転生したら前世の妻が追いかけてきた 作:you are not
その後、泣き崩れているアテナを騎士団の人間たちが回収し連れ帰ることになった。泣き止んだアテナを回りは心配するがただ一言
「気にするな」
それきりアテナは口を閉ざし何もしゃべらなくなったそうだ。少し良心がいたまなくはないがモルガナに攻撃したから妥当な結果だろう。
「やっと、邪魔者が消えたわねアレス」
モルガナは安堵したかのように俺に抱き着いてくる。背中の筋肉が締め付けられるが心地よさだけが胸に広がる。俺も負けじとモルガナの背中に手を伸ばして怪我をさせない程度に抱きしめ返す。
あぁ、幸せだ。失った時間がほんの少しだけ戻ってきたのを感じる。この場所にずっといたい。これが俺の求めた場所だったんだ。もう失うものか。だからこそ……
「ごめんモルガナ。もう少しだけ待っててくれやらなきゃいけないことがあるんだ」
俺の言葉にモルガナは少し悲しそうな表情を浮かべる。
「……できるだけ早く終わらせてちょうだい。もう独りは嫌」
「大丈夫、帰ったらお祝いしよう。シロップとドライフルーツを使った甘いケーキを作るよ。好きだったでしょ確か?」
「えぇ、その時はリリスも一緒がいいわ。あの子もあなたのケーキが好きだったから」
先ほどまでの悲しい表情は消え、明日の遠足を待ちわびる子供のように待ちきれないといった期待の顔が浮かんでいた。そしてアレスは疲労が消えた体で再び王国へと向かっていく。
―――勇者と言う立場に決着をつけるために
―――☆―――☆―――
「いきなり失踪したかと思えば、今度は勇者をやめたいとな?しかも娘との婚約を取り下げる?」
ひげを蓄えた国王は疑念の声を上げる。
「申し上げた通りです、国王陛下。私は勇者の役を解いていただきたい所存でございます」
アレスは膝をついて慣れないながらも丁寧な言葉で王様に言葉を返す。
「しかしだな。婚約はともかくお主がいなければ王国の平穏は誰が守る」
「ご安心ください陛下。私がいなくとも王国には優秀な騎士がおります。現に私が不在の一月の間騎士たちは見事王国を守り切っているではありませんか」
「むぅぅ……」
アレスの言葉はもっともだった。魔王が倒された当初は王国の戦力は疲弊しており、兵士たちはまともに機能しなかったが今は違う。勇者が鍛えた兵士や勇者の仲間たちだけでも王国の戦力として十分な戦力となっている。
「ですので、私は隠居したいのです。もう
言い切る前にアレスは近衛兵たちに囲まれていた。
「ならぬ、神の聖剣を返したとはいえお主は我が国の切り札そのものだ。お主の一存で決められぬことではない」
その言葉にアレスは大きなため息をつく。
「……王様。これは申し出じゃない
―――決定事項だ」
アレスは床を大きな音を立てて踏み鳴らす。その衝撃波で周りの兵士全てが痙攣しながら地面に膝をついて動けなくなってしまった。
「ば、馬鹿な!?勇者とまともに打ち合えていた精鋭達がこうもあったりと……」
確かにモルガナと再会する前の勇者であれば苦戦を強いられる相手だっただろう。だが、自身の
「ア……レス」
「アテナ……」
それでもまともに立っていたのはアテナだけだった。
「愛していた。お前を勇者としてだったかもしれないがそれでもお前のことが好きだったんだ」
アテナは震える国王を他所にアレスに対して告白をする。それはけじめをつけるようでどこか自暴自棄になったようにも見えた。
「俺は俺である限り何度だって同じ人を好きになるよ」
「そうか……すまんな。余計なことを言った。どこへでも行くが良い」
その言葉を最後にアレスは城を出て行った。アレスの姿が消えたことを確認するとアテナも何処かへ消えてしまう。
「アテナさん……」
リリスは一部始終を見た後、アテナが城の中庭で泣いているのを見つけた。
「リリスか……」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、アレスに思いを伝えたんだがな……振られてしまった」
アテナはとぼとぼとした足取りでぽすんとリリスの母親譲りの豊満な胸に頭を預ける。
「‥…いいんですよアテナさん。今だけは私に甘えてください。友達として黙ってあげます」
「助かる……うっ、くぅ、ひっぐ―――」
彼女の悲涙は親友であるリリス以外の他の誰にも聞かれることもなくただ世界の片隅で孤独に響いていた。
―――願わくば次こそは彼女の恋が実りますように
リリスは親友の背を撫でながらそう願った。