転生したら前世の妻が追いかけてきた 作:you are not
「ねぇあなた?酷いと思わない」
銀色の長髪をたなびかせて女性は俺に語り掛ける。
「私はずっっと苦しんできたのに、あなたとやっと再会できたのに……周りがそれを許さないなんてふざけるのも大概にしてほしいわ」
唇をかみしめて俺に語り掛ける白銀の魔女……モルグナは怒りと悲しみとを混ぜ合わせた感情をあらわにする。その背後には武装した騎士たちが馬に乗って白い水平線を切り裂くように押し寄せてきていた。間違いなく、俺を救助するためにここまできたのだろう。
「あら、ここが魔女の領地だと知っての狼藉?」
モルグナの声に応じて騎兵隊の中から一人の女性が降りてくる。魔王と戦う時に共に戦った騎士アテナだ。
「無論だ。魔女モルガナ大人しく勇者アレスを返してもらおうか」
「……」
モリガナが沈黙する。これは呆れているのだろう彼女は昔から怒りが頂点を超えると怒鳴ることを諦めて冷笑の目を向けるのだ。
「はぁ……返す?誰が?私が?なぜ?そもそもアレスは貴方達の物じゃない」
「だが、貴様のものでもない」
「えぇ、そうね。アレスは誰のものでもない。そもそも人は誰かの所有物じゃない」
俺は少しだけ安堵する。彼女は変わっていない。魔女と蔑まれようと人並の善性と常識をもっている優しい彼女のままだ。そんな彼女だから俺は一緒にいようと思えたのだと思い出した。
「だったらなぜ!?」
噛みついてくるアテナにきっぱりと淡々と事実を告げるようにモルガナは宣言する。
「夫が苦しんでいるのを助けない妻はいないでしょう?」
「はぁ??」
今度はアテナが困惑と怒りを露わにする。今にも剣を抜いて切りかかってきそうである。
「妻?妻だと?この魔女寒さと芋の食いすぎで頭がいかれてしまったのか?なぁアレス?」
「…………」
どうしようか。正直いってアテナもモルガナも言い分だけなら間違っていない。ただ複雑な事情が重なってしまってこうなってしまっているのだ。……難しく考えるなアレス。元々俺は頭がいい方ではない。だったら納得のいく行動をする。人生を何度やり直したってそれが俺の行動基準だった。なら、今回もそれに従おう。
「ア、アレス?嘘だよな?婚約者は私のはずだこんな魔女のはず……」
「モルガナの言ってることも嘘じゃないよ実際妻だったし……」
正確には俺が勇者ではなかったころ、前世とでもいえばいいのか?であれば嘘偽りなく俺とモルガナは夫婦だったし、一人娘含め三人でこの魔女の雪原で暮らしてた。だからモルガナの発言を否定したくはない。
「まったく恋人気取りで偉そうに、うちの人に恋したくなる気持ちはわかるけど相手を選びなさい」
アテナはわなわなと震えはじめた。どうでる?正直どんな行動に出るか予想がつかん。婚約の話だって国王が決めたことだし、第一俺は了承の返事も何もしてない。いや、断れることじゃないんだけど
「この浮気者がぁぁぁ!」
「こっちのセリフよ!泥棒猫!」
アテナが抜刀と同時に斬りかかり、モルガナが魔法で作った盾でそれを受け流す。それが合図として二人の決闘は火ぶたを切って落とされてしまった。二人が撃ち会う光景を他所に俺はなんでこうなってしまったのかを思い出す。