TS美少女魔法剣士は顔がいいだけで生きやすい説   作:ほうき星

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4話

 ギルドの扉を押し開けると、賑やかなざわめきが耳に飛び込んできた。

 

 昼を過ぎたばかりのこの時間帯は、依頼を終えて戻ってきた冒険者たちや、これから出発する者で賑わっている。

 カウンター前には人だかりができ、酒を片手に談笑している者もいる。

 

(……ふむ。なんか、さっきより視線を感じるな)

 

 俺がギルドに入った瞬間、ちらほらと視線がこちらへ向けられた。

 さっき来たときは、ほとんど誰も気に留めなかったのに──。

 

(装備を整えたせいか?)

 

 いや、それだけじゃない。

 視線には興味だけじゃなく、何か別のニュアンスも混ざっている気がする。

 そんな俺の考えを裏付けるように、近くのテーブルで酒を煽っていた男たちが、小声で何かを話していた。

 

「へぇ……あの嬢ちゃん、ちゃんとした格好になったな」

「おいおい、そりゃそうだろ。あのままじゃ危ねぇし」

 

「まあな……けどよ、装備が整ったところで、所詮はひとりだぜ?」

 

「……まあ、そういうこったな」

 

 その一言に、テーブルの男たちは含みのある笑いを漏らした。

 

(……)

 

 直接どうこう言われたわけじゃない。

 でも、確実に「そういう話」をしている雰囲気だった。

 

(なるほど……この世界の“現実”ってやつか)

 

 これまでも、美少女であることで好意的な扱いを受けることが多かった。

 でも、それは“親切な人”ばかりだったからであって──。

 

(親切じゃない奴に目をつけられたら……)

 

 思わず、腰に下げた剣の感触を確かめる。

 ……装備を整えたのは正解だったかもしれない。

 

(……ま、気にしても仕方ないな)

 

 俺は軽く息を吐き、カウンターへ向かった。

 受付嬢と目が合うと、彼女はすぐに柔らかく微笑んで手を振ってくれた。

 

「シーラさん、おかえりなさいませ」

「よかった。覚えてくれてた」

「ふふっ、こんな目立つ方を忘れるわけないですよ」

「うぐっ……それはもう、はい……気をつけます」

「いえいえ、目立つことは悪いことじゃありませんよ?」

 

 受付嬢はにこやかに笑いながら、手元の書類をめくる。

 

「それでは早速、依頼をお探しですね?」

「はい! えっと、簡単なやつありますか……?」

「もちろんですよ♪ シーラ様は現在Fランクですので、そこまで危険のある依頼はご紹介できませんが──」

 

 受付嬢が手際よく書類を取り出し、俺の前に並べた。

 

「こちらの4件が本日受けられる依頼です」

 

 

 俺は提示された依頼を順番に眺める。

 

「まずは薬草採取の依頼ですね。

 街の近郊で採取できる薬草を指定の量だけ持ち帰っていただく内容です。

 報酬は100シルバー(S)になります」

 

「ふむふむ……」

 

「次はゴブリン3体の討伐依頼。

 森の外れで出没するゴブリンを退治していただきます。

 戦闘が想定されるため、報酬は100ゴールド(G)となっています」

 

「ゴブリンかぁ……」

 

「お次は下水掃除の依頼です。

 街の下水道に溜まった汚泥を除去する作業となります。

 報酬は150シルバー(S)ですが、労力を考えると少々大変かもしれません」

 

「うげっ、掃除系かぁ……」

 

「最後に馬車の護衛依頼です。

 街から隣町までの道中、馬車を護衛していただきます。

 ランクFでも受けられますが、万が一の危険を考慮し、報酬は500ゴールド(G)となっています」

 

「おぉ、なんか冒険者っぽい!」

 

 思わず声を上げると、受付嬢がくすっと笑う。

 

「やっぱり護衛任務は冒険者らしいですよね♪ とはいえ、初仕事としては少し難易度が高いかもしれません」

「うーん……そうですね……」

 

 俺は少し考えたあと、薬草採取の依頼を指差した。

 

「やっぱり、これかな」

「薬草採取ですね! かしこまりました」

 

 受付嬢はスムーズに書類を処理しながら、俺に説明を続ける。

 

