獣人に支えられてカズミの精神はなんとか保たれている。それと同時に獣人もカズミがいることで精神的に支えられていた。2人は知らず知らずのうちにお互いを支えあっている。
「カズミくん、もう大丈夫? 」
朝目覚めたカズミは隣にいた獣人に聞かれる。昨晩のこともあってカズミのことを気にかけているのだ。カズミはほほ笑み答える。
「はい、大丈夫ですよ」
今は冷静を保っていられる。それも獣人のおかげだ。獣人が一晩の間ずっと抱きしめてくれた、慰めてくれた。辛いことも獣人がいれば乗り越えていける、なんだかそんな気がする。
「じゃ、行こっか」
カズミと獣人はホテルを出て歩き始める。獣人がもともといたと言う場所を目指して、カズミは獣人が元いた場所に興味があった。それはどんな場所なのかと想像する、誰もいない場所がいいと思ってしまう。そんな場所で獣人と2人きりで静かに暮らしたい。
「寄りたい場所があるからそこに行っていい? 」
「いいですよ」
獣人が行きたい場所、獣人の尻尾は上を向いている。きっと、獣人の好きな場所なのだろう。2人は1時間半ほど歩いてその場所についた。
「じゃじゃーん、海だよ! 」
そこには淡い透き通った青色の海が広がっていた。その景色はカズミが知っている海を遥かに超えた綺麗さだった。本当に日本だとは思えない、それほどの海だった。人がいなくなった海は自由という言葉が相応しい。水平線がはっきりと見える。
「すっごい綺麗でしょ! 」
「……はい」
カズミは塩気のする空気を肺いっぱいに満たす。そして、白くまっさらな砂浜にゆっくりと降りていく。獣人は一直線に海に走って向かっていた。
「あはは、魚いるよ! カズミくん! 」
膝まで海に浸かった獣人は水面を見ながらいう。その顔は純粋な子どもような笑顔だった。カズミもズボンの裾を巻き上げて海に入る。ひんやりとして気持ちがいい。今の季節は春のはずだが海の近くは夏かと思うくらい暑い。これは異世界と同化した影響だろう。
「本当だ、魚いる! 」
カズミも魚をみて喜んでしまう。不思議と懐かしい気分だ。きっと、いつかの自分を思い出しているのだろう。
「よっ! 」
獣人はバッと海に腕を突っ込む。魚を素手で捕まえていた。間違いなく人間の反射神経はできないことだ、そういうところを見ると獣人と自分は違うのだと思わせられる。その魚は見たところ30センチメートルくらいある。外見からしてハギという魚だろう。
「カズミくん、これ食べれるかな! 」
獣人はカズミに捕まえた魚を見せつける。
「食べれると思いますよ! 」
獣人はもとから笑顔だった顔をもっと嬉しそうにした。
「じゃあ食べよう! もう一匹捕まえないとね! 」
その言った後、獣人は追加で3匹大きな魚を捕まえてきた。砂浜で木の枝を集めて火をつける。その火で魚を焼いた。獣人の火起こしは見事だった、どこかで見たサバイバル番組のタレントがやっていたのより遥かに早かった。
「美味しいね! 」
獣人は焼いた魚を丸齧りしながらいう。カズミも魚を齧る。白身であっさりしていて食べやすい。
「そうですね」
カズミは魚1匹でお腹いっぱいになったが、獣人は4匹も魚を食べていた。美味しそうに魚を食べる獣人の姿を見てカズミは幸せな気持ちになる。
「見て、星がいっぱい」
海でみる星空は前いた街で見た空とはどこか違っている。なんだか、自由だ。
「あ、流れ星! 」
獣人が指を指したところに流れ星が流れる。ほんの一瞬だが見えた。
「お願いしよう! 」
獣人の提案をカズミは受け入れる。カズミは流れ星を見て願った。
「なんて願ったの! 」
獣人はカズミのほう向いて聞く。カズミは少し海のほうを見た。
「僕はね、カズミくんとずっと一緒に入れますようにってお願いしたよ! 」
カズミは願ったことが全く一緒だったことに驚いた。カズミも小さな声で答える。
「俺も、同じです……。ずっと一緒にいたいです」
獣人もカズミも顔を赤くする。すると獣人はカズミを押し倒した。
「ごめん、僕我慢できない」
獣人は顔を真っ赤にしてそういった。そして、続けてこう言う。
「誰もいないし……、いいよね? 」