ある調査局の駐屯地の中の一部屋にユキノは呼び出されていた。彼女の上司が話したいことがあるといってユキノを呼び出したのだ。
「あの、用件を教えてください」
上司は深刻そうな
「今から18時間前、我々調査局の監視下にあったA号魔獣
号、これは魔獣や人間の強さを表すために調査局が定めた単位だ。異号、A号、B号、C号、D号と5つの階級に分けられる。A号は市区町村を壊滅させる恐れがある魔獣に振り分けられる階級だ。そんな魔獣が殺害されたとなると調査局としては非常事態でしかない。
「だ、誰がそんなことを! 」
ユキノは驚きを隠せない。もしそのアイアンレイブンを殺した人物が反社会的な人物であり、テロのようなことを行なったあかつきには甚大な被害を負いかねない。直ちに対処しなければいけない事態だ。
「監視ドローンが収めた映像によるとアイアンレイブンを殺害したのは獣人だ。狼のな」
上司はモニターを映す。モニターには獣人がアイアンレイブンの喉を掻っ切る映像が流れた。
「問題はここからだ、この獣人をドローンで追跡したところ。廃棄された街で生活していることが発覚した」
ドローンが撮ったと思われる映像にはユキノがよく知る人物も映っていた。
「……カズミくん」
カズミが映像にはっきりと映っている。彼は動いている。死んでいない、死んでいなかった。生きている。
「事情はわからないがどうやらカズミくんはこの獣人のとこにいるらしい」
ユキノは表情をどうにかして誤魔化す。心の中では大喜びだ。カズミが生きている、その事実で頭が爆発しそうな勢いだ。
「上層部はこの獣人の階級をA号として即時に排除するべき脅威だと判断した」
そうだ、カズミを助けるためにはこの獣人を排除しなければならない。ユキノは表情をこわばらせる。A号の獣人だそんなのと戦えば無論死ぬ可能性がある。
「事態は深刻だ、
ユキノは表情を唖然とさせる。SOUはSpecial Ops Unitの略称で調査局の最高戦力とされる部隊だ。入隊条件は厳しく全ての隊員の実力はA号以上とされている。そんな部隊を派遣するとは上層部は事態を重く受け止めているのだと肌を持って感じた。
「今から3日後、獣人殺害及びニイミカズミ救出作戦が実行される」
上司は自身の鼻を少し指で掻いてから口を開く。
「ユキノくん、君にもこの作戦に参加してほしい」
「私を呼び出したのはこのためですか? 」
ユキノは薄々わかっていた。自分が今日呼びされた理由をおそらくそうだろうと感じていた。
「そうだ……。嫌なら拒否してくれても構わない」
「いえ、参加させてもらいます」
ユキノに拒否する理由はない。カズミを自らの手で助けられる。それだけで作戦に参加する理由は十分だ。
「そうか、なら上に君が参加することを報告させてもらう」
上司は少しだけ笑い。出ていってくれて大丈夫だといった。ユキノは部屋をでる。そして、周りに誰もいないことを確認すると拳を握りしめた。それから小さく呟く。
「カズミくん、やっと思いを伝えられる。やっと、やっとだね……」
ユキノは顔を光悦させる。やっとカズミに会える、思いを伝えられる、その機会が巡ってきたのだ、無理もない。ユキノは深呼吸をして劣情を抑え込んだ。ようやくだ、ようやく、これでカズミへの恩が返せる。
カズミと獣人は知りようがない、自分達が知らぬうちに命を狙われていることを……。
調査局ニテ規定サレル魔獣ノ階級
異号 国家機能停止ノ恐レ有リ
A号 市区町村壊滅ノ恐レ有リ
B号 半径500メートル内ノ民間人避難必要有リ
C号 半径250メートル内ノ民間人避難必要有リ
D号 半径50メートル内ノ民間人避難必要有リ