獣人は起きてきたカズミに話しかける。
「僕、今日は出かけるから。夕方までには帰ってくるから安心して」
「……わかりました」
カズミは少し悲しそうな顔をする。獣人と離れるのが嫌なのだ。
「ご飯は作っておいてあるから、それ食べておいて」
そう言い残して獣人は出かけて行った。前までなら鎖に縛られて部屋に閉じ込められていたが、今は自由だ。獣人はカズミが逃げ出すことはないとわかっていたからだ。
獣人は捨てられた街中を通り過ぎて、街外れの森へと向かう。今回することが危険だ。カズミを連れて行くわけには行かない。カズミは気づいていないようだが獣人は近くに出現する魔獣の数が増えていることに気づいていた。おそらく、街から少し外れた森に
「わあ、すごい数」
森に入った瞬間、鈍く輝くカラスの魔獣が獣人の前に現れた。そのカラスの魔獣の大きさはパッと見で15mくらいある。その魔獣の名前は
「Kaaaaaa」
アイアンクロウは耳に響くような鳴き声を出す。獣人はアイアンクロウが自分に敵意を向けてるのを察知すると戦闘態勢に入った。
「うるさいなぁ、君なんかに時間をかけたくないんだよ」
獣人は背中にかけていた剣を抜く。革製のサヤに保護された西洋剣は日光に照らされてギラリと輝く。
「10秒で終わらせるよ」
「KAAAAAA」
挑発を理解したのかどうかわからないがアイアンクロウは雄叫びを上げて突進する。クチバシで獣人を串刺しにするつもりのようだ。しかし、その攻撃を獣人は軽やかに避けている。1ミリも掠りはしない。
「チェックメイト……」
獣人は呟くと地面が抉れるほどの力で飛び上がり、アイアンクロウの首目掛けて剣を振り落とす。
「Kyaaaa」
アイアンクロウはけたたましい声を上げて倒れた。それを聞きつけたのか次々と他のアイアンクロウが獣人のもとへ飛んでくる。
「何体来たって変わらないよ」
一見絶望的に見える状況だが獣人は余裕そうだった。次々とアイアンクロウを切り伏せていく。3分も経たないうちにアイアンクロウは死に絶えていた。獣人は一息つく。そんな暇はなかった。次のときには30mくらいのカラスが獣人のもとに飛来する。
「君が……あの子たちの親玉みたいだね」
そのカラスの名前は
「少し大きすぎるかな」
獣人は剣を構える。さっきのアイアンクロウのようにはいかないだろう。
「GAAAAAA」
突っ込んできたクチバシをかろうじて剣で弾く。凄まじい力だ、吹き飛ばされてしまう。
「ぐっ」
獣人は地面に激突する。受け身は取れたものの体に走る衝撃はまぬがれなかった。
「GYYYY」
アイアンレイブンはすかさず攻撃をする。獣人はすんでのところで避ける。まさに瀬戸際といったところだ。
「ちょっとマズいかも」
次の攻撃が来たら避けられる気がしない。つまり、今決めるしかない。獣人は決心して肉薄する。アイアンレイブンの首元に潜り込み、のどぼとけがある場所に剣を突き刺す。
「Gyaaaaa」
アイアンレイブンは苦しみの叫びを漏らして絶命した。
「はあ、疲れた……」
アイアンレイブンとアイアンクロウの死骸を見ながら獣人は呟く。日はとっくに暮れていた。カズミが寂しい思いをしているに違いない。早く帰らねばいけない。
「しばらく鶏肉に困ることは無さそうだね」
帰る前に獣人はアイアンレイブンを解体する。カラスといえどその肉は食べられる。獣人は自分が持てる分の肉を切り出すと帰路についた。帰りを待つカズミの姿に思いを馳せながら。