ドス鳥竜として生きる 作:神袋
陣形を組む蜥蜴達へと禍々しい角を重さに任せて振り回す。反動で自然とバランスを取ろうとする剛尾も重い風切り音を鳴らしている。共同戦線を組む八匹は双長の号令の元、視線誘導、入れ替わりスイッチ、挑発ヘイト等を駆使して頼りない耐久力を攻撃の回避によって補い続ける。
「リン!右走ってからスイッチ!代わったら引いて回り込んで!」
「余った奴は隙見てカウンター!」
完璧……とまではいかないが、互いの思考を少しだけ共有リンクさせながらフィジカルで敵わない相手に頭脳戦で勝負を挑む。選りすぐりの集いだからこそ成立する戦法に翻弄されるがままにダメージが塵魔に蓄積されていく。生態系の頂点たる塵魔は小さな体躯に見合わないその脅威を認め、余力を大きく残しつつも次の形態へと姿を変える。紺に染まる体表に血管が隆起し、鮮やかな血が勢いよく巡り始める。冷静さを保ちながらも暴走状態へと化ける。耳をつんざく甲高い咆哮を発した直後、硬直する中の一匹へと必殺の猛突進を繰り出す。
「!!!!!!!ぅぁぁ!!!!!!!」
っぶない!この体ドスランポスでも体が硬直するのか!というかもう暴走状態に入るのか?体力をそんなに削ったとは思えないのに…。理由はわからないにせよ、いよいよ逃げることはできなくなったな。咆哮には注意して対策しよう。
陣形が戻っているところへUターンをして同じ個体へ突っ込んでいく。ひらりと余裕を持って避けられるも再度咆哮。もう一度突進をするも慣れられてしまい、硬直が発生しない故に簡単に避けられる。今までの敵はこの一撃で仕留めてきた塵魔はこの初めてを学習し、戦法を変える。突進による消耗を抑え、近接戦で勝負する。先の乱戦よりも向上した身体能力を使い角、剛尾、翼、両脚を使って矢継ぎ早に連続攻撃、真っ先に殺すべき青長を狙い続ける。
僕に狙いをつけてるみたいだな。動きが速くなってテンポが上がったとしても緩急の鋭さなら負けるわけがないし少しずつ慣らして反撃していけば…いける!
その時だった。最初の攻防と同じように角と同時に剛尾を振り回す塵魔。ならばと同じように避ける指示を出す双長だが、その指示通りに動く者を見て塵魔は雀躍する。反動に抗い無理矢理軌道を変える。「右に動いて入れ替わり、引くのだろう?」と読み切ったかのように入れ替わり引くゲネポスにその軌道を合わせる。不意を突かれ、暴嵐に飲み込まれるゲネポス。打ち上げられる者から目を離せないリン。顎を上げ、目線が向かぬうちに嵐は舞い戻る。気付いた時にはもう遅い。長の指示も遠く耳に入らず、嵐はリンを貫き重殻に重なる血をまた一層増やした。重なる血こそが塵魔の強さの証明であり、理由でもある。勢いに逆らって強引に動いた反動で塵魔は体勢を崩す。盟友の血を浴びたゼルは獅子の如く激昂し、隙を晒す塵魔の柔らかい腹を一閃しようとするが、翼爪を刺し応戦する塵魔。元来武器としての役割を持たないが、小さな蜥蜴一匹殺すのには十分な殺傷力があった。結果的に三匹の命を奪うこの嵐は十秒に満たぬうちに収まることとなった。
「おい……嘘だろ……リン、ゼル………」
「邪魔だ!下がれ!」
この世界で初めて会ったまともに会話できる存在の半分を失い、絶望死を目の当たりに動かない者を突き飛ばし、麻痺毒液を吐き飛ばす。体を起き上がらせた塵魔は自身の体高と同じほどまで羽ばたき大袈裟に毒液を避けると、着弾と同時に麻痺成分が爆発。一瞬塵魔の影を麻痺で染め上げた。回避された光景を見て絶望する暇もなく闘志を燃やすしかない生き残り。未だ別れを惜しむ者は心に思う。
「(ああ、俺が無理にでも割り込めば2人とも助かったのに。俺のミスだ………だからこそこの塵魔は必ず倒す)」
同時に意志を燃やす者は心に思う。
「(おい!何悲しんでんだ!自然界なら当然のことだろうが!自分を責めるなよ………そうだ!こいつをぶちのめす!)」
瞬間2人は繋がる。完全な思考の一致を果たし、脳を「共有」するが如く同じ目的の為に動きを見せ始める。ドスランポスは胃液を吐き出し塵魔を狙う。何度も打ち続け塵魔を動かす。そこにドスゲネポスの麻痺液が襲う。その体格故に急な静動ができずに直撃し、痺れるが生まれ持つ才能が耐性を獲得していた。鈍く不自由ながらもぎこちなく動く塵魔へと胃液をぶち撒ける。継続して麻痺毒液をかけ続けしばらく自由を奪っている間。ドスランポスはオアシスの水と胃液を混ぜて再び散布。彼の知識中の所謂『水属性やられ』と『防御力down』状態を塵魔へ与えると完全な麻痺耐性を得た塵魔が自由を手にする。急な変貌ぶりに違和感を感じながらも攻撃をするも阿吽の息吹ともいうべき一体感には空を切る。重ねられた弱体化によって肉質が柔らかくなった全身へと連携を叩き込まれボロボロな塵魔。追い込まれた魔王マオウは自発的に外せないリミッターが外れ、さらに余力を残す意思もなく全てを解放して己が強敵友を打ち滅ぼす。体から蒸気が吹き出しより鮮明な血色が隆起する。化け終えたその姿はまさに魔王。狂い暴れ走るその姿には理性など残っておらずただひたすらに、本能のままに、双竜のみを視界に収め、激しく咆哮する。その威力は軽い衝撃波を産み宿敵双竜と戦いに入ることのできない蜥蜴三匹を遠く吹き飛ばした。尋常ならざる水蒸気を纏い枯れ果てる事すら意に介さず一撃を見舞わんとする。吹き飛ばされた双竜も相対する魔王へと駆け出して行く。一騎打ちの行く末は、
打ち上げられた蜥蜴の捨て身の策によって決着した。
ドスゲネポスくんはMHF(フロンティア)でいう特異個体。
転生特典「共有」 「共有」を持⬛︎⬛︎方の⬛︎の声や思⬛︎、⬛︎⬛︎を共⬛︎する。