激重ヤンデレ狼獣人に監禁されてます   作:無能メンヘラ

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おでかけ

 カズミはベッドの上に寝そべっていた。皮膚には昨日(さわ)れた感覚がいまだに残っている。ベッドのシーツに染みついた獣人の匂いがカズミを欲情させる。

 

「うあ……」

 

 キョロキョロと昨日脱がされた服を探す。床に乱雑に置かれたそれは昨晩のことを思い出すには十分すぎた。カズミは顔を赤熱させる。

 

「起きたんだ! ご飯できてるよー」

 

 獣人がカズミの部屋に入ってくる。カズミは体をビクッと震わせる。獣人はカズミに近づき首輪に付けられた鎖を外す。

 

「昨日は楽しかったね♪ 」

 

 頭を撫でられる。今回は不思議と大丈夫だ、カズミはなぜか安心する。

 

「……はい」

 

 ポツリと漏らしたその言葉を獣人は聞き逃さなかった。獣人は途端に嬉しそうになって、カズミの頭をワシャワシャと激しく撫でる。

 

「いい子になったねカズミくん」

 

 カズミにとって獣人に褒められることは幸せの一つになっていた。褒められた時や撫でられる時に出る脳内物質のトリコだ。

 

「あ、ありがとう……ございます」

「敬語じゃなくてもいいんだよ? 」

 

 獣人はカズミをギュッと抱きしめる。その様子はカズミを誰にも渡さないといったようだ。獣人にとってカズミは()()()()()の存在だ。だからこそどこにも行かせない、逃げないように閉じ込めている。だけど、今日は違う。 

 

「どう美味しい? 」

 

 カズミは獣人が作ったオムライスを食べる。卵がフワフワでとても美味しい。一週間、毎日3食獣人はカズミに対して食事を作っている。獣人としてはペットに餌やりをしている感覚に近い。

 

「今日はお出かけしよっか? 」

 

 カズミは獣人の顔を驚いて見る。彼はずっと自分がここに閉じ込められると思ったからだ。しかし、どうやらそれは違うらしい。

 

「見せたいところがあるんだ♪ 」 

 

 見せたいところとはなんなのだろうか。カズミは考える。けど、次第にどうでも良くなった。これは逃げ出せるチャンスだ。隙をついて逃げ出そう。

 

「逃げたらどうなるかわかってるよね? 」

 

 獣人はカズミの目を強く見つめる。その顔は逃しやしないという気持ちが溢れていた。カズミはゾッとする。逃げられないと思ってしまう、けど、これは一週間ぶりに巡ってきたチャンスだ。逃すわけにはいけない。

 


 

 一週間ぶりの外の世界は白銀に覆われていた。かつて人が住んでいたビルや住宅が雪に覆われている。カズミと獣人がいる場所は()()()()があってから封鎖されていて人が一人もいない。彼はそこを調査する任務についていた。しかし、その任務の途中に獣人に襲われて捕まってしまったのだ。

 

「わあ……」

 

 カズミは一週間ぶりの外の空気を肺いっぱいに吸う。冷たい空気だがどこか爽やかだ。使われずに放置された都市は自然に飲み込まれていて終末と言った感じだ。

 

「ついてきて」

 

 獣人はカズミの手をとる。握られた手はとても暖かい。それと同時にカズミを(にが)さないという意味でもあった。

 

「……」

 

 カズミは不思議な気分になる。獣人に触られるのは怖いことだが、今は不思議と落ち着く。むしろそれを受け入れている。心地が良い。

 

「あそこにコンビニがあるから、チョコレートもらってこよう」

 

 ここは封鎖されていて人は彼ら以外一人もいないといったが、なぜか水道、電気、ガス、インターネットと言ったインフラは通っている。だから、生活するのに困らない。魔獣などのモンスターが出現することを除けば普通に住めるのだ。

 

「僕ね、チョコレート好きなんだ。カズミくんは好き? 」

 

 誰もいないコンビニは不自然なほど綺麗だった。商品は丁寧に棚に置かれている。人がいなくなって時が止まったままにしか見えない。

 

「好き……です」

「あーまた敬語使った! 敬語禁止ね」

 

 獣人は頬を膨らませる。どうやらカズミが敬語で獣人に話すことが気に入らないようだ。

 

「次使ったらお仕置きね」

 

 カズミはビクりとする。お仕置きとはなにかわからないが酷いことをされるのは直感でわかった。獣人はカズミにチョコレートを渡す。

 

「犬はチョコレート食べれないけどね。獣人は食べても大丈夫なの。なんでかは知らなーい」

 

 獣人はチョコレートを齧りながら言う。言われてみればそうだ。

 

「……甘い。美味しい」

「でしょ?寒いともっと甘く感じるよね?」

 

 久しぶりに食べたチョコレートの感想を呟く。すごい小さな声で言ったはずなのに獣人には筒抜けだ。チョコレートを食べたあと少し歩いた。着いたところは災害の前は観光名所として有名だったという高い建物だ。

 

「ここ面白いんだ。食べ物もたくさんあるし」

 

 中はデパートみたいな作りになっていてお土産だったものなどがそのまま放置されている。

 

「このぬいぐるみ可愛くない? 」

 

 獣人が持ってきたのはピンクのクマのぬいぐるみ、両手で抱えるくらいの大きさで目がボタンになっている。獣人が言うように可愛い。

 

「持って帰っちゃお」

 

 今は獣人はカズミと手を離しているが逃げる気にならない。こんなにも隙だらけなのにだ。逃げても無駄とわかっている。それとここにいたいという気持ちがなぜかあった。

 

 獣人とビルの中を探索していると気づいたら日が暮れていた。空は真っ赤に染まりどこか寂しい。

 

「一番上の階に行こう! 」

 

 獣人はカズミの手を引っ張る。彼もされるがままに着いていく。獣人が見せたいものがなんとなくわかった気がした。

 

「じゃじゃーん、見てすっごい綺麗じゃない」

 

 ビルの最上階は展望台となっていて街が一望できる。夕日に染め上げられる街は言葉で言い表すのが難しいほど圧巻の光景だった。

 

「僕ね、ここから見る景色が好きなんだ」

 

 カズミは獣人の顔を見た。その顔はどこか遠くを見ているようだった。

 

()()()()()()と全然違って面白いの。すごい不思議な気分」

 

 カズミの手を握る獣人の力が少し強くなる。

 

「いつか誰かに見せたかったんだ。この景色、一人じゃ寂しかった……」

 

 カズミは知らないうちに獣人の手を強く握り返していた。獣人の同情したからかはわからない。けど、そばに居たいと思ってしまった。獣人はカズミの目を見つめて言う。

 

「君は……どこにも行かないでね」

 

 獣人はそっとカズミに口づけした。

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