水星の魔女 ヴァナディースの灯ルート   作:九段景春

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21.キャリバーン

 断続的な振動が、古びたリビングを揺らす。

 スレッタは通信ユニットに駆け寄った。パネルを操作し、通信チャンネルをあさる。スピーカーがハウリングし、指揮官らしき男の声を流し始めた。

 

『妨害電波を確認、外部への連絡は封鎖されています!』

『レーダーに反応! MS、所属不明! ベネリットの機体です!』

『ルブリスを出撃させろ! 殲滅するまで戻ってくるなと言え!』

『施設内部にドローンが侵入、対人型をかくに、うわあああああ!』

 

 誰かがフォールクヴァングを襲って、ドローンを放った。

 悲鳴のような通信から、どうにかそれだけを読み取る。

 

 同じく状況を伺っていたケレスが、横からコンソールを操作する。モニターに呼び出されたのはフォールクヴァングのレーダーだ。ドローンを示す光点がびっしり表示される。発進したMSが手当たり次第に撃墜しているが、はっきり言ってきりがない。ドローンが彼らを引きつけている間に、数機の敵MSが施設にとりついている。

 

『メインゲート爆破! し、侵入者! ひ!』

『施設は放棄する!10分後に出港、遅れた奴は置いていく!』

 

 自分のタブレットを叩き、ケレスは舌打ちした。セキュリティが切り替わり、ゲスト用のアカウントが凍結されていた。

 

「俺たちは放置か。オックスアースも底が知れたな」

「何言ってるんですか、早く逃げなきゃ」

 

 相手はドローンだ。歴史の教科書で読んだ。前の戦争で猛威を振るった、無差別に人や施設を襲う自律兵器。無制限にばらまかれたそれと戦うためにアンチドートが、MSが生まれた。生身のままでは何もできない。

 とにかくみんなを探さないと。コンソールを切り替え施設のマップを探すスレッタを後目に、ケレスはタブレットを片手に考え込んでいる。

 

 MSに無数のドローン。おまけにガンダムが2機。

 

「ザウォートだけじゃ無理だな」

 

 タブレットを降ろし、ケレスはスレッタに向き直った。

 

「スレッタ・マーキュリー。ここのハンガーに、ガンダムが一機ある。ファラクトどころじゃない極めつきの欠陥機だが、性能は折り紙付きだ。そいつに乗る気はあるか?」

 

 スレッタは瞠目した。

 

「ガンダム……それを使って、ここから脱出するってことですか?」

「交換条件はお前の仲間とうちのスタッフ全員の脱出。それと、ミオリネ・レンブランへの仲介だ。無事に逃げられたら、望み通りペイルを告発してやる」

「やります。その代わり、約束、守ってください」

 

 ケレスは鼻を鳴らした。

 

「安請け合いするなよ。いいか、本当にクソMSだからな。命の保証はしないぞ」

 

 ケレスは再びタブレットを起動させると、どこかへ通信を始めた。

 

「ロッドファーヴニル艦橋、聞こえるか? 俺だ。襲撃については把握しているな?」

 

 足早に歩き出すケレスを、スレッタは慌てて追いかける。

 

「少々荷物が増えた。これから同乗させる人員を連れて戻る。到着までドックで待機していろ。敵は対人用ドローンを運用している。艦搭載のアンチドートを起動、それでしばらくは耐えられるはずだ。6号と7号にザウォート・ヘヴィの発進準備。いつでも出せるようにしておけ。

 ……それと、キャリバーンの起動準備を。パイロットは、今から連れて行く」

 

 通信を切り、ケレスは大げさに溜息をついた。

 

「くそ。これでまた経歴が白紙だ。いいか、契約は必ず履行してもらうからな。こちとら無職になるんだ、レンブランでもジェタークでもいいから紹介してもらわなきゃ割に合わねえ」

 

 ポケットに写真立てを押し込みながら、スレッタは眉を下げる。

 

「ありがとう、ございます。……ええっと」

「ケレスでいい。どうせ偽名だ」

「え?」

「AIが勝手につけた名前だ。ペイルに本名名乗ってる奴なんかいないよ」 

 

