転生したら前世の妻が追いかけてきた 作:you are not
「こんなにも人がいるなんて酔いそうね」
とある王国の市場の真ん中で魔法使いのように三角帽子とローブを着ている一人の女性がいた。絶世の美女と言ってもい程美しく周りの目を大きく引いていた。モルガナ本人である。
「何やら騒がしいわね?何かあるのかしら?」
モルガナは辺りを見渡しながら怪訝な顔をする。自身の性質上、人前に出るというのがあまりなかったからだ。
「そこの綺麗なお姉さん!俺らと遊ばなーい?」
ナンパしてきたチャラチャラしている男がおろかにもモルガナに話しかけてきた。
「私、人を探してるからやめておくわ」
「いやいや、そんな水臭いこと言わないでさ……」
控えめな言葉で断り立ち去ろうとするモルガナだったがナンパしてきた男は酔っぱらっていたのか相手の嫌悪した表情すらくみ取れずしつこく話しかけてくる。
「よければ人探し俺も手伝うよ」
「あらそう、だったら勇者?の居場所しらないかしら?」
「勇者様?だったら今頃パレード見ながら姫様とデートしてるんじゃない?」
「あ゛?」
デート……デート?逢引き?アレスが、誰と?私以外の女とそんなわけがない。アレスは私を愛してくれている。いや、もしかしたら長い年月で私のことを忘れて新しい人生、新しい女を選んだのかもしれない……もしそうだったら嫉妬で狂い死にそうだがアレスは幸せなのかもしれない。そうだったら私は私は……
「お姉さん?どしたん話聞こか?」
「この目で見るまで納得できない!」
モルガナは納得のいっていない顔で広場まで言って直接自分の目で確かめることにした。ついでにナンパして男は突き飛ばされ馬糞まみれになったのは別の話。
モルガナは速足で道を走っていた。これでもほうきに乗って飛行しないだけまだ常識的な動きだっただろう。モルガナは王国の土地勘はなかったがアレスの魔力の痕跡は濃くしっかりと記憶しており、その痕跡を追って進んでいた。まるで重力に従って林檎が落ちるように自然と確かな足取りでモルガナは歩を進めていた。
(だんだんアレスの痕跡が濃くなってきた近い!)
人混みをかき分けモルガナはパレードのフロート車越しにアレスの姿を見つけることが出来た。
「アレ――」
愛する夫の名前を言いきることは出来なかった。アレスの隣には知らない女がいたからだ。その瞬間、モルガナは抑えきれない激情が全身を光より早く駆け巡った。
――――ふざけるな
その場所はお前のものじゃない私の場所だ。アレスが私の為に用意してくれた場所だ。お前のような奴がやすやすと堂々と奪っていい場所じゃない!アレスが望むなら許せた。大人しくこの身を引こうと思えた。だがどうだ?アレスのあんなやつれた顔を苦悩した顔を私は知らない!見たこともない!気づかないのかアレスの心の叫びを疲れを!デートなんかよりまずアレスの体調を気に掛けるべきだろうが自分の幸せしか考えていないのかあの愚図!
やがてモルガナはくるりと身をひるがえしてその場を立ち去った。今怒りを抱えていても仕方ない。まず必要なのはアレスの確保。あんな状態見れられない。早急に連れ帰らねばとモルガナはアレスの後を追う。
――☆―――☆―――
「さっき一緒に歩いてた子誰かしら?恋人なわけないわよね?」
アレスの後を追って宿の部屋に入り、挨拶もそこそこにモルガナは不満をぶつける。
「え、それは……」
「ねぇ、何で目を逸らすの?妻である私に言えないようなこと?」
アレスが言い淀むと同時に畳み掛けるようにモルガナはアレスに近づきながら圧を飛ばす。
「別の人を選んでもいいのよ。ただそれなら言って欲しかった……」
互いの手が届くまで近づいた時、モルガナはアレスの頬に手を添える。
「酷い顔」
本音を終わず口にしてしまうほど本当にひどい顔だった。目が充血しており、その下は酷いくまが出来ていた。血色や肌荒れもひどいものだった。なぜこれで周りは放っておくのか理解できなかった。
「どう見たって今のあなたは幸せじゃないし、あんな女があなたの隣にいるなんて耐えられない。だから
―――思い出させてあげる。あなたの隣が相応しいのは誰か」
その言葉と同時にモルガナはアレスと唇を合わせた。
「ん、ぁ……」
簡単な挨拶のようなキスではない。唾液を潤滑油として舌を絡ませ合い、舐め回し、互いの体液を交換し合う互いの愛を確かめう深いキス。ディープキスだ。
「んん、モルガナ……」
「あぁ、アレス愛してるわ」
モルガナは久しぶりのアレスとのキスは暖かかく心地いいと思いながら顔を離すと唾液で出来た透明な橋が光に当てられ輝いて消えていった。
「そして教えてあげる。あなたを幸せにできるのは誰か」
続けざまにアレスの右手を掴み、薬指を口の中に入れる。
―――ガリッ
歯が肉に食い込む音を奏でながらアレスの薬指の根本には歯形ができた。まるで指輪のような跡が。
「ほら、あなた。私だけがっついてるみたいで恥ずかしいわ」
そう言ってモルガナは自分の右手を差し出す。アレスはわけもわからぬままモルガナにされたように薬指の付け根を噛む。嚙み千切らないようにそっと優しくされどはっきりとした強さで。
「うふふふ、今はこれで我慢してあげる。帰りましょう?私達の家へ」
その言葉を最後にアレスの意識は暗転していった。