前世暗殺者の大学生in名探偵コナン   作:首領タコス

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初投稿です。


第1話

私の名前は毛利楓(もうりかえで)、どこにでもいるような普通の大学二年生の少女だ。

 

ただ、私には生まれつき前世の記憶がある。

 

地獄のような世界で人間の形をした魑魅魍魎どもを何十…何百と、暗殺してきた暗殺者だった―――。

 

私は隠密に国に害を為す悪人たちを抹殺する為の暗殺者として育てられ、その国が滅びるまで邪魔になる者たちをあらゆる方法で暗殺し続けた。

 

最初に、人を殺した感触だって今でも覚えている。

その嫌悪した感触が暗殺した回数を重ねていくごとになんとも思わなくなって、暗殺をすることが苦にならなくなっていった記憶も。

 

時には仲間たちが、無惨に処刑されて、業火のように溢れ出る怒りや憎しみ、悲しみ、苦しさと言ったドロドロとした感情を必死に噛み殺した記憶も…。

 

だから、だろうか。周りの人みたいに目の前にいる銀行強盗を見ても恐怖、どよめき、不安の感情が全くと言っても沸き上がってこないのは―――。

 

むしろ、あの頃の、情景を思い出して、逆に心が透明になっていって、冷たく冷静になっていくのを感じている。

 

状況を整理しよう…。

 

私の前にいるのは1人の金髪の男の銀行強盗、その手には拳銃を持っているが、額に汗が溢れており、体が小刻みに震えていて、どこかぎこちない。

 

お金を要求をする際も、声が掠れて、震えていたし、この程度の奴ならば、武器なんかなくても私なら簡単に制圧できるし、最悪見逃しても簡単に警察に捕まるだろう。

 

なら、もう何人かこの銀行の中に銀行強盗の仲間がいるはず、と目を泳がせると見つけた

 

あいつかーーー監視カメラを背にした状態で眼鏡をかけており、見た目は真面目そうなスーツの男性が口パクで指示を出していた。

 

普段ならすぐにバレてしまいそうな簡単な手口、しかし、このような混乱した状況では、普通は目の前の銀行強盗に注目が入ってしまい、周りの人は目が向かないだろう。

 

他は…いないか。演技していても目と匂いでわかる。

後ろめたいことをする奴、特有のね…。

 

「まぁ、この程度なら余裕か…」

 

「ぐわあっ」

 

刹那、その時間さえあれば、自分が銀行強盗の仲間なんてバレるなんて考慮していない、一般人に制圧されるなんて一欠片も思ってない男を無力化することは殺すことより容易いのだから。

 

気配を消し、男に近寄った私は足技で眼鏡の男を転ばし、そのまま腕を締め上げ、拳銃を持った男に顔を向ける。

 

「この人が貴方に指示を出していた人でしょ?」

 

「おま…なんでッ?」

 

「お生憎様。目がいいもんでね」

 

「おい、何やってる!?早くこいつを撃てぇ!!」

 

「えっ!?おおっ…」

 

拳銃を持った男が私に銃口を向けて、引き金に手をかけるが、その手はひどく震えていた。

 

その震えの原因は私が一瞬でこの男を拘束してしまったせいか、初めて銃を人に向けたせいか、はたまた、別の原因なのか、わからないが、私はここで引き返すを作ってあげることにした。

 

「因みに拳銃を持っている君に言っとくけど、ここで銃を乱射しても、人質をとったとしても、絶対に逃げられない。罪が重くなる前に辞めることがおすすめだよ。起こしたことは取り返しがつかないかもしれないけど…君には、まだ、戻れる道があるんだから」

 

まだ、この程度の罪なら彼は戻れる。なら、これ以上の罪を犯す前に私は戻って欲しいと考える。

 

ここは私がいた前世の世界よりは優しい世界なのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これって蘭ちゃんから聞いたんだけど楓ちゃんのことでしょ。強盗をやっつけちゃうなんてすご〜い」

 

「……全然すごくないですよ。警察の方や親からはこんな危ないことはしちゃ駄目だと叱られましたし」

 