 今度こそドアを開ける。施設中に銃声と警報が鳴り響いている。誰かの絶叫と乱射音。通路の向こうから、少しずつ近づいてくる振動。甲高い音がして、目の前の通路を割れたヘルメットだけが飛んでいく。

 スレッタは両手で口を押さえた。隣でケレスが表情を険しくする。

 

「まずいな。お前の連れはこの先の部屋だ」

「ケレスさん、走れますか?」

「得意じゃないが、やるしかないだろ。行くぞ」

 

 かつての家を振り返ることなく、二人は通路を走り出した。

 

 ◇

 

 

『ムジカ・ラタ、エオロー、いきます』

『ギィ・スパード、ナウシズ、出る』

 

 フォールクヴァングから、藍色と赤茶の光が飛び出した。二重螺旋を描いて旋回するルブリスに、ガンヴォルヴァたちが追従する。

 

 フォールクヴァングの外壁に集ったドローンたちは、一斉に鎌首をもたげた。ガンダムを優先的に狙うようプログラムされた無人機は、直ちに羽ばたきスウォームを形成する。

 ドローン単体の武装は、ビームキャノン一門のみ。近接戦用の前足は備えているが、MSと渡り合えるようなものではない。

 ただ、数だけは多い。一回り大きな親機の元、数万のドローンが群れをなして侵攻する。レーダー上では一体一体を捉えることはできず、雲のような群れが表示されるのみ。生半可な弾幕では仕留めきれず、数十、数百が落とされようともスウォームは決して止まらない。一機でも対象にたどり着けば、前足でしがみつき自爆される。アンチドートの登場まで、無数の戦艦や戦闘機を沈め続けた、全滅を前提とした兵器群だった。

 

 スウォーム群は藍色のガンダム――ルブリス・エオローに狙いを定める。大型のためか、背負った二門の背部ユニットのためか、動きがいくぶん遅い。右腕のビームガトリングに撃ち落とされながらも、ドローンたちはエオローのコクピットめがけて殺到する。

 

『パーメットスコア、3』

 

 一閃。

 赤い光が走り、スウォームがまるごと消滅する。

 赤茶のガンダム――ルブリス・ナウシズが、長大なビームブレードを構えている。目標を変え殺到するドローンに、再びの抜刀。伸縮するブレードが、ドローンの群れをまるごと切り裂き消滅させる。

 

『ガンヴォルヴァ、編成完了。ギィ、どいて』

 

 通信を受け、ドローンの群れを引きつけていたナウシズが急旋回する。転回が間に合わず滞留するスウォームを、四方八方からの射撃が殲滅する。いつの間にか群れの周囲に、ガンヴォルヴァ36機による包囲が完成していた。

 エオローの背部ユニットが、禍々しく発光する。包囲に対し散開するドローンを、三機一組に組み直されたガンヴォルヴァが追撃する。数万はくだらないドローンが、たちまち姿を消していく。

 

『包囲解消を確認、今のうちに出せ!』

 

 奮戦する二人の背後で、港湾のゲートが開く。落伍者を出しながらも、オックスアースの艦が脱出を始める。

 

『ルブリスへ通達。引き続きドローンを殲滅、殿を務めろ』

『私たち置いてけぼり?』

 

 データストームに息を荒げながら、ムジカが毒つく。その間もガンヴォルヴァの指揮を怠ることはない。

 

『どうかな。そう上手くいくもんか』

 

 こちらも親機を両断したギィが、皮肉っぽく笑う。逃げ延びたドローンを始末しながら、エンジンをふかし離脱する輸送艦を見やる。

 次の瞬間、遠方から放たれたビームが艦を撃ち抜いた。艦橋とエンジンブロックを正確に撃ち抜かれ、各所が連鎖爆発を起こす。逃走経路に潜んでいたMSが姿を現し、生き残りにとどめを刺していく。

 

『スナイパー?』

『ドローンを放った奴らの仲間さ。最初から月に逃げるってばれてたんだ』

 

