前世暗殺者の大学生in名探偵コナン   作:首領タコス

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第3話

 

 

 

悲哀と憎悪に身を焦がし、復讐に取り憑かれた人たちの人生を前世でよく見てきた。

 

彼等がやったことは、どんな綺麗な言葉を並べたところで人殺しには変わりない。

 

人殺しの最後は、皆自らその報いを受けることになり、悲惨な最後を迎えていた。

 

「成美さん、そんな顔でどうしたんですか?」

 

だから、彼女、いや、彼の震える手と強張った顔でやろうとしている事を見兼ねて、声をかけた。

 

「ッ!楓ちゃん、どうしてここに?」

 

「少し夜の海を見ていたら、成美さんを見かけたもので」

 

「そうなんだ。ここの、海は綺麗でしょ」

 

「ええ、でも、ここで手を洗ったとしても一度血に染まってしまった手の汚れは落ちないですよ」

 

「はぁ、これからやろうとしたことはお見通しってわけか…」

 

成美さんは観念したような、ホッとしたような息をして吐いて、成美さんは男で麻生圭二さんの息子だった話、この復讐をしようとした経緯、これから行おうとした殺人計画を話してくれる。

 

「なるほど、亡き父の復讐ですか。それにやっぱり成美先生って男性の方だったんですね」

 

「気づいていたんだ」

 

「違和感があったのは喉仏ですかね。成美さんは喉仏が見えたので多分、男性かなって感じがありました」

 

「なるほどね、なら、楓ちゃんがいるならこの計画を実行しても、最後まで行かずに失敗してたかもしれないな。じゃあ、そろそろこの辺が潮時か」

 

そう言って成美さんがそのまま去ろうとするが、私は待ったをかける。

 

「待ってください。私は成美さんの殺人は止めたかったですけど、復讐自体は止める気はないですよ」

 

「えっ?」

 

「むしろ、協力してもいいですか?」

 

その復讐を糧に生きてきた人間に、復讐をやめろと言うほど私はできた人間ではないし、そんな悪い事をして、のうのうと生きている魑魅魍魎たちをこのままにしておくのも癪な話だ。

 

自分勝手な理由で人を殺した者にはきちんと相応の報いを受けてもらわないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この白い粉って麻薬だよね。大変。警察に連絡しないと」

 

市民館のピアノが置かれている部屋で携帯電話を取り出して、電話をしようとしたその時、懐中電灯で照らされる。

 

「おっと、嬢ちゃん、こんな夜中に出歩くなんていけねぇな」

 

「全く俺たちを嗅ぎ回ってたと言う子供はこいつか。そんな探偵ごっごなんてしなければ口封じをされないで済んだのにな」

 

「悪く思わないでくれ。僕たちには守らないといけない秘密があるんだ」

 

「俺たちの秘密を守る為だ。お前は生かしちゃおけねぇ」

 

そこにいたのは4人の男、現村長の黒岩、村一番の資産家で村長選に立候補している川島、村長秘書の平田、無職の西本だった。

 

その手にはバットや日本刀、包丁、サバイバルナイフ等を持っており、完全に私を亡きものにする気なのだろう。

 

きちんと嘘の情報通りに成美さんの父親を殺害した3人と、成美さんの父親の殺害に関与はしてないが、麻薬の取引をやり始めた1人は釣れたようだ。

 

「貴方たちが麻生さんを一家心中に装って殺したんですね」

 

「冥土の土産に教えてやろう。その時はまだ、麻薬の取引はしてなかった平田以外の俺たちと前村長の亀山で口封じをしたんだ。あいつがもう麻薬の取引はやめると言い出したからな。非常に心苦しかったが我々の犯した罪が明るみになっては、我々が築いた利益が…」

 

「…もういいや、貴方たちが救いようがない下郎だってことはわかった。因みに冥土の土産に教えやるってセリフはよく時代劇や漫画でよく聞く死亡フラグだからあまり使わない方がいいよ」

 

あまりの屑っぷりに私は丁寧な口調はやめて、素の口調にして、憎まれ口を叩き、それが決戦の合図になった。

 

と言っても4人は武器を持っているが、構え方はまったくもって素人、武器を使うことばかりに気を向けていて、武器を使った後のことはまったく考えてないお粗末な相手。

 

これでは連携もへったくれもなく、お互いに足を引っ張り合い、人数の差が逆にディスアドバンテージになってしまっている。

 

戦いにはならず、一方的なハンティングと言った方がいい程で、時間は2分にも満たず、あっとういう間に私は制圧してしまった。

 

返り討ちにして倒れている4人が逃げられないようにロープで縛っていると、隠れて様子見をしていた成美さんが現れる。

 

情報を流して、誘き寄せて一網打尽にする作戦は成功して、成美さんがさっきの自白も、録音してくれており、警察も呼んでいる。

 

もう彼らが隠れることができる暗い闇など存在しない。

 

「本当に男4人をこんな簡単に倒してしまうなんて。君は一体何者なんだ?」

 

「毛利楓、普通の喧嘩が少し強いだけの大学生ですよ。それに自分が狩る側だと思っている相手を倒すのはかなり楽です。自分が狩られる側になるなんて微塵にも思ってないんですから」 

 

「その発言が普通の大学生じゃない気がするけどね。さてと…」

 

成美さんが軽く笑って、その後、憎しみと怒りを込めた表情で気絶している4人、いや、自身の父を殺害した3人に瞳を向ける。

 

「コイツらが憎くて憎くて堪らない。今すぐにでも殺したいぐらいなんだ。でも、君は止めるんだろう?」

 

