クソゲーハンター、キヴォトスに舞い降りんとす   作:トイザラスイッチ

2 / 4
報告と久々のクソゲー

 

「いやいやいや!違うからね!?」

 

生徒の脚を舐めた奴だと言ったら、シャーレの先生は強く否定してきた。いや、でもな…

 

「教えてくれた奴は基本的に嘘つかないしなぁ」

 

あいつ過労を誤魔化す時だけ嘘をつくから、もう一人のフレンドに嘘をつかない奴だと思われてるからな。

 

「…ちなみにどんな状況だと教えてくれたの?」

 

「銀髪褐色肌の生徒が風紀委員会の拠点前で脚を舐められてた」

 

なんか頭を抱えて動かなくなった。急に余裕がなくなったように見えるから余計本当な気がする。

 

というかウェザエモンとずっと戦っていたからもう限界ギリギリだ。早く帰って寝たいし、買っておいた転移魔法の使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)を使うか。

 

「俺もう眠いから帰る。じゃ!」

 

「ちょっせめて名前を───

 

 

 

 

 

 

ラビッツに転移してすぐ、疲れのあまり俺は倒れるように眠ってしまった。

目覚めた時には日の光が入っていた。

 

「おはよう………一体どうしたんだよエムル」

 

「だっでぇぇぇ!だっでぇぇぇ!」

 

いつの間にか運ばれていたベッドから身体を起こしたあと、何故かベッドの横で涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっている小さな兎のエムルに話しかけた。

 

「ザンラグザン、ウェザエモンにがっでぎだどおもっだら、すぐにだおれぢゃっだんでずわ!」

 

それは俺が悪いな。帰ってきたら急にぶっ倒れるとかすごく心配になるし。

 

「あー……悪かったな。でも仕方ないだろ?30分間精神を研ぎ澄まして戦ってたんだから──」

 

「ぞれでもじんばいじだんでずわっ!」

 

どうしよう。なんとか聞き取れた言葉も解らなくなってきた。

そのままエムルは泣きながら走ってどっか行ってしまった。

 

「えぇ…?」

 

困惑しながらも自分の手をじっと見つめる。改めて実感した。昨日、この手でウェザエモンを打ち倒したのだ。

 

「本当に勝ったんだな…」

 

もうセツナとは会えないのは寂しいが、俺の新たな旅立ちだと考えれば寂しさも紛らわせる。エムルが落ち着いたらヴァッシュに報告しに行こう。

 

「そういえば、結局あの不審者は何だったんだ?」

 

思い出すのは唐突に反転世界に現れた大人、シャーレの先生名乗った者。あの人は脚を舐めたという情報にひどく動揺していた。急に言われたから困惑していた可能性もあるが、警戒しておくに損はないだろう。

シャーレという単語は実験道具でしか聞いたことがないし、今のうちに調べておこう。

 

「どれどれ…えっ何これ?」

 

連邦捜査部シャーレ

簡単にまとめると、

1、キヴォトスに存在する全ての生徒を制限なく加入させれる。

2、仮に学園の自治区であったりしても、戦っても問題なし。

3、活動制限がないから上位組織からの承認や監視を受けることがない。

 

なんだこの権力の塊は。キヴォトスは全てこの組織に支配されているようなものではないか?

全部ヤバいのが、1番頭おかしいのは監視を受けたりしないことだ。三権分立は空想上の話なのだろうか。

 

「まぁこの組織ができてから治安はかなり落ち着いたらしいからな…」

 

調べてみると廃校寸前のアビドス高等学校を救ったりと、様々な活躍をしているらしい。

情報が全然足りないから判断のしようが無い。時間があったらフレンドやエドワードにアドバイスを貰いに行こう。

 

 

 

 

数分後、戻ってきたエムルを連れてヴァッシュの元に訪れていた。

 

「さて……そいじゃサンラク、あの「死に損ない」にケリをつけれたようだな」

 

「はい。2年もかかりましたがね」

 

「はっはっは、それでも諦めなかったから勝った。それで十分さ……」

 

ヴァッシュは煙管を吹かせながら俺をみた。

 

「あいつぁ、満足して逝けたかい」

 

