クロスアンジュ 天使と竜の輪舞~デバステイター~ 作:Mr.エメト
その頃。タスクとヴィヴィアンは敵の攻撃からなんとか逃れてアウローラと合流した。
アンジュ、リュガ、モモカが敵につかまってしまうという事態となった。
これで、最後の希望が潰されてしまったようなものだ。
しかし、三人の天才たちはみんなを集めてジルに問いただしていた。
「あの作戦でどこかおかしいと思ったのよ。あれではヴィルキスを敵に渡すようなものじゃないかって」
ラプラスがそう答えるとジャスミンとマギーもあの作戦の違和感に気付いた。
そして、カルネアデスが答える。
「……もしかするけど、エンブリヲに操られているんじゃないかと?」
「!!!!」
『『『なっ!!?』』』
カルネアデスの一言に皆は驚き、ジルは驚く表情をし戸惑いを隠せない。
目を泳がせながら大量の汗が湧き出て来る。
「ほ、本当かい!!アレクトラ!?」
ジャスミンがそれに問うも、ジルは顔を逸らして戸惑いながらも黙り込む。
「何で黙ってるんだい…!答えろよアレクトラ!!」
マギーが怒鳴りながらジルの胸倉をつかみ、振り向かせ言い聞かせる。
「それは………!」
シュレディンガーはマギーを抑え、説明する
「最初のリベルタスの時にエンブリヲに何かされたのだろ。アレクトラでも違和感を感じさせない様に」
「…ああ、そうだ、私は操られた…エンブリヲの人形だった……」
ジルの言葉にジャスミン達は驚き、その場にいたメイも驚く。
「何故、あの男の人形にされていたの?」
「……私はあの時、リベルタスを行い…エンブリヲを殺そうとした。
だが奴に身も心も憎しみ…全てを奪われた。誇りも使命も純潔も…。
ああ…怖かったよ。リベルタスの大義…ノーマ解放の使命…仲間との絆。
それが全部…奴への愛情、理想、快楽へと塗り替えられていった。
何もかもあいつに踊らされていると感じたんだ………」
マギーは腕を組んだまま問う。
「何で黙ってたんだ……」
「どう話せばよかったのだ?
エンブリヲを殺しに行ったが、逆に奴に惚れましたとでも言えるのか?
全て私のせいさ…リベルタスの失敗も仲間の死も全部………、
こんな汚れた女を救う為に皆死んでしまった…!!」
「そ、んな………そんな!!」
メイにとっては残酷な事実を知って、姉の死がジルに当たる事に困惑していた。
「私に出来る償いはただ一つ、エンブリヲとカノープスを殺す事だ。今頃、奴は新しい玩具で遊んでいるだろうな」
「新しい玩具…?」
「………アンジュとリュガの事ね」
「奴はアンジュを徹底的に落とすつもりだ…。道具として、自分の快楽の為にな。
リュガもまた、自分を護るための番犬として人格を破壊するだろう」
ジルの言葉を聞いて皆は絶句する、シュレディンガーは口を開き―――。
「それでアンジュとリュガを道具として使おうとした所を逆に奪われた……と言う事か」
「ああ、利用するつもりだった。勿論此処の皆もそうだった」
それを聞いたジャスミンとマギーは驚く、自分達を使い捨ての道具にしようとしたジルの言葉を聞いて。
「だが、それをいとも簡単に潰された…、リュガによってな──」
―――パンッ!!
