【完結】モブ男子とミーシャとアノス様【魔王学院10章】   作:生徒会副長

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最終話「13年後、続きはいつかまた今度」

 

「はい、おしまい!」

「「えーーーーっ!!」」

 

 エニユニエンの大樹の中にある図書室。そこで一冊の本の読み聞かせを終えた大精霊レノは、2人の少女から驚きの声を浴びせられてしまった。

 ただ、読み聞かせを聞いていた8歳児3人のうち、銀のロングヘアーをした美少年1人だけは、ウンウンと深く頷いていた。

 

「やはり父上の、母上を想う気持ちは偉大ですね……」

 

 彼の名はノート・ヴォルディゴード。アノスとミーシャの間に生まれた息子であった。ちなみに妹でありサーシャの娘であるサリア・ヴォルディゴードと、エレオノールの娘であるエリナ・ヴォルディゴードは別の友達のところへ遊びに行っており、この部屋にいない。

 そんな彼の態度に対し、バッと立ち上がって指を差し、一人の少女が抗議する。

 短い黒髪をツインテールでまとめ、檳榔子黒のゴスロリ服に身を包んだ美少女であった。パッと見は『小さくなったアヴォス・ディルヘヴィア』に見える。

 

「なーに1人だけ納得してらっしゃいますの? ノート! これじゃリイヴがどうやって生まれたか、リイヴのご両親がどうやって愛を深めたか分からないではありませんの!」

 

 彼女の名はアヴィア・グランズドリィ。レイとミサの間に生まれた娘、レノの孫であった。

 怒り心頭なアヴィアに対し、彼女から名を挙げられた少女、リイヴ・クローラーがおずおずと口を挟んだ。

 

「あの……アヴィアちゃん? 私は、別にいいよ? さっきはつい一緒に『えーーーーっ!!』

って言っちゃったけどね……。パパがどうやって一人前の魔族になったのか、どうやって熾死王軍副参謀になったのか、分かったから……。私は満足したよ?」

 

 リイヴは茶色い髪をサラリとロングに伸ばし、眼鏡をかけた少女だ。彼女の父親こそ、リオン・クローラーにほかならない。

 魔王アノスが転生し、アヴォス・ディルヘヴィアやエクエス、リオンとの恋の闘いを終えて、13年が経った──。

 アノスの実子であるノート、サリア、エリナに加え、アノスの友人の実子であるアヴィア、リイヴを加えた新時代の面々は大の仲良しだ。年が近いし、父親が世界全土に名を轟かす大人物であることも共通している。ここアハルトヘルンは、彼らがよく使う遊び場のひとつだった。

 アノス・ヴォルディゴードは世界に名を轟かす魔王。

 レイ・グランズドリィは世界に名を響かせる勇者。

 そしてリオン・クローラーは──世界で名が知れた大商人となっていた。

 リオンは、生来の誠実さと、熾死王エールドメードから授かった策謀を融合させ、魔王学院1年2組の人脈と経験を活かし、大商人となったのだ。

 そんな大商人の娘リイヴに対し、勇者の娘アヴィアは喰ってかかった。

 いや、どちらかといえば……アヴォス・ディルヘヴィアの娘というべきか。

 

「勝手に満足なさらないでくださいな、リイヴ! 私はこんなの認めませんわ! そもそもが、私は──。『魔王の敵とレグリア家の女子会』のお話のとき、心の内で! 全力で! お母様やシーラお祖母様と一緒に! 白いリオンの旗を揚げていましたの! 私が見たかったのはアノスが大勝利するお話ではなくてリオンが大勝利するお話でしたのっ!」

 

 ノートとリイヴは小声で「父上のこと呼び捨てなんだ……」「パパのこと呼び捨てかぁ……」と呟いた。

 勢いそのまま、アヴィアはレノに媚びた。

 

「という訳でレノお祖母様! 続き! 続きを要求しますわ! リオンが主人公として東奔西走し、今度こそ真の愛を手にする物語があるのでしょう!?」

 

 レノは呆れ、溜息をついてから諭すように言った。

 

「アヴィア。その本は確かにあるけどさ。今日は『モブ男子とミーシャとアノス様』の読み聞かせをしながら、裏話を聞かせてあげるって約束だったでしょ? もうこの本はおしまい、おしまいなんだよ? それにもう、ノートとリイヴの門限も近いでしょ?」

 