 フォールクヴァング内部でまた爆発が起きる。港湾部の崩壊を横目に、藍色のガンダムは接近するドローンにビームガトリングを向けた。赤茶のガンダムが合流し、背中合わせに抜刀姿勢を取る。

 

『艦、なくなっちゃった。アンチドートもあるし、これからどうすんの? とりあえず殺す?』

『ランチぐらい残ってるさ。いつも通り、全部斬ってから考えればいいんだ』

 

 全身のシェルユニットを輝かせ、二機のルブリスは同時にスラスターを吹かせた。

 

 

 ◇

 

 

「オックスアースが残っていた!?」

 

 ベルメリアの叫びに、フェンは沈痛な面持ちで頷いた。

 

「ヴァナディース事変の際、一部の資産と人員が議会連合によって接収された。強硬派の工作員が密かに組織を再編して、非合法活動を行う外郭団体として再利用していたの。……これまで決定的な証拠は掴めなかった。まさかフォールクヴァングを本拠地にしていたなんて」

「スレッタを雇ったのもその繋がりですか?」

 

 横からアリヤが問いかける。フェンは首を振った。

 

「いいえ、そちらは別件。強硬派のリクルーターより先に彼女を保護するため。月にパーメットを独占されたら、我々穏健派も解体を避けられないから。……裏目に出てしまったけどね」

 

 収容された部屋の壁際で、フェンは弾痕の残る床をなぞった。爆発と振動が積もった埃を浮かせている。ドアの側では、グストンとティルが壁を壊し解錠を試みていた。

 

「だめだ、システムが非常モードに切り替わった。下手な信号は全部弾かれる」

「もう基板ごと壊すしかない。何か工具があれば――」

 

 電子ロックが突然解除音を立てた。ドアから赤い髪が飛び込んでくる。

 

「みんな! 無事ですか!?」

「スレッタ!……それに、エラン・ケレス!?」

 

 廊下のケレスは、面倒くさそうに鼻を鳴らす。

 

「悪いが別人だ。――施設内に対人用ドローンが放たれた。2番ドックへ行け、うちの艦でここを脱出する」

 

 再び飛び出したスレッタに従い、皆は通路を走り出した。不審げな視線を意に介さず、ケレスは学生たちを先行させる。

 

「君たちはメカニックだな。先に行け、ガンダムのセッティングを頼む」

「うちの艦は置いてけぼりね」

 

 ベルメリアの背中を押しながら、フェンがひとりごちた。

 

 壁の向こうで何かを叩きつける音が聞こえた。通路に転がる死体、広がる血しぶきを、どうにか見ないようにする。そこかしこで非常シャッターが降り、気圧低下のアラームが鳴り続けている。

 スレッタは壁を蹴って走った。センサーパネルに手をかざすと、通路のロックはすべて外れた。

 ここの人たちは、心の底からエリクトに甘かったらしい。

 

「この先、まっすぐ行って左です!」

 

 ようやくドッグの扉が見えた。スレッタの誘導で、ティルとアリヤ、少し遅れてケレスが角を曲がる。遅れた大人たちを待とうと、スレッタは後ろを振り返った。

 

 パン、と乾いた音がした。最後尾にいたグストンが転ぶ。赤い液体が浮かぶ。

 

「伏せて!」

 

 フェンがベルメリアの腕を掴み、通路の影に飛び込む。ドローンではない。通路に立つ人影を見て、スレッタは倒れたグストンの前に飛び出した。

 

「ゴドイ、さん……?」

「お嬢様!?」

 

 プロスペラの秘書はわずかにたじろいだが、すぐに銃を構えなおした。

 

「……ご無事でしたか。フォールクヴァングは間もなく崩壊します。ウィンストン博士ともども、すみやかにこちらへ」

「だめ、です。約束が、あるので」

 

 スレッタは壁のパネルを見た。背後ではグストンがどうにか身を起こそうとしている。呼吸は浅いが、意識はある。まだ助かる傷だ。

 