「採取場所は街の北側に広がる草原地帯です。

 指定の薬草の写真と、見分け方が書かれた資料をお渡ししますね♪」

 

「おお、これは分かりやすい……」

「本日は天気も良いので、絶好の採取日和ですよ」

「確かに、良い感じの初仕事になりそうです」

 

 俺が意気込むと、受付嬢はニコッと笑って言った。

 

「シーラさんなら、きっと大丈夫ですよ。がんばってくださいね♪」

 

 資料を手渡された俺は、それをしっかりと受け取り──

 

「よし! 初仕事、行ってきます!」

 

 勢いよく宣言し、ギルドをあとにした。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 街を出るためには、当然門を通る必要がある。

 今度は「入る側」ではなく「出る側」だ。

 

 ギルドの証明書を提示すると、門番が軽く頷いた。

 簡単な手続きで済むのがありがたい。

 やっぱり、身分があるって便利だな……。

 

「ふっ、どうやらマトモな格好にはなったな」

 

 そう声をかけてきたのは、街に入るとき対応してくれた親切な兵士だった。

 少しだけ表情が柔らかくなっている。

 

「ありがとうございます。助かりました」

「さっそく依頼か?」

「はい、何をするにしても、お金は必要になりますので」

 

 言いながら空を見上げる。

 陽はまだ高いが、時刻的にそろそろ夕方に差し掛かるころだ。

 

(……今日泊まる宿代ぐらいは工面しておきたいな)

 

 簡単な薬草採取の依頼だと説明すると、兵士は軽く頷いた。

 

「……記憶喪失らしいが、何か思い出したかい?」

「いえ、全然。でも……少しは分かりました」

 

 俺はギルドでの出来事をかいつまんで伝える。

 魔法が3属性使えること。

 剣を使い慣れている感覚があること──。

 

「……身体が覚えてるってやつかい? 何にしても、お嬢ちゃんは元から冒険者だったのかもな」

「そう思いましたが……ギルドの方で『シーラ』という冒険者はいなかったそうで」

 

 やっぱり俺は今登録したばかりの新人らしい。

 なぜ全裸で、負傷した状態で倒れていたのかも分からない。

 でも──。

 

(分からなくても、やれることをやるだけだ)

 

「それじゃあ、頑張れよ」

 

 依頼の採取場所は、街の北側に広がる草原地帯 。

 地図にも載っているし、迷う心配はないだろう。

 

 カバンから薬草の写真と特徴が書かれた紙を取り出し、確認する。

 

(ふむ……これか)

 

 探し始めて数分。

 想像していたよりもすんなり見つかった。

 

(異世界だから、もっと変な形をしてるかと思ったけど……意外と普通だな)

 

 草の茂みからぶちぶちと薬草を摘み取っていく。

 特に難しいことはなく、単純作業だ。

 

(地味だけど、こういう仕事も大事なんだろうな)

 

 そう思いながら、黙々と採取を続ける。

 

 ……と、そのときだった。

 

 ガサガサッ──。

 

「?」

 

 草むらが不自然に揺れた。

 

(野ウサギ……か?)

 

 小動物なら、特に気にする必要はない。

 そう思い、何気なく近づくと──。

 

「……カバン?」

 

 地面に年季の入ったカバンが落ちていた。

 

(誰かの落とし物か?)

 

 俺がカバンに気を取られた、まさにその瞬間──。

 

「ギャギャギャーッ!!」

 

 突如、不快な鳴き声とともに飛び出してきたのは──。

 

 ゴブリン。

 

 緑色の体、醜い顔、ギラついた小さな目──。

 現れたのは棍棒を持ったゴブリンだった。

 

「なっ……!? ゴブリン!?」

 

(完全に油断してた!!)

 

 反応が一瞬遅れる。

 その隙にゴブリンの棍棒が振り下ろされる──! 

 

「くっ……!」

 

 俺は肩に下げていた剣を鞘ごと持ち上げ、防御の態勢を取った。

 

 ガツンッ!! 

 

 衝撃が直接腕に響く 。

 華奢な身体では完全には受け止めきれず、後方へ吹き飛ばされた。

 

「ぐっ……!」

 

 腕がビリビリと痺れる。

 

(……マズい!!)