こちらを向いた成美さんの顔から涙が流れていく。

 

「…どうしてもその人たちを殺したいなら私に止める権利はないと思っています。ですが、これだけは言えます。私が貴方の父親だったなら、そんなことは望まない。一番の望みは、生き残った貴方が幸せに生きていることです。それに成美さんには、貴方のことを大切に思っている人たちがいるはずです。その人たちより、この人たちへの復讐を果たすことが大事なんですか?」

 

「でも、俺の手は彼等のように血で真っ赤に染まっているのも同然なんだよ!楓ちゃんが止めなければ、絶対に彼らを殺していたんだ。そんな俺が幸せに生きるなんて許されるわけが…」

 

肌に爪が食い込んで、血が出てしまいそうなほどな強さで震えた拳を握り、成美さんは心のうちを叫ぶ。

 

そんな今でも心が壊れそうな彼を私は優しく抱きしめた。

 

「誰でも自分の大切な人が殺されたら、憎しみが生まれるのは当然だよ。でも、成美さんはその憎しみに身を任せて、殺さなかった。

私がいたから、どうかなんて関係ない。成美さんは彼等を殺せる手段はあったのに殺さないことを決めたんだ。

そもそも、貴方が本当の復讐鬼になってしまったら、あんな誰かを殺すと予告するような手紙なんて出さないよ。

憎しみが止まらなくなった自分を助けて欲しかったんだよね。もう大丈夫だよ。悪夢は終わったんだ。ここに復讐に取り憑かれた殺人鬼はもういない。ここにいるのは心優しいお医者さんだけ。そんなお医者さんを許さないって言う人なんていないから大丈夫だよ」

 

その言葉を聞いて、抱きつかれたまま大きな声で泣く成美さんに彼の心が落ち着くまで胸を貸した。

 

そこにもう復讐に取り憑かれた浅井成美はもういなかった。

 

 

 

その後、すぐに警察が到着して、私と成美さんは聴取されると共に気絶している4人は逮捕されていった。

 

麻生圭二さん殺害は時効が成立しているが、私への殺人未遂罪と麻薬取締法違反の罪には当たるし、麻生さんの殺害の話はこの島中に広がってしまい、家族たちにも縁が切られてしまった。

 

彼等が、釈放されても、もうこの島で生活することは不可能だろう。

 

成美さんは、その後、圭二さんが亡くなる前に書いた楽譜のメッセージを受け取り、前を向いてこの島でお医者さんを続けることにしたらしい。

 

その時に、とてもお礼をされたし、顔も赤い成美さんにコナンくんと蘭は、私に春の訪れかもと思っているみたいだけれど、あれはあのハグが恥ずかしかったからと成美さんが言っていたので、別に恋の予感とかではないんだろう…携帯電話のメアド等は交換したけど。

 

「楓さん、少しいいか?」

 

「コナンくん、どうしたの?」

 

帰りの船で一人で海を見ながら、黄昏ているとコナンくんがこちらに声をかけてくる。

 

「事件の全容を聞いたけど、楓さんが成美さんの犯行に気づかずに、そのまま殺人が起こってしまったら、俺が成美さんが犯人だと解き明かしても、成美さんは自殺してたんだよな」

 

「うん、成美さんは全員の殺害が成功した時、市民館のピアノと、共に燃えるつもりだったって言ってたし、そうなった場合、成美さんは止めようもなく、間違いなくそうしてただろうね」

 

「そうなった時、俺がその殺害事件の真実を明かす意味ってあったのかな?って疑問でよ」

 

なんとも言えない表情で夕陽に染まった海を見つめているコナンくんは本当に悩んでいるようだった。

 

「例えそうなったとしても私は意味があると思うよ」

 

「どうして?」

 

「そうなると孤独じゃないからね。真実に気づけなった時、君が真実を解き明かさなければ、成美さんは一人で自分で自分の心を傷つけながら、死ぬことになる。

だって、誰も自分を罰してくれる人がいないのだから。彼にとってそれが一番辛い結末だろうね。

でも、コナンくんはその殺害事件を解き明かしても、成美さんのことは放っておかない。絶対に説得して、生かそうとする。そんな一人がいるだけで成美さんの心は少しは救われるはずだよ。

だから、はたから見たら同じ結末でも無意味ではなかったと私は思うよ」

 

「なるほどね…」

 

「まそんな重い話はここら辺でやめて、成美さんから楽譜貰っちゃったんだけどこれ私の気持ちって言ってたんだけど、コナンくんはどういうことかわかるかな?」

 

「えーっと、ここがこうだから…」

 

やっぱり謎をあげるとコナンくんは元気になるねと思いつつ、少し待っていると、コナンくんはニヤリと悪戯に笑みを浮かべる。

 

「わかったの?」

 

「ううん、僕子供だから書いてあることわからないや」

 

「いや、絶対わかった顔してるでしょ!教えてよー」

 

こうして私とコナンくんの船上鬼ごっこが開幕した。

もちろん、すぐに捕まえて、終わりにしたが、コナンくんが白状することはなく、成美さんにメールをしても、ヒントは鍵盤だよとしか教えてくれなかった。

 

「コナンくん、楓姉さんが貰ったあの暗号ってどういう意味だったの?」

 

「えーっと、楓ちゃん、今度は貴方のところに遊びに行くねって書いてあったよ」

 

「これはやっぱり…」

 

「脈ありかもね」

 

私の預かり知らないところで二人はそんな話して、盛り上がっていた。

 

 

 

 

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