イカレたメンバーを紹介するぜ!!!!!   作:まつきた

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うわっ、迷子の二次創作少な過ぎ…? ということで自分で書くことにしました。童貞しちゃう女の子いいですよね


Dr. 幸せな童貞! 立希!

夜の帳が下り始めた帰り道、立希は静かに歩いていた。路肩に植えられた街路樹の葉が風に揺れ、コンクリートに映る影が伸びたり縮んだりを繰り返している。隣を歩く燈の姿を横目に捉えながら、立希は無意識に指先をこすり合わせた。胸の奥がざわつく。この感覚は、いつもの「バンドのことで悩んでいる」とは違う。

 

燈は相変わらず無表情で、ふわりとした歩き方をしていた。立希は、そんな彼女がどこか夢の中にいるように思えてならなかった。いや、実際に燈はよく夢を見ているみたいなところがある。バンドのこと、詩のこと、あるいは——仮面をつけた人形の夢とか。

 

「……ねえ、燈。」

 

立希は歩みを止めた。二人は燈のマンション前にある歩道橋の上にいた。地上には車のヘッドライトが流れ、白い軌跡を描いている。

 

燈が立希の方へ顔を向ける。

 

「今度、水族館に行かない?」

 

言葉を口にした瞬間、立希は自分の鼓動が跳ねるのを感じた。心臓の音が耳に響く。これを言うのに、どれだけの時間をかけて考えてきたことか。練習が終わるたび、どうやって誘えばいいかシミュレーションして、あれこれ考えて、結局全部まとまらなくて——でも、こうして口にしてしまえば、あっけないほど簡単だった。

 

燈の顔は変わらない。いつもの静かな、感情の読み取れない表情。

 

(反応、薄い……?)

 

立希は息を詰めたまま、燈の次の言葉を待つ。長い沈黙が降りる。時間の流れがゆがんでいくような感覚に囚われる。

 

「……あのちゃんも一緒に行っていい?」

 

その一言に、立希の思考が止まった。

 

「……え?」

 

思わず間抜けな声が出た。自分の中で練りに練った計画が、一瞬にして崩れる音がした。

 

燈は相変わらず無表情のままだった。

 

「水族館、行きたい。でも、あのちゃんも一緒に行ったら楽しそう。」

 

「……ああ、うん……まあ……」

 

立希は、気づいたときにはすでに「いいよ」と言っていた。喉の奥に残った違和感をどうすることもできず、苦くて重いものが胸に広がっていく。

 

——なんで、こうなった?

 

燈が愛音を誘ったら、もう「デート」ではなくなる。バンドメンバーで遊びに行くだけだ。そんなの、ただの水族館見学じゃないか。

 

でも、「嫌だ」とは言えなかった。

 

燈が愛音を誘うことを拒否する理由なんて、立希にはない。言えたとしても、それはただのわがままだ。

 

「じゃあ、決まり?」

 

燈が首を傾げる。立希はこくりと頷いた。

 

「……ああ、決まり。」

 

燈は「よかった」と言うように、小さく瞬きをした。それだけで、またふわりとした雰囲気に戻り、マンションへと歩いて行く。

 

立希はその背中を見送りながら、なんとも言えない気持ちを抱えたまま、歩道橋の欄干に肘をついた。

 

(……はあ。)

 

どうして、こうなる? どうして、いつも自分はこうなんだ?

 

ベッドの上での葛藤。部屋の天井を見つめる。

白い天井に、何度も「なんで」をぶつける。

 

「……なんで、こんなことになったんだよ!!」

 

思わず枕を殴る。

 

横になっても、うつ伏せになっても、何も変わらない。もやもやした気持ちは消えないままだった。

 

(私、水族館に燈を誘ったんだよな? それなのに、どうして愛音がついてくるんだ?)

 

一人で行きたかった。燈と二人で、水族館を回って、ペンギンを見て、燈がどんなふうにそれを詩にするのか、そんなことを話したかった。

 

けど、愛音が来るなら、もうそういう空気にはならない。燈と二人きりになれる瞬間なんて、きっとない。愛音は騒がしいし、燈も愛音にはよく話すし、私の入る隙間なんて、なくなるんじゃ——

 

「……っ!」

 

考えれば考えるほど、胸が苦しくなる。

愛音が来るのは、断れなかった自分のせいだ。でも、「ダメ」なんて言えるわけがない。燈が「愛音と行きたい」と言ったのを、無理に拒否するのは、違う。

 

でも、それなら——

 

(私は、どうしたかったんだ?)

 

「燈と二人で行きたかった。」

 

声に出してみる。

 

口にした途端、胸の奥がぎゅっと縮こまる。どうしようもなくて、どうにもならなくて、枕を抱えたまま、もう一度天井を見上げた。

 

「……私、バカみたいだ。」

 

ただ、燈を誘いたかっただけなのに。こんなに苦しいのは、なんでだろう。水族館。楽しいはずの場所が、今は少し遠く感じる。

 

でも。

 

燈は、行きたいと言った。それなら、行くしかない。

 

たとえ、愛音が一緒でも——

 

「……はあ。あいつ断らないかな」

 

立希は大きく息を吐いて、枕に顔をうずめた。

目を閉じると、どこか遠くで、ペンギンが泳ぐ光景が浮かんできた。

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