カズミはベッドの上で目覚める。散らばった服、クシャクシャになったシーツ、それらを見るだけで昨晩のことが鮮明に思い出される。カズミは顔を赤らめる。昨日、あんなふうに獣人に甘えるようことになるとは思わなかったからだ。
「シャワー浴びないと……」
カズミはベッドからおりる。そして、落ちている服を拾い上げて着た。よたよたと歩きながらシャワールームへと向かう。
「「……あ」」
シャワールームのドアを開けたら真っ裸の獣人がいた。獣人はタオルで体を拭いていた。カズミは獣人と目が合う。その一瞬、思考がフリーズする。
「ごめんなさい!」
カズミは急いでドアを閉め直した。カズミは顔を真っ赤にする。やってしまった……と心で思ってしまう。それから2分くらい経ったあと着替え終わった獣人がシャワールームから出てきた。
「どうしてそんなに恥ずかしがるの? 」
カズミはドキッとしてしまう。どうしてだかわからないが申し訳ないし、恥ずかしい。
「昨日だって見たでしょ? 僕の裸」
「……」
言われてみればその通りだ。カズミはリンゴより顔を赤く染める。脳裏に焼きつけられた昨晩の光景がまぶたの裏で再生される。
「僕は一緒にシャワー入ってあげてもいいんだよ? 」
獣人は恥ずかしがるカズミをからかう。からかう様子はいたずら好きな子供のようだ。獣人はカズミが恥ずかしがる姿を見るのが好きだ。どうしてかわからないが獣人はカズミが恥ずかしがる姿や健気に甘えようとするのを見ると心のどこかが満たされるのだ。
「僕はご飯作っとくから、シャワー浴びてきなよ」
獣人に促されるままシャワーを浴びる。曇ったシャワールームの鏡に反射するカズミの顔を信じられないくらいのぼせていた。
「カズミくんのドックタグに書かれてた調査局ってなぁに? 」
シャワーを浴び終わってご飯を食べていたら獣人が聞いてきた。カズミは少々気まずそうに口を開く。
「……聞きたいですか? 」
「うん、聞きたい」
カズミにとって調査局のことはあまり聞かれたくないことだ。なぜなら、調査局についての良い思い出がさっぱりと言って良いほどないからだ。
「申し訳ないけど、言えないです……」
「……どうして?」
獣人が疑う目でカズミの方を見る。獣人としてはカズミが何か隠してると思ったのだ。
「嫌なことが……多いからです」
獣人はカズミの目をじっと見つめる。そのあと、スンスンと鼻を鳴らした。カズミの匂いを嗅いだのだ。
「狼の獣人ってね、鼻がとっても良いんだ」
獣人の言いたいことがカズミにはわからない。
「だから人が嘘ついてるかどうかわかるの」
カズミの心拍数が上がる。しかし、カズミはなにひとつ嘘をついていない。獣人にはなにか気に食わないことがあるのだろうか。
「カズミくん……、嘘ついてないんだね。きっとその調査局で怖い思いしたんだよね。匂いでわかったよ」
獣人はカズミに近づいて頭を優しく撫でる。
「僕がそばにいるから安心して、もう大丈夫だから」
そう言ってカズミを抱き寄せる。カズミはなぜか涙が溢れてきた。
「え……」
思わずしてカズミは涙を漏らす。調査局にいた頃は、獣人に捕まるまでは、誰もカズミのことを愛そうとしなかった。けど、獣人は違った、獣人はカズミを愛した。獣人の際限ない愛はカズミの傷ついた心を癒したのだ。カズミは獣人のさっきのような言葉を誰からも受けたことはなかった。だから、今、こうして泣いている。
「え、もしかして嫌だった? 」
獣人は困惑する。突然カズミが泣き出したからだ。
「嫌じゃないです。むしろ……」
カズミは涙を拭う。そして、答える。
「ありがとう……ございます」
カズミは頑張ってはにかんだ。獣人はその顔を見て顔を真っ赤に染める。
「そんなの……ずるいよ。カズミくん」
獣人はカズミの頭をワシャワシャ撫でて思いっきり抱きしめた。30秒くらいしっかり抱きしめた後、離した。
「お返しね」
獣人はカズミに口づけする。それも長い時間だ。2人の唇は10秒くらい触れ合っていた。
「ん……」
唇を離した後、カズミはとても恥ずかしくてしばらく、獣人と顔を合わせられなかった。