 そう話すレノが手にしている本の題名こそ──『モブ男子とミーシャとアノス様』。その著者として、3人の名前が記されている。

 アノス・ヴォルディゴード。

 リオン・クローラー。

 そして──ミーシャ・ヴォルディゴード。

 諦め切れないアヴィアは、ぷくーっと膨れながら叫んだ。

 

「むむーっ! こうなったら……! ノート! リイヴ! 三人で<時間操作(レバイド)>を使いますわよ! 魔王学院の不適合者(アンヴィ・リ・ヴァーヴォ)の1巻の名シーンみたいに! 私が理滅剣を時の番神エウゴ・ラ・ラヴィアズにぶっ刺して、門限という理を滅ぼし尽くしますわ!」

 

 しかし、ノートとリイヴは取り合わず、レノに向かって丁寧にお辞儀をした。

 

「レノ様。父上と母上にまつわる貴重な話を聞かせて下さり、ありがとうございました。また遊びに来させてください」

「レノ様。パパの昔話がたくさん聞けて、楽しかったです。また続きを聞かせてください」

 

 キョロキョロとノートとリイヴを見るアヴィアに構わず、レノはノートの銀髪とリイヴの茶髪を撫でた。

 

「エライねぇ、ノートもリイヴも、ちゃんとお礼とおしまいの挨拶が言えてさ。ノートの真面目さはミーシャ譲りで、リイヴの真面目さはリオン譲りかな?」

 

 レノはそうにっこり笑ってから、わざとらしく大袈裟に煽った。

 

「あれれー? 大勇者レイ・グランズドリィと、暴虐の魔王アヴォス・ディルヘヴィアの娘で、私とシンの可愛い孫であるアヴィア・グランズドリィは、お世話になったお婆ちゃんにお礼もおしまいの挨拶も言えないのかなぁ〜〜?」

 

 アヴィアは悔しそうに歯軋りして、ゴスロリスカートの裾をぎゅっと握りしめたが……それでもなんとか、言ってみせた。

 

「くっ……! 今日のところは、これで引き下がりますわ……! れ、レノお祖母様……。ありがとうございました……ですわ……」

 

 レノは唇に数秒指を当て、「んー」と考えていたが、どうやら妥協したようだった。

 

「ま、合格でいいかな。じゃ、この本は私が仕舞っておくから、帰り支度してねー。この話の続きは、また今度ね!」

 

 3人の少年少女が「はーい!」と明るく返事をする。そしてレノは『モブ男子とミーシャとアノス様』の本を、エニユニエンの図書室の本棚に、大切に仕舞い込んだ。

 

 ──こうして、『モブ男子とミーシャとアノス様』の物語は、幕を下ろした。

 モブ男子リオン・クローラーが遅咲きの恋に目覚めたのをきっかけに、魔王アノスが、ミーシャとの愛に目覚める物語だ。

 

 ──そしていつか、幕は再び上がる。

 それは、リオン・クローラーがモブ男子としてではなく、主人公として東奔西走し、今度こそ真の愛を手にする物語。

 ──或いは。

 エクエスとの戦いが終わって13年が経ってなお見つからない霊神人剣の秘密や、ミリティアが創った優しい世界の外側を巡る物語。

 

 ──幕が上がるのは、今ではない。

 続きはいつか──また今度だ。

 

『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』

 

を原作とした二次創作小説

 

『モブ男子とミーシャとアノス様』

 

──完──

 

 

(※8月8日、一部改稿)






「モブ男子とミーシャとアノス様」
ついに完結と相成りました。

ハーメルンではウケが良くないのではと判断し、今までpixivでのみ更新を続けていました。
お気に入りに登録して待っていてくださった方々、申し訳ありませんでした。

「完」の字を書くまではあとがきで書きたいことが山ほどあったのですが、「完」の字を書いたら全て忘れてしまいました。

魔王学院最終章《転生世界》編(17巻)は2025年8月8日発売で、完結させたのは2025年8月5日です(※pixiv)。
秋先生が書く結末と違うものを書いてしまっているかもしれません。
17巻を読んでしまう前に、書ききってしまいたかったのです。

リオン派の方には申し訳ない展開になってしまいましたが、最終話には救いと希望と夢を描いたつもりです。

なにぶん稚拙な文章力で、何度も読み直すことに堪えられる出来になっているか分かりませんが、
第一話から読み直す方、新しく魔王学院の不適合者に触れた方にも、もし楽しんで頂けたなら幸いです。

感想ぜひコメントでお聞かせください。


8月8日追記

17巻でいろいろありましたので一部改稿しました。
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