現在、私はバイト先の喫茶店『ポアロ』で皿洗いをしていると新聞を持ったここで働いている女性店員、榎本梓さんに昨日のことを言われていた。

 

彼女が持っている新聞には『大手柄!!銀行強盗を、解決したのはまさかの大学生!?』と大きな見出しになっている新聞を持っている。

 

あの後、私の言葉で、止まってくれた銀行強盗はそのまま通報によってやってきた警察に逮捕されていった。

 

どういう理由で彼等が銀行強盗なんて起こしたのか知らないが、真っ当に罪を償って、社会復帰することを私は祈っている。

 

「でも、楓ちゃんってほんとすごいよね。仕事もすぐ覚えちゃうし」

 

「まぁ、前にも似たようなことやってましたからね」

 

暗殺の潜入任務で給仕の仕事を数えきれないくらいやってたからこれくらいお手のものだ。

 

そこでは、大きな音を立てたり、くしゃみや咳など少しでも失礼な態度をした瞬間に懲罰小屋とかに行かされたりのところとかザラにあったし、伸び伸びと働かなかった。

 

職場でこういう世間話を楽しめたり、お客様に感謝されたりとそんな些細なことが私は楽しく感じている。

 

「楓姉さん!」

 

そんなことを思っていると私の妹である帝丹高校2年生の少女、毛利蘭がなにやら慌てた表情でやってきた。

 

「蘭、どうかしたの?」

 

「新一来ていない?」

 

新一というのは工藤新一、蘭と幼馴染で同じ高校の同級生の男子で並外れた推理力の持ち主。高校生探偵として数々の難事件を解決してきた。

 

「ここには来ていないよ。というか二人は今日、遊園地に行っていたはずじゃなかったっけ」

 

「その途中で別れちゃって。それから連絡しても出ないから少し心配になっちゃって」

 

「…とりあえず、工藤くんの家に行ってみたら?何か手掛かりがあるかもしれないよ」

 

「そうしてみる。ありがとう楓姉さん、バイトがんばってね」

 

「うん、蘭も気をつけてね。何かあったら気にせず電話していいから」

 

工藤くんはたまに事件のことばかり考えていて、たまに周りを見れない時があるから今回もそうかもしれない。

 

もし、仮に何かに巻き込まれていても彼なら自分で解決する力を持っているし、私は対して心配はしていなかった。

 

それからバイトが終わり、携帯電話を確認すると、メールが来ていた。

内容は探偵である父さんに行方不明になった娘を探して欲しいという依頼が来たらしく、そっちに行っている。あと、阿笠博士の親戚の子供、名前は江戸川コナンくんを預かることになったから後でその子のことを紹介するねとのこと。

 

「じゃあ、今日の夕食はもう一人分用意しないとだね。それにしても…お父さん大丈夫かな」

 

刑事としての射撃の腕、柔道で培った技は私もすごいと思う。

しかし、推理力は…工藤くんにお世辞でも及ぶとは言えないし、正直なところかなり心配だ。

 

「夕食が作り終わったら、私も行こう。とりあえず、蘭に夕食を作り終えたら私も行くってメールを送って…」

 

今日の夕食はカレーにしよう。

市販のカレールーを使うので野菜やお肉を切って、煮て、お米を炊くだけで簡単に美味しいものができるし、作り置きしても問題ない。

それが終わって解決してなかったら、私も手伝いに向かおう。

 

「うん、いい感じでできたね…と蘭からメールだ」

 

内容を確認すると、事件を無事解決できたみたいで今はタクシーに乗って帰っている途中との事だ。

 

「とりあえず、一安心かな。それと写真も一緒に送られている」

 

それを見た私は一瞬、驚いてしまった。

 

「…随分と工藤くんが小さかった時にそっくりだね。眼鏡をかけてるところが違うけど、瓜二つだ」

 

連絡つかずの工藤くんに、工藤くんが小さい頃に瓜二つの阿笠博士の親戚の子供を預かることになったというのは偶然としては出来過ぎな気がしてしまう。

 