ジルの頬にマギーの平手打ちが放たれ、それにジルはただ黙ったままマギーを見る。
「私はあんただから一緒に来たんだ、あんたがダチだからずっと付いて来たんだ。
………それを利用されていただなんてさ!!何とか言えよ!アレクトラ!!」
「そのくらいにしときな、マギー…」
「………ぐッ!」
マギーはその場を離れ、ジャスミンはジルと面と向かい合う。
「知っちまった以上、あんたをボスにはして置けない。指揮権を剥奪する…いいね?」
「………ああ」
ジルはジャスミンによってアウローラの指揮権及びノーマ達リーダーの座を失った。
それも大きな傷跡を残して。
しかし、ラプラスは気掛かりな点があった――――。
(けど……カシム兄さんの死は?彼は何かが引っかかると言って、あの時、残って……)
◆◆◆◆
一方、サリアたちはアンジュとモモカをエンブリヲの所へと案内していたが、既に消えており逃げられてしまった。
「ど、何処に行った!?」
「アンジュは元々この屋敷の人間!どこに逃げるかも知っている!!」
サリアたちは慌てて探すが、壁の一部にわずかな隙間が開いており、そこにアンジュとモモカが居た。
「よく知ってるじゃない。私の家をなめないでね」
そう言ってアンジュとモモカは庭に通じるダクトを通る。
庭へと出たアンジュとモモカはエンブリヲを探そうとした所に………。
「ああ~!アンジュお姉様だ!」
アンジュはアルゼナルに居た幼年部の子供たちに見つかってしまい、一緒に居たエルシャにも見つかった。
「あらあら、アンジュちゃんを追い詰めるなんて。みんなやるわね」
「エルシャ………」
アンジュはエルシャを見ながら呟き、エルシャから事情を聞き出した。
今の彼女は『エンブリヲ幼稚園』と言う園長を務め、そこで子供たちの世話をしていた。
信じられない事に幼年部の子供たちは一度死んだと事を聞かされて、アンジュとモモカは驚いた。
「し、死んだって……!」
「そんな事、マナの光でも不可能です!」
「エンブリヲさんがね、あの子たちを蘇らせてくれたのよ。
エンブリヲさんがあの子たちの幸せな世界を作るんだって。
私はその為なら何だってやるわ、ドラゴンもアンジュちゃん、リュガ君達を殺す事もね」
「エルシャ……」
エルシャの相当な覚悟を聞いたアンジュは思わず息を飲む、モモカに行こうとした所……クリスが立っていた。
「クリス、どうして裏切ったの?ヒルダ達が怒ってたわよ」
「怒る?怒ってるのはこっちよ……!見捨てて置いて!」
意味が分からない事にアンジュは頭を傾げる。
クリスからの話だと、彼女はアルゼナルに攻撃して来た特殊部隊達を撃退。
パラメイルで出撃した時に生き残っていた部隊の一人に攻撃を食らい、シャフトにぶつかってしまう。
ロザリーから助けに行くと言った際にクリスが乗るパラメイルが爆発し床が崩れる。
その時に助けたのがエンブリヲだと言う。
―――アンジュは分かった、クリスは思い違いをしている事に………。
クリスに案内されたのはある私室、アンジュは更に警戒を強める。
エンブリヲはアンジュの方を見ると、笑みを浮かばせて立ち上がる。
「やあ、よく来たねアンジュ。待っていたよ」
「エンブリヲ……!」
「そう怖い顔をしないでおくれ」
「揃ったみたいだね」
カノープス、後ろにはリュガがいたが、両手は拘束されていた。
「……お互い、無事のようだな」
「……みたいね」
どうにか再会を喜ぶが、リュガは二人を睨み口を開く。
「お前らは一体何が目的なんだ?」
「その前に、我々が今していることを話そう」
「旧世界の人間は野蛮で好戦的でね。まるで獣だった…。
そして、この世界を作ったが今度は堕落したのだ。
与えられることに慣れ、自ら考えることを放棄したんだ。
アンジュ、君も見ただろ?誰かに命じられれば簡単に差別する、彼らの本性を……」
ノーマだと知れば差別し殺すというあの人間たちの本性を。
かつてアンジュも……そうだった。
「だけど……どうしても、"バグ"つまりマナを持たない人間"ノーマ"が生まれる。
向うの世界からドラゴンが攻めてきたりと、マナを持つ者たちは戦う術はない。
そこで、マナを持たないノーマを使ってドラゴンを撃退させて世界を維持してきた。
………けど、それも限界。だから、リセットしようとしてね」
エンブリヲが二つの地球を用意して、一つに合わさる
「統一理論。アウラのエネルギーを使って、二つの世界を融合し一つの地球に作り直す」
「簡単に言えば、今の世界とドラゴンの世界をくっつけて原初の地球に戻すというわけだ。
シミュレーションで何回も実験したから、後は実戦するだけ」
二人がそこまで説明し、今度はアケノミハシラに連れられていた。
エレベーターで最下層に降りて、アンジュの目にある光景は映る。
「ア、アウラ……!」
アンジュとリュガの目の前にアウラがドラグニウム発生器らしき物を付けられて幽閉されていた。
「どうだいアンジュ。あれがドラグニウムだ。
この世界の源であるマナは此処から発せられている、これで色々な事を楽しめたよ」
「貴様ら……アウラを発電機扱いしたのか!?」
その事には全く否定しないカノープスは笑みを浮かばせる。
「人間達を路頭に迷わせる訳には行かないだろう。
リィザの情報のお蔭でドラゴン達の待ち伏せは成功し、大量のドラグニウムが手に入った。
これで計画を進められる………そう最終計画がね」
そう話すカノープスにアンジュは睨みかましていると、エンブリヲの後ろに銃があった事に気が付いたアンジュ。
アンジュはエンブリヲの銃を奪い、頭に銃を突きつける。
―――カチャ!
