Aランクパーティを離脱した俺は、元教え子たちと迷宮深部を目指す。サイドストーリー 作:モブ好き
「スラムの酒場へようこそ、カミラ嬢」
「……埃っぽい場所ですね」
街にいくつかある酒場の一つ、荒くれ者たちの多く集まる酒場と言う事もあり
「スラムの酒場」等と呼ばれるその店に足を踏み入れると、カミラは小言を言いつつ眉をひそめた
「ははっ、綺麗好きなのはイメージ通りだ。気になるならここを掃除をしてやると良い」
「御冗談を」
そんなやりとりを交しつつ席へと座るとボルは酒を注文し、店に設置されたスペースを指差す
「この店に誘った理由はアレだ」
「お立ち台……何かショーでも?」
「大体正解だ、そろそろ始まるから見ていると良い」
運ばれた酒の味に文句を言っているカミラに相槌を打っていると、先ほどの台の上に一人の女性が上がり
客席へとお辞儀をする。その格好はいわゆる「踊り子」で、女性らしい体つきを引き立たせるよう
必要最低限の布だけを体に巻きつけ、装飾品として身につけているネックレスや腕輪は
女性の煌びやかさを引き立たせている
「とても涼しそうな格好ですね?」
「だろ?ここの名物なんだ」
ジト目でこちらを見るカミラに、ボルは笑って返す。そんなボルの反応にカミラはため息を吐き
二人舞台で踊る踊り子を見る。その踊りは以前の配信でカミラもさせられたような
男を喜ばせるための下品な踊りそのもので、店の酔っ払い相手に見せつけるように胸を揺らし
腰を落とし、煽るように前後左右に揺らす。踊り子の品の無さに険しい表情をしているカミラとは
対象的に、ボルは店の客と同じように手を叩き、踊り子の踊りを盛り上げていた
「はぁ~……一応聞いておきますけど、これを私にさせるつもりで?」
「おう!アンタなら似合うと思うぜ?」
「はぁ……」
これはお金のため、と小声で何度もつぶやくカミラに
「ここだけの話だけどな、以前人気だった踊り子はあのクローバーの『ダークエルフ』なんだぜ?」
「……ダークエルフ」
その言葉にピクリと反応するカミラ
「ここは種族に対してどうこう言うやつは居ないからな、なにせ求めてるのはエロスだ
エロけりゃダークエルフだろうと歓迎さ。ま、今はすっかり人気者だからここの客としては
寂しいけどな」
「……あのような汚らわしい者に魅了されるなど恥ずかしくないのですか?」
「そう思うんなら、アンタの魅力で目を覚まさせてやれば良いだろう?」
「………」
ボルの『ダークエルフ』を利用した挑発は効いた様で、テーブルに置かれた酒をカミラはしばらく眺め……
「……分かりました、あのような者に私は劣っていると思いたくありません」
「それでこそだ、俺はアンタの踊りを楽しみにしてるぜ?ここで好きなだけ練習すると良い」
「練習……ね」
何度目になるか分からないため息を吐き、カミラはボルに連れられてテーブルを立つと
二人舞台の裏へと歩いて行った……
「飛び入りで参加出来るなんて、よほど人手不足なんですね」
「スラムの酒場、なんて呼ばれちまってるからな。エロいだけの善良な住民ばかりだってのに
迷惑なもんだぜ」
踊り子の控室に座るボルの隣では、布の仕切り越しに従業員の踊り子に着替えを手伝って貰っているカミラ
仕切りの布ではあるものの、光に照らされると着替え中のカミラの体つきが布に映し出されていた
「こりゃいい、良い酒の肴になるぜ」
「何か言いましたか?」
「いや、こっちの話だ」
そのままシルエットを眺めていると、踊り子衣装に着替えたカミラが布の向こうから現れる
着ている服は他の踊り子と同じでも、やはりカミラには花がある
「客への説明は俺に任せておきな」
踊り子姿のカミラを見て満足すると、ボルは先に酒場の舞台へと立ち
客に踊りの練習をさせてほしいと説明する。ボルの説明の後、客の温かい拍手に迎えられる形で
ゆっくりとカミラは舞台へと現れた
酒場に居る客から注目を浴び少し緊張しつつも、客の手拍子に合わせてカミラは踊り始める
それは以前やった踊りのようにぎこちない踊りではあるものの、それに文句をつける客は居ない
『美人の踊りに文句をつける男は居ない』という単純な話だ
そんな温かい雰囲気だからか、踊る前は散々文句を言っていたカミラも笑顔を見せるようになり
踊り終わる頃には緊張もすっかり溶けたようだった
「いいねぇ、この調子で踊って行けば人気者間違いなしだな」
「まぁ、それは当然でしょうね」
客の反応も良かったからか、カミラも普段のように自信ありげに頷く。これなら今後もここで練習という
体で踊ってくれる事だろう
ボルの狙い通り、その日だけでなくカミラはスラムの酒場に通い、踊り子として舞台に立つ
回数をこなす事で場馴れし、笑いを誘っていた踊りも男を魅了する踊りへと変わって行った……
「さて、リベンジと行こうぜ」
「ええ、そうですね」
頃合いを見て再び裏配信へと誘うと、カミラは迷うことなく承諾してくれた
その表情はスラムの酒場で練習を重ねた事もあり、相変わらず露出の多い配信用の衣装に
身を包んでいる中でも自信に満ちていた
「今回は初心者ダンジョンの中でも一番楽なルートだ、その分カミラ一人で戦って貰うぜ」
「はいはい、報酬は9割ですね」
そう軽口を叩くカミラは変わらず上機嫌で、裏配信用のカメラに投げキスをして配信を盛り上げた後
二人初心者ダンジョンへと入って行く
後衛職のカミラだが、ルート上に居るのは雑魚スライムだけと言う事もあり
今回は杖を武器に雑魚スライムへと戦いを挑む
「はあああああっ!」
踊りを練習したお陰か、スライムとの間合いを測り、攻撃を避けつつ
踊るようにステップを踏んで杖でスライムに攻撃していくカミラ。その動きは洗練されていて
見ている視聴者へ胸を揺らし、パンティをチラ見せするサービスも忘れない
今回の裏配信に向けて努力している姿が見えるようだった
「これでッ!」
杖の連打により疲弊したスライムへ、フィニッシュの一撃を食らわせるカミラ
スライムを討伐すると、配信は今日一番の盛り上がりを見せた
「雑魚スライム一匹倒すだけでここまで盛り上げられるのは、流石カミラだぜ」
「ふぅ……どういたしまして」
軽く汗を拭うと、気持ち良さそうな笑顔を見せて視聴者へと手を振るカミラ
「いつも応援ありがとうございます、これからも皆さんの期待に応えられるよう
努力していきますので引き続き応援、お願いしますね?」
こうして裏配信と言う舞台でカミラは、人気配信者の一人として出世する事となった……