「ドローンを投入したのはあなたね。なぜ古巣を襲ったの? その子を奪還するため?」

 

 物陰からフェンの声が飛ぶ。スレッタはかすかに息を呑んだ。

 

「ゴドイさんも、ヴァナディース機関の人、なんですか?」

 

 この人が来たのも、たぶんお母さんの指示だ。

 

「ここで何があったかは、もうご存じですね」

 

 遠くの照明が消えた。電力が落ちるのも時間の問題だ。

 

「あの日、ヴァナディースとオックスアースの拠点が一斉に襲撃を受け、多くは抵抗する間もなく虐殺されました。施設の構造、人員、保有戦力、すべてが筒抜けだったのです。代表のようにかろうじて逃亡した者と、所用で会社を離れていた者だけが、今日まで生き延びてきました。

 ――オックスアースの重役たちは、襲撃を知っていたのですよ。その上で議会連合と交渉し、社の全てを月へ売ったのです。スペーシアンとしての市民ナンバーを得るために」

 

 ベルメリアが嗚咽を漏らした。施設が揺れる。照明がもう一つ消える。

 

「デリングが死んでも、奴らがまだ残っている。現オックスアースの殲滅は、お母上の悲願でもあります。私と脱出を」

「一緒に帰るって、約束したんです」

 

 照明が全て消えた。非常電源に切り替わる瞬間、スレッタは壁のパネルを叩いた。天井からシャッターが降りてくる。ゴドイが一歩下がる間に、グストンの両脇を抱えて床を蹴る。足下で火花が散る。下がるシャッターに銃弾が弾かれる。

 物陰から飛び出したフェンがグストンを引き受ける。傷がよじれ、グストンは盛大にうめいた。

 

「ありがとう、代わるわ」

「あとで、説明をお願いします」

「必ず」

 

 

 ◇

 

 

 ドックの扉は開放されていた。ペイル社のノーマルスーツを着た人々が、大人たちを艦へ誘導する。

 端で手を振るティルに駆け寄り、スレッタはそのMSを見上げた。

 

「これが、キャリバーン?」

 

 錆の目立つメンテナンスベッドに、白いモビルスーツが鎮座している。

 眺めている時間はない。スレッタは床を蹴り、一気にコクピットまで飛び上がった。

 操縦席にかけ、手早くコンソールを確認する。

 操縦桿、フットペダル、各種スイッチの配置。今のMSと大きく変わる訳ではない。システムこそ古いが、その分シンプルだった。

 コクピットの外から、アリヤが身を乗り出す。

 

「最低限のセッティングは済ませた。ニカのようにはいかないが、おおむねエアリアルと同じ感覚で動かせると思う。だけど、本当に動かせるだけだ。レギュレーションまでは手が回らなかった」

「わかり、ました。やってみます」

 

 モニターを切り替え、使用可能な武装を表示する。

 バリアブルロッドライフル。

 ビームサーベルが二本。

 頭部バルカン。

 バッテリーユニット、推進剤、すべて充填済み。出力は実戦仕様。

 

 シートを調整すると、パイロットスーツの中で何かが引っかかった。ポケットから割れた写真立てを引っ張り出す。

 

「これ、預かっててください」

 

 写った人物を見て、アリヤは目を丸くした。

 

「わかった。帰ったらまた、みんなでお茶を飲もう」

「はい!」

 

 アリヤが身を引き、ハッチが閉まる。

 一瞬の消灯の後、メインモニターに光が点る。カメラの先で、最後に残っていたスタッフが艦へと乗り込んでいく。

 

『スレッタ・マーキュリー、聞こえるか』

 

 通信機からケレスの声が響く。

 

『作戦概要を説明する。現在、フォールクヴァング外部に、対MS用ドローンが多数展開されている。これに対し、オックスアースのガンダム2機、および随伴の無人機が交戦中。学園襲撃に使われたのと同系統の機体だ』

「はい」

 

 モニターに情報が転送される。レーダーには無数の無人機。カメラが捉えた映像では、ソフィとノレアの機体に似た赤茶と藍色のMSが暴れ回っている。

 

