過密状態になっていた。

 

 ――上海への深淵改二攻撃からほぼ1日が経った11月4日23時30分、()()()()()()()()()()()()()()()()()直前の周辺状況がこれだ。

 

 トゥマーン・ボンバは広範囲で水を酸水素ガスに分解し、一斉に点火する術式だ。威力が平坦で地下シェルターや戦闘艦など頑強な目標の破壊には不向きである一方、深淵改二が現れた今でも世界トップクラスの破壊半径を有すると目される強大な戦略級魔法である。

 

 さらに言えば、この魔法は目標周辺に豊富な水源がある時に最大の威力を発揮する。それは例えば雨の日や川岸、そして地面が濡れている時などだ。

 

 水害の影響で冠水した地域の、広範囲に集まっている、大量の一般人(ソフトターゲット)を一気に殺傷することにかけて、かの魔法ほど有用なものは恐らく存在しえない。

 

 国防軍はその性質を細かく知悉しており、「新ソ連の魔法を新ソ連当局よりも有効に使い切る」という離れ業を実現したのだ。国家が誇る戦略級魔法のデモンストレーションのため最大出力での発動が厳命されていたベゾブラゾフを見事に利用した形である。

 

 魔法英雄として勲章や特別待遇を総なめしているベゾブラゾフとて、忠実な党の僕であらねばあの国で生きる道はない。彼は全力を尽くした。

 

 今まで理論上の存在に留まり、どんな演習でも、かの北極秘匿戦争(アークティック・ヒドゥン・ウォー)の時でさえ範囲過剰として発動させてこなかった「アンドレエヴナ総動員での最大出力」は、一部深淵改二をも超える結果を生み出し、南京のやや西によった爆心地から隣の合肥市までも巻き込む超広範囲攻撃を実現した。

 

 結果としてこの三峡ダム破壊、上海への深淵改二そしてトゥマーン・ボンバによる南京の爆破、この一連の攻撃だけで1億人を超える死者が生じたと見られており、「世界で最も人を殺した単一の兵器」の座が一時は新ソ連の手元に押し付けられる事態となる。

 

 ――しかし、これらの攻撃はあくまで第一段階に過ぎず、使用された「霹靂塔」や「オゾンサークル」も所詮は「本番」に向けた慣らし運転でしかなかったことを、この数日後に世界は知ることになる。

 

 

 名前からして「ソビエト連邦の後継国」としての立場を堅持しているところの新ソ連は、今でも()()1()1()()7()()にモスクワ・赤の広場で十月革命を記念する軍事パレードを行っている。

 

 

 日本は何一つ、何一つとして許してなど居なかった。

 

 

 報告を受けたUSNA大統領の発言は、この戦争を総括する言葉として後世で多くの媒体で用いられる。

 

 有名になったきっかけは、21世紀終了を記念して日本の準放送局が製作したドキュメンタリー番組の、第四次世界大戦の回のアバンタイトルで用いられたことであった。

*1
地球寒冷化時代にUSNAや新ソ連が国策として建設したものや、旧大漢がチベットに建設したそれらに匹敵する超巨大ダムに押されて世界最大の座は譲った

*2
山田宏文、江藤龍征、岬玲、遠上遼介、十山つかさ、一条将輝、九島光宣




Q.なんでわざわざ南京を爆破してもらったんですか?
A.数時間前の上海水没の時に沿岸からギリギリ逃げ切れた奴らが集まってたから
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