カズミが朝ごはんを食べていたとき、獣人が話しかけてきた。
「カズミくん、これから僕がいない間出かけてもいいよ」
カズミは驚く。今まで1人で外に出るのは禁止されていたのが、今日突然として許可されたからだ。
「いいんですか? 」
「うん、だってカズミくんもう逃げないでしょ? 」
言われてみればそうだ、少し前なら今すぐにでも逃げようにしたに違いない。けど、今は違う。逃げようだなんて考えはどこにも浮かばない。獣人と一緒にいたいと言う気持ちが心の大半を占めている。
「出かけてもいいけど、日が暮れるまでにはここに帰ってきてね」
日が暮れると魔獣の活動が活発になる。だから、日が暮れるまでに帰ってこいと言うことだろう。カズミのことを気遣っての言葉だ。
「わかりました」
「あ、あとこの街の北側には行っちゃダメだよ」
獣人が妙なことを言う。カズミは北側に何かあるのではないかと疑ってしまった。
「どうしてですか? 」
獣人は少し悩むそぶりを見せてから答える。
「
獣人が言う嫌なやつとは一体どんなのだろうか。カズミは気になってしまう。
獣人がどこかへ出かけていったあと、カズミは着替えて家を出た。獣人が好きなチョコレートをたくさん集めて持って帰ろうと考えたのだ。
「……北側。いってみようかな」
カズミは街の地図を見つけた。どうやら大きなショッピングモールが北側にはあるようだ。そこにいけばより多くのチョコレートが手に入るかもしれない。カズミは獣人が言っていたことを思い出す。
20分ほど歩いて街の北側に着いた。大きな駅を中心として様々な商業施設が広がっている。特に駅から出てすぐ見える大型家電量販店がメインとなった複合型施設は人がいないながらも大きな存在感をはなっていた。カズミは初めて見るものに子どものように心踊らせる。本来なら人混みができているであろう観光街はどこか魅力的だ。
「……わあ」
家電量販店の中はそのまま人が消えたとしか思えないほど綺麗だ。電気が通っているためかきちんと照明がついている。冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの家電製品は新品同様の綺麗さだ。
「持って帰ってもいいよね……」
流石に冷蔵庫などは大きすぎて持てないがドライヤーなどなら持って帰れる。家にドライヤーはなかったはずだから獣人も喜ぶだろう。
カズミは探索をする。中は思ったより広く気付けば1時間ほど経っていた。その間に併設されている洋服店から何着か服をとった。獣人の服を借り続けるのも申し訳ないと思ったていたからだ。
「これ、似合うかな……」
カズミは獣人が好きそうなデニムジャケットを見つけた。着心地も良さそうだ、気に入ってくれたら嬉しいななんても思った。
「もしかして人間かい? 」
服を見ていると突然後ろから声がしたのでカズミは驚いてバッと振り向く。そこには女がいた。だが雰囲気が違う……、魔族だ。
「だ、誰ですか……? 」
「質問に質問で返すなんて失礼な人間だね」
女はニヤリと笑った。カズミは直感した、獣人が言っていた
「まあいい、人間くん。お姉さんとイイコトしようか? 」
そう言うと女の背中からコウモリの羽のようなものが生えてきた。カズミは不味いと思って走って逃げようとする。しかし、女に簡単に追いつかれてしまい、押し倒される。
「そう逃げないでくれ、傷つくだろ? 」
「嫌だ! 離せ! 」
カズミは必死に抵抗する。けれど、力では魔族の方が圧倒的に強い。カズミはなんとなくこの女の正体がわかった。おそらく、この女はサキュバスだ。人間の男を襲い、精気を奪い最悪死なせるという魔族……。一刻も早く逃げなければいけない。
「気持ちよく逝けるよ、怖くないさ」
サキュバスはカズミの着ている服を無理やり剥がそうとする。カズミは決死の思いでサキュバスの腹を蹴り上げた。サキュバスは驚き怯む。今だ! そう思いカズミは全力で走って逃げた。
「待て、クソガキ! 」
サキュバスの怒号が聞こえたがカズミは振り返らずに走る。ひたすら走る。走った。そして、なんとか逃げ切った……。