『オックスアース社員は既に壊滅、シン・セー開発公社の部隊は撤退に移っている。施設外宙域5キロメートル地点に設置型アンチドート8機を確認。効果範囲に入った場合、スコア4以下の機体は問答無用で停止させられる。これはこちらで対処するが、できる限り接近は避けろ』

「はい!」

『ガンドフォーマットの使用時間だが、スコア3で20分、スコア4で5分までは()()()()()()()()()()()()()()。君とキャリバーンにそのまま適応できるわけじゃないが、それ以上の使用は極力控えろ』

「……はい」

『君のアカウントで、フォールクヴァングのカタパルトを使用可能だ。射出のタイミングは任せる。出撃後速やかにドック外の敵を掃討、脱出路をこじ開けろ。艦の直掩は6号と7号が担当する。君の仕事は、俺たちが離脱するまでの時間稼ぎだ。無理にガンダムを撃墜する必要は無い。

 戦闘時間は推定5分。ロッドファーヴニルが安全圏へ抜け次第、全力でその場を離脱しろ。できるな?』

「やります!」

 

 小さな通知音と共に、メインモニターにカタパルトの概要が加わる。リフトからの垂直射出。実習で一回だけ使ったことがある。

 

『こちらは全スタッフの乗艦を確認した。アンチドートオフ、配置よし、発進準備完了。

 ――いいか、作戦目標はあくまで脱出だ。君が戻らない場合、俺たち全員の亡命が不可能になるからそう思え!』

 

 やけくそ気味の声と共に通信が切れる。

 

 外の戦闘は続いている。ドックは爆撃に揺らされ、非常灯が赤く回転している。

 母とエリクトも、この音を聞いたのだろうか。

 射出シークエンスを始めながら、スレッタは静かに口を開いた。

 

「キャリバーン、聞いてくれる? わたしは、スレッタ・マーキュリー。昔ここに住んでいた、お母さんとエリクトの家族」

 

 キャリバーンは何も応えない。それが当たり前だとわかって、言葉を続ける。

 他でもない、ガンダムに聞いて欲しかった。

 

「わたしね、怒ってるの。5号のエランさんにデータストームの話を聞いてから、ずっと」

 

 怒っている。本当に怒っている。気がつかなかった自分にも、助けてくれなかった人たちにも。

 

「エランさんのことも、ソフィさんのことも。わたしにできたことがあったはずなのに、助ける方法もあったはずなのに。でも、最初に怒ったのはそれじゃない。

 どうして他のガンダムは、パイロットの味方じゃなかったんだろうって」

 

 母が帰ってこなくても、水星でひとりぼっちでも、いつだってエアリアルだけはスレッタを助けてくれた。だから、他のガンダムだってそうだと思っていた。

 

「おかしいのはわかってる。特別なのはエアリアルだけで、ガンダムはそういうもので、呪い、なんだって。MSは兵器で、武器を持っていて、本当は戦争をするためにあるんだって。ソフィさんの言うこと、やっと分かるようになったんだ。でも、MSなしで誰かに認めてもらう方法なんて、わたしだって知らない」

 

 パイロットである限り、MSだけは側にいてくれる。

 それが覆されたことが、許せなかった。

 

 モニターにランプが点灯する。カタパルトが起動する。

 

「決めたの。誰かに変えてもらうんじゃなくて、わたしがやるんだって。

 わたしは、ガンダムをパイロットの味方にしたい。誰も一緒にいてくれなくても、一人で頑張らなきゃいけないときでも、力を貸してくれるMSになって欲しい」

 

 スラスターのスイッチを入れる。発進準備完了。カタパルトに電流が流れる。

 カウントダウンの代わりに、スレッタは宣誓した。

 

「わたしは、みんなに祝福をあげたい。全てのガンダムを、命を救うモビルスーツにするの。

 だから一緒に戦って。キャリバーン」

 

 操縦桿を握りしめる。

 ツインアイに火が点る。

 

「LP041、スレッタ・マーキュリー。キャリバーン、出ます!」

 

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