転生したら前世の妻が追いかけてきた 作:you are not
生まれつき私モルガナはひとりぼっちだった。親はいない生まれてすぐに私を捨てたから、確か忌み子だったからだそうだ。恨みはなかった。顔も名前も知らない他人なのだから恨みつらみどころか興味もなかった。
家族と言える存在といえば、私を育ててくれた動物たちと知恵を与えてくれた精霊たちくらいだろう。生まれつき魔法が使える私は動物や実体のない精神だけの存在精霊と意思疎通を取ることができるらしい。だから、赤子の頃は羊や牛が乳を与えてくれて、言葉や知識、常識などを精霊たちが教師代わりになる。そんな人生を送っていた。周りに人はいなかった。
私の力でみんな死んでしまうから
生みの親が私を捨てたのはそれが理由なのだろう。最初に知ったのは五歳のころだ。住んでいる森の近くに集落があることを知った私は愚かにも森を出て村の中に入り込んでしまった。畑で遊んでいる同年代の子供たちを見つけ勇気を出して声をかけ遊びに混ざった時にそれは起きた。子供たちが次々と凍えだして冷たくなってしまったのだ。あの時の子供たちの悲鳴は今でも脳裏に焼き付いている。
大人たちはありえんばかりの憎悪と恐れをぶつけてきた。ある者は石を投げ、ある者は罵詈雑言でののしってきた。私はわけもわからぬまま森に帰るしかできなかった。後から精霊たちに聞いた話だが生まれつき特殊な魔力を持った女性は周りにいる普通の人たちをその力で殺してしまう。そうゆう存在を魔女と呼ぶのだろうだ
こんなことなら人と関わらなければよかった。人と関わる温もりを知らなければ、こんなに孤独に苦しむこともなかった……その時私は自分の体を呪った。
転機が訪れたのは私が十歳になったころだ。その時の私は熊に追いかけられ崖から転落して身動きが取れない状態になっていた。
「うぅ……これだから肉食動物は……」
私の魔法でも肉食動物と仲良くすることはできず、一晩中川のほとりで足の痛みに苦しみながら魔法で傷を治していた。
「お腹空いた……」
が、昨晩から何も食べていないこともあって空腹と魔力不足になり何もできなくなってしまった。死を直感した時、あの人は現れた。
「君、大丈夫?」
自分の物ではない声に釣られ顔だけ声の方に向くと、同じくらいの年齢の少年が立っていた。
「大丈夫よ、だから近づかないで……」
私は動かない足ながらも後ずさる。だって、近づけばあの少年は死んでしまう。また誰かが死ぬのはいやだ。見たくなかった。
「だって、足怪我してるじゃないか。ほっとけないよ」
あぁ、それが優しさというものなのだろう。だけど、私はその優しさに甘えていい存在じゃない。だから、ほっといて欲しい。
「ほら、足見せて包帯巻いてあげる」
私の願いは通らず、少年は私を抱え川のほとりから河原の方へ移動し座らせた。
「待って、そのくらいなら魔法で直せるわ」
「えっ、魔法使えるの?使える人初めて見た」
「でも、今はちょっと……」
―――きゅるるるる
空腹音と共に私は顔を真っ赤にしてお腹を押さえた。
「お腹減ってるんでしょ?俺のお昼半分あげるよ」
その様子に少年は笑いながら食べ物を差し出してくれた。
「あ、ありがとう」
慣れないながらもお礼を口にして私は差し出されたサンドイッチを口にする。素材も作り方もたぶん普通だったのだろうけど、それでも―――
「おいしい」
「よかった」
そこで私ははっとする。そうだ早く離れなければ、親切にしてくれた恩を仇で返すことになってしまう。
「なんで離れるの?」
「だって、そうしないとあなたが死んでしまう」
急いで足の折れた骨や筋肉を魔法で元通りにして彼からある程度距離を取る。
「そうなの?」
「いままで私の近くにいた人は凍えて死んでいったわ。サンドイッチご馳走様」
楽しい時間はもう終わり、今日のことはつかの間の夢だったことにしてなかったことにしよう。そう思っていた矢先、手を掴まれた。
「待って折角仲良くなれたのにもうお別れなんて寂しいよ」
「放して。言ったでしょあなたと一緒にいたくないの」
「でも、寂しそうだよ」
「えっ……」
彼の瞳に私が写っていた。写っているのは泣きそうな顔をした子供だった。
「ねぇ、名前を教えてよもっと君のこと知りたい」
「……モルガナ」
なぜ彼がまだ死んでいないのか。なぜ彼の笑顔に心がざわつくのか。この暖かい気持ちがなんなのか。答えが出ぬままに私は名乗っていた。彼と同じく私も彼のことを知りたいと強く思うようになっていた。
「よろしくねモルガナ!俺はアレス!」
それが後の夫となるアレスとの出会いだった。