 

 さらに、茂みの奥から追加で2体のゴブリンが姿を現す。

 合計3体。

 

(……くそっ、囮だったのか!?)

 

 冷や汗が滲む。

 ゴブリンはRPGで言うところの雑魚だ。

 でも──これはゲームじゃない。

 

(攻撃を受けた腕の感触が、めちゃくちゃリアル……)

 

 逃げるか、戦うか──。

 

 答えはすぐに出た。

 

「……やるしかない、か!」

 

 剣を抜く。

 

 それを合図に、ゴブリンたちが一斉に襲いかかってきた。

 

 1体が棍棒を振りかぶって突進してくる。

 俺は身を翻して回避し、即座に剣を振るう──! 

 

 スパッ──! 

 

(浅い……!)

 

 胸を浅く切り裂く 。

 緑の血が噴き出し、ゴブリンが甲高い悲鳴を上げる。

 

「ギャァァァ!!」

 

 仲間の悲鳴に反応するように、残り2体のゴブリンが一気に飛びかかってくる! 

 

(来る!!)

 

 振り下ろされる棍棒を剣で受け流し、反撃──! 

 

「はぁっ!!」

 

 刃が首筋を断ち切る。

 

 ゴブリンの頭部が宙を舞い、地面へと転がった。

 

(……いける!!)

 

 だが、まだ1体残っている──! 

 

 そのゴブリンの背後で、何かがキラリと光った。

 

(……矢!?)

 

 向かってきたゴブリンの死角から、弓を引くもう1体の姿が見えた。

 

 ヒュッ──! 

 

「──ッ!」

 

 本能的に左手を前に出す。

 

 直後──矢を白刃取りのように掴んだ。

 

(なんで、掴めるんだよ! ──でも、助かった!)

 

 だが、その瞬間最後のゴブリンが俺に飛びかかる──! 

 

「ッ──!」

 

 飛びかかってきたゴブリンが、俺の右腕を狙って棍棒を振り下ろしてくる──! 

 

「っ……!」

 

 剣で受けようとした──が、間に合わない。

 

 ゴスッ! 

 

「くっ──!」

 

 強烈な衝撃が右腕を直撃 。

 

 激痛とともに、腕が痺れる。

 

(──まずい、受け損ねた!)

 

 力が抜け、剣が手から滑り落ちる。

 

(剣が──!)

 

「っ……離せ!!」

 

 俺は矢を握ったまま、飛びかかってきたゴブリンのこめかみに思いきり突き刺した! 

 

 グシャッ──! 

 

「ギャッ──!?」

 

 ゴブリンの目が驚愕に見開かれる。

 次の瞬間、全身の力が抜けて崩れ落ちた。

 

(……倒したか……!)

 

 荒い呼吸をしながら、ぐったりとしたゴブリンの死体を押しのける。

 痛む右腕を庇いながら、ゆっくりと立ち上がる──。

 

(……あと、一匹……!)

 

 弓を持った最後のゴブリンは、明らかに怯えている。

 それでも震えながら、次の矢を番えようとしていた。

 

「……逃げない、か」

 

 ──なら。

 

「“凍える風よ、すべてを静寂へと導け”」

 

 左手を突き出し、静かに詠唱する。

 

 瞬間──周囲の温度が一気に下がった。

 

 ゴブリンの足元から氷が這い上がる。

 

「ギャ!? ギャギャッ!!」

 

 必死にもがくが──逃げられない。

 数秒もせずに、ゴブリンは完全に凍りついた。

 

(……終わった、か)

 

 俺はゆっくりと息を吐く。

 

 剣を拾い、凍ったゴブリンを見下ろし……。

 容赦なくそれを振り下ろす。

 呆気なく、その氷の彫刻は粉砕され無造作に転がる。

 震える手を見て──ようやく、全身に力が抜けるのを感じた。

 

 戦闘の恐怖。

 そして、その直後に訪れる高揚感。

 

(……俺、戦えてる)

 

 俺は今、この身体でちゃんと戦えている──! 