天晴(あっぱれ)だと褒めてもらいやした。それから…」

 

俺はインベントリから破損したバンガードを取り出した。

 

「ウェザエモンが、これを俺の目の前に突き立ててから逝きました」

 

ヴァッシュもさすがに予想外だったのか、驚いた表情をした後、真剣な顔色でこちらを見た。

 

「お前さん、それを見せてくれねぇかい?」

 

「はっはい、こちらを」

 

ヴァッシュが太刀を手に取り、じっくりと数分間眺めた後、高らかに笑い始めた。

 

「くはっ、はははっ……ははははは!はははははははははははは!!!!!」

 

「あ、兄貴?いったい……」

 

「あぁ悪いな。こいつはあの野郎に認められたっちゅう証だ。そりゃ満足しただろうに……」

 

「そう、なんですね…」

 

そう思うとじんじんと胸からこみ上げてくる。いつでも強敵に認められると言うことはとても嬉しいものだ。

 

「……改めて礼を言おう。あの大馬鹿を悔いなく眠らせてくれてな。こいつは時が来たら渡そう。なんかあったらまた来いよ」

 

そう言われ、俺とエムルは退出した。まだしていなかった報酬の確認をしなくては…!

 

 

 

 

 

「これを残したっていう事は…来るのか、終焉が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってからすぐに報酬を確認したが、あれはすごかった。

【晴天流奥義書・斉天】は2年間苦戦しまくった晴天流の技を習得出来るらしい。あれって人が使える者なのか…

【世界の真理書「墓守編」】はウェザエモンについてまとめた物だ。読んでみると納得した。何故あの1秒を稼げたのか、理由はシャーレの先生が墓の隣で声をあげたからだ。ウェザエモンは墓の近くに居る者を他の何よりも優先して排除しようとするらしい。

【格納鍵インベントリア】これが1番ヤバい。生物じゃなければ無限に収容できるし、MPを使えば緊急避難もで出来る。更に規格外戦術機など規格外系統はミレニアムでも作るのが大変そうな物ばかりだ。

【規格外エーテルリアクター(破損)】は戦術機たちを動かす動力らしい。ビィラックに修復できないか聞いてみよう。

 

「いやぁ有意義な時間だった……」

 

「疲れましたわ……」

 

興奮を落ち着けるためにエムルをわしゃわしゃなで回したため、不機嫌になってしまった。その後人参をあげたりしてなんとかエムルの機嫌を戻し、そのまま一緒にショッピングを楽しんだ。

 

 

 

 

ショッピングが終わり、俺はエムルに頼んでミレニアム自治区に送ってもらった。その後、近くで銃撃戦が起きてないことを確認し、スーパーでエナドリや自炊用の食糧を買って自宅に戻った。

そう!ウェザエモン戦を終えた今、健康を気にしないでクソゲーができるのだ!

 

「どのクソゲーをやろうかな……買っておいた「永劫の絆」が良いかな?でも最近話題の「星騎士レグルス~ラストスパート~」も気になるな……」

 

そう考えているとメールが届いた。メールって事はゲーム関連の連絡だな。誰からだ?

 

互いに忙しくなって最近は一緒にゲームができなかったフレンドから『釣りフィッシング』で会おうと連絡が届いた。肩の荷が下りた今、俺も遊びたい。

 

よし、約束の時間まであと2時間だな!晩飯食うか!

 

 

 

 

 

 

 

晩ご飯を食べた後、エナドリをチャージして『釣りフィッシング』にログインする。

 

『釣りフィッシング』

名前からもうクソゲー臭が半端ないこのゲーム、カテゴリはオンライン釣りゲーム。

簡単なストーリーとしては「釣った魚を図鑑に登録し、図鑑を完成させる」というもの。

グラフィックは今までプレイしたゲームと比べてもぶっちぎりで綺麗なのでそこだけ見れば良ゲーだ。

では何故このゲームはクソゲーという評価を受けているのか、理由は簡単である。

 

このゲーム、本当に魚が釣れない。数時間待つなんて事はザラで、ヒットしたとしてもすぐに逃げられる。そんな神経だけが削られる虚無ゲーなのだ。

 

