クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~ 作:Mr.エメト
溜めていた思い
◆アルゼナル 医務室◆
「……ふむ。なるほど」
テンゲンはマギーの助手として働いていた。
医学部に所属しているため、薬や手術の補佐もできる。
しかし、女性ライダーたちはテンゲン目当てで毎日、相談に乗っている。
「あの、お時間があれば食事はどうでしょうか?」
「生憎だが、食事をする時間はとれん。君たちの健康管理をしなければいかんので」
女性ライダーのカルテをスラスラと書いて返事をする。
フッと扉を見ると、サリアが凄みのある顔で歩いていた。
(……あの表情からして、焦っているのか、それとも……)
◆アルゼナル リュガの部屋◆
リュガは部屋で寝転んで、サリアの姿を思い出す。
「……真面目な人間ほど変な趣味があるんだな……」
とにかく、脅しのネタ…もとい、笑いのネタになりそうだと思う。
ドアが開かれると、サリアだった。
心なしか、顔が赤く、怒っているような感じの表情だ。
「……よお、昼間の姿は面白かったぜ」
「忘れなさいよ!!」
ナイフを取り出し、リュガを斬りにかかろうとするが、避ける。
「あれを見られて、恥ずかしいから冷静な判断ができてないな、隊長さん。
あんたがどんな趣味を持っていようと俺には関係ないね!」
サリアの足を引っかけて転ばして距離を取るリュガ。
体勢を立て直したサリアはナイフを構えて斬りにかかる。
リュガは避ける素振りも見せず、ナイフの刃を素手で掴む。
これには驚くサリアだが、その隙をついてリュガはナイフを取り放り投げる。
「おまえだって、俺とアンジュが死んでもいいと思っているだろう?
目の前で撃たれそうになっているにも関わらず、咎めようともしない。
俺はアンジュみたいに我慢強くもねぇし、キレたらあいつらを殺そうかと思っていたぐらいだ」
ズカズカとサリアに近づいて、胸ぐらを掴む
「アンジュが海に沈む時、お前はアンジュではなくヴィルキスの方を心配してただろ?
ヴィルキスを取られて悔しいとか思っているのか?」
的確な言葉を言われて、サリアは更に憤る
「……貴方に、貴方に何が解るのよ!?」
サリアは拳を振り上げて、リュガの頬を殴る。
「……解るわけないだろ、俺はあんたじゃない。アンタは俺でもない。どうするかは自分で考えろ」
そう言ってリュガは自室を出て行く。
―――――
再び医務室。
「…それで、サリア隊長とケンカしてできたのか」
「…まぁ、な」
「マギー医師がいたら確実に傷を増やすかもしれんぞ」
「すまんな」
消毒、包帯を巻いて処置完了する。
「お前なら、避けれたことなのに何故、ワザと受けたんだ?」
「……少しでもサリアの負担を減らせればなと思って。色々と抱え込み過ぎて発散できればなと」
「不器用な性格だな」
そんな会話を医務室の入り口前でエルシャとヴィヴィアンは聴いていた。
―――――
翌日の戦闘区域、リュガは唐突にある提案をする。
「俺は5分の間、戦闘に参加せず待機する。殲滅できなかったら俺とアンジュの命を狙うようなことを二度とするな」
「いいわよ。受けて立つわ」
サリアが反論しようとするがヒルダが仕切る。
戦闘が始まり、ドラゴンはドンドン数を減らしていく。
あと少しで終わろうとするが、ガレオン級ドラゴンが4体も出現した
「うそ!?」
「な、なんでこんな時に!?」
そして、5分経ちドラゴン殲滅が失敗する。
リュガはフッと笑い戦いの準備に入る。
左腕が大砲になり、肘部分からホースが出現し海へ伸ばす。
「汲み上げ開始」
駆動音が響き海水を汲み上げる。
発射口から海水の弾丸を勢いよく連射し残ったスクーナー級ドラゴンたちの腹部を貫く。
超高圧水発生ポンプで加圧された水は、音速の約3倍に達し、破壊力のあるウォータージェット。
レーダーの照準をガレオン級ドラゴンに合わせ、心臓目掛けてスナイプショットを決める。
次々と狙い撃ちをし心臓を大きく抉れたガレオン級ドラゴンたちは血を吐き、海へと没した。
「約束は守れよ」
ヒルダ、ロザリー、クリスはリュガを睨む。
ヴィヴィアン、エルシャ、ミランダ、ココはリュガの事を心配している。
サリアはまたしても命令違反に加えて独断行動をするリュガに悩ませる。
第一中隊の空気がますます悪くなっていくが、新たな反応が出現する。
現れたドラゴンは今までの飛行タイプではなく四足歩行タイプのドラゴン、特徴は巨大な角、獣の様な尻尾だ。
「もしかして、あれって……初物!?」
「新種のドラゴンということか」
「コイツの情報持ち帰るだけでも大金持ちだぜ!」
「どうせなら初物喰いして札束風呂で祝杯といこうじゃないか!」
ロザリー、クリス、ヒルダは先行し、新種ドラゴンに攻撃を仕掛ける。
こんな時に興奮するヴィヴィアンが妙に静かだ。
「どうした、いつものように歓喜しないのか?」
少し皮肉気に言うがヴィヴィアンが少し沈んだ表情をしていた。
「…なんだろうピリピリする。ヒルダ戻れ!」
