激重ヤンデレ狼獣人に監禁されてます   作:無能メンヘラ

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憎しみ

 放棄された大きな家電量販店、カズミが襲われたところだ。そこには調査局の部隊が展開していた。

 

「クリア! 」

 

 ユキノは家電量販店のなかを探索していた。()()()()()があった次の日、調査局本部から全国の調査局に対して命令が出された。『目標の獣人とニイミカズミを発見し、ただちに排除せよ』とのことだ。カズミは局員を1人殺している。そのため調査局の敵だと見なされた。ユキノはその事実を受け入れていない。カズミが自分に対して銃を向けたショックもあったが、きっと、なにか事情があるはずだ。今はそう信じてカズミを探すしかない。

 

「そこのあんた」

 

 ユキノの背後から声がする。ユキノは振り向いた、そこには女がいる。しかし、人間ではなさそうだ。

 

「あんた、ここになにしにきたんだい? 」

 

 女は姿を現す。コウモリのような羽、魔族だ。しかし、深い傷を負っている。この様子だともうすぐに死ぬだろう。

 

「当ててやる、男を探しにきたんだろ」 

 

 女に目的を言い当てられてユキノはドキッとする。なぜ、それを知っているのだ。ユキノは女に銃口を向ける。

 

「おっと、私は敵じゃないよ」

 

 女はそういうと吐血した。それでも話し続ける。

 

「私はサキュバスだ、その様子じゃお前が探してる男はお前の想い人だろ? 」

 

 ユキノは警戒する。このサキュバスと言った女、一体何がしたいのだ。

 

「それで、あなたはなにがしたいの」

 

 ユキノはサキュバスを睨みつけた。

 

「まぁ、落ち着け。お前の想い人は獣人にとられている、そうじゃないか? 」

 

 このサキュバス、カズミと獣人のことを知っている。なぜ、知っているのだ。ユキノは疑問を持つ。

 

「私のこの傷は獣人にやられたのさ。今はあいつのことが憎くてたまらない」

 

 するとサキュバスは残念そうな表情をした。

 

「けどこの傷じゃ、あの獣人を殺すことができない」

 

 サキュバスはゆっくりとユキノに近づく。ユキノは警戒をやめない。

 

「私の力をあんたにやる。だから獣人を私のかわりに殺してくれないか」

 

 サキュバスからの提案は意外なものだった。

 

「その様子じゃ、あんたもあの獣人が憎くて仕方ないだろ? 」

 

 そうだ、あの獣人は憎い。カズミをおかしくした張本人である獣人は憎くてたまらない。サキュバスの提案は悪くないのではとユキノは思ってしまう。サキュバスは自分の手のひらを噛んで出血させる。そして言った。

 

「血を飲め、そしたら私の力はすべてお前のものだ」

 

 ユキノはサキュバスの手のひらに溜まった血液をすすった。迷いはなかった、獣人を殺してカズミを取り戻すそのためなら手段はいとわない。どんなことをしたって絶対に、絶対に、カズミを己のものにする。ただそれだけだ。

 

 血液を飲んだ瞬間、心拍が激しくなる、鼓動を感じる。体から力がみなぎってくる、そんな気がした。

 

「後は……任せたよ……」

 

 サキュバスはそう言い残して倒れる。そして、数秒後には冷たくなった。

 

「……」

 

 このサキュバスのためにも獣人を殺さなければならない。ユキノは決心した。

 


 

 2人はまたしても廃墟とかした街を歩いている。海から離れると街が広がっていた。コンクリートの森には木々が生い茂り、街全体が自然に包み込まれている。

 

「この花綺麗! 桜だっけ? 」

 

 獣人が指差す方向には桜が一面に咲いていた。甘い香りがする。しっとりとした甘い匂いだ。

 

「僕、桜初めて見た! 」

 

 獣人は飛び跳ねる。ずいぶんと嬉しいのだろう。カズミも数年ぶりに見る桜に心が躍る。街の真ん中には目を見張るほど大きい桜が生えていた。

 

「すっごい大きいね」

「本当に……すごい大きい」

 

 カズミも共感の言葉を漏らすほどの大きさだった。獣人はナイフを取り出して樹皮になにかをしていた。

 

「なにしてるんです? 」

 

 獣人は見せる、そこには文字が入っていた。カズミの知らない文字だ。

 

「じゃーん僕の名前、次戻って来れたらわかるように刻んどいたの」

 

 英語と似た形のそれは獣人の名前を示すものらしい。獣人はとなりにカズミと書いた。

 

「カズミくんの名前も書いといたよ! 」

 

 獣人は嬉しそうにしている。尻尾を振っていた。

 

「いつか、ここに戻ってこようね……! 」

 

 そう言って笑う獣人の顔はどこか切なそうだった。

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