さらにこのゲームクソとたらしめる要素が二つある。

1つ、魚を釣ると報酬として金を貰えるのだが、何も買えないのだ。実質報酬なしなので虚無感が半端ない。

2つ、図鑑を半分近く完成させると確定でバグって全部初期化されることだ。フレンドと一緒にやっていた時にこのバグが発生した。その時偶々いた野良の人に聞くと確定で起こるとわかり、2人で釣り竿を思いっきり叩きつけたのはいい思い出だ。

 

「グラフィックがとんでもなく綺麗なんだけどな……」

 

総評としてはグラフィックがとても良いゲームだが、そこにリソースを注ぎすぎたせいで他の釣り道具などが実装されていない勿体なさすぎるゲームだ。

 

トイレやシャワーを済ませた後、ヘッドギアを頭に着けて横になる。

 

「あいつに会えるのが楽しみだ!」

 

 

 

 

 

「うん。やはりいつ見ても最高峰のグラフィックだ」

 

ログインして「サンラク」になった俺は身体がちゃんと動かせることを確認し、釣り堀へと歩いて向かう。

ちなみに現在、このゲームにログインする人は皆まともにプレイしていない。代わりに別の遊び方でプレイしている。

 

海を眺めながら歩くこと数分、釣り堀に到着した。

待ち時間までちょっとあるしどうしようか考えていると後ろから声を掛けられた。

 

「久しぶりね、サンラク」

 

「っ!この声はSina氏!お久しぶりです!」

 

「はぁ、ここはゲーム内なんだから敬語を外してって何度も言っているでしょう?」

 

「あはは、すみま……わるいわるい。まだ慣れなくてな」

 

目の前に立つもふもふな白髪をしていて、俺より背が低い少女の姿をしたプレイヤーの名前ははSina。初期化バグの存在を教えてくれて、フレンドになってくれた元野良の親切な人だ。

 

「さあ、今日もやりましょう」

 

「最近は忙しかったしな。よっしゃ!やろう!」

 

しかもこの人、このクソゲーに新しい遊び方を考案した人でもあり、リアルでも関わりができた数少ない人物の一人だ。

 

「準備はいい?」

 

無問題(モーマンタイ)!」

 

そんな新しい遊び方というのが…

 

「それじゃあ……」

 

「「おやすみ!!!」」

 

俺もSina氏も釣り堀のすぐそこにある草原で横になり、目を瞑る。暖かな日の光と潮の香りを運んでくる風が心地よい。

 

そう、これこそが新しい遊び方「寝る」である。

このゲーム、報酬としてもらえる金が何も買えないということは銃などうるさい物が何もないということ。

それとグラフィックの良さを合わせたら良い感じになるのではと考えたSina氏は試しに目を閉じてみると、騒ぎ声も銃声もしない静かな空間があり、これを気に入ったらしい。

 

「久々に会うからかもしれないけど、前より雰囲気が明るいわね。何か良いことでもあった?」

 

寝るといってもゲーム内で実際に寝れるわけではなく、ただ休憩しているだけ。それでも疲れている人にとっては嬉しいものらしい。

 

「あぁ!2年前からずっと取り組んでたものが終わったからだな。それが酷いんだよ!超高難易度のくせに30分耐えながら即死攻撃を弾かなくちゃいけなくてな…」

 

「へぇ、酷いわね。それでどうやって攻略したのかしら?」

 

「それは……「サンラク、来たわよ」おっ!」

 

時間まで会話をしようとしていたが、フレンドも早めに来た。

 

「久しぶり!元気…では無さそうだな。隈が酷いや」

 

「お久、というやつね。まあ疲れていてもここに来るだけで気が楽になるのよ」

 

「そうね。貴方も連邦生徒会長が失踪してからお互い大変だったもの」

 

「ま、少しでも休めるなら此処で休めよ。リオン

 

「それならそうさせてもらうわね、サンラク」

 

そう言って、目の前に居る黒くて長い髪をたなびかせる背の高い少女、リオンは微笑んだ。

 




小ネタ
釣りフィッシングはクソゲーなので皆同じ服装をしている。
だから3人とも臨戦ホシノのベストを着けている。それ以外はお好きな格好をさせてあげてください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。