「アウラを解放しなさい、今すぐ!」
銃を構えているアンジュに対しても余裕をかましているエンブリヲ。
「おやおや、ドラゴンの味方だったのか」
「いいえ、貴方の敵よ!
兄を消し去り、タスクを殺そうとして、沢山のドラゴン達を殺した。
それで敵と考えるのは十分だわ!」
「ふふふ……君のお兄さんは少女たちを皆殺しにしてその罪を受けたのだよ」
「そこの、リュガの人格を破壊し我々の味方になれば……誰にも逆らえる気もない。
ドラゴン側が造った兵器、ドラゴメイルをね」
「そこまで、知っているのか……!!」
「勿論だとも、あれは私の計画の邪魔者でしかない。
だが、こちらにある以上これで私には怖い物なしだ」
「そうは……させないわ!」
バッーーーン!!!!
アンジュが持つ銃がエンブリヲの頭部を撃ち抜き、エンブリヲは血を流しながらそのまま倒れる。
次にカノープスに狙いを定める。
「アウラを解放しなさい」
「……やれやれ、君たちの目は節穴かい?」
カノープスは後ろの方に指をさすと、何事もなかった様に立っていたエンブリヲが居た。
「バカな!?頭を撃ち抜いたのに!?」
二人は倒れた方を見るとエンブリヲの死体が無い。
アンジュはエンブリヲを睨みつけて再びエンブリヲの頭を狙い、エンブリヲの頭を撃つ。
それに抵抗せずにエンブリヲは頭部を撃たれて倒れる。
しかし、また別の場所からエンブリヲが現れる。
「無駄だと言っているのに……アンジュ」
「あ…貴方、一体…!?」
「アレクトラやパブロフから聞いているだろう…?」
その言葉に二人は思い出す、この世界を作った者たちの事――――。
「つまり、てめぇらは神様か……?」
「その呼び方は好きではないな、調律者と監察者だよ」
「調律者と監察者………?」
アンジュはエンブリヲの言った言葉に呟く。
カノープスはお道化たような態度で、口を開く。
「そう、世界を正す者として生きているのさ。1000年間ずーーーっと生き続けてね」
「1000年!?」
「そうだよアンジュ、私は死なないのだ」
そう言ってエンブリヲはアンジュの元に近づき、アンジュは近寄るエンブリヲに銃を構える。
「来ないで!!」
「そんなに冷たい言い方はしないでくれたまえアンジュ、それに私は君に頼みたい事があるんだ」
そう言ってエンブリヲは片膝を付いて、手を差し延ばす様に振る舞う。
「アンジュ……私の妻となっておくれ」
「はぁ!!?」
エンブリヲの発言を聞いてアンジュは思わず声が出て、カノープスはやれやれと笑う。
「私は気の強い女性は好まないね。女性はおしとやかじゃないと」
「どうだいアンジュ?私と共にこの世界を新しく作り直そうではないか」
「お断りよ!! 死んでもあんたの妻になんか絶対にならないわ!!!」
アンジュは完全にエンブリヲの誘いを断ち切り、それにはエンブリヲは呆れかえる。
「フッ……やれやれ、困った花嫁だ」
「誰が花嫁よ!!勝手に名づけるな!!」
アンジュは銃を構えるが、カノープスはチョップで銃を叩き落した。
「ぐ……!!」
「あまり、乱暴にしないでくれよ。カノープス」
「失礼~。けど……あんまりバンバン撃つと五月蝿いからね」
「本当はやらせる気はなかったのだが……、言う事を聞かない子には少しばかりお仕置きが必要だ」
エンブリヲはアンジュと共に別の場所へと連れて行く様に転送される。
カノープスはリュガ見て、ニヤリッと嗤う。
「では……リュガ、君の人格を破壊する為に、その心を壊さなきゃね」
カノープスの影がまるで悪魔の様な姿でリュガの前に立ちふさがる。
二人の運命はどうなるのか――――?