ドラゴンが咆哮を上げたかと思うと角が光りその瞬間周囲が何かに包まれた。
ヴィヴィアンが警告を促したが時既に遅くヒルダ達の機体が囚われてしまった。
「なっ!?」
「う…動けねえ…」
「一体何なのコレ!?」
『新型ドラゴン周囲に高重力反応!』
「「重力!?」」
オペレーターからの解析結果に驚く。
「ちっ、鈍重かと思ったが…そんなドラゴンか」
更にドラゴンが角を光らし、重力範囲を広げ始めた。
サリア、エルシャ、ヴィヴィアンが重力に捕まってしまった。
「皆を…はなせぇぇぇぇぇぇ!」
なんとか立ち上がろうとするヴィヴィアン。しかし、重力のせいで地に倒れてしまう。
重力場から逃れたアンジュ、リュガ、ココ、ミランダ。
どうにかしないと重力場に捕まった連中が潰されるのも時間の問題だ。
「ど、どうしよう……!?」
「このままだと、皆さんが!!」
戸惑うココとミランダ。
「貴方の武器で何とかならないの?」
「カッターでもウォータージェットでも、重力に阻まれるしなぁ」
「役に立たないわね」
「お互い様だろ」
どうするかと考えていたが、プルートの目が輝きだす。
なんとプルートの背から2本のアームが出現したのだ。
「へぇー、こんな隠し武器があるとはね」
アームの先端がグラップルとなっている。
操縦席からゴーグルと腕をはめ込めるぐらいの装置が出できた。
仕組みを理解し、ゴーグルをつけて両腕をはめ込む。
「その角を圧し折ってやる!!」
アームが伸びていき、重力をものともせず、ドラゴンの両角を掴む。
サリアたちの目の前に信じられない光景が起きた。
体格差は明らかなのに、大型ドラゴンを持ち上げたのだ。
「なっ!?」
「嘘でしょ!?」
サリアとヒルダが驚愕する。
「おおおーー!!カッチョイイ!!」
ヴィヴィアンはいつも以上に興奮していた。
「おらああああああああああああああっ!!」
一気に下まで振り下ろし大型ドラゴンを地面に叩き付けた。
その衝撃は凄まじく、地面が陥没し、反動で、ドラゴンの角が両方とも圧し折れたのだ。
すると、サリアたちを襲っていた重力が消えて、動くようになった。
「返す!!」
折った角をドラゴン目掛けてブン投げて、背中に当てる
重力が解けて動けるようになったサリアたち、後は倒せるだろう。
アンジュも参加しようとしたが……。
「待った」
アームを使い、ヴィルキスを捕縛する。
「な、何をするの!?」
「今回はあいつらに任せよう。両角の重力がなければただのカカシだ」
◆◆◆◆
基地へと帰還し、今回の戦闘配給している。
「うひょおー!こんな大金夢みたいだ!」
「夢じゃないよ!」
ロザリー達は山積みにされたキャッシュを見て顔を綻ばせていた。
あの新型ドラゴンはフリゲート級と新たに認定された。
「う゛ー……」
「仕方ないか、角を圧し折ったぐらいだし」
アンジュとリュガは今回の報酬が少なかったようだ。
アンジュはリュガに止められて、攻撃に参加できなかったし、リュガはドラゴンの角を圧し折り、身体に突き刺しただけ。
一方の皆は分厚い報酬金を貰えたようだ。
「……その、ありがとう。リュガ」
「気にすんな。まぁ、俺も意地を張り過ぎたし反省はする。…………たぶん」
後半は聞こえないように小声で言う。
サリアに耳打ちをする。
(今度はそっちが約束を果たせ。秘密の趣味をばらされたくなければな?)
(うぐ……解ったわよ……)
コホンッと咳払いするサリア。
「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。
アンジュ、リュガも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。
これは隊長命令よ」
「誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって……」
「……良いわよ別に私の足さえ引っ張らなければね」
アンジュは予想外に肯定する。
「私も良い…かな。今回、リュガのおかげで助かったから…」
いつも隠れがちなクリスがそう言う。
「ま、まぁ…私はしばらく金がある内はアタシも良いかな」
ロザリーも続けて言う。
「チッ……裏切者」
ヒルダは納得できないのか立ち去る。時間がかかるかもしれんな。
アンジュとモモカはサリアたちと一緒に何処かへと行ったようだ。
自室に戻るとゼノンが待っていた。
「リュガ、君宛にだけど…何か知っているかい?」
マナ通信を開くとそこにはこう書かれていた
《私はシュレディンガー、君の父の親友だ。君にあることを話したい。ミスルギ皇国で待つ》
謎の人物シュレディンガー。そして、滅んだとされるミスルギ皇国。
また、新たな騒動が起きようとしている。
◇登場した工具・重機◇
ウォーターカッター(水を噴射、高速・高密度な超高圧水のエネルギーを利用して、対象物を切断する一種の工法)
グラップルアーム(大きなくちばしのようなようなアタッチメント、物掴みに適しており、林業の現場、造家屋の解体、廃棄物の分別に使われる)