 

 心臓がドクン、ドクンと脈打つ。

 手のひらがじんわりと汗ばむ。

 

 だが、そこで右腕の激痛がぶり返した。

 

「……いってぇ……」

 

 見れば、棍棒を受けた腕が赤く腫れあがっている。

 直撃は避けられなかったとはいえ骨まではいってなさそうだ。

 それでも痛みは激しい。

 

(くそ、ちゃんと避けるべきだったな……)

 

 魔法で応急処置できるかもしれないが、俺の魔法属性は炎・雷・氷。

 回復魔法の類は使えそうにない。

 

(ギルドに戻ったら、治療してもらうか……)

 

 俺は剣を肩から下げ、落ちていたカバンを拾い上げる。

 

 ──このカバンの持ち主はゴブリンに襲われた犠牲者だろうか? 

 

(……遺品、かもしれないな)

 

 俺は落とし物と薬草を回収し、街へと向かうことにした。

 

 気がつけば、夕陽が西の空を朱に染め始めていた。

 

 右腕はじんじんと痛むが、動かせないほどではない。

 歩くたびに心臓の鼓動がゆっくりと落ち着いていく。

 

(初めての戦闘、か……)

 

 考えてみれば、ここに転生して初めて“命のやり取り”をした。

 

(……でも、思ったより冷静にやれてた気がするな)

 

 戦うことに恐怖はあった。

 でも動けなくなるほどではなかった。

 

 剣を握った瞬間、自然と身体が動いた。

 

(やっぱり、俺は……記憶を失う前にも戦ってたんだろうか)

 

 そんなことを考えながら、ゆっくりと街へ戻っていった──。

 

 

 

 街へと戻ると、門の前で見張っていた兵士──門番の彼が、俺の姿を確認した途端に慌てて駆け寄ってきた。

 

「おいおい、なにがあった!?」

「薬草を採取していたら、ゴブリンに遭遇してしまって……」

「──ゴブリンだと!?」

 

 門番の顔が一瞬にして険しくなる。

 同時に、すぐ近くにいた別の兵士へと鋭く目配せを送った。

 何かを伝えたのか、そいつは慌てた様子で門を出ていく。

 

「……しかし、こんな街の近場に魔物が出るなんてことは滅多にないんだ」

「そうなんですか? じゃあ、運が悪かったのかな……いててっ」

 

 無意識に右腕を庇うように押さえる。

 

「……怪我してるのか?」

 

「はい。避けきれなくて……」

 

 門番は俺の腕をじっと見つめた。

 

「折れてるのか?」

「いえ、大丈夫です。腫れてはいますが、骨は平気そうで……」

「──表情が全然大丈夫そうじゃねぇな」

 

 そう言うが早いか、門番は俺の肩を支えるように掴みそのままズンズンと街の中へと連れて行った。

 

「えっ、ちょ、どこ行くんです?」

「決まってるだろ。ギルドで治療を受けろ!」

 

(あ、これは聞いてくれないやつだな)

 

 ギィィィ──ン!! 

 

 勢いよくギルドの扉が開け放たれた。

 俺と門番がドカドカと入っていく。

 

 当然ながら、視線が一気に集まる。

 

「すまない! 回復魔法を使える者はいないか!?」

 

 門番の大声に、ギルドのざわめきが一瞬で止まる。

 

「な、何事ですかっ!? ……シーラさん!?」

 

 カウンターの向こうで、受付嬢がぱっと目を見開く。

 

 彼女は驚いた様子で、門番に支えられている俺を見てすぐに何かを察した。

 

「どうして……! シーラさんは簡単な依頼のはずですが!」

「……ゴブリンに襲われたそうだ」

 

 その一言に、ギルド内がざわっと揺れた。

 

「ゴブリンが……!?」

 

「こんな街の近くに……?」

 

 冒険者たちがヒソヒソと話し合う。

 どうやら、本当にこの辺りで魔物が出るのは異常なことらしい。

 

(やっぱり、俺が最初に門で引っかかったのは街の治安がいい証拠だったんだな……)

 

 そんなことを考えていると、誰かが俺の腕をそっと取った。

 

「さあ、腕を見せて」

 

 そう言いながら俺の前に現れたのは、一人の美しい女性。

 

 金髪がやわらかく波打つ、涼しげな顔立ち。

 それでいて、どこか穏やかで落ち着いた雰囲気をまとっている。

 

 ゆったりとした品のある声。

 優しく響くトーンは、聞いているだけで安心感を覚えた。

 

(この人が治療してくれるのか……?)

