転生したら前世の妻が追いかけてきた   作:you are not

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転生したら前世の妻が追いかけてきた

 俺は王都を歩いていく、もうこの街並みを次眺められるのはいつになるかわからないだろうからだ。

 

「そうだ。帰りに買い物していかなきゃ」

 

家に帰ったらお祝いをするのだと言ったからには材料を今のうちに買っておこう。それに、用意しておきたいものもある。お祝いと言えばサプライズがあってもいいものだ。

 

 

 

「あ、あのアレス…さん!」

 

声をかけられ俺は振り返る。その声にはどうしようもなく聞き覚えがあった。

 

「リリス」

 

前世、いや、俺の娘リリスがそこにいた。

 

「あの、お父さん?……でいいんですか」

 

「そうだよ。今まで黙っててごめんね」

 

俺は両手を広げる。

 

「言ってくださいよ!今まで寂しかったんです!」

 

リリスは俺の胸に飛び込んできた。勇者として感情を封じられていた時は何とも感じなかったけれどこんなにも背が伸びて父親としての成長を感じられた。それがまた嬉しかった。

 

「大きくなったねリリス。俺が帰ってきたお祝いをするから明日帰っておいで」

 

「……わかりました。有給使って帰ってきます。またパパのケーキ食べたいです」

 

「うん、食べきれないくらい作ってあげるよ」

 

リリスの背中をさすりながら俺はそう答える。

 

「あぁ、そうだ。アポロと仲良くね。うちに挨拶しに来るの待ってるから」

 

「は、はぁぁ、パパ!何を言ってるんですか!誰があんな奴ととと」

 

これは道のりは長そうだ。孫の顔を見れるのはいつになることやら……

 

 

 

 

―――☆―――☆―――

 

 

 

 

「お帰りなさい早かったわねあなた」

 

雪原に戻り、家のドアを開けるとモルガンが出迎えてくれた。

 

「うん、案外すぐに終わったよ」

 

「帰って来るのね私達の日々が、幸せが」

 

モルガナはまだ噛みしめるように問いかける。

 

「勿論。明日にはリリスが帰って来るからパーティーの準備をしよう」

 

「えぇ、飛び切り豪華な料理を作るわよ」

 

幸せな日常が帰ってきたことにモルガナは笑顔を見せるがふと、何かに気づいたような顔をする。今、こうして幸せが戻ってきただが、いつまで続くのだろうか?アレスは人間のままだ。百年ぽっちしか生きられない。あと四百年余りをどう生きればいいのだろう?アレスが死んだ後私はまたあの孤独と死ぬまで向き合わなければいけないのか?

 

「モルガナ?」

 

声をかけられ意識を現実に戻す。

 

「何でもないわ。ちょっと考え事」

 

「…………」

 

 

 

そして祝いの日がきた。

 

「ただいまです!」

 

リリスが扉を開け浮かれた様子で入って来る。

 

「あっ、ども。アポロです」

 

「おぉ、いらっしゃい二人とも準備できてるよ」

 

どうやらアポロも誘われたようである。

 

「家族の集まりにようこそ。アポロくんでいいのかしら?リリスのことよろしくね」

 

「はい。お母さんリリスちゃんにお世話になってます」

 

「ちょっとお母さん!あんたも律儀に挨拶しなくてもいいわよ今日は無礼講なんだから」

 

賑やかなパーティーになりそうだ。

 

 

 

酒や料理を持った食事は予想以上に楽しいものとなった。アポロの曲芸で場を賑やかにしたり、モルガナがリリスにアポロとは式をするのかと聞いてきたりなどいろいろあった。そして夜が更けりはじめリリスとアポロは酔いつぶれたところを同じベットに寝かせることにした。

 

「パーティーもお開きだね」

 

「あんなにあったのに四人で食べきっちゃったわね」

 

「……モルガナに渡したいものがあるんだ」

 

そう言ってアレスは小包を開けて中から花束を渡す。

 

「これって……」

 

「ずいぶん昔だけど子供の頃教えてくれたよねバラの花言葉」

 

アレスの手にはバラが三十三本握られていた。かつてモルガナに結婚を申し出た時は十二本のバラで花言葉は「私の妻になってください」だった。だが、三十三本のバラの意味は

 

 

 

―――「生まれ変わってもあなたを愛す」

 

 

 

それはある意味再婚の申し出であった。いや、それどころではない。モルガナが何百年も生きることを知り子の花束を贈ったのだ。つまりは何度でも君に会いに行くという意思表示でもあった。

 

「受け取ってくれるかい?」

 

「もちろんよ、死んでも帰って来てね」

 

「君と共に死ぬ日まで何度でも」

 

二つの影は一つとなりそして交わった。関係あるかわからないが後日リリスの弟ができたのは別の話。

 

 

 

 

―――☆―――☆―――

 

 

 

 

「アレス。迎えに来たわよ」

 

とある農村で銀色の女性が一人の少年に声をかける。少年は年に見合わない理知的な声で

 

「まだ俺六歳なんだけど」

 

と答える。

 

「だって、待ちきれないんだもの」

 

「まったく我儘な妻だ」

 

そう言って少年は魔女と共に出て行ってしまった。人々はこれ以降魔女の神隠しと呼び、子供が連れ去られないようにした。しかしそのどれもが失敗したらしい。ある時、魔女に連れ去られた少年になぜ魔女から逃げないのかと聞いた旅人がいた。すると―――

 

 

 

―――転生したら前世の妻が追いかけてきたから

 

 

 

と答えたそうだ。旅人は全く理解できなかったそうだ。

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