日本国調査局局員、仕事内容は異世界と同化してしまった世界、通称禁界を調査すること。年間殉職率は5%、これは局員100人のうち5人が死ぬことになる、日本でもっとも
「カズミくんの捜索を中止するってどういうことですか! 」
1人の女性が彼女の上司と思われる男にそう問いただす。彼女の名前はシイノユキノという。カズミの同僚だ。
「ニイミカズミはMIA*1として処理される。ただそれだけだ」
ユキノは唇を噛み締める。しかし、彼女の上司は続ける。
「君も知っているだろう? 禁界で行方不明となった際の生存率を、2日経過で3%、1週間経過の場合は0.02%だ」
確かに自分の同僚が帰ってこなかったことはある。そういうとき大抵は死んでしまっている。けど、それに憤りや悲しみを感じたことはなかった。それはそういうことと思っていた。しかし、今回は違う、それはカズミだからだ。カズミはユキノの恋心を
「ですが……! 」
「君の気持ちもわかる。だが、上が決めたことだ、受け入れるしかない……」
ユキノは黙り込んでしまう。自分ではどうしようもない、そんなことわかっている。わかっているがどうしようもできない自分が悔しい。もしかしたら。カズミはどこかで生き延びてるかもしれない、助けを求めているかもしれない。それはわからないし、知りようもない。
ユキノはとても優秀な調査局の局員だった。調査の際も1人でどんな敵でも倒せてしまっていた。他の局員は死んでも自分は死なない、生き残る。そう思っていた。
「うっ! 」
ユキノは竜に足を噛みつかれ投げ飛ばされた。そして、壁に激突する。
「Gyaaaaaaaaa」
竜は雄叫びを上げる。その行為は戦いの勝者にのみ許されるものだ。竜は周りの空気を吸う、火炎放射を放つ合図だ。ユキノはこのままでは焼き殺される、そう思った。しかし、噛みつかれ負傷した足では逃げることができない。次の瞬間、竜は火炎放射を放つ。ユキノは自らの死を確信した。
火炎放射は当たらなかった。ユキノは恐怖からつぶっていた目を開ける。
「大丈夫ですか? 」
ユキノはカズミにだき抱えられていた。火炎放射が放たれるすんでのところでカズミがユキノを助けたのだ。けど、カズミはユキノをかばって背中が焼けて皮膚がただれていた。
「くたばれ! 」
カズミはユキノをそっと地面に置くと銃を構えて竜を撃つ。弾丸は奇跡的に竜の左目に当たった。突如として片目が見えなくなった竜は驚き怯む。そして、飽きたのか飛び去っていった。
「カズミくん大丈夫!? 」
ユキノは赤黒くなったカズミの背中を見て言う。今はいち早く応急処置をしなければいけない。冷却スプレーを医療セットの中から取り出してカズミの傷口に吹きかける。カズミは苦悶の表情を浮かべた。
「痛、いやこれくらい大丈夫です……」
カズミは強がりを言ってはにかんだ。その後かけつけた医療部隊によって即座にカズミは回収されたが、連れて行かれる際もカズミはユキノに『大丈夫だから、気を落とさないでください』と気遣いの言葉をかけてくれた。その言葉はユキノを安心させたいという思いが詰まっていた。
その日から、ユキノはカズミに恋をした。
ユキノは業務を終わらせて自分の家に帰る。彼女の部屋にはカズミの写真が飾られてある。それもおびただしい数だ。
「カズミくん、カズミくん、カズミくん……。私のカズミくん」
息を荒くしながらぶつぶつと呟く。彼の肌に触れたい、ぐちゃぐちゃにして自分のこと以外考えられないようにしたい。そう思っていた、いや、いつかそうするはずだった。それなのにそれを奪われた。彼はいなくなってしまった。でも、生きてるかもしれない。
「絶対に……。見つけないと」
カズミは知らない。気づかない間にユキノから狂った好意を向けられていたことを。ユキノの目的はただ一つ、カズミを必ず見つける。そして、自分の思いをカズミに伝える。もし、カズミが自分の思いを拒否したら、その時は、力づくで……。