「一応確認してみようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が寝静まった時間に、コナンは探偵事務室に蘭の姉である楓に呼び出された。

 

「こんな遅い時間にどうしたの楓ねーちゃん?僕もう眠いんだけど」

 

眠そうに目を擦っているコナンに、楓はごめんねー。ホットミルク出すから。許してねと楓は軽い口調でソファーに座るように促した。

 

ソファーに腰掛けて熱々のホットミルクを、冷ましながら飲んでいると唐突にそう言えば聞きたいことがあるんだけどと話を切り出された。

 

「コナンくんって工藤くんに似てるよね?」

 

「あはは、よく新一兄ちゃんに似てるって言われるんだよね。まぁ、世界に似てる人は3人くらいいるって言うし…」

 

「顔とかも似てるけどね。工藤くんの癖までそっくりってのも不思議だよね」

 

楓は軽い口調で言ってくるが、その黒曜石のような綺麗で肉食獣に睨まれたような圧を感じる瞳がコナンを見据える。

 

(こう言う雰囲気の時の楓さんは誤魔化せないんだよなぁ。仕方ないか)

 

「ああ、俺は工藤新一だよ」

 

その後、コナンは蘭と別れた後に起きたこと、怪しい黒ずくめの男に薬を飲まされて、小さくなってしまったこと、それからここに来るまでの過程を事細かく話した。

 

「そう、工藤くんは大変な目にあっちゃったね」

 

「俺は黒ずくめの男を探し出して、絶対に元に戻ってやる」

 

「でも、そんな常識が通用しない薬を作れるってことは相手は裏社会の人間だよ。そんな簡単に尻尾は掴めないと思う。それにその組織に探られていることがバレたら、かなり危険な目に会うかもしれない」

 

「そんなの承知の上だ!」

 

コナンが勢いよく啖呵を切ると、楓はフッと笑みを溢した。

最初からそう言うことがわかってたみたいに。

 

「なら、私もできる限り協力するよ」

 

「えっ?」

 

「だってこれでも怒ってるんだよ。蘭の親友の君を、こんなふうにして…」

 

楓の顔はのほほんと笑っているが、目元は笑っていなかった。

 

こう言う顔の楓をコナンは何回か見たことがある。

 

一番印象的だったのは自分たちが小学一年生の頃、公園でサッカーをしていた時に、隣町の小学6年生たちがここで野球をするからとグラウンドを横取りしてきようとした時だった。

 

「ここは俺たちが先に使ってたんだよ」

 

「でも、年功序列って言葉があるだろ。俺たちは君たちより年上。だから、ここを使う権利があるのさ」

 

「なら、先着順って言葉もあるぞ。俺たちが先に使ってたんだ。そんなに野球がやりたいならもっと早く来ればよかっただろ!」

 

「おい、お前、年下の癖に生意気だぞ。俺たちが教育してやる」

 

口喧嘩で勝てないのを腹を立てて、小学6年生の男の自分たちより大きな体から拳が放たれる瞬間にその腕が掴まれた。

 

「ねぇ、貴方たちは何をしようとしているのかな?」

 

その腕を掴んだのはコナンたちより2歳だけ上だが、貼り付けたような笑顔に寒気を感じさせる圧を持った楓だった。

 

その圧に蜘蛛の子を散らすように逃げ出す小学6年生たちを手を振って見送る楓にさっきのような圧は感じられなかった。

 

その時にこの人だけは絶対に怒らせないようにしようと心に誓ったのは内緒の話だ。

 

「だから、いつでも私を頼ってね」

 

「ああ、なんか話してて楓さんが毛利のおっちゃんに変わって探偵やった方がいい気がしてきたぞ…」

 

「ふふっ、でも、私にとって一番は父さんなんだ。私の傷ついた心を救ってくれた最高の名探偵なのだから。じゃあ、あまり夜更かしも良くないからそろそろ寝ようか。おやすみコナンくん」

 

「ああ、おやすみ」

 

こうして他には知られてはならないコナンと楓の秘密のやりとりは終わるのだった。

 

 

 

 

 

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