 

 彼女はそっと俺の腕へ手を伸ばした。

 指先が触れた瞬間、思わずピクリと肩が跳ねる。

 

「……痛む?」

「いえ……ただ、少しびっくりしただけです」

「ふふ、大丈夫。すぐに楽になりますよ」

 

 そう言って、彼女はそっと微笑んだ。

 

 その表情があまりにも優しくて、思わず目を奪われる。

 

(……なんか、すごく落ち着くな)

 

 彼女はゆっくりと手のひらを俺の腕にかざし、静かに魔力を紡ぐ。

 

 ポワァァ……。

 

 温かい光が、ふんわりと腕を包み込む。

 

「……っ」

 

 じんわりと心地よいぬくもりが広がっていく。

 

(あれ……めっちゃ気持ちいい……?)

 

 光の粒がゆっくりと肌を滑るように流れ、ジンジンと疼いていた痛みがふわっと軽くなった。

 

「……どう?」

「すごい……本当に、痛みが引いてきました」

「よかった。もう少しだけ、じっとしていてくださいね」

 

 痛みが、ゆっくりと溶けていく。

 

「これでよし。骨は折れてないし、酷い怪我でもなかったから、すぐに治るわ」

「ありがとうございます……!」

 

 俺は心からの感謝を込めて頭を下げた。

 彼女は小さく微笑んで「気をつけてね」と優しく声をかけてくれた。

 

(……なんか、すごく癒された)

 

 

 

 ギルドの中は、さっきまでのざわめきが次第に落ち着き始めていた。

 門番の彼は、再び外へ。今度は魔物を警戒して見回るらしい。

 案外、魔物の対処って重要なんだな……なんて異世界人の俺が言ってみる。

 

 周囲の冒険者たちも、最初は「ゴブリンが出た!?」と騒いでいたが、今は各々、元の作業に戻っている。

 

 俺は回収した薬草と、そして遺品と思われるカバンを提出した。

 あとはギルドの方で調べて遺族へと返却されるらしい。

 

(……なんか、嵐が過ぎ去ったみたいだな)

 

 そんなふうに思っていると、受付嬢が小袋を俺の前に差し出した。

 

「……はい、確かに依頼分の薬草を受け取りました」

「……えっと。報酬が多いようですが?」

 

 小袋を受け取ると、想像以上にずっしりとした重みを感じる。

 袋の口を開けて中身を確認すると、思っていたよりも金貨が多い。

 受付嬢はにこりと微笑んだ。

 

「いえ、それは薬草採取の報酬と……ゴブリン討伐の報酬ですよ」

 

「……えっ?」

 

 思わず目を瞬かせる。

 

(ゴブリン討伐の……報酬?)

 

「でも、私……ゴブリン討伐の依頼は受けてませんよ?」

「ええ、でも倒したのはあなたですよね?」

「……あっ」

 

 ようやく理解した。

 俺が倒したゴブリンたちは、間違いなく「討伐依頼の対象」だったのだ。

 

(俺が……ちゃんと戦った結果なんだ)

 

 金貨の重みが、初めて「戦った成果」として実感できる。

 

「それにしても、初めての戦闘でゴブリン3体を倒すなんて、すごいですね」

「でも、こうして手痛い目に遭ってますし……。私なんか、まだまだですよ」

「ふふ、謙虚なんですね。でも、立派な冒険者ですよ?」

 

 受付嬢は柔らかく微笑んだ。

 俺は照れくさくなりながら、そっと報酬の小袋を握りしめる。

 

(……これが、冒険者としての最初の成果か)

 

 そう思いながら、ギルドを後にした──。

 

 外に出ると、日はすっかり落ちていた。

 

 通りに灯るランタンが、街をオレンジ色に照らしている。

 

「ふぅ……長い一日だったな」

 

 俺は、ゆっくりと伸びをする。

 冒険者が多く泊まる宿屋が、ギルドの近くにあるらしい。

 しばらくは、そこで生活することになるだろう。

 

(……しかし、シーラ(この子)、一体何者なんだろうか)

 

 俺は胸の奥にある違和感を抱えたまま、宿屋へと向かった。

 

 

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